Jewka

・ステキやブクマを押してくださり、ありがとうございます〜!大変嬉しいです!

◆成人済みの文字書き

*高校星歌劇 スタミュ:【天星、遥海、空那、申辰、魚双、北蜂、鳳柊】
*殺人探偵ジャック・ザ・リッパー:【ハリアサ】
*Kingdom Hearts:【陸空、兎弁】
*進撃の巨人:【ジャンアル】
*ファイアーエムブレム if:【スズラズ、ゼロレオ】
*ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣:【ナバマル】
*美男高校地球防衛部LOVE!:【草熱、燻阿古、煙有、VEPPer(ハルアキ)】
*美男高校地球防衛部HAPPY KISS!:【ななちろ、阿多鏡】
*誰ガ為のアルケミスト:【リガアル、ルシレシ】
*とある魔術の禁書目録:【土上】
*Free!:【遙渚】
*ファイ・ブレイン 神のパズル:【ルクカイ】
*隠の王:【帷壬】
*ジュラシック・ワールド:【ザクグレ】

投稿日:2016年10月13日 13:05    文字数:5,794

哀愁の秋

ステキ数:5
コメントを送りました
ステキ!を送りました
ステキ!を取り消しました
ブックマークに登録しました
ブックマークから削除しました
コメントはあなたと作品投稿者のみに名前と内容が表示されます
お題企画に参加させていただきます。

草津錦史郎が有馬燻に鬼怒川熱史への想いを話す内容です。熱史くんへの想いが強すぎて恋バナする草津様っていいなあと思いました。

防衛部2期が終わってしまいましたが、未だに私の中で草津様の「熱っちゃんにメールを送ったのに返事が来ないから、悪い予感がしたんだ」がもう強く響いてて…熱史くんからの返事が来ないだけでバビューンとすぐに帰るなんて熱史くん愛が非常に伝わりました。本当にありがとうございました。それらを見られてかっこよかったです。このまま呟いてるとキリがないので、お目汚し失礼致しました。
1 / 1





周りの木の色合いを見ると、秋を実感する。歩道に多く落ちてる枯れ葉。それらを踏んで歩くと、カサカサと耳を擽るような音はこの時期しか聴けない。この頃僕らはリムジンなどを交通利用する日々が多くて、歩く事は少ないくらいだ。外の空気を吸うのも大事かと思って、俺は散歩を提案した。たまには、リムジンだけでなく庶民な気分を味わうのもいいかなって。チラリ、と錦史郎を見る。錦史郎が切なさそうに顔を歪めていた。それを見るのは、これで何回目だろう。そんな顔をされたら、まるで『有馬』と呼ばれた風に錯覚するし、聞いてみたいと思ってしまうよ。錦史郎が今何を考えているのかも知ってる。一体誰を想って、錦史郎が切なさそうに顔を歪めて、錦史郎にそんな表情をさせる人物は誰なのか知ってる。自分でも恐ろしいくらいに、知ってるのは気が引ける。本題に入る前に、少し間を置くように話しかけてみようかな。

「もう、あっという間に秋だね」
「…そうだな」
「それと、人恋しい季節でもあるよね」

そう言った直後に、微かにビクリと体を揺らした錦史郎を見逃さなかった。まじまじと眺めてみると、横顔だけど歩く度に錦史郎の横髪が後ろへと引っ張られるように揺れて、一瞬と頬が見えたとき元気なさそうに見えた。そんなにも、彼を想っているんだな。これじゃあ見ていてバレバレだよ。錦史郎の反応は本当にどこから見ても分かりやすい。心配になるくらい、放って置けないと心が駆られる。色んな方面で優秀な錦史郎だけど、こういう場面は苦手なんだと分かる。困った僕らの会長様だ。聞きたい事もあるし、話が長くなりそうだ。近くにあるベンチに視線を移す。

「錦史郎、座って話でもしない?」
「別に構わないが、有馬は用事でもあるのではないか?」
「俺は急ぎの用事は無いから。錦史郎がいいなら話したいな」

ベンチに座れば、錦史郎が『分かった』と言いながら隣に座り始めた。ふぅ、と息を漏らす錦史郎の隣で俺は背筋をピンと伸ばすように両腕を上げて、深呼吸をする。秋の空気はいいものだね。俺はこうして体を動かしてるけど、錦史郎は変わらずジッとしたままだ。「錦史郎も体を伸ばせばいいのに…気持ちいいよ?」と言いたい所だけど、黙ってしまう。別に俺達は喧嘩なんてしていないのに。でもそんな事じゃなくて、俺が言いたいのは。

「どうして、錦史郎は…そんなに鬼怒川の事が好きなの?」

思った事をそのまま言ってしまった。ついに口にしてしまった。「そんなに」は余計な一言だったかもしれない。ただ、錦史郎が鬼怒川の事を考えてる分が多いのは事実で、無意識にそう口に出していた。

(錦史郎、怒っちゃったかな)

錦史郎を見れなくて、代わりにチラリと横目で見る。はっきりと錦史郎がどういう表情してるのかも把握できない。そこまで見ようと思わないけれど。でも、それは建前で本当は、錦史郎がどんな表情をしてるのか、それを見るのが怖いのかもしれない。

「…突然だな」

その発せられた声は、か細いように感じた。それでも俺の視線は横目から真っ直ぐ見つめるしかなかった。視線の先には綺麗に彩られてる木ばかりだ。とても静かで、人の気配も少ない。車や大型トラックの走る音ばかり聴こえてくる。こういう時に限って、周りに人がいない事に感謝すべきか否か。ただ、少し騒がしさがあってもいいんじゃないかな。さっきの質問に、錦史郎はそのまま鬼怒川の事を語るんだろう、と思い黙った。

「…熱っちゃんは、小さい頃から僕にとってヒーローで、強くて優しくて…でも、実はよく見れば隙だらけの部分もあって…僕はそんな彼から目を離せなくなっていた。彼を見れば見るほど…放って置けないと思った。いつから、だろうな…こんなにも…熱っちゃんばかりを想って、彼ばかりを見て、求めていたのだろうか。気が付けば頭の中が熱っちゃんだ」

頭に金槌でも打たれたような衝撃が走る。ほらね、やっぱりだ。予想通りに知ってはいたけれど、いざ耳にするとズシン、と胸の辺りに重たいものを感じる。錦史郎の一つ一つの言葉が心に響く。錦史郎の話はまだ終わらない、と吹いてる風が告げてるようで、そう聴こえる。これから長く語るんだろう、錦史郎。

(…分かってはいたんだけど)

もやもやを吐き出すように息を吐く。俺は真っ直ぐ見ていたけど、下を見る。特に何か気になったわけでもない。ただ、そうするように顔が勝手に動いた。それなら、隣の錦史郎を見られたらいいのに。それでも、そうしないのは何でだろう。

「そっか。でも、勿体無い気がするな。錦史郎はもうちょっと視野を広くしたほうがいいと思うよ」
「視野を広く…とは?」

聞いてきたから反射的に錦史郎の方に顔を向く。すると、錦史郎は不思議そうに目をぱちくりさせていた。まるでその姿が子供に見えてしまって、普段厳格を表すような顔付きとは程遠くて少し笑いそうになって頬が緩む。けれどグッと堪えるように、奥歯を噛む。

(いつの間に、そんな表情もできるようになったの)

きっと、鬼怒川と仲直りし始めた頃だろうな。鬼怒川と仲直りして以来、それからの錦史郎の表情を見ると、だんだん柔らかくなってくるのに気が付いた。それはまるで、正に恋をしてる女性のときみたいだ。前にテレビで見た事がある。その内容は『恋する女性は綺麗になる』だとか。俺は「へぇ…それじゃあ男は何になるんだろうね」とか1人呟いてたけど、興味が惹かれない番組だった。それを思い出せば、そんな今の錦史郎の姿を見ると、さらに綺麗になった気がする。恋をして綺麗になるのは女性でもあり男性も、でしょ。鬼怒川の前だと錦史郎は乙女っぽいけどね。

「鬼怒川の他に、この人もいいなと思える候補を挙げておいたほうが少し楽になるんじゃないかって」

鬼怒川を一途に想うのは、さすがに辛いからね。誰かを一途に想っても、すぐに実るなら幸運の持ち主だけど、少ない場合が現実で悲しい結末になるのが殆どだ。何年も、何十年もその人を想い続けてても相手がいれば諦めざるをえない。片思いは本当に辛いし、焦る。

「その候補の人にも目を向けて見たら、何かいい結果に転がったりするかもしれないよ。全てが鬼怒川じゃなくてもいいと、俺はそう思うんだけど?」

昔と比べて今は幸せそうな顔をしたり表情が豊かになった錦史郎だけど、もうこれ以上また錦史郎が暗い顔をして辛そうに抱え込んで痛々しい表情をし始めたら、俺は見てられないしこっちまで苦しくなる。また錦史郎にそういう表情をさせたら俺は黙っていられないし、鬼怒川を責めそうだ。なら、錦史郎には候補が居てもいいじゃないか。傷付かないように、心の傷口の捌け口も用意すればいいよ。

「有馬……」

錦史郎は惚けた表情だ。俺は「もう楽になってもいいんじゃないの」と内心呟きながら錦史郎に向けて優しく微笑んだ。錦史郎の事だから『それもいいかもしれないな』と他の方法を考えたりもするだろう。だけどまさか、次の錦史郎の言葉で驚く事になるなんて。

「…それは出来ないな。僕の心の中では、熱っちゃん一筋だとあの頃から誓ったのだ。熱っちゃん以外の奴なんて考えられない」

さっきまで弱々しい姿を見せてたのに、今は嘘のようにツンとムッとしたような眉を顰める顔だ。発せられた言葉達には、力強く自信があるように伝わった。

(じゃあ、さっきのは何だったの…?)

「そうなんだ…」と言って、ははは…と乾いた苦笑いしか出なかった。余計なお節介だったかもしれない。それと、そんな自信たっぷりに言われると、切なく胸が締め付けられるように苦しい。頑固な錦史郎と思えば錦史郎らしいな。でも、いつまでそうやって鬼怒川を想うの。

「うーん、悲しいなあ…」
「何故、有馬が悲しむのだ」

錦史郎は難しい性格をしてるから俺は悲しいんだよ。もうちょっと軽くなってもいいんだけどなあ。ベンチに凭れかかるように上半身を後ろに預けて、目を閉じた。

「…不思議なものだ。子供の頃に誓ったとはいえ、今でも僕の中であの頃の熱っちゃんが出てきて、彼が思い出させるように囁いてきて…忘れられないのだ。本来は子供の頃に話した内容、約束、仕草など忘れた場合が多いと聞くが…熱っちゃんと話した内容や、約束や仕草など表情も僕は全て覚えている」

錦史郎は空を見上げる、にっこりと柔らかな笑みを浮かべていた。でも、やっぱり悲しみが伝わってくる。錦史郎の視線の先には鬼怒川が居るみたいだ。それから数分後、俺に顔を向けてきた。

「こういう個人的な話は、有馬と阿古哉にしか話せないな」
「…!錦史郎…」

そう言われるとは思わなくて、珍しい物を見てしまったような顔をする。自分でも、間抜けな顔で錦史郎を見ているんだろう。

「…?どうした、変なことでも言ったか?」
「っ、そうじゃなくて…錦史郎がそういう事を言うのは意外だなあって。阿古哉も予定が合えば、3人で散歩したかったね」
「そうだな。今日は阿古哉が居ないのは残念だ。……その、まだ熱っちゃんの話の続きをしても構わないか?」
「もちろん構いませんよ」

頬を赤らめておずおずしながら聞く錦史郎。本当に鬼怒川の事になると、乙女のような反応するんだから。改めて思うのは、錦史郎の世界では鬼怒川が回ってるという事。幼い頃に錦史郎と初めて出会うその前は錦史郎と鬼怒川は幼馴染なのは分かっていた。何故なら、両親に聞かされていた。そして、錦史郎と鬼怒川が一緒に遊んでいた所に、俺の両親の付き添いでご挨拶しに行った。一歩、一歩と2人に近付いて見ながらの数秒間、話に聞いていた通り2人は仲良く遊んでいた。覚えてるいるのは、錦史郎は鬼怒川の腕に触れてて、鬼怒川は嬉しそうに笑っていた。

(ああ、懐かしいな…確かに、そうだったな)

あの光景を例えるとすれば、よく有名な絵画で見る天使達の戯れのようなものに近い。まさかまだ覚えていたなんてね、とひっそり静かに笑う。錦史郎の話に耳を傾けるように見る。

「それで、熱っちゃんは本当にかっこよくて…でもとても可愛らしい一面もある事に気が付いた。僕と違って感情表現が豊かで、素直で…笑顔が本当に天使なようで…ずっと見ていたくなるように癒されるのだ。僕は感情表現をあまり上手く出せないから、熱っちゃんみたいに素直に出せたらいいなと憧れている。あとは…そうだな、熱っちゃんは誰にでも優しい。優しすぎる…それが時々見てて、不安になってしまう」

最初は明るく話し始めていたが、錦史郎の表情はだんだん曇り顔に染められていく。錦史郎は両手を組んで、口元を覆った。

「熱っちゃんを見ていないときでも、こうして熱っちゃんと離れているとき、彼は今どこかで…僕に優しくしているように…他の者にも同じように優しくしていると思うと……正直、辛いのだ。僕だけ…僕だけ優しくすればいいのに…僕だけを見ればいいのに……熱っちゃんは、誰にでも平気で、笑顔を向けるんだ。僕は…僕は熱っちゃんだけ、熱っちゃんだけを見ているのに…これまで彼の事しか考えてないのに……なのに、そんな僕を知らずに期待させて苦しめる熱っちゃんのそういう所が、悪魔だ」

とうとう錦史郎は、自身の太腿に上半身を倒すように頭も下げて塞ぎ込み始めた。鬼怒川への想いがだんだん強く加速しているのが分かる。風がひんやり冷たくなってきたように、頬から感じ取れる。どれくらい時間は経過してるのか。そんなに、時間は経ってないかと思っていた。でも、今この時間だけ真っ暗でいいのに。そうすれば、錦史郎も安心できたのかもしれない。横からそっと、錦史郎の鼻を啜る音が聴こえてきた。大丈夫だよ、大丈夫だから、と背中を優しく擦ってあげたいけど俺では出来ない。錦史郎が求めてるのは俺じゃないからだ。錦史郎にとって、こうして今にも背中を擦ってもらったり、抱き締めてもらいたいのは鬼怒川なんだから。静かにそっと泣いている錦史郎をジッと眺める事しかできない。

(あぁ……無理しちゃって)

誰に向けて、そう心の中で呟いたのか自分でも分からない。どっちが無理してるんだか。

「熱っちゃんの事がたまらなく好きだ…大好きだ……そんな所も嫌いになれないし、嫌いになれるわけがない……愛してる。鬼怒川熱史という存在を僕だけが独占したい。熱っちゃんの頭の中、心と体も僕でいっぱい埋め尽くしたい。彼の笑顔も仕草も全部僕のものにしたい。彼の見る世界を僕だけにして。許されるならばーーーー」

その後に続く錦史郎の言葉に俺はブルリ、と震えた。さっき長々と話した鬼怒川への想いはまだ可愛いほうだと思える。これじゃ手に負えない、と初めて錦史郎にそういう恐怖心を抱くなんて。それほど正真正銘に鬼怒川に強く執着して心酔している。恐れ入るなあ。

「はぁ、なるほどね。参ったよ…まさか錦史郎がそんな風に鬼怒川に対してそういう願望をお持ちだったとは」
「仕方あるまい、それくらい…熱っちゃんが可愛すぎて……罪だ」

もうさっき話していた事を全て直接、鬼怒川に話せばいいんじゃないかな、と錦史郎の言葉や反応を見ていると、そう思わざるをえないくらい焦らされてる気分だ。

「ふぅ、有馬に話したら少し楽になった。長々と聞いてくれて感謝する。肌寒くなってきたな、そろそろ帰るか」

錦史郎はそう言って立ち上がって、帰る方向へ足を向かせた。俺は「そうだね」と答えて立ち上がって、近くの電柱の明かりを眺めた。

「ねぇ、錦史郎」
「ん?何だ有馬」
「今度、鬼怒川と2人で散歩してきたら?この辺りは、人気も少ないし2人っきりになれるんじゃない?」
「〜〜〜〜〜っ!!あ、ああ……熱っちゃんを誘ってみる…っ…」

錦史郎がボボボっと顔を真っ赤に染め上げた。鬼怒川と何を想像したのか、分かりやすくてクスリ、と笑った。本当に鬼怒川といい会長といい、幼馴染って本当に。俺は幼馴染がいた事ないから分からない。今後もこの幼馴染に目が離せなくなるなあ。この幼馴染同士の恋が実るように、と静かに胸の辺りで両手を合わせながら願う。そうして、空の夕日を見上げながら自分の家に向かって歩いた。
1 / 1
コメントを送りました
ステキ!を送りました
ステキ!を取り消しました
ブックマークに登録しました
ブックマークから削除しました

コメント

ログインするとコメントを投稿できます

是非、コメントを投稿しましょう
ほとんどの作者の方は、「萌えた」の一言でも、好意的なコメントがあれば次作品への意欲や、モチベーションの向上につながります。
コメントは作品投稿者とあなたにしかコメントの内容が表示されず、文字制限は140文字までとなりますので、あまり長いコメントを考える必要はありません。
是非、コメントを投稿して頂き、皆様と共にBLを愛する場所としてpictBLandを盛り上げていければと思います。
哀愁の秋
1 / 1





周りの木の色合いを見ると、秋を実感する。歩道に多く落ちてる枯れ葉。それらを踏んで歩くと、カサカサと耳を擽るような音はこの時期しか聴けない。この頃僕らはリムジンなどを交通利用する日々が多くて、歩く事は少ないくらいだ。外の空気を吸うのも大事かと思って、俺は散歩を提案した。たまには、リムジンだけでなく庶民な気分を味わうのもいいかなって。チラリ、と錦史郎を見る。錦史郎が切なさそうに顔を歪めていた。それを見るのは、これで何回目だろう。そんな顔をされたら、まるで『有馬』と呼ばれた風に錯覚するし、聞いてみたいと思ってしまうよ。錦史郎が今何を考えているのかも知ってる。一体誰を想って、錦史郎が切なさそうに顔を歪めて、錦史郎にそんな表情をさせる人物は誰なのか知ってる。自分でも恐ろしいくらいに、知ってるのは気が引ける。本題に入る前に、少し間を置くように話しかけてみようかな。

「もう、あっという間に秋だね」
「…そうだな」
「それと、人恋しい季節でもあるよね」

そう言った直後に、微かにビクリと体を揺らした錦史郎を見逃さなかった。まじまじと眺めてみると、横顔だけど歩く度に錦史郎の横髪が後ろへと引っ張られるように揺れて、一瞬と頬が見えたとき元気なさそうに見えた。そんなにも、彼を想っているんだな。これじゃあ見ていてバレバレだよ。錦史郎の反応は本当にどこから見ても分かりやすい。心配になるくらい、放って置けないと心が駆られる。色んな方面で優秀な錦史郎だけど、こういう場面は苦手なんだと分かる。困った僕らの会長様だ。聞きたい事もあるし、話が長くなりそうだ。近くにあるベンチに視線を移す。

「錦史郎、座って話でもしない?」
「別に構わないが、有馬は用事でもあるのではないか?」
「俺は急ぎの用事は無いから。錦史郎がいいなら話したいな」

ベンチに座れば、錦史郎が『分かった』と言いながら隣に座り始めた。ふぅ、と息を漏らす錦史郎の隣で俺は背筋をピンと伸ばすように両腕を上げて、深呼吸をする。秋の空気はいいものだね。俺はこうして体を動かしてるけど、錦史郎は変わらずジッとしたままだ。「錦史郎も体を伸ばせばいいのに…気持ちいいよ?」と言いたい所だけど、黙ってしまう。別に俺達は喧嘩なんてしていないのに。でもそんな事じゃなくて、俺が言いたいのは。

「どうして、錦史郎は…そんなに鬼怒川の事が好きなの?」

思った事をそのまま言ってしまった。ついに口にしてしまった。「そんなに」は余計な一言だったかもしれない。ただ、錦史郎が鬼怒川の事を考えてる分が多いのは事実で、無意識にそう口に出していた。

(錦史郎、怒っちゃったかな)

錦史郎を見れなくて、代わりにチラリと横目で見る。はっきりと錦史郎がどういう表情してるのかも把握できない。そこまで見ようと思わないけれど。でも、それは建前で本当は、錦史郎がどんな表情をしてるのか、それを見るのが怖いのかもしれない。

「…突然だな」

その発せられた声は、か細いように感じた。それでも俺の視線は横目から真っ直ぐ見つめるしかなかった。視線の先には綺麗に彩られてる木ばかりだ。とても静かで、人の気配も少ない。車や大型トラックの走る音ばかり聴こえてくる。こういう時に限って、周りに人がいない事に感謝すべきか否か。ただ、少し騒がしさがあってもいいんじゃないかな。さっきの質問に、錦史郎はそのまま鬼怒川の事を語るんだろう、と思い黙った。

「…熱っちゃんは、小さい頃から僕にとってヒーローで、強くて優しくて…でも、実はよく見れば隙だらけの部分もあって…僕はそんな彼から目を離せなくなっていた。彼を見れば見るほど…放って置けないと思った。いつから、だろうな…こんなにも…熱っちゃんばかりを想って、彼ばかりを見て、求めていたのだろうか。気が付けば頭の中が熱っちゃんだ」

頭に金槌でも打たれたような衝撃が走る。ほらね、やっぱりだ。予想通りに知ってはいたけれど、いざ耳にするとズシン、と胸の辺りに重たいものを感じる。錦史郎の一つ一つの言葉が心に響く。錦史郎の話はまだ終わらない、と吹いてる風が告げてるようで、そう聴こえる。これから長く語るんだろう、錦史郎。

(…分かってはいたんだけど)

もやもやを吐き出すように息を吐く。俺は真っ直ぐ見ていたけど、下を見る。特に何か気になったわけでもない。ただ、そうするように顔が勝手に動いた。それなら、隣の錦史郎を見られたらいいのに。それでも、そうしないのは何でだろう。

「そっか。でも、勿体無い気がするな。錦史郎はもうちょっと視野を広くしたほうがいいと思うよ」
「視野を広く…とは?」

聞いてきたから反射的に錦史郎の方に顔を向く。すると、錦史郎は不思議そうに目をぱちくりさせていた。まるでその姿が子供に見えてしまって、普段厳格を表すような顔付きとは程遠くて少し笑いそうになって頬が緩む。けれどグッと堪えるように、奥歯を噛む。

(いつの間に、そんな表情もできるようになったの)

きっと、鬼怒川と仲直りし始めた頃だろうな。鬼怒川と仲直りして以来、それからの錦史郎の表情を見ると、だんだん柔らかくなってくるのに気が付いた。それはまるで、正に恋をしてる女性のときみたいだ。前にテレビで見た事がある。その内容は『恋する女性は綺麗になる』だとか。俺は「へぇ…それじゃあ男は何になるんだろうね」とか1人呟いてたけど、興味が惹かれない番組だった。それを思い出せば、そんな今の錦史郎の姿を見ると、さらに綺麗になった気がする。恋をして綺麗になるのは女性でもあり男性も、でしょ。鬼怒川の前だと錦史郎は乙女っぽいけどね。

「鬼怒川の他に、この人もいいなと思える候補を挙げておいたほうが少し楽になるんじゃないかって」

鬼怒川を一途に想うのは、さすがに辛いからね。誰かを一途に想っても、すぐに実るなら幸運の持ち主だけど、少ない場合が現実で悲しい結末になるのが殆どだ。何年も、何十年もその人を想い続けてても相手がいれば諦めざるをえない。片思いは本当に辛いし、焦る。

「その候補の人にも目を向けて見たら、何かいい結果に転がったりするかもしれないよ。全てが鬼怒川じゃなくてもいいと、俺はそう思うんだけど?」

昔と比べて今は幸せそうな顔をしたり表情が豊かになった錦史郎だけど、もうこれ以上また錦史郎が暗い顔をして辛そうに抱え込んで痛々しい表情をし始めたら、俺は見てられないしこっちまで苦しくなる。また錦史郎にそういう表情をさせたら俺は黙っていられないし、鬼怒川を責めそうだ。なら、錦史郎には候補が居てもいいじゃないか。傷付かないように、心の傷口の捌け口も用意すればいいよ。

「有馬……」

錦史郎は惚けた表情だ。俺は「もう楽になってもいいんじゃないの」と内心呟きながら錦史郎に向けて優しく微笑んだ。錦史郎の事だから『それもいいかもしれないな』と他の方法を考えたりもするだろう。だけどまさか、次の錦史郎の言葉で驚く事になるなんて。

「…それは出来ないな。僕の心の中では、熱っちゃん一筋だとあの頃から誓ったのだ。熱っちゃん以外の奴なんて考えられない」

さっきまで弱々しい姿を見せてたのに、今は嘘のようにツンとムッとしたような眉を顰める顔だ。発せられた言葉達には、力強く自信があるように伝わった。

(じゃあ、さっきのは何だったの…?)

「そうなんだ…」と言って、ははは…と乾いた苦笑いしか出なかった。余計なお節介だったかもしれない。それと、そんな自信たっぷりに言われると、切なく胸が締め付けられるように苦しい。頑固な錦史郎と思えば錦史郎らしいな。でも、いつまでそうやって鬼怒川を想うの。

「うーん、悲しいなあ…」
「何故、有馬が悲しむのだ」

錦史郎は難しい性格をしてるから俺は悲しいんだよ。もうちょっと軽くなってもいいんだけどなあ。ベンチに凭れかかるように上半身を後ろに預けて、目を閉じた。

「…不思議なものだ。子供の頃に誓ったとはいえ、今でも僕の中であの頃の熱っちゃんが出てきて、彼が思い出させるように囁いてきて…忘れられないのだ。本来は子供の頃に話した内容、約束、仕草など忘れた場合が多いと聞くが…熱っちゃんと話した内容や、約束や仕草など表情も僕は全て覚えている」

錦史郎は空を見上げる、にっこりと柔らかな笑みを浮かべていた。でも、やっぱり悲しみが伝わってくる。錦史郎の視線の先には鬼怒川が居るみたいだ。それから数分後、俺に顔を向けてきた。

「こういう個人的な話は、有馬と阿古哉にしか話せないな」
「…!錦史郎…」

そう言われるとは思わなくて、珍しい物を見てしまったような顔をする。自分でも、間抜けな顔で錦史郎を見ているんだろう。

「…?どうした、変なことでも言ったか?」
「っ、そうじゃなくて…錦史郎がそういう事を言うのは意外だなあって。阿古哉も予定が合えば、3人で散歩したかったね」
「そうだな。今日は阿古哉が居ないのは残念だ。……その、まだ熱っちゃんの話の続きをしても構わないか?」
「もちろん構いませんよ」

頬を赤らめておずおずしながら聞く錦史郎。本当に鬼怒川の事になると、乙女のような反応するんだから。改めて思うのは、錦史郎の世界では鬼怒川が回ってるという事。幼い頃に錦史郎と初めて出会うその前は錦史郎と鬼怒川は幼馴染なのは分かっていた。何故なら、両親に聞かされていた。そして、錦史郎と鬼怒川が一緒に遊んでいた所に、俺の両親の付き添いでご挨拶しに行った。一歩、一歩と2人に近付いて見ながらの数秒間、話に聞いていた通り2人は仲良く遊んでいた。覚えてるいるのは、錦史郎は鬼怒川の腕に触れてて、鬼怒川は嬉しそうに笑っていた。

(ああ、懐かしいな…確かに、そうだったな)

あの光景を例えるとすれば、よく有名な絵画で見る天使達の戯れのようなものに近い。まさかまだ覚えていたなんてね、とひっそり静かに笑う。錦史郎の話に耳を傾けるように見る。

「それで、熱っちゃんは本当にかっこよくて…でもとても可愛らしい一面もある事に気が付いた。僕と違って感情表現が豊かで、素直で…笑顔が本当に天使なようで…ずっと見ていたくなるように癒されるのだ。僕は感情表現をあまり上手く出せないから、熱っちゃんみたいに素直に出せたらいいなと憧れている。あとは…そうだな、熱っちゃんは誰にでも優しい。優しすぎる…それが時々見てて、不安になってしまう」

最初は明るく話し始めていたが、錦史郎の表情はだんだん曇り顔に染められていく。錦史郎は両手を組んで、口元を覆った。

「熱っちゃんを見ていないときでも、こうして熱っちゃんと離れているとき、彼は今どこかで…僕に優しくしているように…他の者にも同じように優しくしていると思うと……正直、辛いのだ。僕だけ…僕だけ優しくすればいいのに…僕だけを見ればいいのに……熱っちゃんは、誰にでも平気で、笑顔を向けるんだ。僕は…僕は熱っちゃんだけ、熱っちゃんだけを見ているのに…これまで彼の事しか考えてないのに……なのに、そんな僕を知らずに期待させて苦しめる熱っちゃんのそういう所が、悪魔だ」

とうとう錦史郎は、自身の太腿に上半身を倒すように頭も下げて塞ぎ込み始めた。鬼怒川への想いがだんだん強く加速しているのが分かる。風がひんやり冷たくなってきたように、頬から感じ取れる。どれくらい時間は経過してるのか。そんなに、時間は経ってないかと思っていた。でも、今この時間だけ真っ暗でいいのに。そうすれば、錦史郎も安心できたのかもしれない。横からそっと、錦史郎の鼻を啜る音が聴こえてきた。大丈夫だよ、大丈夫だから、と背中を優しく擦ってあげたいけど俺では出来ない。錦史郎が求めてるのは俺じゃないからだ。錦史郎にとって、こうして今にも背中を擦ってもらったり、抱き締めてもらいたいのは鬼怒川なんだから。静かにそっと泣いている錦史郎をジッと眺める事しかできない。

(あぁ……無理しちゃって)

誰に向けて、そう心の中で呟いたのか自分でも分からない。どっちが無理してるんだか。

「熱っちゃんの事がたまらなく好きだ…大好きだ……そんな所も嫌いになれないし、嫌いになれるわけがない……愛してる。鬼怒川熱史という存在を僕だけが独占したい。熱っちゃんの頭の中、心と体も僕でいっぱい埋め尽くしたい。彼の笑顔も仕草も全部僕のものにしたい。彼の見る世界を僕だけにして。許されるならばーーーー」

その後に続く錦史郎の言葉に俺はブルリ、と震えた。さっき長々と話した鬼怒川への想いはまだ可愛いほうだと思える。これじゃ手に負えない、と初めて錦史郎にそういう恐怖心を抱くなんて。それほど正真正銘に鬼怒川に強く執着して心酔している。恐れ入るなあ。

「はぁ、なるほどね。参ったよ…まさか錦史郎がそんな風に鬼怒川に対してそういう願望をお持ちだったとは」
「仕方あるまい、それくらい…熱っちゃんが可愛すぎて……罪だ」

もうさっき話していた事を全て直接、鬼怒川に話せばいいんじゃないかな、と錦史郎の言葉や反応を見ていると、そう思わざるをえないくらい焦らされてる気分だ。

「ふぅ、有馬に話したら少し楽になった。長々と聞いてくれて感謝する。肌寒くなってきたな、そろそろ帰るか」

錦史郎はそう言って立ち上がって、帰る方向へ足を向かせた。俺は「そうだね」と答えて立ち上がって、近くの電柱の明かりを眺めた。

「ねぇ、錦史郎」
「ん?何だ有馬」
「今度、鬼怒川と2人で散歩してきたら?この辺りは、人気も少ないし2人っきりになれるんじゃない?」
「〜〜〜〜〜っ!!あ、ああ……熱っちゃんを誘ってみる…っ…」

錦史郎がボボボっと顔を真っ赤に染め上げた。鬼怒川と何を想像したのか、分かりやすくてクスリ、と笑った。本当に鬼怒川といい会長といい、幼馴染って本当に。俺は幼馴染がいた事ないから分からない。今後もこの幼馴染に目が離せなくなるなあ。この幼馴染同士の恋が実るように、と静かに胸の辺りで両手を合わせながら願う。そうして、空の夕日を見上げながら自分の家に向かって歩いた。
1 / 1
ステキ!を送ってみましょう!
ステキ!を送ることで、作品への共感や作者様への敬意を伝えることができます。
また、そのステキ!が作者様の背中を押し、次の作品へと繋がっていくかもしれません。
ステキ!は匿名非公開で送ることもできますので、少しでもいいなと思ったら是非、ステキ!を送ってみましょう!

PAGE TOP