蜜りんご

ダイの大冒険のラーハルト×ヒュンケルにドはまりしました。10年ぶりの二次創作活動で楽しい毎日です。

投稿日:2022年11月23日 15:48    文字数:6,867

【ラーヒュン】恋の相談

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【注意】
本作は、ダイの大冒険「魂の絆」の世界観をベースにしたラーハルト×ヒュンケルの二次創作です。
ゲームネタバレを含みますので未見の方はご注意ください。何でも許せる方向けです。
原作軸とはまた少し違うラーヒュンをお楽しみください
1 / 4
 ふるりふるりと胸の奥が震える。
 その人を見る度に、鼓動が胸に響いて。
 感じたことのない痛みに動けなくなる。

「これは、何かの病だろうか?」
 
 真剣な顔をして銀髪の美青年ヒュンケルは、弟弟子の魔法使いとこの世界――ミラドシア――の案内役ピンクドラキーのピラに話しかけた。彼は大真面目である。大真面目に、ある人を見ていると胸がドキドキして苦しいのだと一人と一匹に相談した。
「ヒュンケル……おめぇ、そりゃあ……」
「それは特定の誰かを見ているとそうなるのね?」
 念を押すように確認するピラに対し、ヒュンケルはコクリと素直にうなずいた。彼が認識する限り、この症状が発生するのはある一人を見ている時だけだった。
「おいまさか。その相手はマァムじゃないだろうな!?」
「違う」
「即答ね」
 ヒュンケルが胸を焦がしている相手がマァムではないと知ると、ポップはあからさまに安堵の息を吐いた。
「ふー、セーフだぜ……って、じゃあ誰のことだよ?」
「ちょっとポップ! それ以上は立ち入っちゃだめよ、こういうことは本人同士の問題なんだから」
「?? ピラ、それはどういう意味だ? 病気ではないのか?」
 アバンの使徒において長兄たるヒュンケルは頭の回転も早く物覚えも良いし、戦術や武具の類にも詳しい。が、如何せん、幼少期を魔王軍で過ごしたためか「人間の一般的な知識」については驚くほど無知なことがある。今回もソレだ。
「いいわ、ヒュンケル。これは絆を結ぶ上でも重要なことだから教えてあげる」
「助かる、ピラ」
 ピンクドラキーはコホンともったいぶった咳を一つ。その後にこう続けた。
 
 特定の人物を見た時だけに胸がドキドキするのは病気ではないこと。
 それは、誰しもが経験しうること。
 多くの場合、見ていてドキドキする相手に好意を持っていること。
 つまり、その人に恋をしているのだ。

「――という訳だ、ラーハルト。オレはお前に恋をしているのだろうか?」
 ピンクドラキーから説明を受けて呆然としたヒュンケルが取った行動は、胸のドキドキの原因であるラーハルトに率直に相談してみる、というものであった。無論、彼なりに色々と考えたのだが、いくら考えても答えにたどり着けそうにはなく。そうであるならば、元凶と決着をつけるべきだとの判断に至ったのだ。
「ヒュンケル、お前な……」
 事情を聞いたラーハルトはこめかみを押さえて深く息を吐いた。呆れているのだ。恋煩いをしている相手に恋の相談など、普通するものではない。人間の母親に育てられたラーハルトは魔族の血をひく者ではあるが、それでもヒュンケルよりは人間の「一般的な考え方」には理解があった。
「貴様、オレがそれを聞いて困惑するとは思わなかったのか?」
「すまん。迷惑だろうとは思った……しかし、このままでは闘いに支障を来すかもしれん。特にお前が《絆の勇者》と話している時など、胸が痛いだけでなく、なにやらモヤモヤとした嫌な気持ちになるのだ。仲間同士が仲良くしていることは……絆を深めることは、良いことなのに。このままでは《絆の勇者》との絆にも影響してしまうかもしれない。もはや、背に腹は代えられなかった。すまない」
 真剣に申し訳なく思っているのだろう。ヒュンケルは深々とラーハルトに頭を下げた。珍妙な状況ではあるものの、ラーハルトにとってヒュンケルは唯一無二の友であり、その友からこうした態度を取られれば無下にもできない。ラーハルトは再び、大きく息を吐いた。
「で、お前はオレにどうしてほしいのだ?」
 ヒュンケルが話を聞いてほしくて、ただそれだけで己の元にやってきたわけではないだろうことに察しはついていた。ならば、と水を向けてみたところ返ってきたのは盛大な「告白」……ではなかった。
「オレをこっぴどく振ってほしい、ラーハルト」
「はぁ!? どうしてそうなる」
「お前にその気がないと分かれば諦めがつくというもの。さぁ、はっきり振ってくれ」
 ヒュンケルは姿勢を正してラーハルトの言葉を待った。
「お前はオレのことが好きなのか」
「……多分」
「……何だそれは」
「よくわからんのだ。お前と知り合ってからわからないことだらけだ。このところお前に感じる想いはクロコダインやダイ、《絆の勇者》達に対しては感じない。お前にだけ感じるんだ。こんな気持ちは初めてで、正直、戸惑っている」
 眉尻を下げて参ったと言わんばかりのヒュンケルの表情にラーハルトは三度目のため息をついた。
「自分でもわからぬ癖に振ってくれとは随分身勝手だな」
「す、すまない。だが……こんな勝手はお前にしかできない。なぁ、実際の所、オレのことをどう思っている?」
「そうだな……」
 ラーハルトは改めてヒュンケルを眺めた。均整の取れた美しい肉体、ふわふわと柔らかそうな銀色の髪、陶器のように滑らかな白い肌、意志の強そうなペリドットの瞳、愛らしい小さな唇。うむ、悪くない。
「まぁ、抱けるな。男相手は未経験だが、お前は美しいしオレの好みではある」
「ま、待て。ラーハルト! なぜそんな話になるんだ。オレは気持ちの問題を聞いているのであって……」
「だが、その先には肉体関係があるだろう? まさか貴様、そんなことも知らないのか」
「ゔ、知識としては知っているが……」
 経験はない、と蚊の鳴くような小さな声で打ち明けるヒュンケルの顔は真っ赤である。相当恥ずかしいのだろう。目線をそらしてうつむく姿は年相応で愛らしささえ感じさせる。それにラーハルトは煽られる。
「いいな、今のお前にはそそられた。ヤッてみるか?」
「え!? いや、待てラーハルト!」
「わかるかもしれんぞ? お前が抱えたその気持ちが何なのか、すっきりしたくはないのか?」
 有無を言わさず畳みかけるとヒュンケルは一瞬考えこんで、「わかった」と神妙に頷いた。

1 / 4
2 / 4

 
 ラーハルトはゆらゆらとゆれるグラスの中の液体を眺めていた。これから親友を抱く。
 それに迷いはないものの、友が部屋を訪れるまで何とはなしに手持無沙汰で、幼い主から下賜されたワインを飲んでいる。(助けた住民からもらったそうだが子供なので飲めないからあげると言われたのだ。)
 
 薄々、己の想いには気づいていた。
 ヒュンケルを見ていると湧き上がる愛しさ、彼が他の仲間――特にピンクの髪の女に接するのを見ると感じる怒りは恐らく嫉妬だろう。
 正直に言えば、自分とて、ヒュンケルに対する気持ちはこれまで生きてきた中では感じたことのないものだった。当初はこれが初めてできた親友に対する強い友情なのだと思った。だが、過去に抱いてきた女たちの話に照らし合わせると、今の気持ちが恋情を含んでいるのは明らかだ。それくらいはわかる。
 なのに、ヒュンケルは――。
 ラーハルトはもはや何度目になるかわからないため息をついた。わからないというならば、思い知らせてやらねばならない。己の想いを、彼自身の想いを。
 そう決意して、ゆらゆら揺れるグラスの中の液体を一気にあおった。

 
2 / 4
3 / 4

 
 湯あみを終えて、友の部屋を訪れたヒュンケルは緊張していた。初めての相手が親友であるというのがなんとも気まずいのだが、親友はそのあたり全く気にしていないようで余裕の笑みさえ浮かべている。
「さて、どうする?」
「……よろしく頼む」
「任せておけ。優しくしてやる」
 ベッドの上で向かい合い、ラーハルトが手を伸ばしてくる。ヒュンケルが身を固くしていると、男の手が頬に触れた。
「そうかたくなるな」
「すまん」
「謝ることではない」
「あっ……」
 ラーハルトの手がゆっくりと顔から首筋を撫でる。そのまま胸元へ降りていき、服の上を滑るように腹へと移動していくと、ヒュンケルは思わず声を上げた。男の指先が臍に軽く触れるとそこからゾクゾクと得体の知れない感覚が広がる。目の前の親友は熱のこもった瞳でニヤリと笑う。それに心臓が跳ね上がりカッと全身が熱くなった。だめだ、彼を、友を見ていられない。視線を逸らすと、耳元に口づけられビクリとする。
「どうした? もっと顔を見せろ」
「む、無理だ」
「恥ずかしいのか? 可愛い奴め。ならば」
 くるりと視界が反転しシーツが見えた。背中に触れる男の体温。ピタリと触れ合ったままギュウッと抱きしめられる。
「これでどうだ?」
「し、心臓が張り裂けそうだ。ドキドキして……痛い」
「フッ、そうか。ではゆっくり抱いてやろう。もっともっとオレを感じさせてやる」
 ラーハルトはヒュンケルのシャツに手をかけ捲り上げる。露わになった肌に吸い付くように手を這わせながら唇を寄せた。チュッチュッと音を立てて何度もキスを落とすと、白い肢体がぴくりと震える。それを楽しみつつ、舌先でちろちろと舐めると、ヒュンケルが息を詰める気配がした。構わずに続ける。
「っあ、んぅ……」
「ここがいいのか?」
「ひゃう!?  ま、待ってくれ」
「なぜ?」
「変な感じがするんだ……。そこを触られると頭がぼうっとしてくる……」
「それはいい兆候だな。オレに身を任せていればよいのだ」
 そう言うとラーハルトは再び身体中を愛撫し始めた。彼の大きな手で触れられるとどこもかしこも性感帯になってしまったかのように感じる。脇腹をなぞられて背筋がぞくぞくとし、後ろから胸を揉まれ、乳首を摘ままれると腰が跳ねた。臍をくすぐられると下腹部に甘い疼きが生まれる。太腿の内側をそっと撫で上げられれば膝がガクガクと震えてしまう。自分の体が自分のものではないようだ。熱くて熱くてとろけそう。そして、
「ヒュンケル」
 優しく己の名を呼ぶ親友の声には甘やかな響きがあって。気づく。ああ、そうだ、この行為は――。
「ラーハルト、もうやめてくれ」
 ヒュンケルは起き上がり、ラーハルトに向き合うと手で彼を制した。
「なんだ? 今更怖気づいたのか?」
「違う!  でも、やはりこれは愛し合う者同士がすべき行為だ。オレの一方的な思いだけですべきものではない。ラーハルト……お前にはちゃんと想い合った人と結ばれてほしい……」
「フン! 貴様は相変わらず他人のことばかり気にする……。その体を使ってオレを魅了したらどうだ? 惚れるかもしれんぞ?」
「それはない。そんなことで想いを変えるような男ではない、お前は」
 ヒュンケルはラーハルトの目を見てキッパリと言い切った。
 その言葉に嘘はなかった。それにラーハルトは一瞬、気圧される。
「すまない。ラーハルト、こんなことをさせて……」
「謝るな!」
 どさり、と再びヒュンケルを押し倒して、ラーハルトは彼を睨みつける。
「今大事なのは貴様の気持ちだ。お前はどうなんだ? 抱かれたいのか、抱かれたくないのか?」
「お前が……」
「逃げるな。答えを聞かせろ」
 強い瞳で問われて、今度はヒュンケルが気圧された。まるで戦闘中のよう。妙な高揚感が体中に広がる。だめだ、だめだ。だめなのに。
「……ラーハルトとシたい……」
 許されるのなら、彼に思いのすべてをぶつけたい。受け止めてほしい。そして、自分も彼のすべてを受け入れたい。そんな欲望があふれる。抱きしめたい、抱かれたい。でも、でも。
「オレは……ラーハルトにはふさわしくない」
「オレがいつ、ふさわしくないなんて言った? オレもお前を抱きたい」
「同情などいらん……!」
「同情ではない! 好きだ、ヒュンケル」
 ラーハルトの言葉にヒュンケルは大きく目を見張り、信じられないという顔をした。
「馬鹿な……だって、」
「すまん。最初から言っておくべきだった。だが、お前があまりに鈍いから苛めたくなってしまったのだ。女ならいざ知らず男など好きでもないのに抱けるか!」
「本当か?……こんなオレでも抱けるのか?」
「抱ける。いや、抱きたい。ほら、わかるだろ?」
 ぐいっと押しつけられた下半身はすでに熱を持っていた。そのあまりの熱さと大きさに思わず体がびくりと震えた。
「怖いか?」
「こ、怖くなどない!」
 ウソだった。本当は少しだけ怖かった。男の身でソレを受け入れられるのか、そして受け入れてしまったら自分は何か変わってしまうのではないかという恐れもあった。身が竦む。それにラーハルトは苦笑を漏らすのだ。
「安心しろ。最後まではしない。生娘につけこむような真似はしたくないからな」
「な……だ、誰が生娘だ!」
「違うのか?」
「……っ!」
 真っ赤になって黙り込むヒュンケルをラーハルトは愛しげに見つめると、そっと頬に口づけた。そのまま首筋に吸い付き舌を這わせながら、ゆっくりと服を脱がせていく。
「あっ……ラー、ハルト? シないんじゃ……」
「最後までは、な。だが、オレがどれだけお前を欲しているかはわかってもらうぞ。続き、シてもいいな?」
 こくん、と小さな頷き。
 それを見届けると、ラーハルトも自らの衣服に手をかけた。
 
 
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「あ……ぁ、ぅん……」
 寝台の上で、ラーハルトはヒュンケルの身体中にキスの雨を降らせていた。その度にビクビクと震える体に愛しさが増すばかり。
「や……ラーハルト。オレはもうおかしくなりそうだ」
「まだ序の口だ。これからもっと気持ちよくしてやる」
「これ以上……?  ひゃう!?」
 胸の突起を摘ままれて、ヒュンケルは甲高い声を上げた。今まで感じたことの無い感覚に戸惑っていると、今度はその先端にちゅぱりと吸いつかれる。
「ふあ……んッ」
 その刺激だけでイってしまいそうになるほど、気持ちいい。
「可愛いぞ、ヒュンケル」
「かわいく、なんか……」
「お前はかわいい」
「ひっ!」
 かり、と軽く歯を立てられて、痛みと同時に快感が押し寄せる。もう片方の手で乳首を弄られながら、もう片方の手は下腹部へと伸ばされていき……。
「そこ……そこはだめだ」
 すでに反応を示しているそこに触れられ、ヒュンケルはいやいやと頭を振る。しかしラーハルトは止めるどころかゆっくりと擦り上げてきた。
「だめじゃないだろう?  ここ、こんなにして」
「あ……だめ、本当にだめ……だ!  出てしまう!」
「出せばいいだろ」
「でも……お前が、まだ……」
「なら、触れてくれ。一緒にイきたいんだろ?」
「あっ……」
 すり、と股間に手を誘導されて、ヒュンケルはおずおずとその場所に指を伸ばす。既にガチガチになっているそれに自分のものを重ねて、ラーハルトと一緒に上下に動かし始めた。
「は……あ、すごい……熱い、な」
「ああ、すごく興奮する……」
「んっ……ふ、ぅ……」
 
二人分の先走りが混ざり合って、グチュリという卑猥な音を立てる。それが更に二人の鼓動を高めていった。
「んっ……あ、ラーハルト! らぁはるとっ!」
「ヒュンケル……好きだ。愛している」
「オレも。オレも……お前が……!」
どちらからともなく唇を合わせ、互いの舌を絡め合う。くちゅくちゅと唾液を交換しあい、呼吸さえ奪い合いながら二人は絶頂を迎えた。
「ふぁ……! 出る、あ……ああ!」
「オレも……く……!」
びゅく、と勢い良く吐き出された白濁液がヒュンケルの腹に飛び散った。
「は……いっぱい出たな」
「言わなくて、いい……!」
恥ずかしさのあまり顔を背けようとするが、その前にラーハルトがその顎を掴んで口付ける。
「どうだ? 答えは出たか?」
「……ん」
小さく、だがしっかりとした返事が返ってきた。
「オレも、ラーハルトが好きなんだと思う」
「思う?」
意地悪く聞き返す男に、ヒュンケルは真っ赤になりながらも言い切った。
「好き、だ」
「ようやくわかったみたいだな」
「ああ。だが、ラーハルトは《絆の勇者》のことが好き、じゃないのか?」
「今までの流れで……なぜそうなる?」
「だってお前はよく《絆の勇者》に『お前に会えてよかった』とか言っているじゃないか。オレには一度しか……」
「お前、意外と嫉妬深いんだな」
「そ、そんなつもりでは――」
 少し呆れたように言われて、ヒュンケルはムキになって反論する。が図星である。
《絆の勇者》に嫉妬、そんな子供っぽい自分に羞恥を覚えていると、ラーハルトはくすりと笑って言った。
「確かに《絆の勇者》にも一目置いているがあんなコドモに手を出すか、バカモノ。オレがこういうことをしたいと思うのは……愛しているはお前だけだ、ヒュンケル」
そう言ってラーハルトはもう一度口づけたのだった。
それにヒュンケルの心のもやがゆっくりと溶けていった。

その後、ラーハルトと晴れて恋仲となったヒュンケルが「礼だ」と、ポップとピラにたくさんの薬草を届けたのはまた別のお話。

おしまい
 
4 / 4
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【ラーヒュン】恋の相談

キーワードタグ 魂の絆  R18  ダイの大冒険  ヒュンケル  ラーハルト  ラーハルト×ヒュンケル  ラーヒュン 
作品の説明 【注意】
本作は、ダイの大冒険「魂の絆」の世界観をベースにしたラーハルト×ヒュンケルの二次創作です。
ゲームネタバレを含みますので未見の方はご注意ください。何でも許せる方向けです。
原作軸とはまた少し違うラーヒュンをお楽しみください
【ラーヒュン】恋の相談
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 ふるりふるりと胸の奥が震える。
 その人を見る度に、鼓動が胸に響いて。
 感じたことのない痛みに動けなくなる。

「これは、何かの病だろうか?」
 
 真剣な顔をして銀髪の美青年ヒュンケルは、弟弟子の魔法使いとこの世界――ミラドシア――の案内役ピンクドラキーのピラに話しかけた。彼は大真面目である。大真面目に、ある人を見ていると胸がドキドキして苦しいのだと一人と一匹に相談した。
「ヒュンケル……おめぇ、そりゃあ……」
「それは特定の誰かを見ているとそうなるのね?」
 念を押すように確認するピラに対し、ヒュンケルはコクリと素直にうなずいた。彼が認識する限り、この症状が発生するのはある一人を見ている時だけだった。
「おいまさか。その相手はマァムじゃないだろうな!?」
「違う」
「即答ね」
 ヒュンケルが胸を焦がしている相手がマァムではないと知ると、ポップはあからさまに安堵の息を吐いた。
「ふー、セーフだぜ……って、じゃあ誰のことだよ?」
「ちょっとポップ! それ以上は立ち入っちゃだめよ、こういうことは本人同士の問題なんだから」
「?? ピラ、それはどういう意味だ? 病気ではないのか?」
 アバンの使徒において長兄たるヒュンケルは頭の回転も早く物覚えも良いし、戦術や武具の類にも詳しい。が、如何せん、幼少期を魔王軍で過ごしたためか「人間の一般的な知識」については驚くほど無知なことがある。今回もソレだ。
「いいわ、ヒュンケル。これは絆を結ぶ上でも重要なことだから教えてあげる」
「助かる、ピラ」
 ピンクドラキーはコホンともったいぶった咳を一つ。その後にこう続けた。
 
 特定の人物を見た時だけに胸がドキドキするのは病気ではないこと。
 それは、誰しもが経験しうること。
 多くの場合、見ていてドキドキする相手に好意を持っていること。
 つまり、その人に恋をしているのだ。

「――という訳だ、ラーハルト。オレはお前に恋をしているのだろうか?」
 ピンクドラキーから説明を受けて呆然としたヒュンケルが取った行動は、胸のドキドキの原因であるラーハルトに率直に相談してみる、というものであった。無論、彼なりに色々と考えたのだが、いくら考えても答えにたどり着けそうにはなく。そうであるならば、元凶と決着をつけるべきだとの判断に至ったのだ。
「ヒュンケル、お前な……」
 事情を聞いたラーハルトはこめかみを押さえて深く息を吐いた。呆れているのだ。恋煩いをしている相手に恋の相談など、普通するものではない。人間の母親に育てられたラーハルトは魔族の血をひく者ではあるが、それでもヒュンケルよりは人間の「一般的な考え方」には理解があった。
「貴様、オレがそれを聞いて困惑するとは思わなかったのか?」
「すまん。迷惑だろうとは思った……しかし、このままでは闘いに支障を来すかもしれん。特にお前が《絆の勇者》と話している時など、胸が痛いだけでなく、なにやらモヤモヤとした嫌な気持ちになるのだ。仲間同士が仲良くしていることは……絆を深めることは、良いことなのに。このままでは《絆の勇者》との絆にも影響してしまうかもしれない。もはや、背に腹は代えられなかった。すまない」
 真剣に申し訳なく思っているのだろう。ヒュンケルは深々とラーハルトに頭を下げた。珍妙な状況ではあるものの、ラーハルトにとってヒュンケルは唯一無二の友であり、その友からこうした態度を取られれば無下にもできない。ラーハルトは再び、大きく息を吐いた。
「で、お前はオレにどうしてほしいのだ?」
 ヒュンケルが話を聞いてほしくて、ただそれだけで己の元にやってきたわけではないだろうことに察しはついていた。ならば、と水を向けてみたところ返ってきたのは盛大な「告白」……ではなかった。
「オレをこっぴどく振ってほしい、ラーハルト」
「はぁ!? どうしてそうなる」
「お前にその気がないと分かれば諦めがつくというもの。さぁ、はっきり振ってくれ」
 ヒュンケルは姿勢を正してラーハルトの言葉を待った。
「お前はオレのことが好きなのか」
「……多分」
「……何だそれは」
「よくわからんのだ。お前と知り合ってからわからないことだらけだ。このところお前に感じる想いはクロコダインやダイ、《絆の勇者》達に対しては感じない。お前にだけ感じるんだ。こんな気持ちは初めてで、正直、戸惑っている」
 眉尻を下げて参ったと言わんばかりのヒュンケルの表情にラーハルトは三度目のため息をついた。
「自分でもわからぬ癖に振ってくれとは随分身勝手だな」
「す、すまない。だが……こんな勝手はお前にしかできない。なぁ、実際の所、オレのことをどう思っている?」
「そうだな……」
 ラーハルトは改めてヒュンケルを眺めた。均整の取れた美しい肉体、ふわふわと柔らかそうな銀色の髪、陶器のように滑らかな白い肌、意志の強そうなペリドットの瞳、愛らしい小さな唇。うむ、悪くない。
「まぁ、抱けるな。男相手は未経験だが、お前は美しいしオレの好みではある」
「ま、待て。ラーハルト! なぜそんな話になるんだ。オレは気持ちの問題を聞いているのであって……」
「だが、その先には肉体関係があるだろう? まさか貴様、そんなことも知らないのか」
「ゔ、知識としては知っているが……」
 経験はない、と蚊の鳴くような小さな声で打ち明けるヒュンケルの顔は真っ赤である。相当恥ずかしいのだろう。目線をそらしてうつむく姿は年相応で愛らしささえ感じさせる。それにラーハルトは煽られる。
「いいな、今のお前にはそそられた。ヤッてみるか?」
「え!? いや、待てラーハルト!」
「わかるかもしれんぞ? お前が抱えたその気持ちが何なのか、すっきりしたくはないのか?」
 有無を言わさず畳みかけるとヒュンケルは一瞬考えこんで、「わかった」と神妙に頷いた。

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 ラーハルトはゆらゆらとゆれるグラスの中の液体を眺めていた。これから親友を抱く。
 それに迷いはないものの、友が部屋を訪れるまで何とはなしに手持無沙汰で、幼い主から下賜されたワインを飲んでいる。(助けた住民からもらったそうだが子供なので飲めないからあげると言われたのだ。)
 
 薄々、己の想いには気づいていた。
 ヒュンケルを見ていると湧き上がる愛しさ、彼が他の仲間――特にピンクの髪の女に接するのを見ると感じる怒りは恐らく嫉妬だろう。
 正直に言えば、自分とて、ヒュンケルに対する気持ちはこれまで生きてきた中では感じたことのないものだった。当初はこれが初めてできた親友に対する強い友情なのだと思った。だが、過去に抱いてきた女たちの話に照らし合わせると、今の気持ちが恋情を含んでいるのは明らかだ。それくらいはわかる。
 なのに、ヒュンケルは――。
 ラーハルトはもはや何度目になるかわからないため息をついた。わからないというならば、思い知らせてやらねばならない。己の想いを、彼自身の想いを。
 そう決意して、ゆらゆら揺れるグラスの中の液体を一気にあおった。

 
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 湯あみを終えて、友の部屋を訪れたヒュンケルは緊張していた。初めての相手が親友であるというのがなんとも気まずいのだが、親友はそのあたり全く気にしていないようで余裕の笑みさえ浮かべている。
「さて、どうする?」
「……よろしく頼む」
「任せておけ。優しくしてやる」
 ベッドの上で向かい合い、ラーハルトが手を伸ばしてくる。ヒュンケルが身を固くしていると、男の手が頬に触れた。
「そうかたくなるな」
「すまん」
「謝ることではない」
「あっ……」
 ラーハルトの手がゆっくりと顔から首筋を撫でる。そのまま胸元へ降りていき、服の上を滑るように腹へと移動していくと、ヒュンケルは思わず声を上げた。男の指先が臍に軽く触れるとそこからゾクゾクと得体の知れない感覚が広がる。目の前の親友は熱のこもった瞳でニヤリと笑う。それに心臓が跳ね上がりカッと全身が熱くなった。だめだ、彼を、友を見ていられない。視線を逸らすと、耳元に口づけられビクリとする。
「どうした? もっと顔を見せろ」
「む、無理だ」
「恥ずかしいのか? 可愛い奴め。ならば」
 くるりと視界が反転しシーツが見えた。背中に触れる男の体温。ピタリと触れ合ったままギュウッと抱きしめられる。
「これでどうだ?」
「し、心臓が張り裂けそうだ。ドキドキして……痛い」
「フッ、そうか。ではゆっくり抱いてやろう。もっともっとオレを感じさせてやる」
 ラーハルトはヒュンケルのシャツに手をかけ捲り上げる。露わになった肌に吸い付くように手を這わせながら唇を寄せた。チュッチュッと音を立てて何度もキスを落とすと、白い肢体がぴくりと震える。それを楽しみつつ、舌先でちろちろと舐めると、ヒュンケルが息を詰める気配がした。構わずに続ける。
「っあ、んぅ……」
「ここがいいのか?」
「ひゃう!?  ま、待ってくれ」
「なぜ?」
「変な感じがするんだ……。そこを触られると頭がぼうっとしてくる……」
「それはいい兆候だな。オレに身を任せていればよいのだ」
 そう言うとラーハルトは再び身体中を愛撫し始めた。彼の大きな手で触れられるとどこもかしこも性感帯になってしまったかのように感じる。脇腹をなぞられて背筋がぞくぞくとし、後ろから胸を揉まれ、乳首を摘ままれると腰が跳ねた。臍をくすぐられると下腹部に甘い疼きが生まれる。太腿の内側をそっと撫で上げられれば膝がガクガクと震えてしまう。自分の体が自分のものではないようだ。熱くて熱くてとろけそう。そして、
「ヒュンケル」
 優しく己の名を呼ぶ親友の声には甘やかな響きがあって。気づく。ああ、そうだ、この行為は――。
「ラーハルト、もうやめてくれ」
 ヒュンケルは起き上がり、ラーハルトに向き合うと手で彼を制した。
「なんだ? 今更怖気づいたのか?」
「違う!  でも、やはりこれは愛し合う者同士がすべき行為だ。オレの一方的な思いだけですべきものではない。ラーハルト……お前にはちゃんと想い合った人と結ばれてほしい……」
「フン! 貴様は相変わらず他人のことばかり気にする……。その体を使ってオレを魅了したらどうだ? 惚れるかもしれんぞ?」
「それはない。そんなことで想いを変えるような男ではない、お前は」
 ヒュンケルはラーハルトの目を見てキッパリと言い切った。
 その言葉に嘘はなかった。それにラーハルトは一瞬、気圧される。
「すまない。ラーハルト、こんなことをさせて……」
「謝るな!」
 どさり、と再びヒュンケルを押し倒して、ラーハルトは彼を睨みつける。
「今大事なのは貴様の気持ちだ。お前はどうなんだ? 抱かれたいのか、抱かれたくないのか?」
「お前が……」
「逃げるな。答えを聞かせろ」
 強い瞳で問われて、今度はヒュンケルが気圧された。まるで戦闘中のよう。妙な高揚感が体中に広がる。だめだ、だめだ。だめなのに。
「……ラーハルトとシたい……」
 許されるのなら、彼に思いのすべてをぶつけたい。受け止めてほしい。そして、自分も彼のすべてを受け入れたい。そんな欲望があふれる。抱きしめたい、抱かれたい。でも、でも。
「オレは……ラーハルトにはふさわしくない」
「オレがいつ、ふさわしくないなんて言った? オレもお前を抱きたい」
「同情などいらん……!」
「同情ではない! 好きだ、ヒュンケル」
 ラーハルトの言葉にヒュンケルは大きく目を見張り、信じられないという顔をした。
「馬鹿な……だって、」
「すまん。最初から言っておくべきだった。だが、お前があまりに鈍いから苛めたくなってしまったのだ。女ならいざ知らず男など好きでもないのに抱けるか!」
「本当か?……こんなオレでも抱けるのか?」
「抱ける。いや、抱きたい。ほら、わかるだろ?」
 ぐいっと押しつけられた下半身はすでに熱を持っていた。そのあまりの熱さと大きさに思わず体がびくりと震えた。
「怖いか?」
「こ、怖くなどない!」
 ウソだった。本当は少しだけ怖かった。男の身でソレを受け入れられるのか、そして受け入れてしまったら自分は何か変わってしまうのではないかという恐れもあった。身が竦む。それにラーハルトは苦笑を漏らすのだ。
「安心しろ。最後まではしない。生娘につけこむような真似はしたくないからな」
「な……だ、誰が生娘だ!」
「違うのか?」
「……っ!」
 真っ赤になって黙り込むヒュンケルをラーハルトは愛しげに見つめると、そっと頬に口づけた。そのまま首筋に吸い付き舌を這わせながら、ゆっくりと服を脱がせていく。
「あっ……ラー、ハルト? シないんじゃ……」
「最後までは、な。だが、オレがどれだけお前を欲しているかはわかってもらうぞ。続き、シてもいいな?」
 こくん、と小さな頷き。
 それを見届けると、ラーハルトも自らの衣服に手をかけた。
 
 
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「あ……ぁ、ぅん……」
 寝台の上で、ラーハルトはヒュンケルの身体中にキスの雨を降らせていた。その度にビクビクと震える体に愛しさが増すばかり。
「や……ラーハルト。オレはもうおかしくなりそうだ」
「まだ序の口だ。これからもっと気持ちよくしてやる」
「これ以上……?  ひゃう!?」
 胸の突起を摘ままれて、ヒュンケルは甲高い声を上げた。今まで感じたことの無い感覚に戸惑っていると、今度はその先端にちゅぱりと吸いつかれる。
「ふあ……んッ」
 その刺激だけでイってしまいそうになるほど、気持ちいい。
「可愛いぞ、ヒュンケル」
「かわいく、なんか……」
「お前はかわいい」
「ひっ!」
 かり、と軽く歯を立てられて、痛みと同時に快感が押し寄せる。もう片方の手で乳首を弄られながら、もう片方の手は下腹部へと伸ばされていき……。
「そこ……そこはだめだ」
 すでに反応を示しているそこに触れられ、ヒュンケルはいやいやと頭を振る。しかしラーハルトは止めるどころかゆっくりと擦り上げてきた。
「だめじゃないだろう?  ここ、こんなにして」
「あ……だめ、本当にだめ……だ!  出てしまう!」
「出せばいいだろ」
「でも……お前が、まだ……」
「なら、触れてくれ。一緒にイきたいんだろ?」
「あっ……」
 すり、と股間に手を誘導されて、ヒュンケルはおずおずとその場所に指を伸ばす。既にガチガチになっているそれに自分のものを重ねて、ラーハルトと一緒に上下に動かし始めた。
「は……あ、すごい……熱い、な」
「ああ、すごく興奮する……」
「んっ……ふ、ぅ……」
 
二人分の先走りが混ざり合って、グチュリという卑猥な音を立てる。それが更に二人の鼓動を高めていった。
「んっ……あ、ラーハルト! らぁはるとっ!」
「ヒュンケル……好きだ。愛している」
「オレも。オレも……お前が……!」
どちらからともなく唇を合わせ、互いの舌を絡め合う。くちゅくちゅと唾液を交換しあい、呼吸さえ奪い合いながら二人は絶頂を迎えた。
「ふぁ……! 出る、あ……ああ!」
「オレも……く……!」
びゅく、と勢い良く吐き出された白濁液がヒュンケルの腹に飛び散った。
「は……いっぱい出たな」
「言わなくて、いい……!」
恥ずかしさのあまり顔を背けようとするが、その前にラーハルトがその顎を掴んで口付ける。
「どうだ? 答えは出たか?」
「……ん」
小さく、だがしっかりとした返事が返ってきた。
「オレも、ラーハルトが好きなんだと思う」
「思う?」
意地悪く聞き返す男に、ヒュンケルは真っ赤になりながらも言い切った。
「好き、だ」
「ようやくわかったみたいだな」
「ああ。だが、ラーハルトは《絆の勇者》のことが好き、じゃないのか?」
「今までの流れで……なぜそうなる?」
「だってお前はよく《絆の勇者》に『お前に会えてよかった』とか言っているじゃないか。オレには一度しか……」
「お前、意外と嫉妬深いんだな」
「そ、そんなつもりでは――」
 少し呆れたように言われて、ヒュンケルはムキになって反論する。が図星である。
《絆の勇者》に嫉妬、そんな子供っぽい自分に羞恥を覚えていると、ラーハルトはくすりと笑って言った。
「確かに《絆の勇者》にも一目置いているがあんなコドモに手を出すか、バカモノ。オレがこういうことをしたいと思うのは……愛しているはお前だけだ、ヒュンケル」
そう言ってラーハルトはもう一度口づけたのだった。
それにヒュンケルの心のもやがゆっくりと溶けていった。

その後、ラーハルトと晴れて恋仲となったヒュンケルが「礼だ」と、ポップとピラにたくさんの薬草を届けたのはまた別のお話。

おしまい
 
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