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投稿日:2022年08月08日 20:32    文字数:2,289

それが楔になればいい

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クラウドと仁真ん中バースデーおめでとう!の短めのやつです。
いわゆる消えモノを作るスキルはまだ育っていないご様子ですが、いつか不格好でも贈り合える未来になればいいなぁ。


オマケ(読後推奨)

フェニックスの尾
価格 300ギル
売値 150ギル
戦闘不能を最大HPの20%で復活させる。各地のショップで手に入るアイテム。
このペンダントはクラウド自身の召喚獣「フェニックス」から了承を得た上で貰った尾羽根を加工して制作したもの。そのため効力はまったくの未知数である。

1 / 2


「誕生日プレゼントは何がいい?」
開口一番に問われるには唐突で、なんとも風情のない台詞に一瞬固まってしまったのは許してほしい。
「……そういうのは、もう少し隠しながら聞くものじゃないのか」
俺自身プレゼントを送ったことのある相手なんてそれこそ母くらいのものだから、世間一般の感覚というのはわからないのだけれど。
「そういう連中も多いらしいな。俺もサプライズとか考えてはみたんだけど、アンタしばらくは引っ張りだこで忙しいだろう」
「そうだな」
どんな組織でもトップというものは年がら年中忙しい。誕生日周りは特に、だ。
規模こそ縮小しつつあるが、コネクションの維持拡大は必須なのが厄介極まりない。
「疲労困憊して帰ってくるだろうヤツに意識外からもう一撃加える趣味はない」
あと、いいアイディアが浮かばなかったっていうのもあるな。
悪戯っぽく笑うクラウドに、ため息を飲み込むしかなかった。
正直な話、サプライズは得意ではないから有難い話ではある。
「……欲しいもの、か」
何でもいい、が良くないのは知っている。
それでも具体的に何が欲しい、ということがない。
日常生活を営む上で足りないと思うものもない。不自由も感じてはいない。
「…お前の世界のものが、見てみたい、かな」
「マテリアとか、ポーションとかは見せてもらったことあるけど、それ以外で、何か」
クラウドのいた世界は、スマブラのステージとして抽出されたあの都市の遠景しか知り得ない。
ミッドガル。乱闘以外で訪れることもなかった、未知の都市。
クラウドもあまりいい思い出がないのか言及することはほとんどなかったし、記憶どおりなら崩壊しかけている部分も少なからずある、とも言っていた。
痛い目に合いたくなかったらあの摩天楼には近づくな、とも。
「わかった。が、面白みは期待しないでくれよ」
「ほどほどに期待しておく」
「おい」
その手のセンスはないのだと言いたげな顔に笑みを返して、目の前の業務に意識を集中させた。


◇◇◇


「改めて、誕生日おめでとう。素直に祝われてくれ」
三島の本邸の自室に戻ったところで待ち構えていたらしいクラウドから渡されたのは、小さな小包だった。
するりと紐を解くと、中身は存外に小さなものだった。
「、これは…?」
黒みがかったシルバーの鎖の先に真っ赤な羽根が結わえ付けられた、シンプルなペンダントだ。
なんと言っても尾羽根が特徴的で、赤と金が混ざったような分かたれたような、絶妙な色味をしたペンダントトップになっている。
「綺麗、だ。ありがとう」
「喜んで貰えたなら、俺も嬉しい」
ただの尾羽根のはずなのに、燃えるようなオーラを感じる、不思議な気配のするペンダントを首にかける。
「それはフェニックスの尾、って呼ばれてる。お守りみたいなものだと思ってくれればいいよ」
クラウドの世界には、俺たちにとっては空想の生き物が実在している。普通に生きていればまず出会うことなんてないとの言い分だが、いまいち信用がならない。
「うん、やっぱり似合うな。ジンの道着は赤のイメージが強いから」
フェニックス、なんて仰々しい名の割にはこちらの動物と同じように暮らしていたりするのたろうか。また今度聞いてみることにするか。
「さすがにずっとは着けていられないけど、持っておくようにする」
視界をちらつく羽根にいいイメージなんてないけど、これだけは。
ぎゅっと手のひらで握りしめた尾羽根は、かすかに熱を持っているような気がした。


1 / 2
2 / 2



「それから、これを」
ぽいっと放られたそれを危なげなくキャッチする。
紙袋に相応しい程度の重量感で、怪我のしようがないものではあるが投げてよこすのはどうかと思う。軽く睨んでから、開封を試みた。
中身を取り出してみると、紙の感触。大量の紙の束と、一番上には硬い厚紙が何枚か折り重なっている。
「アンタ、さあ……。こういうの、権力の濫用じゃないのか」
「正当な行使だ。人聞きの悪い」
手元に落ちてきたのは、こちらの世界での身分証だ。戸籍関係の書類付きで。
ご丁寧に運転の免許まで取り付けてある。
いもしない人間のすべてを作り上げる、なんて。しかもざっと見た限り矛盾のないようしっかり組み上げられている。手間暇のかけかたがおかしい。
極めつけは住所欄。寝に帰っているのが事実とはいえ記された住所はここのものだ。
「お前の誕生日ももうすぐだろう。今はそれしか用意できなかったけど」
ああ、ほんとに。全部作り終えてからオレに渡すくせして、突っぱねられたらどうしようって顔をしている。
宙ぶらりんなままでも悪くはないが、後ろ暗いことなくジンの隣を歩けるのは魅力的が過ぎる。
「ありがとう。使いどころがあれば遠慮なく使わせてもらうよ」
…ないことを祈りたいものだが。

「で、今日はもう何も?」
日もとっぷりと暮れた。オレは帰ってからすぐに通信機の電源を切ったし、ジンもテーブルに置くときスマホの電源を落とすのが見えた。
二人だけなら、召喚獣を駆使すればいくらでも逃げようはある。
「……明日の朝までは、俺を通さなくてもいいよう話をつけてる」
しかめっ面なのは顔だけで、真っ赤になった耳が、かわいいと思う。
「ココで叶うことならなんでもしてあげる。かこつけて強請ってみてよ」
「ならお前も、我慢なんてするなよ」
閉め切った部屋のペンダントライトが、熱気に揺れたようだった。


◇◇◇


「来年は、アンタが俺に選んだものが欲しいな」
「…前向きに検討しておく」
2 / 2
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それが楔になればいい
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「誕生日プレゼントは何がいい?」
開口一番に問われるには唐突で、なんとも風情のない台詞に一瞬固まってしまったのは許してほしい。
「……そういうのは、もう少し隠しながら聞くものじゃないのか」
俺自身プレゼントを送ったことのある相手なんてそれこそ母くらいのものだから、世間一般の感覚というのはわからないのだけれど。
「そういう連中も多いらしいな。俺もサプライズとか考えてはみたんだけど、アンタしばらくは引っ張りだこで忙しいだろう」
「そうだな」
どんな組織でもトップというものは年がら年中忙しい。誕生日周りは特に、だ。
規模こそ縮小しつつあるが、コネクションの維持拡大は必須なのが厄介極まりない。
「疲労困憊して帰ってくるだろうヤツに意識外からもう一撃加える趣味はない」
あと、いいアイディアが浮かばなかったっていうのもあるな。
悪戯っぽく笑うクラウドに、ため息を飲み込むしかなかった。
正直な話、サプライズは得意ではないから有難い話ではある。
「……欲しいもの、か」
何でもいい、が良くないのは知っている。
それでも具体的に何が欲しい、ということがない。
日常生活を営む上で足りないと思うものもない。不自由も感じてはいない。
「…お前の世界のものが、見てみたい、かな」
「マテリアとか、ポーションとかは見せてもらったことあるけど、それ以外で、何か」
クラウドのいた世界は、スマブラのステージとして抽出されたあの都市の遠景しか知り得ない。
ミッドガル。乱闘以外で訪れることもなかった、未知の都市。
クラウドもあまりいい思い出がないのか言及することはほとんどなかったし、記憶どおりなら崩壊しかけている部分も少なからずある、とも言っていた。
痛い目に合いたくなかったらあの摩天楼には近づくな、とも。
「わかった。が、面白みは期待しないでくれよ」
「ほどほどに期待しておく」
「おい」
その手のセンスはないのだと言いたげな顔に笑みを返して、目の前の業務に意識を集中させた。


◇◇◇


「改めて、誕生日おめでとう。素直に祝われてくれ」
三島の本邸の自室に戻ったところで待ち構えていたらしいクラウドから渡されたのは、小さな小包だった。
するりと紐を解くと、中身は存外に小さなものだった。
「、これは…?」
黒みがかったシルバーの鎖の先に真っ赤な羽根が結わえ付けられた、シンプルなペンダントだ。
なんと言っても尾羽根が特徴的で、赤と金が混ざったような分かたれたような、絶妙な色味をしたペンダントトップになっている。
「綺麗、だ。ありがとう」
「喜んで貰えたなら、俺も嬉しい」
ただの尾羽根のはずなのに、燃えるようなオーラを感じる、不思議な気配のするペンダントを首にかける。
「それはフェニックスの尾、って呼ばれてる。お守りみたいなものだと思ってくれればいいよ」
クラウドの世界には、俺たちにとっては空想の生き物が実在している。普通に生きていればまず出会うことなんてないとの言い分だが、いまいち信用がならない。
「うん、やっぱり似合うな。ジンの道着は赤のイメージが強いから」
フェニックス、なんて仰々しい名の割にはこちらの動物と同じように暮らしていたりするのたろうか。また今度聞いてみることにするか。
「さすがにずっとは着けていられないけど、持っておくようにする」
視界をちらつく羽根にいいイメージなんてないけど、これだけは。
ぎゅっと手のひらで握りしめた尾羽根は、かすかに熱を持っているような気がした。


1 / 2
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「それから、これを」
ぽいっと放られたそれを危なげなくキャッチする。
紙袋に相応しい程度の重量感で、怪我のしようがないものではあるが投げてよこすのはどうかと思う。軽く睨んでから、開封を試みた。
中身を取り出してみると、紙の感触。大量の紙の束と、一番上には硬い厚紙が何枚か折り重なっている。
「アンタ、さあ……。こういうの、権力の濫用じゃないのか」
「正当な行使だ。人聞きの悪い」
手元に落ちてきたのは、こちらの世界での身分証だ。戸籍関係の書類付きで。
ご丁寧に運転の免許まで取り付けてある。
いもしない人間のすべてを作り上げる、なんて。しかもざっと見た限り矛盾のないようしっかり組み上げられている。手間暇のかけかたがおかしい。
極めつけは住所欄。寝に帰っているのが事実とはいえ記された住所はここのものだ。
「お前の誕生日ももうすぐだろう。今はそれしか用意できなかったけど」
ああ、ほんとに。全部作り終えてからオレに渡すくせして、突っぱねられたらどうしようって顔をしている。
宙ぶらりんなままでも悪くはないが、後ろ暗いことなくジンの隣を歩けるのは魅力的が過ぎる。
「ありがとう。使いどころがあれば遠慮なく使わせてもらうよ」
…ないことを祈りたいものだが。

「で、今日はもう何も?」
日もとっぷりと暮れた。オレは帰ってからすぐに通信機の電源を切ったし、ジンもテーブルに置くときスマホの電源を落とすのが見えた。
二人だけなら、召喚獣を駆使すればいくらでも逃げようはある。
「……明日の朝までは、俺を通さなくてもいいよう話をつけてる」
しかめっ面なのは顔だけで、真っ赤になった耳が、かわいいと思う。
「ココで叶うことならなんでもしてあげる。かこつけて強請ってみてよ」
「ならお前も、我慢なんてするなよ」
閉め切った部屋のペンダントライトが、熱気に揺れたようだった。


◇◇◇


「来年は、アンタが俺に選んだものが欲しいな」
「…前向きに検討しておく」
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