SWEET MEMORIES
内容が薄い全年齢SSです。ネタもの。
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今、俺は目の前で起きていることに動揺を隠せない。
いったい、何故そうなってしまったのか。
考えても分からず、どう声を掛けて良いのかも分からずにいた。
とりあえず、屋上を見回してみても火村以外の姿はない。
「どうかしたのか」
火村がこちらに気付いたように振り向いた。
どうしたものか。
どうやら本人は気付いていないらしい。
こんなことあっていいことなのだろうか。
しかしその原因となるものは、火村の手元にしっかりとあった。
封の開いたそれは、今まで口にしていたものだろう。
いっそこのままでも構わないではないか。
この稀有な姿を目撃出来ているだけで幸せに違ない。
写真を撮って凪に見せれば、悔しがることは分かっている。
「何故、そのままにして呼ばなかったのだ」と罵倒されるかもしれない。
そっと携帯を手にするとカメラを起動させた。
カメラを切る音に火村は訝し気にこちらを見る。
「なんでもない」
いつのもように調子よく応えると隣に腰を下ろす。
「それ、珍しいな」
「管理人のおばさんに貰ったんだよ。特別、好きじゃない」
「そのわりに食べてるじゃん」
笑いながら袋へと手を伸ばす。
いつ食べたのか思い出せないほど普段の生活に馴染みがないものだった。
たまには悪くないかもしれない。
そう思うほど懐かしい味で、不思議としっくりと馴染んだ。
屋上で火村と二人きり。
なぜか並んでお菓子をつまんでいる。
それだけでもおかしいのに更に稀有なものがある。
風を感じながら、想いをはせる。
やっぱり、ここの居心地はいいな。
これが証拠だと言わんばかりに特に会話もないまま、時間だけが過ぎていく。
普段している仮面を外しても大丈夫なように感じた。
いや、火村は見抜いているだろう、俺の仮面に。
だから安心していられるのだ。
風が正面から吹き抜ける。
それと同時に昼休みの終わりを告げるチャイムが響く。
「さて、行くか」
火村が立ち上がり、埃をはらう。
釣られたように立ち上がると一歩先に出る。
自然と手が伸びていた。
この稀有な火村を誰にも見せたくない。
独占欲が確かに秘められていた。
「芋けんぴ、付いてるぞ」
ねこのようにふんわりとした髪に触れると絡んでいた芋けんぴを取った。
意図が読めていないのか、反応が薄い。
「ほらっ」と取り除いた芋けんぴを見せると僅かに顔が赤らんだ。
「気を付けろよ」
捨て台詞のように言葉にすると屋上の出入り口へと歩き出した。
立ちすくんだ火村の手には、封の開いた芋けんぴが握りしめられていた。
どうして芋けんぴが髪に絡んでいたのか。
それはいまだに謎のままだ。
しかし良いものを見れたと公言できる。
それ故に画像フォルダから姿を消すことはない。
何年たっても鮮明に刻まれている数少ない記憶だろう。
写真を見る度に芋けんぴを求め、貪る。
年齢を重ねた今でも衝動的に起こすほど俺を狂わせていた。
「なぁ、火村も芋けんぴ、食べるか?」
「…食べる」
隣から白い肌をした手が伸びてくる。
口にしたときの歯切れのいい音が耳に心地いい。
こうしてまた隣で芋けんぴを食べている。
それだけで俺は満たされていく。
愛おしい、火村。
その姿は誰にも見せないで。
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