ひだかみゆき

超次元サッカーの元陸上部大好きマンです。

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投稿日:2016年05月24日 16:23    文字数:11,263

サテライト

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サイトから再掲。
24歳豪風アダルトえろです…。
イナギャラ設定なので色々当時の不満がちらほら…w

以下は当時のあとがき。

豪風の日、ということで久々にがっつりエロで書いてみました~。
しかも、24歳同士ということで、大人キャラのエロはもう数年ぶりですw。
小説の方も丸1年ぶり以上だったりしますので、ここ最近がどんだけ純情?だったかというw
今回、風丸さんには色々と、原作の展開について代弁していただきました。いやまぁ…。不満はほんの数点なんですけどねー。
劇中ではギャラクシーで天馬たちが地球を旅立ったあとのお話です。
この風丸さんは、豪炎寺にしか恋心を抱いてないので、彼ひとすじです。
折角の豪風の日ですので、こんなふたりも良いですよね!
<2013/10/2脱稿>
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 勝利を讃える歓声がスタジアムを包む。見事なプレーでサポーターを魅了した選手たちが、観客席に向かって応える手を振った。
 ことに、勝ち点をあげたシュートを撃ったストライカーが諸手を挙げると、観客たちが大声で彼の名を呼んだ。彼は、すぐそばに居たディフェンダーの背中を叩き、肩を組むと嬉しそうに笑った。
「サンキュー、風丸! お前のスルーパスのお陰だ」
 すると、観客席から黄色い声が響く。ストライカーはにやりとウインクした。
「相変わらずモテモテだな」
 風丸は苦笑いして肩をすくめた。


 勝利の余韻に包まれたロッカールームは、いつにも増して選手たちの明るい声で騒がしい。風丸が着替えていると、中学の頃からの後輩が声をかけてきた。
「風丸さ~ん。フロントから話があるらしいっすよ?」
 壁山が巨体を揺すりながら、抱えていた子供たちからのファンレターが入った紙袋をベンチシートに置く。
「ああ、ありがとう。壁山」
 自分にもファンからの、手紙やプレゼントだろうか……試合のときは大抵そんな類いのものが贈られる……と思って、風丸はジャージに袖を通すと、スタジアム内に設けられた関係者室へ向かった。
「これからサッカー協会の関係者と会食だって?」
 チームのジェネラルマネージャーから風丸に告げられたのは、予想もしてなかった夕食の招待だった。今日はデーゲームだとはいえ、いきなり過ぎる。
「アポなしでそんな……」
「風丸さん、予定でもあるんですか?」
「いや、ないけど」
 風丸が訝しむと、マネージャーがスケジュール用の端末を指先で繰りながら尋ねる。
「どうしても風丸さんを、とのご指名です」
「今日じゃなきゃダメなのか?」
 正直、試合のあとはそれなりに疲れを癒したい。夕飯を食ったら早々に寝るつもりだった。
「先方はお忙しい方なので」
「どこのお偉いさんだよ……。わざわざ俺なんかを呼びつけるなんて」
「中学サッカー協会の会長さまです」
 マネージャーの口から出た名前に、風丸は呆気に取られた顔をした。
 風丸がタクシーで乗り付けたのは、都内でも超一流のホテルだ。夕闇に厳しく構えた建築物がそびえている。
 ベルボーイの案内でホテルフロントへ行くと、風丸の名を伺っただけですぐさまレストランへ向かうよう示された。
 このホテル自体もそうだか、直営のレストランも名だたる有名店だ。気軽には入れない格式ある店である。
 道理で……な。
 予め風丸はマネージャーから、先方から、と渡されたスーツ一式に身を包んでいる。ジャージのままでは、ドレスコードに引っかかるのは目に見えていた。
 用意万全、ってことかよ。
 風丸は軽く溜息つくと、案内のホテルマンのあとをついて行った。
 エレベーターに乗り、10何階かのフロアに降り立った。ふかふかの絨毯が疲れた足に心地いい。
 レストランの奥、全面ガラス張りのラウンジ席に、この招待を催したあるじが席についていた。
 テーブルの真向かいの席を薦められ、役目を終えたホテルマンがやっと持ち場へ帰ると、風丸は苦虫を噛み潰した顔で、招待主を睨めつけた。
「どういうつもりだよ? 豪炎寺」
 豪炎寺は風丸の言葉に臆することもなく、和かに笑いかける。
「ようこそ。お忙しいところをわざわざ訪ねて頂き、ありがとうございます」
「そういう茶番はやめろよ」
「一応これはビジネスなんだ。……私は中学サッカー協会会長として、君をお招きした。今はそのように振る舞っていただきたい」
 会長として、威厳ある態度を豪炎寺は崩さない。風丸は呆れ顔のまま、腕組みした。
「こちらで用意したスーツがお体に合わなかったらと危惧していたのですが……」
 淡いモスグリーンの上下は、風丸に誂えたようにぴったりで、特徴的な蒼く長い髪が見事に映えていた。豪炎寺は風丸の姿を確認すると、目を細めて微笑んだ。
「似合ってるぞ、風丸」
「馬鹿野郎」
 風丸は小声で罵る。
「大体、俺は……」
 風丸の続く言葉は、高級シャンパンを給仕しにやってきたソムリエによって妨げられた。淡い黄金色のシャンパンが高さのあるグラスに注がれる。爽やかな発泡音が耳をくすぐった。
「では今夜は、君のチームへの貢献による勝利を祝して」
 豪炎寺はシャンパンで満たされたグラスを高々と掲げると、乾杯を促した。渋々、風丸もグラスをあげる。ふたつのグラスが軽く当てられた。
 風丸は乾杯を終えると、躊躇なく注がれたシャンパンを飲み干した。空のグラスを不満げに置く。
「お気に召しませんか?」
「当たり前だ」
 頬杖をついた風丸に、豪炎寺はほくそ笑むと肘をついて両手を組み合わせた。
「こういう堅苦しいのは嫌いだ。お前も知ってるだろ?」
「風丸」
 風丸が先ほど言い残したことを聞いて、豪炎寺はにやりと笑った。
「一流の人間にはそれなりの環境が相応しい。着るもの然り、料理然り、酒も然り。君も一流のプレイヤーなら、それなりのものが必要だろう?」
「お前は会長だから、仕方ないけどさ」
「君にはとても良く似合ってる。その格好もこの場所も」
 はあ……と風丸は溜息をつく。
「で、何の用ですか。中学サッカー協会会長サマ?」
 テーブルに運ばれてきた前菜をぞんざいに口に運びながら、風丸は訊いた。豪炎寺が苦い顔で笑う。
「一流プレイヤーの君に、有力な中学チームの何校かにティーチングをお願いしたい」
「俺は人に教えられるほどじゃないけど……」
「風丸選手に来てもらう、それだけで生徒たちは大喜びだよ。なあに……君は子供たちと楽しくサッカーで遊んでもらうだけで良い」
「お気楽だな」
 風丸は生ハムを咀嚼しながら尋ねる。
「どこの学校だよ? 俺のスケジュールも考えてくれ」
「分かっている。そう遠い所ではないさ。まず帝国学園、木戸川静修中学、雷門中学……」
「おい」
 風丸は眉をひそめた。
「それはまるで……」
「だから“有力な”チームのある学校と」
 思わず鼻で嗤った。
「イナズマジャパンに漏れた奴らを慰めようって魂胆か」
「今は『アースイレブン』だ」
「どっちでもいいけど」
 正式な呼称なんて、この際どうでも良いのだ。
「致し方あるまい。今回漏れた選手たちには資格がなかった」
「獣の力……ねえ」
 新たに注がれたシャンパンを再び飲み干して、風丸は空のグラスを弄ぶ。
「残念なことだが、彼らにはもっと相応しい場所があるだろう」
 中学生サッカー世界大会と称された、FFIV2(フットボールフロンティア・ インターナショナルビジョンツー)。だが、真実は銀河を股にかけた、居住権を賭けた宇宙人たちの覇権戦争だった。風丸の後輩である、松風天馬たちは今、その争いに巻き込まれている。獣の力は、その闘いに必要不可欠なのだ。
「……黒岩監督からは、今回漏れた少年たちにその力は所有してないと言われたのだ」
「それが一番気に食わない」
 むっとした顔で風丸は言う。
「死に損ないのクセして」
 影山零次。それが黒岩の正体だった。10年前に死んだはずの影山は、未認可の薬品のお陰で一命を取り留めていた。そののち黒岩流星と名を変え、ひっそりと隠遁生活を送っていたらしい。
「今更どのツラ下げて、のこのこサッカー界に戻ってきやがったんだ」
「致し方あるまい」
 豪炎寺は苦笑いで首を横に振る。
「獣の力は彼にしか視えないのではな」
「豪炎寺!」
 風丸は目の前に置かれたメインディッシュも目にくれずに、豪炎寺をきっと睨んだ。
「お前、分かってるのか。あいつはお前の妹を殺そうとしたんだぞ? 夕香ちゃんだけじゃない。円堂のおじいさん……大介さんや、雷門の親父さん。俺たちだって、あのとき全員死んでいたかも知れない」
 帝国学園の総帥だった影山は、己の監督するチームを常勝させるため、数十年ものあいだ、数多の命を脅かせていたのだ。その暗躍に、豪炎寺や円堂が幾度も翻弄されたのを風丸は知っている。それだからこそ。
「なんで、あいつの言うことなんか素直に聞いてやがるんだよ……」
 風丸のきつい視線を受けて、豪炎寺はだが、静かに微笑んだ。
「そういう顔、ファンには見せない方が良い」
「してるわけないだろ」
「そうか? お前は意外と考えてることが顔に出る。……そう。そう言えばこのあいだお前がゲストに呼ばれたトーク番組で……」
「あ、あれは」
 豪炎寺が言っているのは、著名な大女優がホストをつとめる番組に風丸がゲストに呼ばれた時の話だ。トーク中に中学時代のVTRが流れ、あろうことか大女優はその風丸を
「まぁ~。可愛らしい!」
と、のたまった。風丸が閉口したのは言うまでもない。
「……『女の子みたい』って言われて、喜ぶ男がどこの世界にいるんだよ」
 ぶーたれた顔をする風丸に、豪炎寺は思わず噴き出した。
「笑い事じゃねえよ。とにかく、俺はあいつのことなんか認めないからな」
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 夜の帳がおりた都心は、ネオンの光が街を彩る。ガラス張りのレストランから真下を伺うと、華やいだ雰囲気に満ちていた。天空を見上げると満天の星が煌めく。だが空気の住んだ今頃なら、明るい月が優しく照らしている筈なのに、その姿は視えない。ある筈のその空間は、暗い闇がぽっかりと空いている。
 地球の衛星は、ひとりの宇宙人によって見えなくなってしまっていた。
「……変わったよな、豪炎寺は。10年前のお前はもっと、正義感が強くて真摯だった」
 昨日のことのように思い出す。
 ゴールを守る太陽のような円堂と、その熱い光を受けて輝いている豪炎寺。円堂に惹かれて雷門中学サッカー部に入った豪炎寺は、言わば太陽と惑星のようだった。風丸は円堂から受けたボールをドリブルで突破して、前線の豪炎寺に繋ぐ。自分があげたパスを豪炎寺がシュートする。それが風丸にとっては、途轍もない喜びだった。
「風丸。いつまでも子供のままではいられないぞ」
「どんな手段でもためらわずに事を運ぶ、って言うんなら、俺はそんな大人はなりたくないな……」
 風丸は月の無い夜空から視線を逸らすと、豪炎寺をじっと見つめた。豪炎寺は口を固く結んで風丸を伺っている。風丸は何度目かの溜息をつくと、肩をすくめる。
「分かった。ティーチングの件、受けるよ」
「ありがたい。感謝致します。……少ないですが、ギャランティーの方を幾らか支払わせていただきたいのですが」
「要らないぜ、そんなもの」
 きっぱりと風丸は答える。
「では、チャリティーと言うことで、有効に使わせて貰います」
「ああ、頼む」
 風丸はボーイを呼ぶと、ワインのおかわりを頼んだ。ワイングラスに赤紫色のシャトー・オー・ブリオンが注がれる。シャンパンの瓶は既に空になっており、ボルドーの最高級ワインももう残り少ない。
「呑み過ぎじゃないのか?」
「こんなんで酔えるワケないだろ」
「勝利の美酒が台無しだな」
 水代わりのようにワインでメインディッシュを流し込む風丸を、豪炎寺は案じた。
「それくらいにしておけ。上の部屋を取ってあるから、そこで呑み直すと良い」
 豪炎寺の提案に、風丸は酒で火照りながらも呆れた顔をした。
「へぇ……。サッカー協会会長様にとっちゃ、高級ホテルのスイートもラブホテル代わりかよ」
 軽口に、豪炎寺が鼻先で笑う。
「おや。お前はピンクの内装で回転ベッドのある部屋が良かったか? それとも全面鏡張りの……」
「そんなこと言ってねぇよ!」
 風丸の不機嫌は最高潮に達してる。顔が真っ赤になのは、怒りの所為かそれとも酩酊なのか。だが、言ってしまってから、この場所がどういう所なのかを思い出し、風丸は居住まいを正すと軽く咳払いした。
 店内は軽やかなピアノのBGMにナイフとフォークが奏でる音が彩りを添え、密かな会話が流れている。
「……俺はただ、悔しいだけだ」
 風丸は、まだ半分残った皿を下げてしまった。


 ふたりで過ごすには幾らか広すぎるホテルの部屋は、品の良い家具や調度品で飾られている。風丸は最高に座り心地のいいソファに体を預けていた。
「酔いは覚めたか?」
 豪炎寺がミネラルウォーターを注いだグラスを渡した。風丸は受け取ると、一気に仰ぐ。上等のスーツはボタンを外され、ネクタイは緩められている。豪炎寺は風丸の手からグラスを取り上げると、機嫌を伺った。
「ビール。それか、なんか酒」
「もう、やめておけ。お前は弱い方だろ」
「呑み足りねぇよ」
 明らかに駄々をこねてる様子に、豪炎寺は首を傾げた。
「今のお前をファンが見たら泣くぞ」
「いい。どうせ俺は強くないよ」
 風丸は赤く染まった鼻を手で抑えて、悔し気に言う。
「体質的なものだ。仕方がないだろう」
「酒の話じゃなくて……」
 つい、口から出る言葉に湿っぽいものが混じりはじめたが、もう風丸には止める術が見い出せない。
「ダメなんだよ。俺はみんなが思ってるほど、しっかりなんかしてない」
 両手で目元を覆う。豪炎寺からは風丸の口元しか見えなくなった。
 大人のくせに風丸がこんな振る舞いをしてたら、豪炎寺は困るだろう。そう心の片隅で理解はしていたが、酒の力は思っている以上に、風丸を弱くさせていた。
 ああ、本当にダメだ。こんなんじゃ。
 気を取り直そうと頭を振ると、豪炎寺が背中に腕を回してきた。
「分かった。お前の気が済むまで呑ませてやる」
 一瞬、互いの顔が極限まで近づいた。口づけされるかと思ったが、直ぐに豪炎寺はソファから立ちあがる。思わず豪炎寺を止めた。
「いや、やっぱりいい」
 離れようとする豪炎寺を止める自分が、情けないくらい子供っぽく感じた。
「そうか」
 豪炎寺はそう言って、テーブルに置かれたミネラルウォーターのボトルに手を伸ばした。
「では、水だ」
 素直に頷いた。グラスに注がれた水を飲み干すと、思いのほか頭がしっかりしてきた。
「ありがとう」
 グラスを返すと、その手がぎゅっと握られた。もう片方の手も豪炎寺に握られ、風丸は戸惑う。触れ合った肌と肌から、じわりと互いの熱が伝わっていく。
「あ……」
 豪炎寺の漆黒の瞳がじっと風丸を見つめてる。思わずたじろいだ。クッションを背にソファに横たわっていた風丸の上に、豪炎寺が覆いかぶさっている。白い天井が見える。ダウンライトは仄かに自分たちを照らしてる。己の体内が、豪炎寺に見つめられただけである種の変化を起こした。身体中の血液が中心に集まるのが分かる。思わず、顔を背けた。
 風丸がそっぽを向くと、豪炎寺はそっと両手を離した。ソファに片膝をついていたのも、体を起こして床に立ったので、風丸は不審に思った。
「俺はもう少し呑みたい気分だ」
「そ……そう」
 ひどく情けなくなる。もどかしくて、風丸も重くなる体を起こす。
 用意してあったんだろう、酒瓶とアイスペールをテーブルに持ってくると、豪炎寺は自分のぶんの水割りを作った。スーツ姿でグラスを傾けてる豪炎寺は、風丸にとって見知らぬ大人そのものだった。
「お前もやるか?」
 豪炎寺が尋ねたが、風丸は気だるそうに首を振る。
「……豪炎寺、あの」
 暫くの間、ふたりは無言だったが、沈黙に耐えきれなくなったのか、風丸はおずおずと口を切った。
「お前、いつになったらフィールドに戻るんだ?」
 風丸の言葉に、豪炎寺は目を伏せる。
「俺にはまだやらなくてはならないことがある」
「もう……いいだろ。お前は良くやったよ! フィフスセクターの尻拭いは、未来を救ったことで報われたんじゃないか。だから」
 ほんの数ヶ月前、200年も先の未来から時空を混乱される事件があった時のこと、豪炎寺は巻き込まれた少年たちのために奔走して手を尽くしていたのだ。だがそれは、豪炎寺にとって元のプロリーグの選手へ戻る時間を先延ばしにしなければならない苦難の日々だった。
「だが俺は、天馬たちに重荷を背負わせた」
 苦し気に豪炎寺は首を振る。
「で、でも」
「あの空を見ろ」
 豪炎寺が指差したのは、窓の外、月の視えない夜空だ。
「月が消えたのは、俺の所為だ。あの月が元に戻らない限り、俺の罪は消えない」
「そんな……!」
 風丸は豪炎寺の背中に頭を押しつけて、嘆き声をあげた。肩が震える。
「俺は、彼らを信じて待つしかない。それまではできる限りの手を尽くす。その間は戻るつもりはない」
 きっぱりと言う豪炎寺に、風丸は涙声でクッションに体を投げ出した。
「円堂もお前もいないサッカーなんて、つまらないよ……。俺はいつまでピッチで待ってればいいんだ?」
「すまない」
 豪炎寺はただ、それだけを返す。
風丸の口から嗚咽が漏れた。鼻の奥がつんと痛むので、指で抑える。
「でも、今日はお前が来てくれたから、嬉しかった。お互いスケジュールが合わないからな。……お陰で良い酒が呑めた」
 グラスを片手に豪炎寺が振りかえる。その笑顔は途轍もなく優しい。
「まだ、気分は良くなさそうだな。ベッドで休んだ方がいい。今日は試合のあとだ。疲れを癒せ」
 笑顔を崩さないまま、豪炎寺は風丸の髪を愛おしそうに撫でると、そう囁いた。
「豪炎寺……」
 ぼんやり気味だった頭が、霧が晴れたように明快になる。この笑顔を見てやっと、風丸は安堵した。その刹那。
 俺は……、俺はまだ!
 風丸は慌てて立ちあがる。一瞬足元がふらついたので、豪炎寺が支えてくれた。
「大丈夫か?」
「まだだろ? お前まだ肝心なことしてないだろ!?」
 風丸は訴えたが、豪炎寺は首を傾げてる。むっとすると、風丸はスーツを脱ぎ捨てシャツのボタンを全部外した。緩められたベルトも外してしまうと、ズボンを下ろした。ひやりとした空気と羞恥に、顔を赤らめたが風丸は構わずシャツの前を開けて、股間を豪炎寺に見せつけた。
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 シャツの下は、隠すものが最低限の布地しかない、薄手の下着しかなかった。しかもそれは、左右の脇が二組の細い紐だけで前後を繋ぎ止めていた。
「スーツと一緒にこれがあった時、正直呆れたよ」
 きわどい下着姿の風丸を見て、豪炎寺の目が丸くなる。だがすぐに、細くなった。上弦の月のように。
「人に下着を贈る時は……脱がせる為だって聞いたぜ」
 豪炎寺が笑って頷く。
「ああ、お前に着て欲しかった」
「悪趣味だな」
 軽口を叩いたものの、風丸は右の腰を豪炎寺に向けた。
「ん」
「なんだ?」
「脱がせるんじゃないのか?」
 風丸の肌は、酔いの為でなく羞恥で真っ赤になっている。
「ああ……」
 豪炎寺の指が、極薄の生地の上をなぞる。既に盛り上がっている隆起を撫でられ、風丸はうめいた。
「……っ、はぁ」
 爪の先で最も敏感な部分をくすぐられると、甘い吐息が漏れる。
「はち切れそうだな」
「……焦らすなよ」
 風丸が睨むと、豪炎寺がにやりと笑った。
「欲しいのか?」
「ああ、欲しいよ! お前が欲しくて欲しくて……疼いてる」
 切羽詰まった風丸の声は、涙で濡れていた。
 豪炎寺は背後に立つと、風丸の声を機会に右のストラップを外す。プチンと音を立てて、紐が肌の上に垂れる。頼りなくなった生地が、風丸の隆起した股間を支えきれなくなって、充血したものが溢れた。
「あ……うぅ」
 豪炎寺の右手がしっかりとそれを支えた。重量のある双球をもみ解す。右手で風丸の股間を弄びながら、豪炎寺は残った左側のストラップも外してしまった。頼りない僅かな布地が、床に落ちる。
「早くくれよ。ちゃんと綺麗にしてあるから……」
「ああ」
 充血して反り返ったものを左手に持ち替え、豪炎寺は右手を風丸の滑らかなふたつの曲線の間に潜らせた。豪炎寺しか知らない風丸のそこは、指で突くだけですんなりと受け入れた。巧みに充分に拡げると豪炎寺は立ったまま、既に堅くそびえていた己自身を風丸の熱いそこへ押しあてた。
「……あっ! んん……!」
 風丸のそこは豪炎寺をじんわりとした熱で誘い込む。
「そんなに俺が欲しかったのか」
 背後から囁く豪炎寺の声も、熱くなっていた。
「俺は、お前以外……何も欲しくない……!」
 贅沢な衣服も、高級な酒も、豪華な食事も、豪勢なベッドも、いらない。ただ、豪炎寺が、彼自身だけが欲しい。
 久し振りの逢瀬は、ふたりを激しく突き動かした。互いに絡み合い、互いに感じさせていた。眩暈がしそうなくらい、激しい抽送に風丸は立っていられなくなり、ソファの背に手をついて凭れた。
 まぶたを閉じて、快楽に身を任せて絶頂が訪れるのを待っていると、不意に豪炎寺の動きが止まった。
「あ……?」
 戸惑いながら振りかえると、豪炎寺が苦笑いする。
「ここで終えると、後始末に困るな」
 ずるりと、風丸の肉体を穿っていたものが引き抜かれる。その熱が離れるのが口惜しい。
 豪炎寺は風丸の背中と膝裏に両手を滑り込ませると、そのまま抱きかかえた。
「お、おい!」
「お楽しみはこれからだ」
 風丸は今更ながら恥じらったが、豪炎寺は抱きかかえたまま、バスルームへ連れて行く。風丸に着せた上等のシャツを剥ぎ取ると、自身も着ているものを脱ぎだす。互いが一糸纏わぬ姿になると、風丸を扉の奥に押し込んだ。
 スイートルームの風呂場は、内部もやはり広々としている。陶器でできたバスタブは猫脚で支えられている。
「へえ……」
 風丸が感心していると、豪炎寺がシャワーのコックを捻る。少しぬるめの湯が、汗ばんだ肌を洗い流した。
「覚えているか? 前はよく、こうしてシャワーを浴びながらしたものだ」
 豪炎寺の意図を風丸は飲み込んだ。
 風丸と豪炎寺が今のような仲になったのは、高校入試の合格発表の日。それまで、互いに好意を持ってはいたが、まさかこんなことをするようになるとは、思いもしなかった。
 桜の花びらが舞う鉄塔広場で告白され、なんとなくだがそれを受け入れた。円堂とは周りが羨むほどの仲だったが、豪炎寺に対しては全く違う想いを持っていた。それが、恋情だと気づいたのは付き合うようになってからだった。
 同じ高校に合格した日に付き合いはじめ、そのほんの少しのあいだ、入学式の頃にはもう風丸は豪炎寺のものだった。円堂も同じ高校で、風丸と豪炎寺と一緒にサッカー部に入った。中学のころとあまり代わり映えのない日々だったが、唯一違ったのは、練習が終わるとふたりきりで過ごすことが多くなったことだ。たまにロッカーやシャワールームで、誰にもみつからないよう、こっそり体を重ねた。
 バスルームは、壁の一面がガラス張りでできている。豪炎寺は備え付けのアメニティからボディソープを取ると、まだ堅く反り返ってる己のものに塗りたくった。
 豪炎寺の裸を見るのは、久し振りだったが、その逞しい肉体は以前と全く変わらない。風丸は惚れ惚れと、豪炎寺を眺めた。
 ああ……。豪炎寺が欲しい……。
 風丸はタイルのある壁に凭れると、右の太腿を上げてバスタブの縁に足を乗せる。普段隠された窄みが、灯りの下に曝けだされる。
「来いよ、豪炎寺」
 風丸が、さっきまで豪炎寺のもので充分に慣らされた秘穴を、指で拡げて誘う。豪炎寺は頷くと風丸の腰を掴み、そして己の充血した男根で穿った。
「んっ。……くぅ……」
 風丸自身の重みで、豪炎寺のものは根元までずぽりと挿入された。体をちゃんと支えていられなくて、風丸は両腕を伸ばすと、豪炎寺にしがみついた。下から突き上げられるたびに、風丸の体は豪炎寺の上で踊った。鼻にかかる喘ぎ声が、甘く豪炎寺の耳元をくすぐる。その都度、気持よさそうに吐息で返してくる。どうしようもなくなって、口づけし、互いの舌を絡み合わせた。
 先に、風丸が絶頂を迎えた。きゅっと締めつける風丸のそれを愉しみながら、豪炎寺は内部に熱い迸りをぶちまけた。
「……ああ!」
「すまん……。中に出した」
 悪びれた顔で豪炎寺は、風丸を穿つ肉棒を引き抜く。白濁した粘液が滴り落ちて、風丸の股を汚した。
「綺麗にしてやる」
 シャワーヘッドを掴むと、湯で丹念に流しながら豪炎寺はぶちまけた精液を掻きだす。風丸のまだ熱いそこは、指を差し入れると絡みついて締めつけてくる。豪炎寺は密かに笑った。
「お前はまだ、やり足りなさそうだな」
「……当たり前だろ。いくら待たせたと思ってるんだ」
 上気した頬で、風丸も笑う。ひどいくらいに妖艶な笑みだった。
「そんな顔……とてもファンには見せられないな」
「言っとくけど、お前にだけだぜ?」
 シャワーで清めると、今度はベッドに場所を移した。
「再戦だ。お前が満足するまでやってやる」
 挑戦者の目で、豪炎寺は囁く。
 風丸はもう酔いから醒めていたが、今は違うもので酩酊していた。豪炎寺はたっぷり時間をかけて、風丸の肌という肌に口づけを落とし、撫でさすり、指で摘まみ上げた。愛撫のたびに風丸は喘ぎ、口づけを返し、足を絡める。終いにはじれったくなって、豪炎寺の勃起しているものを掴み、赤く充血している窄みに自分から押し宛てる。風丸のそこはひくついて、もう堪らなくなっていた。
「くれよ。早くぅ……くれよ……!」
「仕方のない奴だ」
 苦笑いすると、豪炎寺は極限まで両股を開かせ、風丸の奥底を目指し、ずんと男根を突き立てた。
「んふっ! はぁ……!」
 満足そうに風丸が微笑んだ。充実した豪炎寺のものを、体内で堪能する。じわじわと圧力をかけると、豪炎寺が口を噛みしめる。
「く……っ。やるな」
 豪炎寺が再び、風丸の上で抽送を始める。互いの肌が汗ばんで、滑りはじめた。だが体はしっとりと馴染む。豪炎寺の体は風丸のもので、風丸の体は豪炎寺のものだった。体の何処が一番感じるか、解っているのはふたりだけだった。幾度も体位を変え、体を絡ませあう。
 ふたりの攻防は拮抗していたが、豪炎寺が風丸の一番弱い部分を攻めたてると、途端に陥落した。あっけなく風丸は達する。だが、豪炎寺はまだ、風丸の中で硬直を保っていた。
「どうした風丸。もうイったのか? 俺はまだ足りないぞ」
「くっ……」
 悔し気に風丸は豪炎寺を煽ろうとしたが、絶妙に感じる箇所ばかりを攻撃される。
「あ……、うっ。ご、豪炎寺……。こんな……」
「風丸……。お前は、俺だけの、特別なゴールだ。……一番良いコースに、撃ち込んでやる……っ!」
 ひときわ激しい抽送で、風丸は頭の芯が眩むほどの悦楽を覚えた。吐精もなしに、絶頂する。
「ああっ! 豪ぇ……っ、あっ、あぁーーっっ!!!」
 風丸は甲高い声で啼いた。余りもの悦びで、目尻から涙が零れ落ちる。上等のシーツの上に、風丸の蒼く長い髪が舞った。両脚がぴんと反り、痙攣する。風丸の甘い肉は豪炎寺にとって、どんな最高級の食事より美味で、心から思う存分味わった。
「豪炎寺……俺は」
 欲を解き放なち豪炎寺が余韻に浸っていると、風丸が微かな声で呟いた。
「なんだ?」
 優しく囁かれると、風丸は深く沈んでいく気怠さを堪えながら続けた。
「俺はお前と、またサッカーがしたいんだ……」
 そう言うなり、眠りに落ちていった。一試合終えたあとの体は、豪炎寺との激しい営みで疲れ切っていた。
「すまない、風丸」
 豪炎寺は風丸の頬に口づけを落とすと、頭を抱きかかえて艶やかな髪を撫でた。
「風丸……。俺は、お前が安心してサッカーできるのなら、それで良いんだ。その為になら、悪魔にだって魂を売ってやる。……それまでは、一緒にフィールドに立つのはお預けだ……」
 豪炎寺はそう囁いたが、深い眠りの中にいた風丸にその声は届かなかった。
 ダブルベッドの部屋。窓の外を見て、月のない夜の果てに想いを馳せながら、豪炎寺は安らかな風丸の寝息を聴いていた。


 朝はいつもと変わりなく訪れる。昨夜、散々激しく体を重ねたと言うのに、ベッドの上で風丸はけろりとしている。寧ろ、肉欲を貪りあったお陰で、体は充実していた。
 バスローブ一枚だけの姿で、おはようのキスを交わす。
「また暫く会えないな……」
 不満そうに言う風丸に、豪炎寺は溜息で答える。
「仕方がない。そうだ、お前の為に今度、ディルドーを贈ってやる。勿論、最高級の奴だ」
 冗談交じりにそう申し出ると、風丸は呆れた顔をした。
「そんなの要らないよ。俺は、お前じゃなきゃイケないんだからな!」

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サテライト

キーワードタグ イナズマイレブンGO  豪風  R18 
作品の説明 サイトから再掲。
24歳豪風アダルトえろです…。
イナギャラ設定なので色々当時の不満がちらほら…w

以下は当時のあとがき。

豪風の日、ということで久々にがっつりエロで書いてみました~。
しかも、24歳同士ということで、大人キャラのエロはもう数年ぶりですw。
小説の方も丸1年ぶり以上だったりしますので、ここ最近がどんだけ純情?だったかというw
今回、風丸さんには色々と、原作の展開について代弁していただきました。いやまぁ…。不満はほんの数点なんですけどねー。
劇中ではギャラクシーで天馬たちが地球を旅立ったあとのお話です。
この風丸さんは、豪炎寺にしか恋心を抱いてないので、彼ひとすじです。
折角の豪風の日ですので、こんなふたりも良いですよね!
<2013/10/2脱稿>
サテライト
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 勝利を讃える歓声がスタジアムを包む。見事なプレーでサポーターを魅了した選手たちが、観客席に向かって応える手を振った。
 ことに、勝ち点をあげたシュートを撃ったストライカーが諸手を挙げると、観客たちが大声で彼の名を呼んだ。彼は、すぐそばに居たディフェンダーの背中を叩き、肩を組むと嬉しそうに笑った。
「サンキュー、風丸! お前のスルーパスのお陰だ」
 すると、観客席から黄色い声が響く。ストライカーはにやりとウインクした。
「相変わらずモテモテだな」
 風丸は苦笑いして肩をすくめた。


 勝利の余韻に包まれたロッカールームは、いつにも増して選手たちの明るい声で騒がしい。風丸が着替えていると、中学の頃からの後輩が声をかけてきた。
「風丸さ~ん。フロントから話があるらしいっすよ?」
 壁山が巨体を揺すりながら、抱えていた子供たちからのファンレターが入った紙袋をベンチシートに置く。
「ああ、ありがとう。壁山」
 自分にもファンからの、手紙やプレゼントだろうか……試合のときは大抵そんな類いのものが贈られる……と思って、風丸はジャージに袖を通すと、スタジアム内に設けられた関係者室へ向かった。
「これからサッカー協会の関係者と会食だって?」
 チームのジェネラルマネージャーから風丸に告げられたのは、予想もしてなかった夕食の招待だった。今日はデーゲームだとはいえ、いきなり過ぎる。
「アポなしでそんな……」
「風丸さん、予定でもあるんですか?」
「いや、ないけど」
 風丸が訝しむと、マネージャーがスケジュール用の端末を指先で繰りながら尋ねる。
「どうしても風丸さんを、とのご指名です」
「今日じゃなきゃダメなのか?」
 正直、試合のあとはそれなりに疲れを癒したい。夕飯を食ったら早々に寝るつもりだった。
「先方はお忙しい方なので」
「どこのお偉いさんだよ……。わざわざ俺なんかを呼びつけるなんて」
「中学サッカー協会の会長さまです」
 マネージャーの口から出た名前に、風丸は呆気に取られた顔をした。
 風丸がタクシーで乗り付けたのは、都内でも超一流のホテルだ。夕闇に厳しく構えた建築物がそびえている。
 ベルボーイの案内でホテルフロントへ行くと、風丸の名を伺っただけですぐさまレストランへ向かうよう示された。
 このホテル自体もそうだか、直営のレストランも名だたる有名店だ。気軽には入れない格式ある店である。
 道理で……な。
 予め風丸はマネージャーから、先方から、と渡されたスーツ一式に身を包んでいる。ジャージのままでは、ドレスコードに引っかかるのは目に見えていた。
 用意万全、ってことかよ。
 風丸は軽く溜息つくと、案内のホテルマンのあとをついて行った。
 エレベーターに乗り、10何階かのフロアに降り立った。ふかふかの絨毯が疲れた足に心地いい。
 レストランの奥、全面ガラス張りのラウンジ席に、この招待を催したあるじが席についていた。
 テーブルの真向かいの席を薦められ、役目を終えたホテルマンがやっと持ち場へ帰ると、風丸は苦虫を噛み潰した顔で、招待主を睨めつけた。
「どういうつもりだよ? 豪炎寺」
 豪炎寺は風丸の言葉に臆することもなく、和かに笑いかける。
「ようこそ。お忙しいところをわざわざ訪ねて頂き、ありがとうございます」
「そういう茶番はやめろよ」
「一応これはビジネスなんだ。……私は中学サッカー協会会長として、君をお招きした。今はそのように振る舞っていただきたい」
 会長として、威厳ある態度を豪炎寺は崩さない。風丸は呆れ顔のまま、腕組みした。
「こちらで用意したスーツがお体に合わなかったらと危惧していたのですが……」
 淡いモスグリーンの上下は、風丸に誂えたようにぴったりで、特徴的な蒼く長い髪が見事に映えていた。豪炎寺は風丸の姿を確認すると、目を細めて微笑んだ。
「似合ってるぞ、風丸」
「馬鹿野郎」
 風丸は小声で罵る。
「大体、俺は……」
 風丸の続く言葉は、高級シャンパンを給仕しにやってきたソムリエによって妨げられた。淡い黄金色のシャンパンが高さのあるグラスに注がれる。爽やかな発泡音が耳をくすぐった。
「では今夜は、君のチームへの貢献による勝利を祝して」
 豪炎寺はシャンパンで満たされたグラスを高々と掲げると、乾杯を促した。渋々、風丸もグラスをあげる。ふたつのグラスが軽く当てられた。
 風丸は乾杯を終えると、躊躇なく注がれたシャンパンを飲み干した。空のグラスを不満げに置く。
「お気に召しませんか?」
「当たり前だ」
 頬杖をついた風丸に、豪炎寺はほくそ笑むと肘をついて両手を組み合わせた。
「こういう堅苦しいのは嫌いだ。お前も知ってるだろ?」
「風丸」
 風丸が先ほど言い残したことを聞いて、豪炎寺はにやりと笑った。
「一流の人間にはそれなりの環境が相応しい。着るもの然り、料理然り、酒も然り。君も一流のプレイヤーなら、それなりのものが必要だろう?」
「お前は会長だから、仕方ないけどさ」
「君にはとても良く似合ってる。その格好もこの場所も」
 はあ……と風丸は溜息をつく。
「で、何の用ですか。中学サッカー協会会長サマ?」
 テーブルに運ばれてきた前菜をぞんざいに口に運びながら、風丸は訊いた。豪炎寺が苦い顔で笑う。
「一流プレイヤーの君に、有力な中学チームの何校かにティーチングをお願いしたい」
「俺は人に教えられるほどじゃないけど……」
「風丸選手に来てもらう、それだけで生徒たちは大喜びだよ。なあに……君は子供たちと楽しくサッカーで遊んでもらうだけで良い」
「お気楽だな」
 風丸は生ハムを咀嚼しながら尋ねる。
「どこの学校だよ? 俺のスケジュールも考えてくれ」
「分かっている。そう遠い所ではないさ。まず帝国学園、木戸川静修中学、雷門中学……」
「おい」
 風丸は眉をひそめた。
「それはまるで……」
「だから“有力な”チームのある学校と」
 思わず鼻で嗤った。
「イナズマジャパンに漏れた奴らを慰めようって魂胆か」
「今は『アースイレブン』だ」
「どっちでもいいけど」
 正式な呼称なんて、この際どうでも良いのだ。
「致し方あるまい。今回漏れた選手たちには資格がなかった」
「獣の力……ねえ」
 新たに注がれたシャンパンを再び飲み干して、風丸は空のグラスを弄ぶ。
「残念なことだが、彼らにはもっと相応しい場所があるだろう」
 中学生サッカー世界大会と称された、FFIV2(フットボールフロンティア・ インターナショナルビジョンツー)。だが、真実は銀河を股にかけた、居住権を賭けた宇宙人たちの覇権戦争だった。風丸の後輩である、松風天馬たちは今、その争いに巻き込まれている。獣の力は、その闘いに必要不可欠なのだ。
「……黒岩監督からは、今回漏れた少年たちにその力は所有してないと言われたのだ」
「それが一番気に食わない」
 むっとした顔で風丸は言う。
「死に損ないのクセして」
 影山零次。それが黒岩の正体だった。10年前に死んだはずの影山は、未認可の薬品のお陰で一命を取り留めていた。そののち黒岩流星と名を変え、ひっそりと隠遁生活を送っていたらしい。
「今更どのツラ下げて、のこのこサッカー界に戻ってきやがったんだ」
「致し方あるまい」
 豪炎寺は苦笑いで首を横に振る。
「獣の力は彼にしか視えないのではな」
「豪炎寺!」
 風丸は目の前に置かれたメインディッシュも目にくれずに、豪炎寺をきっと睨んだ。
「お前、分かってるのか。あいつはお前の妹を殺そうとしたんだぞ? 夕香ちゃんだけじゃない。円堂のおじいさん……大介さんや、雷門の親父さん。俺たちだって、あのとき全員死んでいたかも知れない」
 帝国学園の総帥だった影山は、己の監督するチームを常勝させるため、数十年ものあいだ、数多の命を脅かせていたのだ。その暗躍に、豪炎寺や円堂が幾度も翻弄されたのを風丸は知っている。それだからこそ。
「なんで、あいつの言うことなんか素直に聞いてやがるんだよ……」
 風丸のきつい視線を受けて、豪炎寺はだが、静かに微笑んだ。
「そういう顔、ファンには見せない方が良い」
「してるわけないだろ」
「そうか? お前は意外と考えてることが顔に出る。……そう。そう言えばこのあいだお前がゲストに呼ばれたトーク番組で……」
「あ、あれは」
 豪炎寺が言っているのは、著名な大女優がホストをつとめる番組に風丸がゲストに呼ばれた時の話だ。トーク中に中学時代のVTRが流れ、あろうことか大女優はその風丸を
「まぁ~。可愛らしい!」
と、のたまった。風丸が閉口したのは言うまでもない。
「……『女の子みたい』って言われて、喜ぶ男がどこの世界にいるんだよ」
 ぶーたれた顔をする風丸に、豪炎寺は思わず噴き出した。
「笑い事じゃねえよ。とにかく、俺はあいつのことなんか認めないからな」
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 夜の帳がおりた都心は、ネオンの光が街を彩る。ガラス張りのレストランから真下を伺うと、華やいだ雰囲気に満ちていた。天空を見上げると満天の星が煌めく。だが空気の住んだ今頃なら、明るい月が優しく照らしている筈なのに、その姿は視えない。ある筈のその空間は、暗い闇がぽっかりと空いている。
 地球の衛星は、ひとりの宇宙人によって見えなくなってしまっていた。
「……変わったよな、豪炎寺は。10年前のお前はもっと、正義感が強くて真摯だった」
 昨日のことのように思い出す。
 ゴールを守る太陽のような円堂と、その熱い光を受けて輝いている豪炎寺。円堂に惹かれて雷門中学サッカー部に入った豪炎寺は、言わば太陽と惑星のようだった。風丸は円堂から受けたボールをドリブルで突破して、前線の豪炎寺に繋ぐ。自分があげたパスを豪炎寺がシュートする。それが風丸にとっては、途轍もない喜びだった。
「風丸。いつまでも子供のままではいられないぞ」
「どんな手段でもためらわずに事を運ぶ、って言うんなら、俺はそんな大人はなりたくないな……」
 風丸は月の無い夜空から視線を逸らすと、豪炎寺をじっと見つめた。豪炎寺は口を固く結んで風丸を伺っている。風丸は何度目かの溜息をつくと、肩をすくめる。
「分かった。ティーチングの件、受けるよ」
「ありがたい。感謝致します。……少ないですが、ギャランティーの方を幾らか支払わせていただきたいのですが」
「要らないぜ、そんなもの」
 きっぱりと風丸は答える。
「では、チャリティーと言うことで、有効に使わせて貰います」
「ああ、頼む」
 風丸はボーイを呼ぶと、ワインのおかわりを頼んだ。ワイングラスに赤紫色のシャトー・オー・ブリオンが注がれる。シャンパンの瓶は既に空になっており、ボルドーの最高級ワインももう残り少ない。
「呑み過ぎじゃないのか?」
「こんなんで酔えるワケないだろ」
「勝利の美酒が台無しだな」
 水代わりのようにワインでメインディッシュを流し込む風丸を、豪炎寺は案じた。
「それくらいにしておけ。上の部屋を取ってあるから、そこで呑み直すと良い」
 豪炎寺の提案に、風丸は酒で火照りながらも呆れた顔をした。
「へぇ……。サッカー協会会長様にとっちゃ、高級ホテルのスイートもラブホテル代わりかよ」
 軽口に、豪炎寺が鼻先で笑う。
「おや。お前はピンクの内装で回転ベッドのある部屋が良かったか? それとも全面鏡張りの……」
「そんなこと言ってねぇよ!」
 風丸の不機嫌は最高潮に達してる。顔が真っ赤になのは、怒りの所為かそれとも酩酊なのか。だが、言ってしまってから、この場所がどういう所なのかを思い出し、風丸は居住まいを正すと軽く咳払いした。
 店内は軽やかなピアノのBGMにナイフとフォークが奏でる音が彩りを添え、密かな会話が流れている。
「……俺はただ、悔しいだけだ」
 風丸は、まだ半分残った皿を下げてしまった。


 ふたりで過ごすには幾らか広すぎるホテルの部屋は、品の良い家具や調度品で飾られている。風丸は最高に座り心地のいいソファに体を預けていた。
「酔いは覚めたか?」
 豪炎寺がミネラルウォーターを注いだグラスを渡した。風丸は受け取ると、一気に仰ぐ。上等のスーツはボタンを外され、ネクタイは緩められている。豪炎寺は風丸の手からグラスを取り上げると、機嫌を伺った。
「ビール。それか、なんか酒」
「もう、やめておけ。お前は弱い方だろ」
「呑み足りねぇよ」
 明らかに駄々をこねてる様子に、豪炎寺は首を傾げた。
「今のお前をファンが見たら泣くぞ」
「いい。どうせ俺は強くないよ」
 風丸は赤く染まった鼻を手で抑えて、悔し気に言う。
「体質的なものだ。仕方がないだろう」
「酒の話じゃなくて……」
 つい、口から出る言葉に湿っぽいものが混じりはじめたが、もう風丸には止める術が見い出せない。
「ダメなんだよ。俺はみんなが思ってるほど、しっかりなんかしてない」
 両手で目元を覆う。豪炎寺からは風丸の口元しか見えなくなった。
 大人のくせに風丸がこんな振る舞いをしてたら、豪炎寺は困るだろう。そう心の片隅で理解はしていたが、酒の力は思っている以上に、風丸を弱くさせていた。
 ああ、本当にダメだ。こんなんじゃ。
 気を取り直そうと頭を振ると、豪炎寺が背中に腕を回してきた。
「分かった。お前の気が済むまで呑ませてやる」
 一瞬、互いの顔が極限まで近づいた。口づけされるかと思ったが、直ぐに豪炎寺はソファから立ちあがる。思わず豪炎寺を止めた。
「いや、やっぱりいい」
 離れようとする豪炎寺を止める自分が、情けないくらい子供っぽく感じた。
「そうか」
 豪炎寺はそう言って、テーブルに置かれたミネラルウォーターのボトルに手を伸ばした。
「では、水だ」
 素直に頷いた。グラスに注がれた水を飲み干すと、思いのほか頭がしっかりしてきた。
「ありがとう」
 グラスを返すと、その手がぎゅっと握られた。もう片方の手も豪炎寺に握られ、風丸は戸惑う。触れ合った肌と肌から、じわりと互いの熱が伝わっていく。
「あ……」
 豪炎寺の漆黒の瞳がじっと風丸を見つめてる。思わずたじろいだ。クッションを背にソファに横たわっていた風丸の上に、豪炎寺が覆いかぶさっている。白い天井が見える。ダウンライトは仄かに自分たちを照らしてる。己の体内が、豪炎寺に見つめられただけである種の変化を起こした。身体中の血液が中心に集まるのが分かる。思わず、顔を背けた。
 風丸がそっぽを向くと、豪炎寺はそっと両手を離した。ソファに片膝をついていたのも、体を起こして床に立ったので、風丸は不審に思った。
「俺はもう少し呑みたい気分だ」
「そ……そう」
 ひどく情けなくなる。もどかしくて、風丸も重くなる体を起こす。
 用意してあったんだろう、酒瓶とアイスペールをテーブルに持ってくると、豪炎寺は自分のぶんの水割りを作った。スーツ姿でグラスを傾けてる豪炎寺は、風丸にとって見知らぬ大人そのものだった。
「お前もやるか?」
 豪炎寺が尋ねたが、風丸は気だるそうに首を振る。
「……豪炎寺、あの」
 暫くの間、ふたりは無言だったが、沈黙に耐えきれなくなったのか、風丸はおずおずと口を切った。
「お前、いつになったらフィールドに戻るんだ?」
 風丸の言葉に、豪炎寺は目を伏せる。
「俺にはまだやらなくてはならないことがある」
「もう……いいだろ。お前は良くやったよ! フィフスセクターの尻拭いは、未来を救ったことで報われたんじゃないか。だから」
 ほんの数ヶ月前、200年も先の未来から時空を混乱される事件があった時のこと、豪炎寺は巻き込まれた少年たちのために奔走して手を尽くしていたのだ。だがそれは、豪炎寺にとって元のプロリーグの選手へ戻る時間を先延ばしにしなければならない苦難の日々だった。
「だが俺は、天馬たちに重荷を背負わせた」
 苦し気に豪炎寺は首を振る。
「で、でも」
「あの空を見ろ」
 豪炎寺が指差したのは、窓の外、月の視えない夜空だ。
「月が消えたのは、俺の所為だ。あの月が元に戻らない限り、俺の罪は消えない」
「そんな……!」
 風丸は豪炎寺の背中に頭を押しつけて、嘆き声をあげた。肩が震える。
「俺は、彼らを信じて待つしかない。それまではできる限りの手を尽くす。その間は戻るつもりはない」
 きっぱりと言う豪炎寺に、風丸は涙声でクッションに体を投げ出した。
「円堂もお前もいないサッカーなんて、つまらないよ……。俺はいつまでピッチで待ってればいいんだ?」
「すまない」
 豪炎寺はただ、それだけを返す。
風丸の口から嗚咽が漏れた。鼻の奥がつんと痛むので、指で抑える。
「でも、今日はお前が来てくれたから、嬉しかった。お互いスケジュールが合わないからな。……お陰で良い酒が呑めた」
 グラスを片手に豪炎寺が振りかえる。その笑顔は途轍もなく優しい。
「まだ、気分は良くなさそうだな。ベッドで休んだ方がいい。今日は試合のあとだ。疲れを癒せ」
 笑顔を崩さないまま、豪炎寺は風丸の髪を愛おしそうに撫でると、そう囁いた。
「豪炎寺……」
 ぼんやり気味だった頭が、霧が晴れたように明快になる。この笑顔を見てやっと、風丸は安堵した。その刹那。
 俺は……、俺はまだ!
 風丸は慌てて立ちあがる。一瞬足元がふらついたので、豪炎寺が支えてくれた。
「大丈夫か?」
「まだだろ? お前まだ肝心なことしてないだろ!?」
 風丸は訴えたが、豪炎寺は首を傾げてる。むっとすると、風丸はスーツを脱ぎ捨てシャツのボタンを全部外した。緩められたベルトも外してしまうと、ズボンを下ろした。ひやりとした空気と羞恥に、顔を赤らめたが風丸は構わずシャツの前を開けて、股間を豪炎寺に見せつけた。
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 シャツの下は、隠すものが最低限の布地しかない、薄手の下着しかなかった。しかもそれは、左右の脇が二組の細い紐だけで前後を繋ぎ止めていた。
「スーツと一緒にこれがあった時、正直呆れたよ」
 きわどい下着姿の風丸を見て、豪炎寺の目が丸くなる。だがすぐに、細くなった。上弦の月のように。
「人に下着を贈る時は……脱がせる為だって聞いたぜ」
 豪炎寺が笑って頷く。
「ああ、お前に着て欲しかった」
「悪趣味だな」
 軽口を叩いたものの、風丸は右の腰を豪炎寺に向けた。
「ん」
「なんだ?」
「脱がせるんじゃないのか?」
 風丸の肌は、酔いの為でなく羞恥で真っ赤になっている。
「ああ……」
 豪炎寺の指が、極薄の生地の上をなぞる。既に盛り上がっている隆起を撫でられ、風丸はうめいた。
「……っ、はぁ」
 爪の先で最も敏感な部分をくすぐられると、甘い吐息が漏れる。
「はち切れそうだな」
「……焦らすなよ」
 風丸が睨むと、豪炎寺がにやりと笑った。
「欲しいのか?」
「ああ、欲しいよ! お前が欲しくて欲しくて……疼いてる」
 切羽詰まった風丸の声は、涙で濡れていた。
 豪炎寺は背後に立つと、風丸の声を機会に右のストラップを外す。プチンと音を立てて、紐が肌の上に垂れる。頼りなくなった生地が、風丸の隆起した股間を支えきれなくなって、充血したものが溢れた。
「あ……うぅ」
 豪炎寺の右手がしっかりとそれを支えた。重量のある双球をもみ解す。右手で風丸の股間を弄びながら、豪炎寺は残った左側のストラップも外してしまった。頼りない僅かな布地が、床に落ちる。
「早くくれよ。ちゃんと綺麗にしてあるから……」
「ああ」
 充血して反り返ったものを左手に持ち替え、豪炎寺は右手を風丸の滑らかなふたつの曲線の間に潜らせた。豪炎寺しか知らない風丸のそこは、指で突くだけですんなりと受け入れた。巧みに充分に拡げると豪炎寺は立ったまま、既に堅くそびえていた己自身を風丸の熱いそこへ押しあてた。
「……あっ! んん……!」
 風丸のそこは豪炎寺をじんわりとした熱で誘い込む。
「そんなに俺が欲しかったのか」
 背後から囁く豪炎寺の声も、熱くなっていた。
「俺は、お前以外……何も欲しくない……!」
 贅沢な衣服も、高級な酒も、豪華な食事も、豪勢なベッドも、いらない。ただ、豪炎寺が、彼自身だけが欲しい。
 久し振りの逢瀬は、ふたりを激しく突き動かした。互いに絡み合い、互いに感じさせていた。眩暈がしそうなくらい、激しい抽送に風丸は立っていられなくなり、ソファの背に手をついて凭れた。
 まぶたを閉じて、快楽に身を任せて絶頂が訪れるのを待っていると、不意に豪炎寺の動きが止まった。
「あ……?」
 戸惑いながら振りかえると、豪炎寺が苦笑いする。
「ここで終えると、後始末に困るな」
 ずるりと、風丸の肉体を穿っていたものが引き抜かれる。その熱が離れるのが口惜しい。
 豪炎寺は風丸の背中と膝裏に両手を滑り込ませると、そのまま抱きかかえた。
「お、おい!」
「お楽しみはこれからだ」
 風丸は今更ながら恥じらったが、豪炎寺は抱きかかえたまま、バスルームへ連れて行く。風丸に着せた上等のシャツを剥ぎ取ると、自身も着ているものを脱ぎだす。互いが一糸纏わぬ姿になると、風丸を扉の奥に押し込んだ。
 スイートルームの風呂場は、内部もやはり広々としている。陶器でできたバスタブは猫脚で支えられている。
「へえ……」
 風丸が感心していると、豪炎寺がシャワーのコックを捻る。少しぬるめの湯が、汗ばんだ肌を洗い流した。
「覚えているか? 前はよく、こうしてシャワーを浴びながらしたものだ」
 豪炎寺の意図を風丸は飲み込んだ。
 風丸と豪炎寺が今のような仲になったのは、高校入試の合格発表の日。それまで、互いに好意を持ってはいたが、まさかこんなことをするようになるとは、思いもしなかった。
 桜の花びらが舞う鉄塔広場で告白され、なんとなくだがそれを受け入れた。円堂とは周りが羨むほどの仲だったが、豪炎寺に対しては全く違う想いを持っていた。それが、恋情だと気づいたのは付き合うようになってからだった。
 同じ高校に合格した日に付き合いはじめ、そのほんの少しのあいだ、入学式の頃にはもう風丸は豪炎寺のものだった。円堂も同じ高校で、風丸と豪炎寺と一緒にサッカー部に入った。中学のころとあまり代わり映えのない日々だったが、唯一違ったのは、練習が終わるとふたりきりで過ごすことが多くなったことだ。たまにロッカーやシャワールームで、誰にもみつからないよう、こっそり体を重ねた。
 バスルームは、壁の一面がガラス張りでできている。豪炎寺は備え付けのアメニティからボディソープを取ると、まだ堅く反り返ってる己のものに塗りたくった。
 豪炎寺の裸を見るのは、久し振りだったが、その逞しい肉体は以前と全く変わらない。風丸は惚れ惚れと、豪炎寺を眺めた。
 ああ……。豪炎寺が欲しい……。
 風丸はタイルのある壁に凭れると、右の太腿を上げてバスタブの縁に足を乗せる。普段隠された窄みが、灯りの下に曝けだされる。
「来いよ、豪炎寺」
 風丸が、さっきまで豪炎寺のもので充分に慣らされた秘穴を、指で拡げて誘う。豪炎寺は頷くと風丸の腰を掴み、そして己の充血した男根で穿った。
「んっ。……くぅ……」
 風丸自身の重みで、豪炎寺のものは根元までずぽりと挿入された。体をちゃんと支えていられなくて、風丸は両腕を伸ばすと、豪炎寺にしがみついた。下から突き上げられるたびに、風丸の体は豪炎寺の上で踊った。鼻にかかる喘ぎ声が、甘く豪炎寺の耳元をくすぐる。その都度、気持よさそうに吐息で返してくる。どうしようもなくなって、口づけし、互いの舌を絡み合わせた。
 先に、風丸が絶頂を迎えた。きゅっと締めつける風丸のそれを愉しみながら、豪炎寺は内部に熱い迸りをぶちまけた。
「……ああ!」
「すまん……。中に出した」
 悪びれた顔で豪炎寺は、風丸を穿つ肉棒を引き抜く。白濁した粘液が滴り落ちて、風丸の股を汚した。
「綺麗にしてやる」
 シャワーヘッドを掴むと、湯で丹念に流しながら豪炎寺はぶちまけた精液を掻きだす。風丸のまだ熱いそこは、指を差し入れると絡みついて締めつけてくる。豪炎寺は密かに笑った。
「お前はまだ、やり足りなさそうだな」
「……当たり前だろ。いくら待たせたと思ってるんだ」
 上気した頬で、風丸も笑う。ひどいくらいに妖艶な笑みだった。
「そんな顔……とてもファンには見せられないな」
「言っとくけど、お前にだけだぜ?」
 シャワーで清めると、今度はベッドに場所を移した。
「再戦だ。お前が満足するまでやってやる」
 挑戦者の目で、豪炎寺は囁く。
 風丸はもう酔いから醒めていたが、今は違うもので酩酊していた。豪炎寺はたっぷり時間をかけて、風丸の肌という肌に口づけを落とし、撫でさすり、指で摘まみ上げた。愛撫のたびに風丸は喘ぎ、口づけを返し、足を絡める。終いにはじれったくなって、豪炎寺の勃起しているものを掴み、赤く充血している窄みに自分から押し宛てる。風丸のそこはひくついて、もう堪らなくなっていた。
「くれよ。早くぅ……くれよ……!」
「仕方のない奴だ」
 苦笑いすると、豪炎寺は極限まで両股を開かせ、風丸の奥底を目指し、ずんと男根を突き立てた。
「んふっ! はぁ……!」
 満足そうに風丸が微笑んだ。充実した豪炎寺のものを、体内で堪能する。じわじわと圧力をかけると、豪炎寺が口を噛みしめる。
「く……っ。やるな」
 豪炎寺が再び、風丸の上で抽送を始める。互いの肌が汗ばんで、滑りはじめた。だが体はしっとりと馴染む。豪炎寺の体は風丸のもので、風丸の体は豪炎寺のものだった。体の何処が一番感じるか、解っているのはふたりだけだった。幾度も体位を変え、体を絡ませあう。
 ふたりの攻防は拮抗していたが、豪炎寺が風丸の一番弱い部分を攻めたてると、途端に陥落した。あっけなく風丸は達する。だが、豪炎寺はまだ、風丸の中で硬直を保っていた。
「どうした風丸。もうイったのか? 俺はまだ足りないぞ」
「くっ……」
 悔し気に風丸は豪炎寺を煽ろうとしたが、絶妙に感じる箇所ばかりを攻撃される。
「あ……、うっ。ご、豪炎寺……。こんな……」
「風丸……。お前は、俺だけの、特別なゴールだ。……一番良いコースに、撃ち込んでやる……っ!」
 ひときわ激しい抽送で、風丸は頭の芯が眩むほどの悦楽を覚えた。吐精もなしに、絶頂する。
「ああっ! 豪ぇ……っ、あっ、あぁーーっっ!!!」
 風丸は甲高い声で啼いた。余りもの悦びで、目尻から涙が零れ落ちる。上等のシーツの上に、風丸の蒼く長い髪が舞った。両脚がぴんと反り、痙攣する。風丸の甘い肉は豪炎寺にとって、どんな最高級の食事より美味で、心から思う存分味わった。
「豪炎寺……俺は」
 欲を解き放なち豪炎寺が余韻に浸っていると、風丸が微かな声で呟いた。
「なんだ?」
 優しく囁かれると、風丸は深く沈んでいく気怠さを堪えながら続けた。
「俺はお前と、またサッカーがしたいんだ……」
 そう言うなり、眠りに落ちていった。一試合終えたあとの体は、豪炎寺との激しい営みで疲れ切っていた。
「すまない、風丸」
 豪炎寺は風丸の頬に口づけを落とすと、頭を抱きかかえて艶やかな髪を撫でた。
「風丸……。俺は、お前が安心してサッカーできるのなら、それで良いんだ。その為になら、悪魔にだって魂を売ってやる。……それまでは、一緒にフィールドに立つのはお預けだ……」
 豪炎寺はそう囁いたが、深い眠りの中にいた風丸にその声は届かなかった。
 ダブルベッドの部屋。窓の外を見て、月のない夜の果てに想いを馳せながら、豪炎寺は安らかな風丸の寝息を聴いていた。


 朝はいつもと変わりなく訪れる。昨夜、散々激しく体を重ねたと言うのに、ベッドの上で風丸はけろりとしている。寧ろ、肉欲を貪りあったお陰で、体は充実していた。
 バスローブ一枚だけの姿で、おはようのキスを交わす。
「また暫く会えないな……」
 不満そうに言う風丸に、豪炎寺は溜息で答える。
「仕方がない。そうだ、お前の為に今度、ディルドーを贈ってやる。勿論、最高級の奴だ」
 冗談交じりにそう申し出ると、風丸は呆れた顔をした。
「そんなの要らないよ。俺は、お前じゃなきゃイケないんだからな!」

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ステキ!を送ってみましょう!
ステキ!を送ることで、作品への共感や作者様への敬意を伝えることができます。
また、そのステキ!が作者様の背中を押し、次の作品へと繋がっていくかもしれません。
ステキ!は匿名非公開で送ることもできますので、少しでもいいなと思ったら是非、ステキ!を送ってみましょう!

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