【カム隼R18】melt into twilight
2024/2/11 カム隼WEBオンリー「奈落の底で待ち合わせ」発行 R18/B6/194P/ブックケース・ポストカード付き ブックケース・表紙・本文挿画 ohdon様 2021~2023年再録+書き下ろし全21本 アニアクカム隼作品集 コメディ、疑似親子、現パロ、R18までごった煮闇鍋本です ピクスペにて通販受付しています https://pictspace.net/birdcage
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目次
Comedy & Others
1.泥酔ラプソディ
2.ラプンツェル
3.欲望二十四時
4.からめる
5.花百夜
6.畏憚牡丹灯籠
a man & Child
7.夕焼けチョコレート
8.オールドローズの咲く頃
9.初恋カタルシス
Modern parody
10.夏はいつもゆるやかに過ぎる
11.CALL
12.白昼堂々
13.like a kiss
14.結婚してくれるって本当ですか
15.雨傘
16.俺です好きですいけませんか
restricted18
17.ハイドアンドシーク
18.ハイドアンドシークinside
19.不完全な鼓動
20.my candy like a inferno
21.黄昏に溶けゆく
Comedy & Others
1.泥酔ラプソディ
2.ラプンツェル
3.欲望二十四時
4.からめる
5.花百夜
6.畏憚牡丹灯籠
a man & Child
7.夕焼けチョコレート
8.オールドローズの咲く頃
9.初恋カタルシス
Modern parody
10.夏はいつもゆるやかに過ぎる
11.CALL
12.白昼堂々
13.like a kiss
14.結婚してくれるって本当ですか
15.雨傘
16.俺です好きですいけませんか
restricted18
17.ハイドアンドシーク
18.ハイドアンドシークinside
19.不完全な鼓動
20.my candy like a inferno
21.黄昏に溶けゆく
3.欲望二十四時
何故この人と二人きり、こんな所に居るのか。
カムイには全く理解出来ていなかった。いや、理解出来ないというよりもしたくない、何なら頭が現在置かれている状況を全力で拒否していると言っても、過言ではなかった。
しかもこの地獄は、予定ではあと二十時間以上は続く。
(見落としたのか)
隼人に読んでおけと与えられた分厚い資料には、全て目を通した。内容も理解出来ていたはずだ。それに加えて、念押しのように一週間前に行われた伊賀利からの事前ミーティングでは、訓練の一環とのことだったが。
(何故こんなことを行う必要がある)
あの研究所において、無意味な訓練を行うことなど絶対にないはずだが、その意図が掴めない。わかっているのは自分が試されている……特に忍耐方面において、ということだけだった。
青空の下、もうもうと立ち込める湯気に邪魔されてはいるが、カムイの目の前には全裸の隼人が居る。
見たい。そんなものは猛烈に見たいが、不自然なほど視線を逸らしてしまう。そんなカムイの様子に気付かぬわけもなく、育ての親とでも言うべき人は、いつもと変わらぬ不敵な笑みを浮かべていた。
訓練当日、カムイは必要最小限の食料と必需品を詰めた背嚢を背負い、ボートに乗り込む。他の隊員たちが乗り込んでくるのを待っていたが、さっさとしろという隼人の言葉に状況を把握すると、ボートを漕ぎだした。
本州から遠く離れたこの南の島は、連合軍が戦闘訓練に使用しているのだという。予定通りの場所に上陸したカムイは目的地へのルートを確認しようとするが、それを後目に隼人は森の中へと踏み入ろうとしていた。
「神司令!」
「時間がない、行くぞ」
足早に進む隼人の後について入った森の中は鬱蒼としており、少し……いや結構蒸し暑い。当然のように道などなく、足場が悪いというよりまともに歩ける場所の方が少ない。しかし少しでも気を抜くと置いていかれそうになるので、スピードを合わせるだけでも必死にならざるを得ない。
そんな中でも、カムイには気にかかることがあった。
(おかしい)
「どうした?」
「いえ……」
岩場の上から伸びてくる手を掴むとぐい、と引っ張り上げられた。その勢いで、隼人の胸に顔から飛び込む形になってしまう。思いのほか柔らかいその感触に、これはマズイとすぐに体を起こし、体勢を立て直した。
そんなカムイの様子を眺める隼人の表情はいつもと変わらないように思うが、この島に来てからというもの、こんなことばかりが立て続けに起こっている。これはもしかして。
(試されているのか)
ハニートラップというものがあると教えてもらったことがある。
確かにカムイに対して行うなら隼人は適任だが、そこまで把握されているのかということと、この人にそこまでやらせるのか? と考える。いや、
(やる)
この人は、それくらいのことはするだろう。絶望的な結論に思い至ってからも、カムイにとってだけ過酷な訓練は続く。置いていかれないよう、しかし近付きすぎないよう。カムイは血の滲むような努力をした。
9.初恋カタルシス(書き下ろし)
最初に感じたのは親近感、もしくは一種の類似性だったように思う。
漠然と、この人は他の人と何か違うと感じた。それが何かを具体的に説明することは難しかったが、この地上に同じ種族の居ないカムイにとって、その感覚は好意を持つのに値するだけの要因となった。
「まぁあの人も、大概変わってるからな」
と旧知の仲らしい伊賀利は言う。変わっているというのはどういうことだろう。一般的な人間と違うというカムイの感覚と同じ意味だろうか。それなら確かに、隼人は研究所で見る他の職員とは違うように思う。
そうカムイが考えていたことがどうやってか伝わったらしく、慌てたような伊賀利が「ち、違うぞカムイ! 別に神司令や橘監査官が人間離れした化け物だって言ってるわけじゃないからな!」と聞いてもいないことを話し出す。何故ここで橘翔のことまで言い出すのか一瞬わからなかったが、あぁ、元2号機乗りだからかと得心がいった。ゲッター乗りというものは、普通の人間には務まらないものらしいので。
だからこそ、カムイはここで必要とされている。
「カムイ」
「はい」
音もなく隼人の真後ろに立つカムイは、普段と変わりない様子で隼人を見上げる。呼ばれたので返事をしたのだが、隼人はそれ以上何か言うことはなく、前を歩いて行ってしまった。
いつもと違いあっという間に姿が見えなくなったりしないので、カムイの速度に合わせてくれているらしい。
ついて来いということなのだろうと判断し、カムイは小走りで隼人に追いつこうとする。
歩く姿を後ろから見ると、ぼろぼろにほつれた白衣の裾がひらりと舞っている。それが何だか気になって、ぐ、と裾を掴むとその感触に気付いた隼人が歩を止めた。
「どうした」
「いえ」
振り向いて聞かれるが、衝動的に掴んだだけなので理由を説明することは出来なかった。隼人は少し首を傾げるが、すぐに前を向いて歩き出そうとする。それを見て、咄嗟にまた裾を掴んでしまった。
しまったと思ったが、隼人は気にしないことにしたらしくそのまま歩き続けている。歩調はやはり常よりも緩やかで、カムイは裾を掴んだまま少し後ろを歩くことにした。
指令室に着くと定位置となっている部屋の隅の椅子に座り、勉強用の端末を付ける。いつもと違うような気がして見回すと、昨日も今日もやけに人が少ないように思う。指令室も食堂も、格納庫も。カムイが行くことを許されている場所には大抵職員や隊員たちが大勢いることが多かったが、何処に行っても数人しか見かけない。
みんな何処へ行ってしまったのだろうと隼人に聞くと、
「あぁ正月休みだ。持ち回りだから全員ではないはずだが」
いつもよりはだいぶ少ないだろう、と隼人は言う。
「正月休み」
「あぁ、いつもは皆ここに寝泊りしていることが多いが、長い休みだからな。家に帰っているんだろう」
「家に……」
ここではない帰る場所があるなど、考えたこともなかった。そうか。皆家に帰るのか。
帰る家があり、そこで待つ人が居る。
カムイにも待つ人……母が居るが、帰る場所、帰りたい場所が恐竜帝国かというと少し違う。
母が居るから。ただそれだけが海の底へと帰らねばならない理由だった。
深海で一緒に遊んでいた幼馴染たちも、食事時になると母たちが呼びに来て、じゃあまた明日な! と手を振り帰っていった。広場に残るカムイは彼らに手を振り返し、一人与えられた部屋へと帰る。
物心ついて母から引き離されてからずっとそうだったので、淋しいと感じることはなかった。それはカムイに取って日常だった。自分は、彼らとは違うのだと。
そうだ、地上に、ここに来てからは忘れてしまっていたことだ。そこまで考えて気付く。
それなら、
「あなたは、どこに帰るんですか」
16.俺です好きですいけませんか(書き下ろし)
「どうしました? 調子が良くなさそうですが」
「良いわけがないだろう。全くお前のせいで……」
「俺の?」
「いや、何でもない」
まず、帰宅した時のドアの開け方が乱暴だった。大きな物音を立てるわけではないが、風圧がすごい。
どかどかと大股に、しかし音もなく廊下を進み、迎えに出たカムイにコートとマフラー、上着を渡しネクタイを外しながらそう答える隼人は、いつもより更に不機嫌そうだ。
不機嫌そう、と仮定で話すのは正しくない。明確に機嫌が悪い。しかも言葉尻から察するに、不機嫌の原因の一端はカムイにあるらしい。
(何かしたろうか)
首を捻り考えてみても、心当たりがない。
機嫌の悪い隼人の圧は半端なものではなく、カムイでなければ近寄ろうと考えもしないだろう。
しかし、どれだけ声を掛けづらくとも人や物に当たり散らすようなことはしないと知っているので、ある意味大きく構えているところもある。大体、いくら考えてみてもカムイにはまるで思い当たる節がない。
「あ」
訂正する。
心当たりがあった。
先日二人揃ってずぶ濡れになって帰宅した時に、順番待ちをしていると風邪を引くからと一緒に風呂に入った。
「風呂が湧いてます」
家を出る前にセットしておいたので、玄関に用意していたタオルで軽く髪の水気をきり、コートや鞄、ズボンの裾などを拭いている間にちょうど良く湧いた。
「すまんな、お前もさっさと入れ」
そう言うと、隼人は浴室へと向かいながらばさりとシャツを脱ぐ。濡れた長い髪から水滴が滴り、つ……、と背中を伝っていた。その後ろ姿をカムイが眺めていると、その様子に気付いたのか何をぼんやりしている、そのままでは風邪を引くぞと促される。
この家の風呂は広い。背が高く体格もかなり良い隼人と、隼人より一回り小さいが、それでも充分すぎるほど筋肉がついていて厚みのあるカムイが揃って湯舟に浸かってもまだそれなりにゆとりがある。普段は何かにこだわりを持つことは少ないが、風呂が狭いのだけは嫌なのだという隼人が見繕った外国製のバスタブは、そのお眼鏡に充分敵っていた。
「何をしている」
服を脱いで浴室に入ったカムイは一緒に湯舟に入って良いものかと考えあぐねていたが、隼人は特に気にする様子もなく。自分の意識し過ぎだと思うことにした。
18.ハイドアンドシークinside
午後の風は少し冷やりとして、気持ちが良い。
そんなことを考えつつ窓を締めながら振り返ると、隼人がソファで横になり転寝をしている姿が視界に入る。
この人が早乙女研究所での不慮の事故(元凶敷島博士)で一時的に視力を失ってから数日経つが、ここに来てからはいつもこの体勢な気がしている。慣れない場所で歩き回るわけにもいかず仕方がないのだろうが、それにしても起き上がっているところをほとんど見た覚えがない。
人間の中でも背の高い部類の隼人が長い足を延ばしてもゆったりと寝そべることが出来るカウチソファは、本来は三人掛けのようだ。到着した日は文句ばかり言っていた割りになんだかんだ気に入ったようで、休養にとやって来たこのコテージで過ごすようになってからというもの、もっぱら一人で独占している。
カウチのあるその場所は眩しくない程度に陽が入り、適度に暖かい。隼人は自由に動けないということもあり、日中はほぼそこに居ることにしたらしいが、確かにここでは一番居心地が良い。カムイも最初の頃、一度だけカウチに座ってみたことがある。体が沈み込まない適度な柔らかさで、あまりの座り心地の良さに驚いたものだった。が、今となっては入る余地もなく、諦めて向かいにある一回り小降りなソファに座ることにしている。これだって、研究所の堅い椅子に比べれば十分すぎるくらいなのだから。
(よく眠っている)
この人が気を張ることなく目を閉じてただ眠っている姿など、非常に珍しい。
何もすることがない状態などいつ以来だったか忘れたなどと、これも珍しく冗談めいたことを言っていたが、ここに来て二日もすればその状況に慣れたのか、暇さえあれば寝ているようになった。
怪我をした時くらい休んでください。後のことは俺たちで何とかしますよ、と言う伊賀利たちによって二人揃って強制的に休暇を取らされ、ここへと送り出された。期間は最大一週間。
カムイは研究所の敷地の外へ出ること自体が滅多にないことだったので、何だか落ち着かない気持ちだったが、実際に来てみてしまうとこれといって何もすることがないし、したいこともなかった。研究所での生活はなんだかんだと時間に追われることが多いので、最初はその感覚がわからなかったが。そうかこれが退屈というものか、と本日何杯目かのコーヒーを飲みながら考える。
コテージの敷地は広く、容易に人が立ち入って来られないような場所にあるので、到着した日に散策でもしてみようかと隼人にその旨を伝えてみた。それも良いなと最初は賛同を得られたが、では、と隼人の手を取って外に出ようとしたら、即座に断られた。
「お前には珍しい場所だろう。せっかくの機会だから、行ってくれば良い」
この人を一人きりここへ残したりしたら、絶対にろくなことをしないだろう。下手をすると脱走するかもしれない。そう考えて、結局室内で過ごすことにした。その後も、俺に遠慮するな、好きなところへ行ってこいと追い出すように言われるので、やはり一人で残すのは危険だと確信する。
何もすることがないのと、滅多にない機会なので隼人の傍へ寄ると、その顔をじっと見る。
今はよく眠っているようだ。
よく考えれば、子供の頃には何度も同じベッドで眠る機会があったというのに、この人の寝顔を見た記憶がないということに思い至る。せっかく休息を取っているのだから邪魔はしたくないと思いつつ、滅多に見せることのない無防備とも言える姿に良くない気持ちが沸き上がる。
あの四六時中休むことなく頭をフル回転させているような人が。決して一人きりというわけでもないのに。
少なくとも自分はこの人にとって、警戒すべき相手ではないのだ。こうして襟元を緩め足を投げ出した、だらしのない姿を見せられる程度には。
常に堅く引き結ばれている口元が、ほんの少しだけ緩んでいる。その僅かな隙間から、規則正しく上下する胸に合わせて薄く息が漏れ出ていて。
(目に毒だ)
それをこの人に言っても、どうせわからないのだろうなと思いながら、カムイがすぐそばまで近寄っても目を閉じたままの隼人の胸元へと指を伸ばし、上から一つずつシャツの釦を外す。
気付かぬうちに息を殺していたのか、ふ、と空気が漏れた。
「カムイ」
さすがに起きてしまったのか名を呼ばれるが、カムイはそれに応えることなく左右に開いたシャツの襟を握りしめたまま、薄く隆起するそれをじっと見る。
陽の光に曝された身体は、存外白い。
そういえば、どれだけ陽に当たっても焼けることがなかったのだったなと思い返した。
「どうした、カムイ」
答えないカムイを不審に思ったのか、呼ぶ声が少し揺れている。決して軽くはない身体を抱き起こし、支えていない方の手で口を塞いで首筋に舌を這わせると、ピクリと肩を震わせた。
そうか、見えないから。
ここまで距離が近いと、カムイが触れるタイミングが掴めないのだろう。首から鎖骨、胸元へとゆっくり舌を這わせ、時折わざと痕が付くように強く吸い上げると、小さく声が漏れた。
「やめんか」
そう言いながらも次第に固くなる胸の突起や指で触れるだけの唇に朱が入り、こういうのを何と言うのだったか。「神司令って時々エロいよな」とうっかり口走って水島に重いボディブローを食らっていた隊員が居たことを思い出す。
(これが、エロい)
表現としてしっくりと来ているわけではないが、そういった類のものなのだろう。筋肉質な隼人の胸が呼吸に合わせて隆起し、白い胸元が徐々に薄く色付いていくのを見ると、改めて実感する。
「カムイ!」
そんなことを考えながら隼人からの呼び掛けを無視し続けていたら顎を掴まれ、強制的に顔を上げさせられる。目が合うようで合わない。本当に見えていないのだ。
「何ですか、神さん」
「何をしている」
「あなたを抱こうとしています」
しれっと言い切った後でぐ、と足の間に入れた腰を押し付けると、当たるそれは同じだけ硬い。何よりも隼人の鼻に薄く疵痕が浮かび上がっているのを見て、あぁ、とカムイは小さく笑った。
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