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Shipper/20↑/作文もする絵描き
同軸リバと百合、そして擬獣化。
洋画沼BC&MF、FGOインド兄弟etc…
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投稿日:2022年07月06日 00:53    文字数:720

「あなたの神は元気?」

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知らない筈のことを思い出す白昼夢。しろい男がしろい神を思い出す。

夏なので。
うっすら掌編ホラー。もろに日本の夏な感じなのはご勘弁を。

LB4の記録を見てないカルナさん→アルジュナ(オルタ含む)
気持ちカルジュナ寄りかもしれない。カルナさんと謎の怪異しかいません。
アルジュナオルタをどうしても"ダークゴッド"とは認識出来ない系のオタクです。業。

CP要素はありませんが、そういう嗜好のひとが描いてるので一応タグにCP表記を付けてます。

2021年6月 作
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「あなたの神は元気?」

 ふかい葛の薮の陰。
 ひとの身の丈ほどに繁茂し膨れ上がり、幾重にも重なった葉の裡に、闇。
 問いかける声はそこから聞こえるようだ。
「父神の事か?」
 男はあかく縁取られた目で中天を見上げ、しろく輪郭をぼやけさせた太陽を見やる。今日はとても蒸し暑い日だ。
「おそらく健勝であらせられると思うが」
 男の、抑揚はなくとも律儀な返答に答えはなく、声は重ねて問うのだった。
「あなたの神は元気?」

 ほかに特段神を知るわけではないのだが、そう言いかけて、ふと、男はしろく長い髪の神を思い出した。

 ざあ、と波のように周囲一面の葉を揺らして、一陣の風が渡る。
 不穏なような、安らいでいるような、ひとの声帯では出せない音。あの己をしろく塗り潰した神の声は、たしかこんな音に成り果てていた。
 風は澱んだ湿気を孕み、すこし温い。あの髪に纏いつかれたら、こんな心地がするのだろうか。
 ひと際つよい風に、一瞬聴覚が遮られた何も聞こえない隙間、念を押すように問いが重ねられる。
「あなたの神は元気?」

 記憶のなかの彼の男は、しろい長衣を旗めかせ佇んでいる。角も尾も持たず、ひとのまま。
 だが、思い出す。知る筈の無い、あのしろく黒い姿を。

 たったいま世界が焼けたように日射しは鋭い。凄まじく暑い。
 葉陰の闇はいよいよ翳る。
 青葉闇から、尚も声は響く。
 無機質に。慈愛すら感じる甘やかな問いかけが。
「あなたの神は元気?」
「オレが殺したようだ」
 きっと、そうだろう。男は青い目を細めてやわらかに笑った。

 また、ざあと温さを伴った風が渡っていく。

「あなたの神は」
 声はもう聞こえなかった。
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 ふかい葛の薮の陰。
 ひとの身の丈ほどに繁茂し膨れ上がり、幾重にも重なった葉の裡に、闇。
 問いかける声はそこから聞こえるようだ。
「父神の事か?」
 男はあかく縁取られた目で中天を見上げ、しろく輪郭をぼやけさせた太陽を見やる。今日はとても蒸し暑い日だ。
「おそらく健勝であらせられると思うが」
 男の、抑揚はなくとも律儀な返答に答えはなく、声は重ねて問うのだった。
「あなたの神は元気?」

 ほかに特段神を知るわけではないのだが、そう言いかけて、ふと、男はしろく長い髪の神を思い出した。

 ざあ、と波のように周囲一面の葉を揺らして、一陣の風が渡る。
 不穏なような、安らいでいるような、ひとの声帯では出せない音。あの己をしろく塗り潰した神の声は、たしかこんな音に成り果てていた。
 風は澱んだ湿気を孕み、すこし温い。あの髪に纏いつかれたら、こんな心地がするのだろうか。
 ひと際つよい風に、一瞬聴覚が遮られた何も聞こえない隙間、念を押すように問いが重ねられる。
「あなたの神は元気?」

 記憶のなかの彼の男は、しろい長衣を旗めかせ佇んでいる。角も尾も持たず、ひとのまま。
 だが、思い出す。知る筈の無い、あのしろく黒い姿を。

 たったいま世界が焼けたように日射しは鋭い。凄まじく暑い。
 葉陰の闇はいよいよ翳る。
 青葉闇から、尚も声は響く。
 無機質に。慈愛すら感じる甘やかな問いかけが。
「あなたの神は元気?」
「オレが殺したようだ」
 きっと、そうだろう。男は青い目を細めてやわらかに笑った。

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