明月

レオクラ(H×H)、白鬼が好きです。
最近はちょっとカラ一(松)。

プロフィールタグ

投稿日:2016年04月05日 01:28    文字数:2,347

花びら

ステキ数は非公開です
コメントを送りました
ステキ!を送りました
ステキ!を取り消しました
ブックマークに登録しました
ブックマークから削除しました
コメントはあなたと作品投稿者のみに名前と内容が表示されます
何年か前にクラピカ誕生日のお祝いとしてかいたもの。
誕生日のうちにupしたかったのに間に合わなかった……orz
まあいい、愛があればいいんだ。
1 / 2



 花びら
 


ボクらが生きていたことを君だけが覚えている
悪魔なんかじゃない 宝石箱でもない 人だったこと
晴らしようのない感情を
全部刻んで 追いかけていく
忘れないように 癒えないように
 
ボクらの想いを継ぐ君はボクらの最後の希望
 
だけど
 
――生きている君が、
押しつぶされたら意味が無いだろう?
 
ねえ 最期の瞬間 君の瞳が見えたよ
真っ直ぐにボクを見てくれた
外の世界を楽しんでくるって
 
 
 
  春風にふかれて
  花びらが舞う
  
  やさしい色
  淡くにじんだ緋色が
  空いっぱいにひろがった
 
  まるで今日を祝うような
  やわらかな日ざしの中
 
  風にのってどこまでも
  君のもとへ
 
 
 
君はボクらの最後の希望
 
ボクたち赤目のクルタの民は
森の呪縛から逃れて 人として自由に
生きられる



29A5TGorIUEK2Q2H5Wcw1Kz8lTuSMBDFWXEzcWk+0UBdOihubymVwkp10yJvBLdWE7qxZVDu+DsegqIKsEE8mSgT8pvIwTyNWMgR28hZp6XlqwErC3UqYHoYcYj7sLQwdWXyD06xvX6lWiERvpJyE+J4kx8MeTn7H0jC8kAFcadmAAAAAElFTkSuQmCC



1 / 2
2 / 2



 花びらの中
 


 花が咲いていた。
 クラピカはふと足を止めて、小さな丘の上の木を眺めた。正午を少し過ぎた澄んだ青空の下、数本の他の木に混じって、一本だけ淡い色の花をつけた木が立っている。
 ノストラードの屋敷に帰るための飛行船がやってくるのは夜中。今日は珍しく半日の休暇で、センリツとバショウも思い思いに過ごしている筈だ。時間はある。
 何となく気になって、クラピカは小さな丘を登ってみた。じっと花を見つめたまま近づいてゆく。淡い薄桃色の花に、黒っぽくごつごつした幹。
(確か、桜――――)
 ルクソ地方の森にはない樹だ。実物を見るのは初めてになる。首を動かして上を見上げた。
 高さは七、八メートル程。太い枝が細かく分かれて、いっぱいに張り出している。そしてその枝の一つ一つに、無数の小さな花が咲いて揺れる。
 
 "桜の木の下には死体が埋まっている。"
 
 ふとそんなフレーズを思い出した。目の前の淡い花にはそぐわない言葉。確か異国の詩か何かの一節だった。
 まだ森で穏やかに暮らしていた頃、パイロと隠れて読みあさった本の中にあったのだ。桜は鑑賞用として親しまれている筈だし、珍しい樹でも無いようなのに、どうしてそんなことが言われるのかと気になった。
(結局あそこにあった本からは分からなかったが…)
 低い枝の先に触れてみる。ピンク色と呼ぶには余りにも薄い花の色。
 もしかしたら、この花は本当は純白だったのではないだろうか。ふとそう思った。
 土の中の死体に根が絡みつく。栄養分として血が吸い上げられる。冷たく赤い血は幹の中で何十倍にも薄められて、それでも隠しきれずに、花びらが淡く染まる。
(死体の上に咲く花――――)
 背筋がぞくりとした。思い浮かべかけた光景を慌てて打ち消す。漠然とした"死体"という言葉でも特定の人々を想像してしまう。
 この樹の下に死体などない。自分の空想に振り回されてどうする。
 頭を振って、それでも花から目が逸らせない。もう数歩近づいて幹に触れた。
 枝が頭上に覆い被さるように伸びている。空が見えない。花に目が釘付けになる。
 咲き乱れる小さな花々。淡い淡い赤の。――――緋色の。
 
 ざぁっと枝が一斉に揺れた。花びらが舞い散ってクラピカを取り囲む。
 その時、後方に二人の、いや、聞こえにくいが三人の、足音に気づいた。
「クラピカ!」
 思わず振り返る。日の光が弾けたような気がした。
「ゴン! キルア……レオリオ。」
 懐かしい顔ぶれ。どうしてここに?
 満面の笑みで駆けてきたゴンは、何かを言いかけて口を噤み、立ち止まってクラピカを真っ直ぐに見上げた。キルアとレオリオは一瞬顔を見合わせ、ゴンより数歩後ろで立ち止まる。
 ゴンはクラピカの眼を覗き込んだまま、心配そうに口を開く。
「クラピカ。――どうしたの?」
 クラピカは はっとして目許に手をやった。緋の眼になっていたことに漸く気づく。でも今は、黒のコンタクトをしていた筈だ。目で問うと、ゴンは微かに笑った。コンタクトでは彼の目はごまかせないらしい。後ろの二人もやり取りを見て察したようだ。
「花の色が…緋色がにじんだ色のように思えたんだ。」
 クラピカの視線を追って、三対の視線が上を見上げた。
 緋色は怒りの色、憎しみの色、悲しみの色。今は亡き同胞達が、無念と怒りとを花に咲かせた。――そんな気がしてならない。
 暫く花を見つめて、そっか、とゴンが呟く。
「やさしい色だね。」
 思いがけない言葉に反応が返せないでいると、ゴンはクラピカに視線を戻して笑った。
「だって、クラピカが緋の眼になるのは、クルタ族の人達が大好きだったからでしょ? 
 風に舞う花びらがクラピカを包み込む。
 
「この花も、きっとクラピカのことが好きなんだ。」
 
 花びらがひとひら、頬を撫でていった。
 
 
  春風にふかれて
  花びらが舞う
 
  やさしい色
  淡くにじんだ緋色が
  空いっぱいにひろがった
 
  まるで今日を祝うような
  やわらかな日ざしの中
 
  風にのってどこまでも
  君のもとへ
 
 
 
 
  ◇  ◇  ◇
 
 
「そういえば、お前達はどうしてここにいるんだ?」
 ややあって沈黙を破ったのはクラピカだった。コンタクトの下の眼を落ち着かせ、話題を変えようと、最初から感じていた疑問を口に乗せる。
 三人は一瞬視線を交わし、レオリオが答えた。
「センリツに聞いたんだよ。今日お前はここで任務があるって。」
 キルアが上ってきた方を軽く見やって続ける。
「そ。任務が終わったって言うから探しに来たのに、こんな分かりづれー所にいんなよな。」
「いや、そうではなく。」
 クラピカは改めて三人の顔を見回しながら問う。
「どうして今日、お前達はわざわざ集まって私に会いに来てくれたのだ?」
 三人はもう一度顔を見合わせて、にやりと笑った。そして今度は、全員が一斉に口を開く。
 
 
「誕生日おめでとう、クラピカ!」
 
 
 
 H9r7IwerwOtrAAAAAElFTkSuQmCC

2 / 2
コメントを送りました
ステキ!を送りました
ステキ!を取り消しました
ブックマークに登録しました
ブックマークから削除しました

コメント

ログインするとコメントを投稿できます

あなたのひとことが作者の支えになります。
コメントを投稿する事で作者の支えとなり次作品に繋がるかもしれません。
あまり長いコメントを考えずひとこと投稿だけでも大丈夫です。
コメントは作品投稿者とあなたにしか表示されないため、お気軽に投稿頂ければ幸いです。
花びら
1 / 2



 花びら
 


ボクらが生きていたことを君だけが覚えている
悪魔なんかじゃない 宝石箱でもない 人だったこと
晴らしようのない感情を
全部刻んで 追いかけていく
忘れないように 癒えないように
 
ボクらの想いを継ぐ君はボクらの最後の希望
 
だけど
 
――生きている君が、
押しつぶされたら意味が無いだろう?
 
ねえ 最期の瞬間 君の瞳が見えたよ
真っ直ぐにボクを見てくれた
外の世界を楽しんでくるって
 
 
 
  春風にふかれて
  花びらが舞う
  
  やさしい色
  淡くにじんだ緋色が
  空いっぱいにひろがった
 
  まるで今日を祝うような
  やわらかな日ざしの中
 
  風にのってどこまでも
  君のもとへ
 
 
 
君はボクらの最後の希望
 
ボクたち赤目のクルタの民は
森の呪縛から逃れて 人として自由に
生きられる



29A5TGorIUEK2Q2H5Wcw1Kz8lTuSMBDFWXEzcWk+0UBdOihubymVwkp10yJvBLdWE7qxZVDu+DsegqIKsEE8mSgT8pvIwTyNWMgR28hZp6XlqwErC3UqYHoYcYj7sLQwdWXyD06xvX6lWiERvpJyE+J4kx8MeTn7H0jC8kAFcadmAAAAAElFTkSuQmCC



1 / 2
2 / 2



 花びらの中
 


 花が咲いていた。
 クラピカはふと足を止めて、小さな丘の上の木を眺めた。正午を少し過ぎた澄んだ青空の下、数本の他の木に混じって、一本だけ淡い色の花をつけた木が立っている。
 ノストラードの屋敷に帰るための飛行船がやってくるのは夜中。今日は珍しく半日の休暇で、センリツとバショウも思い思いに過ごしている筈だ。時間はある。
 何となく気になって、クラピカは小さな丘を登ってみた。じっと花を見つめたまま近づいてゆく。淡い薄桃色の花に、黒っぽくごつごつした幹。
(確か、桜――――)
 ルクソ地方の森にはない樹だ。実物を見るのは初めてになる。首を動かして上を見上げた。
 高さは七、八メートル程。太い枝が細かく分かれて、いっぱいに張り出している。そしてその枝の一つ一つに、無数の小さな花が咲いて揺れる。
 
 "桜の木の下には死体が埋まっている。"
 
 ふとそんなフレーズを思い出した。目の前の淡い花にはそぐわない言葉。確か異国の詩か何かの一節だった。
 まだ森で穏やかに暮らしていた頃、パイロと隠れて読みあさった本の中にあったのだ。桜は鑑賞用として親しまれている筈だし、珍しい樹でも無いようなのに、どうしてそんなことが言われるのかと気になった。
(結局あそこにあった本からは分からなかったが…)
 低い枝の先に触れてみる。ピンク色と呼ぶには余りにも薄い花の色。
 もしかしたら、この花は本当は純白だったのではないだろうか。ふとそう思った。
 土の中の死体に根が絡みつく。栄養分として血が吸い上げられる。冷たく赤い血は幹の中で何十倍にも薄められて、それでも隠しきれずに、花びらが淡く染まる。
(死体の上に咲く花――――)
 背筋がぞくりとした。思い浮かべかけた光景を慌てて打ち消す。漠然とした"死体"という言葉でも特定の人々を想像してしまう。
 この樹の下に死体などない。自分の空想に振り回されてどうする。
 頭を振って、それでも花から目が逸らせない。もう数歩近づいて幹に触れた。
 枝が頭上に覆い被さるように伸びている。空が見えない。花に目が釘付けになる。
 咲き乱れる小さな花々。淡い淡い赤の。――――緋色の。
 
 ざぁっと枝が一斉に揺れた。花びらが舞い散ってクラピカを取り囲む。
 その時、後方に二人の、いや、聞こえにくいが三人の、足音に気づいた。
「クラピカ!」
 思わず振り返る。日の光が弾けたような気がした。
「ゴン! キルア……レオリオ。」
 懐かしい顔ぶれ。どうしてここに?
 満面の笑みで駆けてきたゴンは、何かを言いかけて口を噤み、立ち止まってクラピカを真っ直ぐに見上げた。キルアとレオリオは一瞬顔を見合わせ、ゴンより数歩後ろで立ち止まる。
 ゴンはクラピカの眼を覗き込んだまま、心配そうに口を開く。
「クラピカ。――どうしたの?」
 クラピカは はっとして目許に手をやった。緋の眼になっていたことに漸く気づく。でも今は、黒のコンタクトをしていた筈だ。目で問うと、ゴンは微かに笑った。コンタクトでは彼の目はごまかせないらしい。後ろの二人もやり取りを見て察したようだ。
「花の色が…緋色がにじんだ色のように思えたんだ。」
 クラピカの視線を追って、三対の視線が上を見上げた。
 緋色は怒りの色、憎しみの色、悲しみの色。今は亡き同胞達が、無念と怒りとを花に咲かせた。――そんな気がしてならない。
 暫く花を見つめて、そっか、とゴンが呟く。
「やさしい色だね。」
 思いがけない言葉に反応が返せないでいると、ゴンはクラピカに視線を戻して笑った。
「だって、クラピカが緋の眼になるのは、クルタ族の人達が大好きだったからでしょ? 
 風に舞う花びらがクラピカを包み込む。
 
「この花も、きっとクラピカのことが好きなんだ。」
 
 花びらがひとひら、頬を撫でていった。
 
 
  春風にふかれて
  花びらが舞う
 
  やさしい色
  淡くにじんだ緋色が
  空いっぱいにひろがった
 
  まるで今日を祝うような
  やわらかな日ざしの中
 
  風にのってどこまでも
  君のもとへ
 
 
 
 
  ◇  ◇  ◇
 
 
「そういえば、お前達はどうしてここにいるんだ?」
 ややあって沈黙を破ったのはクラピカだった。コンタクトの下の眼を落ち着かせ、話題を変えようと、最初から感じていた疑問を口に乗せる。
 三人は一瞬視線を交わし、レオリオが答えた。
「センリツに聞いたんだよ。今日お前はここで任務があるって。」
 キルアが上ってきた方を軽く見やって続ける。
「そ。任務が終わったって言うから探しに来たのに、こんな分かりづれー所にいんなよな。」
「いや、そうではなく。」
 クラピカは改めて三人の顔を見回しながら問う。
「どうして今日、お前達はわざわざ集まって私に会いに来てくれたのだ?」
 三人はもう一度顔を見合わせて、にやりと笑った。そして今度は、全員が一斉に口を開く。
 
 
「誕生日おめでとう、クラピカ!」
 
 
 
 H9r7IwerwOtrAAAAAElFTkSuQmCC

2 / 2
ステキ!を送ってみましょう!
ステキ!を送ることで、作品への共感や作者様への敬意を伝えることができます。
また、そのステキ!が作者様の背中を押し、次の作品へと繋がっていくかもしれません。
ステキ!は匿名非公開で送ることもできますので、少しでもいいなと思ったら是非、ステキ!を送ってみましょう!

PAGE TOP