ひだかみゆき

超次元サッカーの元陸上部大好きマンです。

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投稿日:2016年05月18日 16:45    文字数:5,391

ずっとそばに

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以下は当時のあとがきです。

1月2日の円風の日(背番号的に)に間に合わせたかったんだけど、無理だったブツでした。
どう見ても単なる風丸さん誘い受けです。
まあ、最終的に円堂が上位になるんですけどね!
時期的に3の最終戦前を想定。……脱稿現在では、アニメではまだですがw。
まあ、結局ふたりがラブラブならそれでいいんですけどね! って事で。
<2011/1/11脱稿>
1 / 1

ずっとそばに



 夜空には数多もの星が満ちあふれていた。ここ、ライオコット島から見える空は日本で見られるのとは違う星座もあるし、なにより空気が澄みわたっているので、その眺めも格別だ。

「凄いな、円堂。見ろよ。星が落ちてきそうだぜ」

 手のひらを頭上に広げて、星空を見上げていた風丸は傍らで歩く円堂に話しかけた。

「なんか掴めそうなくらいだけど、やっぱり無理だな……」

 空を掴む仕草をしてみてから、そう言ってみて、思わずくすりと笑みを漏らす。

「なんて、自分でも可笑しいけどさ」

 夕食のあと、円堂に乞われるままにふたりきりで浜辺を歩く。満天の星に溜息を漏らしながらぽつりぽつりと話す風丸に対し、誘った当人の円堂は黙ったまま、歩くだけだ。

「気がついたらもう、決勝戦なんだよな。ここまで来れるなんて、正直、思ってもみなかったけどな。2年の最初の頃なんて、俺、まだ陸上部で、お前は7人きりのサッカー部だったのが、なんかすごく遠い昔の話に思える……」

 辛勝の連続ではあったが、フットボール・インターナショナルに初出場したイナズマジャパンはあれよあれよと言う間に、明後日には優勝を決める最後の試合に挑むことになっていた。

「ここに来たくらいの時は、稲妻町が恋しかったけど、もうすぐここを離れなきゃならない、って思ったら、名残惜しいぜ。円堂はどう思う?」

 いつの間にか、ひとり先を歩いていた風丸は、円堂の顔を追って振り返った。揺れるポニーテールの髪先が視界から消えると、円堂が俯いて立ち止まってるのに気がついて、はっと息を吐いた。夜のとばりは辺りを静けさで満たし、聞えるのは波の音だけ。潮風がふたりを包みこんで、胸の奥に冷たさを運んだ。

「……どうした? 円堂」

 立ちつくす円堂に駆けよって、俯く顔を覗きこんだ。だが暗闇が円堂の表情を隠していた。

「円堂……?」

 首を傾げた風丸が、もっとよく円堂を見ようと顔を近づけた瞬間、その体はぎゅっと強いちからで抱きしめられた。思わず

「あっ……!」

と声を上げるが、耳元でささやく円堂の声に、風丸は目を見開いた。

「『まもる』って呼べよ、『いっちゃん』……」

 いきなり言われた、昔の呼び名に風丸はたじろいだ。

「ど、どうしたんだよ。今さらガキの頃の名前で呼んで……!?」

 言葉に引きずられそうになったが、風丸はすぐに自分を抱きしめる円堂の違和感に気付いて、それ以上何も言えなくなった。

(円堂……。お前、震えてる……?)

 耳元で聞える、息遣い。触れあう、頬と頬。夜風で冷えた体は、次第に互いの体温で熱く変わる。けれども、体を抱く震える腕は不安だけを風丸に伝えた。

「……まもる」

 小さい頃に呼んでいた名前を思いきって口に出してみたが、何故だか妙に心がくすぐったくなる。

「ははっ。なんか、こそばゆいぜ。あのな、円堂」

 遠く、近く、瞳に映る星を眺めながら風丸は、円堂の背中に自らの腕を回した。

「今夜、お前の部屋に行っていいか……?」



 暗い、月明かりだけが忍び込む部屋に、切ない溜息と密やかな水音が響く。

「……はぁっ、かぜま……る」

 ベッドの掛け布団は、はだけて足下に追いやられ、きれいに整えられていたはずのシーツは、掴んだ指がしわを寄せる。上に白のシャツだけの円堂は、己の股間の上で蠢く風丸の頭をそっと掴んだ。

「ん……」

 円堂の硬直したものを口に含みながら、風丸は目だけを上に向ける。舌先は細かな凹凸を捕らえて、ときに吸いつき、ときにねっとりと這い回った。

「も、やめろよ……。でちゃうから」

「んふっ」

 ちゅっと音をたてて唇で雁の部分を締めつけると、風丸は不思議そうな顔でやっと円堂のものから口を離した。指は硬く天を突き上げる肉の棒に絡めたままだ。

「出していいぜ。ぜんぶ、飲んでやるから」

 そっと親指で握ったままのものを擦りあげる。

「あ、ぅ。ダメだっ、そんなことできないって」

 円堂は上がる息を整えようとしながら、自分の下半身の上でかがみ込んでいる風丸を見た。着ていたものを全て脱ぎ捨てて、円堂の股間を指と舌で慰めている風丸の姿は扇情的で、四つん這いになった尻が暗闇の中で白く浮き上がっている。

 どうせならその尻のなかに欲望を注ぎ込みたい。甘く熱い唾液に塗れた風丸の口内にするのも、堪らなく心地よさそうに思えたが、それでは風丸自身を汚してしまいそうだった。

「なんでだ? 俺はお前に気持ちよくなって欲しいんだ。いいんだぜ? 口にしちゃっても」

「でもさぁ……」

「出せよ。構わないから」

 躊躇する円堂にふっと笑いかけると、風丸は再び手にしていたものを口に含んだ。絞るように握りしめ、舌を這わせ、唇で扱く。その強烈な刺激に、円堂は堪えきれなくなって、自分を絶頂に導く風丸の頭を、押さえつけるように掴んだ。

「うはっ! 風丸ぅ……! あーっ……!!」

 円堂の熱い欲の証が、風丸の口内で噴きあがる。びゅくびゅくと留まることを知らない熱は、風丸の喉を焼き尽くさんばかりだ。風丸は思わず嘔吐きそうになったが、ぐっとそこは堪えた。

「んっ、……ぐっ」

「大丈夫かっ?」

 くぐもった声を漏らす愛しい旧友を、円堂は気遣うが、だが風丸は苦笑いで応える。口元に手を当てると、白く濁り粘り気のあるものを少し吐きだす。

「いっぱい、出したな。俺、嬉しいよ。お前がこんなに気持ちよくなってくれて」

 風丸は手のひらに絡みつく、ねっとりとした液体を円堂に見せた。それは自分が風丸の口に放出したものだと思うと、気恥ずかしくなってしまい、円堂は縮こまって目を逸らした。そんな円堂を風丸はくすりと笑う。

「どうせ、口だけじゃ物足りないだろ? ちょっと待っててくれよ。今、準備するから」

「準備って、なにを?」

 胡座をかいて手でさりげなく股間を隠す円堂に対し、風丸はシーツの上で深くしゃがみこむと、先程の円堂のもので汚れた指を隠された両脚の付け根に差し入れた。

「んん……っ」

「なにしてるんだよ、風丸?」

 その仕草に一抹の不安を感じて、円堂は身を乗り出して風丸を見た。暗くてよく分からなかったが、カーテンの隙間から差し込んだ月明かりが風丸の紅潮した顔を照らした。

「み……、見てくれよ円堂。自分でも恥ずかしいけどさ。お前の出したやつ、俺のここにも入ってる」

 大胆にも風丸はベッドの上で大きく股を開くと、円堂の目のまえで普段隠された秘部を曝けだした。太腿の付け根の、ふたつの尻の丸みの間にある、狭い窄みを円堂が吐きだした液体が風丸自身の指で塗り込められていく。指が出入りする度に、風丸の息が甘く吐きだされ、腰が円堂を誘うように揺れる。

「か……、風丸……」

 乗り出して風丸に見蕩れる円堂の、股間の一度萎えたものが再び硬直していった。それを確認した風丸が嬉しそうに笑った。

「あ……はっ。円堂、俺のこんなカッコで勃ってるんだ」

 淫靡な行為に耽っている自分に魅入る円堂の視線が、風丸の肉体も精神をも高揚させてゆく。

 この指が、円堂自身ならどんなにか良いだろう……。

 想像するだけで、風丸の硬直したものの先端が濡れそぼり、窄みをほぐす指がきゅっと締めつけられる。

「あ……っ、んん」

 耐えきれず漏れる吐息、紅潮する肌。

 それを凝視している円堂がごくりと喉を鳴らした。

「なぁ……、円堂。俺のここに挿れたい?」

 指を蠢かしながら風丸が訊いた。くちゅりと淫雑な音が円堂の耳をくすぐる。

「う……、ん」

 物怖じ気味な円堂に、風丸の口角が上を向いた。膝をついてゆっくりと近づいてくる。

「遠慮するなよ。俺のここはいつだって円堂のものなんだから」

 空いた手の指先で円堂の額をつんと小突いた。

「今さら隠すなよ」

 風丸は股間を隠す円堂の手を取ると、ベッドの上に脚を投げ出すように座らせた。そして円堂の下半身に跨がる。

「ほら、円堂」

 既に天を向いている円堂の硬直したものを握ると、その先端を風丸がさっきまで解していた窄みに押し当てた。

「挿れたいよな……? 円堂」

 緩急をつけて握る風丸の指が、時にぐっと円堂の欲情でそそり立つものを鈴口まで押し込もうとする。円堂は思わず

「くぅ……っ!」

と声を絞り出した。

「いいんだぜ? いつでも。円堂が好きなだけ、したいだけ……ここを使えばいいんだから」

 先程風丸の口内に吐きだしたもので、そこはすっかり湿って、柔らかくなって円堂自身を誘う。入り口を滑らせるように腰を動かす風丸が、淫美な笑顔を向けた。

「円堂、挿れるよな?」

 互いの凹凸が、もっと深く触れあおうと滑る。円堂はまぶたを瞑ると、こくんと頷いた。

 風丸が紅潮した頬でにこりと微笑んだ。それを合図に、蠢く腰をゆっくりと円堂の股間に降ろす。

「うあ……っ!」

「あ……っ、え、円堂ぉ……!!」

 尻の間の狭い窄みを、ぎりぎりと円堂の硬く聳える肉の棒が貫く。

「あ……ぁ。ぅんっ……!」

 鼻先でくぅんと唸って、風丸は腰を落とし込むと、円堂のものをすっかり埋めこみ、両太腿の上に座った。

「は……。円堂……。俺の中、気持ちいいか?」

「か……かぜまる……!」

 円堂の息が荒くなっている。それを認めると、風丸は円堂の上で腰を揺すって蠢かした。

「気持ち、いいんだな? 嬉しいぜ。俺も……いい!」

 脚の上に跨がって、煽るように腰を動かす風丸を見上げ、円堂は荒く息を吐きだす。次第に、さっきまで薄ぼんやりとした瞳が輝きだした。

「風丸……ぅっ!!」

 円堂は風丸の蠢く腰を両手で捕らえると、繋がったまま上に跨がっていた体を逆に倒した。風丸の両脚を掴んで、肩口にぐっと押しつけると、繋がった箇所がベッドの上に露わになる。

「はっ、ぐぅ……っ!」

 風丸にとっては辛い姿勢になったが、自分を蹂躙しようとする円堂の瞳に陽の光が灯っているのを認めると、安堵の表情になった。

「それでこそ……円堂だよ!」

 円堂は思いのままに風丸の体を貪りだした。激しい抽送が高い極みに押し上げて、風丸は我を忘れた。

 互いの肌が互いを求める。風丸はぎゅっと円堂にしがみつき、悦楽に溺れる。円堂はこれでもかと、情熱を風丸に叩きつけ、そのしなやかな肉体を充分に味わった。

 宿舎の潮風が香る個室で、ふたりの交合は思いを尽くすまで続いた。



「あのさ……、風丸」

「……うん?」

 互いの情熱を交わし終えたベッドで毛布にくるまり、火照った体をすり寄せながら円堂は風丸に囁いた。

「俺、会ったんだ。じいちゃんに」

「えっ。そうか、やっぱり生きてたんだな」

 微笑みかける風丸に、円堂の声はぼそりと響く。

「じいちゃん今、……コトアールの監督やってるって」

「え……」

 小国コトアールのサッカーチーム、リトルギガントはフットボールフロンティア・インターナショナル決勝戦の相手だった。風丸は今日一日、円堂が浮かなかった訳をやっと理解した。

「そうだったのか……」

 円堂にとってそれがどんなにかショックだろうかは、風丸にもよく分かった。それはそれでも、円堂が自分だけに打ち明けてくれたのだと思うと、風丸は胸が熱くなる。

 円堂の、シーツに投げだされた手を取ると、自分の指をそっと絡めた。

「あのな、円堂。俺、お前とずっと一緒にいれて、良かったって思ってる。今まで色んなことあったよな。楽しいことも、苦しいことも……」

 風丸の脳裏に、自分が円堂を一度は裏切ってしまったことが思い浮かんだが、それは首を振って追い払った。

「でも、それはお前がいつも俺に希望をくれたからだよ。だから……俺、お前を支えてやりたいんだ。お前にとっては取るに足りないことかもしれないけれども……」

 円堂の太陽のように暖かい手のひらの熱を感じながら、風丸は滔々と話しかけた。

「俺、ちゃんとお前を支えてるかな? なぁ、円堂。お前どう思う……」

 ふと顔を覗き込むと、円堂は既に眠りに落ちていた。軽いいびきが風丸の耳元をくすぐっている。

「なんだ。寝ちゃったのかよ」

 風丸は不満そうに口を尖らせたが、すぐに思いなおして、円堂の胸の中に顔を埋めた。

「円堂……」

 そう、呟きながら。



 夏特有の強い朝の光が、宿舎の個室の中を照らしている。

 風丸はその光を浴びて、寝ぼけた頭で起き上がった。円堂のベッドに裸のままで潜り込んだまま、眠り込んでしまったのだと気がついて、思わず顔を赤らめる。

「おはよう」

 風丸が起きた拍子で円堂も目覚めたらしい。朝の挨拶を交わしながらも、風丸は慌てて床に散らばった自分のジャージをかき集める。

 朝の光は全てを照らし出すので、風丸は羞恥で思わず身を縮める。

「なんだよ、風丸。ゆうべ、あんなカッコで誘ったくせに」

「え、円堂! 言うなって!」

 ベッドで裸のまま胡座をかく円堂を思わず怒鳴りながら、風丸は急いで衣服を身に着けた。

「じゃ、じゃあ。俺、もう自分の部屋行くぜ。他のヤツに見られたらヤバそうだからな」

 部屋のドアノブに手をかける風丸に、円堂は呼びかけた。

「風丸、忘れ物」

「なんだよ?」

 円堂の元に戻りながら、忘れ物とはなんだろうと、風丸は首を捻った。

 ニカっとした笑顔で出迎えた円堂は、風丸の唇にちゅっと自分のそれを重ねると、囁いた。

「ずっと俺のそばにいてくれよ。風丸」

 思わず赤くなる頬を押さえながら、風丸は円堂の手をそっと握って返した。

「当たり前じゃないか……! 円堂」

 ライオコット島の朝の光がふたりを包み込んだ。


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ずっとそばに

キーワードタグ イナズマイレブン  円風  R18 
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1月2日の円風の日(背番号的に)に間に合わせたかったんだけど、無理だったブツでした。
どう見ても単なる風丸さん誘い受けです。
まあ、最終的に円堂が上位になるんですけどね!
時期的に3の最終戦前を想定。……脱稿現在では、アニメではまだですがw。
まあ、結局ふたりがラブラブならそれでいいんですけどね! って事で。
<2011/1/11脱稿>
ずっとそばに
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 夜空には数多もの星が満ちあふれていた。ここ、ライオコット島から見える空は日本で見られるのとは違う星座もあるし、なにより空気が澄みわたっているので、その眺めも格別だ。

「凄いな、円堂。見ろよ。星が落ちてきそうだぜ」

 手のひらを頭上に広げて、星空を見上げていた風丸は傍らで歩く円堂に話しかけた。

「なんか掴めそうなくらいだけど、やっぱり無理だな……」

 空を掴む仕草をしてみてから、そう言ってみて、思わずくすりと笑みを漏らす。

「なんて、自分でも可笑しいけどさ」

 夕食のあと、円堂に乞われるままにふたりきりで浜辺を歩く。満天の星に溜息を漏らしながらぽつりぽつりと話す風丸に対し、誘った当人の円堂は黙ったまま、歩くだけだ。

「気がついたらもう、決勝戦なんだよな。ここまで来れるなんて、正直、思ってもみなかったけどな。2年の最初の頃なんて、俺、まだ陸上部で、お前は7人きりのサッカー部だったのが、なんかすごく遠い昔の話に思える……」

 辛勝の連続ではあったが、フットボール・インターナショナルに初出場したイナズマジャパンはあれよあれよと言う間に、明後日には優勝を決める最後の試合に挑むことになっていた。

「ここに来たくらいの時は、稲妻町が恋しかったけど、もうすぐここを離れなきゃならない、って思ったら、名残惜しいぜ。円堂はどう思う?」

 いつの間にか、ひとり先を歩いていた風丸は、円堂の顔を追って振り返った。揺れるポニーテールの髪先が視界から消えると、円堂が俯いて立ち止まってるのに気がついて、はっと息を吐いた。夜のとばりは辺りを静けさで満たし、聞えるのは波の音だけ。潮風がふたりを包みこんで、胸の奥に冷たさを運んだ。

「……どうした? 円堂」

 立ちつくす円堂に駆けよって、俯く顔を覗きこんだ。だが暗闇が円堂の表情を隠していた。

「円堂……?」

 首を傾げた風丸が、もっとよく円堂を見ようと顔を近づけた瞬間、その体はぎゅっと強いちからで抱きしめられた。思わず

「あっ……!」

と声を上げるが、耳元でささやく円堂の声に、風丸は目を見開いた。

「『まもる』って呼べよ、『いっちゃん』……」

 いきなり言われた、昔の呼び名に風丸はたじろいだ。

「ど、どうしたんだよ。今さらガキの頃の名前で呼んで……!?」

 言葉に引きずられそうになったが、風丸はすぐに自分を抱きしめる円堂の違和感に気付いて、それ以上何も言えなくなった。

(円堂……。お前、震えてる……?)

 耳元で聞える、息遣い。触れあう、頬と頬。夜風で冷えた体は、次第に互いの体温で熱く変わる。けれども、体を抱く震える腕は不安だけを風丸に伝えた。

「……まもる」

 小さい頃に呼んでいた名前を思いきって口に出してみたが、何故だか妙に心がくすぐったくなる。

「ははっ。なんか、こそばゆいぜ。あのな、円堂」

 遠く、近く、瞳に映る星を眺めながら風丸は、円堂の背中に自らの腕を回した。

「今夜、お前の部屋に行っていいか……?」



 暗い、月明かりだけが忍び込む部屋に、切ない溜息と密やかな水音が響く。

「……はぁっ、かぜま……る」

 ベッドの掛け布団は、はだけて足下に追いやられ、きれいに整えられていたはずのシーツは、掴んだ指がしわを寄せる。上に白のシャツだけの円堂は、己の股間の上で蠢く風丸の頭をそっと掴んだ。

「ん……」

 円堂の硬直したものを口に含みながら、風丸は目だけを上に向ける。舌先は細かな凹凸を捕らえて、ときに吸いつき、ときにねっとりと這い回った。

「も、やめろよ……。でちゃうから」

「んふっ」

 ちゅっと音をたてて唇で雁の部分を締めつけると、風丸は不思議そうな顔でやっと円堂のものから口を離した。指は硬く天を突き上げる肉の棒に絡めたままだ。

「出していいぜ。ぜんぶ、飲んでやるから」

 そっと親指で握ったままのものを擦りあげる。

「あ、ぅ。ダメだっ、そんなことできないって」

 円堂は上がる息を整えようとしながら、自分の下半身の上でかがみ込んでいる風丸を見た。着ていたものを全て脱ぎ捨てて、円堂の股間を指と舌で慰めている風丸の姿は扇情的で、四つん這いになった尻が暗闇の中で白く浮き上がっている。

 どうせならその尻のなかに欲望を注ぎ込みたい。甘く熱い唾液に塗れた風丸の口内にするのも、堪らなく心地よさそうに思えたが、それでは風丸自身を汚してしまいそうだった。

「なんでだ? 俺はお前に気持ちよくなって欲しいんだ。いいんだぜ? 口にしちゃっても」

「でもさぁ……」

「出せよ。構わないから」

 躊躇する円堂にふっと笑いかけると、風丸は再び手にしていたものを口に含んだ。絞るように握りしめ、舌を這わせ、唇で扱く。その強烈な刺激に、円堂は堪えきれなくなって、自分を絶頂に導く風丸の頭を、押さえつけるように掴んだ。

「うはっ! 風丸ぅ……! あーっ……!!」

 円堂の熱い欲の証が、風丸の口内で噴きあがる。びゅくびゅくと留まることを知らない熱は、風丸の喉を焼き尽くさんばかりだ。風丸は思わず嘔吐きそうになったが、ぐっとそこは堪えた。

「んっ、……ぐっ」

「大丈夫かっ?」

 くぐもった声を漏らす愛しい旧友を、円堂は気遣うが、だが風丸は苦笑いで応える。口元に手を当てると、白く濁り粘り気のあるものを少し吐きだす。

「いっぱい、出したな。俺、嬉しいよ。お前がこんなに気持ちよくなってくれて」

 風丸は手のひらに絡みつく、ねっとりとした液体を円堂に見せた。それは自分が風丸の口に放出したものだと思うと、気恥ずかしくなってしまい、円堂は縮こまって目を逸らした。そんな円堂を風丸はくすりと笑う。

「どうせ、口だけじゃ物足りないだろ? ちょっと待っててくれよ。今、準備するから」

「準備って、なにを?」

 胡座をかいて手でさりげなく股間を隠す円堂に対し、風丸はシーツの上で深くしゃがみこむと、先程の円堂のもので汚れた指を隠された両脚の付け根に差し入れた。

「んん……っ」

「なにしてるんだよ、風丸?」

 その仕草に一抹の不安を感じて、円堂は身を乗り出して風丸を見た。暗くてよく分からなかったが、カーテンの隙間から差し込んだ月明かりが風丸の紅潮した顔を照らした。

「み……、見てくれよ円堂。自分でも恥ずかしいけどさ。お前の出したやつ、俺のここにも入ってる」

 大胆にも風丸はベッドの上で大きく股を開くと、円堂の目のまえで普段隠された秘部を曝けだした。太腿の付け根の、ふたつの尻の丸みの間にある、狭い窄みを円堂が吐きだした液体が風丸自身の指で塗り込められていく。指が出入りする度に、風丸の息が甘く吐きだされ、腰が円堂を誘うように揺れる。

「か……、風丸……」

 乗り出して風丸に見蕩れる円堂の、股間の一度萎えたものが再び硬直していった。それを確認した風丸が嬉しそうに笑った。

「あ……はっ。円堂、俺のこんなカッコで勃ってるんだ」

 淫靡な行為に耽っている自分に魅入る円堂の視線が、風丸の肉体も精神をも高揚させてゆく。

 この指が、円堂自身ならどんなにか良いだろう……。

 想像するだけで、風丸の硬直したものの先端が濡れそぼり、窄みをほぐす指がきゅっと締めつけられる。

「あ……っ、んん」

 耐えきれず漏れる吐息、紅潮する肌。

 それを凝視している円堂がごくりと喉を鳴らした。

「なぁ……、円堂。俺のここに挿れたい?」

 指を蠢かしながら風丸が訊いた。くちゅりと淫雑な音が円堂の耳をくすぐる。

「う……、ん」

 物怖じ気味な円堂に、風丸の口角が上を向いた。膝をついてゆっくりと近づいてくる。

「遠慮するなよ。俺のここはいつだって円堂のものなんだから」

 空いた手の指先で円堂の額をつんと小突いた。

「今さら隠すなよ」

 風丸は股間を隠す円堂の手を取ると、ベッドの上に脚を投げ出すように座らせた。そして円堂の下半身に跨がる。

「ほら、円堂」

 既に天を向いている円堂の硬直したものを握ると、その先端を風丸がさっきまで解していた窄みに押し当てた。

「挿れたいよな……? 円堂」

 緩急をつけて握る風丸の指が、時にぐっと円堂の欲情でそそり立つものを鈴口まで押し込もうとする。円堂は思わず

「くぅ……っ!」

と声を絞り出した。

「いいんだぜ? いつでも。円堂が好きなだけ、したいだけ……ここを使えばいいんだから」

 先程風丸の口内に吐きだしたもので、そこはすっかり湿って、柔らかくなって円堂自身を誘う。入り口を滑らせるように腰を動かす風丸が、淫美な笑顔を向けた。

「円堂、挿れるよな?」

 互いの凹凸が、もっと深く触れあおうと滑る。円堂はまぶたを瞑ると、こくんと頷いた。

 風丸が紅潮した頬でにこりと微笑んだ。それを合図に、蠢く腰をゆっくりと円堂の股間に降ろす。

「うあ……っ!」

「あ……っ、え、円堂ぉ……!!」

 尻の間の狭い窄みを、ぎりぎりと円堂の硬く聳える肉の棒が貫く。

「あ……ぁ。ぅんっ……!」

 鼻先でくぅんと唸って、風丸は腰を落とし込むと、円堂のものをすっかり埋めこみ、両太腿の上に座った。

「は……。円堂……。俺の中、気持ちいいか?」

「か……かぜまる……!」

 円堂の息が荒くなっている。それを認めると、風丸は円堂の上で腰を揺すって蠢かした。

「気持ち、いいんだな? 嬉しいぜ。俺も……いい!」

 脚の上に跨がって、煽るように腰を動かす風丸を見上げ、円堂は荒く息を吐きだす。次第に、さっきまで薄ぼんやりとした瞳が輝きだした。

「風丸……ぅっ!!」

 円堂は風丸の蠢く腰を両手で捕らえると、繋がったまま上に跨がっていた体を逆に倒した。風丸の両脚を掴んで、肩口にぐっと押しつけると、繋がった箇所がベッドの上に露わになる。

「はっ、ぐぅ……っ!」

 風丸にとっては辛い姿勢になったが、自分を蹂躙しようとする円堂の瞳に陽の光が灯っているのを認めると、安堵の表情になった。

「それでこそ……円堂だよ!」

 円堂は思いのままに風丸の体を貪りだした。激しい抽送が高い極みに押し上げて、風丸は我を忘れた。

 互いの肌が互いを求める。風丸はぎゅっと円堂にしがみつき、悦楽に溺れる。円堂はこれでもかと、情熱を風丸に叩きつけ、そのしなやかな肉体を充分に味わった。

 宿舎の潮風が香る個室で、ふたりの交合は思いを尽くすまで続いた。



「あのさ……、風丸」

「……うん?」

 互いの情熱を交わし終えたベッドで毛布にくるまり、火照った体をすり寄せながら円堂は風丸に囁いた。

「俺、会ったんだ。じいちゃんに」

「えっ。そうか、やっぱり生きてたんだな」

 微笑みかける風丸に、円堂の声はぼそりと響く。

「じいちゃん今、……コトアールの監督やってるって」

「え……」

 小国コトアールのサッカーチーム、リトルギガントはフットボールフロンティア・インターナショナル決勝戦の相手だった。風丸は今日一日、円堂が浮かなかった訳をやっと理解した。

「そうだったのか……」

 円堂にとってそれがどんなにかショックだろうかは、風丸にもよく分かった。それはそれでも、円堂が自分だけに打ち明けてくれたのだと思うと、風丸は胸が熱くなる。

 円堂の、シーツに投げだされた手を取ると、自分の指をそっと絡めた。

「あのな、円堂。俺、お前とずっと一緒にいれて、良かったって思ってる。今まで色んなことあったよな。楽しいことも、苦しいことも……」

 風丸の脳裏に、自分が円堂を一度は裏切ってしまったことが思い浮かんだが、それは首を振って追い払った。

「でも、それはお前がいつも俺に希望をくれたからだよ。だから……俺、お前を支えてやりたいんだ。お前にとっては取るに足りないことかもしれないけれども……」

 円堂の太陽のように暖かい手のひらの熱を感じながら、風丸は滔々と話しかけた。

「俺、ちゃんとお前を支えてるかな? なぁ、円堂。お前どう思う……」

 ふと顔を覗き込むと、円堂は既に眠りに落ちていた。軽いいびきが風丸の耳元をくすぐっている。

「なんだ。寝ちゃったのかよ」

 風丸は不満そうに口を尖らせたが、すぐに思いなおして、円堂の胸の中に顔を埋めた。

「円堂……」

 そう、呟きながら。



 夏特有の強い朝の光が、宿舎の個室の中を照らしている。

 風丸はその光を浴びて、寝ぼけた頭で起き上がった。円堂のベッドに裸のままで潜り込んだまま、眠り込んでしまったのだと気がついて、思わず顔を赤らめる。

「おはよう」

 風丸が起きた拍子で円堂も目覚めたらしい。朝の挨拶を交わしながらも、風丸は慌てて床に散らばった自分のジャージをかき集める。

 朝の光は全てを照らし出すので、風丸は羞恥で思わず身を縮める。

「なんだよ、風丸。ゆうべ、あんなカッコで誘ったくせに」

「え、円堂! 言うなって!」

 ベッドで裸のまま胡座をかく円堂を思わず怒鳴りながら、風丸は急いで衣服を身に着けた。

「じゃ、じゃあ。俺、もう自分の部屋行くぜ。他のヤツに見られたらヤバそうだからな」

 部屋のドアノブに手をかける風丸に、円堂は呼びかけた。

「風丸、忘れ物」

「なんだよ?」

 円堂の元に戻りながら、忘れ物とはなんだろうと、風丸は首を捻った。

 ニカっとした笑顔で出迎えた円堂は、風丸の唇にちゅっと自分のそれを重ねると、囁いた。

「ずっと俺のそばにいてくれよ。風丸」

 思わず赤くなる頬を押さえながら、風丸は円堂の手をそっと握って返した。

「当たり前じゃないか……! 円堂」

 ライオコット島の朝の光がふたりを包み込んだ。


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