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投稿日:2024年03月13日 13:34    文字数:5,832

それからとこれから

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書けた所からかいていこうかなぁと、鶴燭ほのぼのなれそめ話です。続きが書けたらUPする予定です!とりあえず四話まで書きました~一旦終わりなのか続きを書くのかどうしよう。続きはRになりそうだ…2024.4.11
1.たまごサンドの話
2.星ときどきごはん
3.好きなところは
4.そわそわ
1 / 4
1.たまごサンドの話。

 からしはこれくらいだろうか、とボールに入ったマヨネーズにスプーンですくったからしを混ぜていく。その中に程よく刻んだゆでたまごを入れて混ぜる。
「よし! これで中身は完成」
 次に手に取ったのはコッペパン。真ん中に切れ目を入れて、「そうだ!」と思い出す。
「確かソースが塗られていたよね、中濃ソースでいいかな」
 切れ目の内側にソースを塗ったパンの中に先程の具材を詰めれば……
「光忠特製たまごサンドの出来上がりだ!」
 審神者に付いて行った先で立ち寄った珈琲店で食べたたまごサンドを再現してみようと思い立ったのが、先日。出陣や内番の入っていない今日しかないと、早速作ってみたのだ。
 出来上がったのは二つ。店で食べたのは小さめなコッペパン二つだったが、今日は大きめのを用意した。一つは審神者にもう一つは自分用に。美味しくできただろうか。
(今日の近侍は、鶴さんだったよね)
「主、いいかな?」
 審神者の部屋をノックして返事を聞いてから中に入れば、今日の近侍の鶴丸が丁度出てくるところだった。
「おっ!旨そうなもの持っているなぁ、差し入れかい?」
 食べやすいように、と二つに切り分けられたたまごサンドを見て鶴丸が声を掛けた。
「うん、この前遠征に行ったとき食べたたまごサンドの味が忘れられなくてね、作ってみたんだ。そうだ! 鶴さん良かったらもう一個作ったのがあるから食べて見ない?」
「それは断れんな~頂こう!」
 鶴丸の返事を聞いて燭台切はほっとした。もう一個自分用にと思ってはいたが一緒に食べてほしいと思いながら作ったのだ、鶴丸に。審神者の部屋にいる気がしたが正解だった。
 机にたまごサンドと珈琲を置いて「時間が出来たら食べてね」と声を掛ける。今日が期限だという書類とパソコンを交互に見て疲れた顔の審神者は「ありがとぉぉ!!」と叫んでいた。
「鶴さん手伝った方が良かったんじゃ……?」
「一応声は掛けたんだけどな! あれは刀剣男士に手伝ってもらっちゃあまずいらしいぜ。重要な機密事項とやらが含まれているらしい」
「そうなんだ」
 これが初期刀の歌仙が近侍だった日には「なぜぎりぎりにやるのか、雅じゃない!」と怒り狂ったろうから、今日の近侍が鶴丸なのは良かったんだろう。

「へぇこれがさっきのたまごサンドかい?」
「そう! 今、珈琲入れるね!」と手際よく二人分の珈琲と切り分けたたまごサンドが鶴丸の前に出される。
 香り立つ豆の匂いに鶴丸はそわそわとする。半分に切り分けられたそれを大口を開けて口に含む。口の中いっぱいにたまごと良く絡んだからしマヨネーズが広がり、ほんのり甘いパンに塗られたソースがふわりと薫る。
「うまいっな!」
 溢れるほどに盛られた具材がひとつ、ふたつ皿に落ちていく。淹れたての珈琲を一口飲んで向かいの燭台切をやっと見た。
「そう言ってくれると作った甲斐があったよ。この前主と入ったお店で食べたんだけど、再現できてるかな。あとで主にも感想聞かなくちゃ」
 にこにこと話す燭台切も同じく口に運んで「美味しいね!」と満足そうだ。
「そのお店今度現代遠征に行く際には寄らないとだな!」
 鶴丸は懐から小さなノートを取り出してメモをした。
「鶴さんそれは?」
「あぁこれな、現代遠征に行ったり万屋街に行った連中から聞いたおすすめスポットだ!」
「面白そうだね」
「例えば、伽羅坊おすすめ猫カフェに歌仙はプラネタリウム、肥前はご飯とみそ汁がおかわりし放題のとんかつ屋、包丁と秋田からは美味しいクレープの店、それから……」
 数ページにわたり書かれたおすすめスポットに今食べているたまごサンドも加わる。イラスト付きで。
「チェーン店だからいろんなとこにあるよ。楽しそうだね、僕も一緒に行きたいな」
 向かいに座る燭台切の皿はもう空っぽだ。最後の一口をごくりと飲み込んでから鶴丸は口を開いた。
「なら……この前加州と大和守が主と泊ったっていう『星が綺麗に見える宿』も、一緒に来てくれるかい?」
 片目をぱちりとして薄い唇がゆっくり開く。
「もちろん」
 分かってるのだろうか、本当に? そう思い見上げた先には鶴丸の反応を伺うように見つめてくる彼がいる。形のいい耳が赤くなっている。
(あぁ覚悟を決めるのは俺の方か)
「今夜ちゃんと言うから待っててくれるかい、光坊」
 今日は同室の伽羅坊に貞坊は遠征でいない。こくり、と頷くのを見届けた。

 自覚したのはいつだったか。「演練に行ってくる!」と食べ終わった早々に鶴丸は出て行ってしまった。鶴丸の座っていた席のテーブルには桜の花びらがひとひら落ちている。
(鶴さんはいつから? 僕は)
 あれはまだ練度が低かった出陣で敵の槍兵に不意を突かれ中傷を負った。突かれた箇所から広がる痛みに顔をしかめ真剣必殺を繰り出してかろうじて勝ったが、戦闘が終わり敵の気配が霧散したあとも続くジクジクと身体を苛んだ。「大丈夫か!?」声と共に部隊長である鶴丸が手を差し出し肩を貸してくれた。ただそれだけで身体の痛みがスーッと引いていく。
「かっこ悪いところ見せちゃったな……」と落ち込んでいると鶴丸が頭をクシャクシャと撫でてくる。むず痒いような気持ちになって鶴丸を見れば淡い金色の瞳があった。
「勝てたんだからこれは名誉の負傷さ」
 傷が塞がったわけではないのに不思議と痛みが消えるどころか胸の内側がじわりと温かくなる。
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2 / 4


2.星ときどきごはん

 厨で片づけをしながら歌仙が話す先日の遠征先での出来事に鶴丸は相槌を打っている。
「気の張った任務で疲れていたんだろうが、このプラネタリウムのナビの声が聴きたいからって僕を誘っておいて隣で爆睡されるとはね!」
「その割には帰って来た時主もお前も機嫌良く見えたがな」
 鶴丸の言葉にふっと目を眇め「それはだね」と続ける。
「プラネタリウムを出た後、手土産を買いにショッピングモールを歩いていたんだけど、主の昔の友人に出くわしたんだ。主がしゃべらないで!って目配せしてきたから黙って後ろにいたんだけど」
 どうやら主の友人たちは歌仙の事を彼女と思ったようだ、と。うらやましがられ、満更でもない審神者を見て色々気が抜けてしまったそうだ。
「今日僕と一緒に来れて本当に良かった、って本丸に帰るまで手を離さなくてねまったく!」
 思い出したのか歌仙の表情が綻んでいる。
「それはいい思い出だな」
 うんうん、と鶴丸は頷きながら取り出した小さなノートにメモをしていく。

 面白い話を聞いたらメモを取るという行為はこれで5件目だ。畑当番で一緒だった秋田が季節限定の山盛り苺パフェを粟田口の兄弟たちと食べに行った話(その後包丁からも同様の話をされた)、食事の時隣り合わせた肥前がご飯とみそ汁が食べ放題のとんかつ屋に主と南海先生と行った話、出陣先の帰り道見上げた星空を見ながら大和守と加州が審神者と宿泊したという宿の星空はもっと綺麗だったという話、家の猫から威嚇された大倶利伽羅が実は猫カフェ帰りだったという話。そのどれもが彼らの心に色鮮やかに残っていて、思い出して話すときの表情が鶴丸をワクワクさせた。
 最初は機会があれば行ってみようと思い書いていたメモも歌仙の話を聞いた時には、俺なら誰と行きたいかと考えるようになった。みんなでわいわいするのが楽しいだろうからやっぱり伽羅坊、光坊、貞坊を誘って四人で行くか……
「プラネタリウムに行って星が綺麗な宿は伽羅坊には断られそうだ。いやそもそも飯だって誘っても断られてるな。貞坊もみんな揃ったら来てくれそうだが、うーん」
「光坊ならまぁ大丈夫だろ!」
 よし季節限定パフェは万屋街にあるから終わってしまう前に早く行かないと、現代遠征を主に頼むのは難しそうだから星空を見るのは本丸の屋根からでも、とんかつ屋はあの店だよな、猫カフェは……とメモを見ながら考えていると、この話をした時の相手の反応に何か違う期待を持っていることに気付いた。
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3.好きなところは

 この本丸の伊達組のなかで一番に顕現したのは鶴丸だ。その次が大倶利伽羅、そして燭台切、最後に太鼓鐘である。燭台切が伊達から水戸に移ったあとに鶴丸は伊達家に入る。だから伊達の家で一緒にいたことはない。この本丸に顕現された時、鶴丸のことを見た燭台切が思ったのは「もしかして」だ。
(もしかして織田にいた五条国永の刀だろうか)
 織田に居た頃の記憶はあまりなく、それは鶴丸も同様だったので本丸に来た当初はじめましての状態だった。審神者が政府から渡された刀剣マニュアルを手に「お前たち旧知の仲とあるのになぁ」と言ったので二振り顔を合わせて「そうなのかい?」と返したことを覚えている。
 それでもいつの間にか「鶴さん」「光坊」と呼び合う仲になったし最初に感じた「もしかして」はすっかり忘れていた。思い出したのは共に出陣した時のことだ。その日の出陣先は曇天、戦いの最中に降り出した雨に足場はぬかるみ運悪く検非違使が出現した。青く光る敵の攻撃に中傷を負った鶴丸がいつもより低く静かに声を出し切り込む。鋭さがました眼光に傍で戦っている燭台切は何度も目を奪われた。
(あぁやっぱり、そうだ)
 織田の屋敷で見たその姿と今の姿が重なっていく。色鮮やかに脳裏に刻まれた彼の姿が……
「よそ見かい? 危ないぜ!」鶴丸の言葉に目前に迫る敵の刃から身をかわす。今は戦いに集中しないといけない。腰を落として刀を構える。
「参る!」

「いやぁ、戦いの後の風呂ってのは最高だな、光坊?」
「そうだねぇ」
 二振りは手入れ部屋から出てすぐに風呂場へと向かった。
「鶴さん、僕少しだけ織田でのこと思い出したよ。今日戦っているあなたの姿を見て」
「ん? そうかい俺の来歴に織田にあったともあるが光坊いや光忠の刀たちに会ってたのか記憶があやふやだな。覚えてる個体もあるんだろうがなぁ」
「うんそうだよね、伊達で一緒に居れなかったから織田での記憶が残ってたらいいんだけど。僕も信長が集めた刀の中にいたかもぐらいの認識だからね」
「記憶の中の俺はかっこよかったかい?」
「そりゃもう! 鶴が舞ってるような鮮やかさで」
「光坊はかっこいいものが好きだもんな」
「そうだよ好きなんだ」
 声に出してみればストンと落ちる。共に戦場で戦うことも、ご飯を食べることも、畑に行くことも、万屋に行くことも、こうやって風呂場で語り合うことも、鶴丸と過ごす時間がとても好きなことに。
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4.そわそわ

 遠征に二振りが行ってしまった部屋はやけに広く感じられた。昼間に鶴丸から言われたことを思い出して落ち着かないまま夕餉と風呂を済まして部屋に戻れば誰もいない。布団を引いて寝るだけの時間なのだが、話をするのに布団敷いていいのか迷ってしまう。
 人の心とはなんと複雑なんだろう……ただ自覚した「好き」という気持ちを伝えるだけなのにさっきから心臓の動きがおかしい気がするし、戦に行く前のそわそわと似たような心地がする。
(鶴さんも同じなんだろうか?)
 その時「すまん遅くなった」と鶴丸が部屋に入って来た。
「光坊、明日は内番も出陣予定もないよな?」
「うん特に用事は入ってないよ」
「良かった、昼に話していた行きたいとこの話しなんだが現代遠征を急に入れてもらうのは無理だったが……主に聞いたら「遊びにじゃないなら」任務という体で二人で遠征に出てもいいと言われてな!」
 部屋に戻るのが遅くなったのは主に出陣先の相談をしていたかららしい。
「へぇそれでいいとこは見つかったのかい?」
 鶴丸の金の瞳がきらりと光った。
「もちろんだ!季節は夏、江戸の後期とる山中に遡行軍が出るらしいまだ偵察部隊を出してる段階なんだと。範囲が広いから色んな本丸から派遣されるみたいだ。この任務が二人一組で動くやつらしくてな」
「明日にすぐ出陣決まるなんて急だね?」
 あぁ~それはだな、と鶴丸が燭台切の方を見ずに話し始めた。
「星の見える宿に一緒に泊まりに行ってくれるか聞いたろう」
「うん」
「光坊が作ったたまごサンドのきっかけになった店にもとんかつ屋にも歌仙の言ってたプラネタリウムにも伽羅坊の言ってた猫カフェにも俺は光坊と行きたいと思った」
 いつの間にか鶴丸は燭台切の少しうつむいた顔を見上げるように顔を覗き込んでいる。
「今までこれが何なのか自覚出来てなかったんだが、俺は光坊の事そういう意味で『好き』なんだなって今日、はっきりわかった」鶴丸は「ちょっと遅かったかい?」と笑った。燭台切の方も「そう」なんだろうと気付いたのも同時だった。うぬぼれでもなんでもなく彼が他に向ける感情とは少し違うものが自分に向けられていることに。
「僕は、僕はね鶴さんが自覚するよりほんのちょっとだけど先に『好き』って自覚してたよ」
「じゃあ光坊の方がちょっと先輩だな、晴れて両想いになった俺たちはこれからどうすればいいと思う、先輩?」いたずらっぽくウィンクしながら聞いてくる鶴丸に「うーんじゃあ今日は布団くっつけて寝て見る?」と返す。
「そういうとこほんと可愛いよなぁ」とぎゅうぎゅうと抱きしめられて「ちょ、鶴さん! 苦しいよ」と口では言いながら胸の奥がじんと温かくなって両手を背中に回した。

 それから二振りは仲良く布団を二つ分敷いて寝る前はおやすみのキスをするらしい、という鶴丸指南のもとたどたどしく唇を合わせた。遠征に赴くのは何日になるのかは分からないが、貞ちゃんたちが部屋に戻ったらこれはもうできないね、と呟けばこっそり隠れてどこかでしようぜ、と綺麗な目を細めて言ってくる。返事の代わりに口をもう一度近づけて合わせる。鶴丸の口が少し開いて舌が絡み合う。合わさった胸の音がどくどくとしていて頭の中はじんっと痺れる。
「おやすみ鶴さん」
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それからとこれから
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1.たまごサンドの話。

 からしはこれくらいだろうか、とボールに入ったマヨネーズにスプーンですくったからしを混ぜていく。その中に程よく刻んだゆでたまごを入れて混ぜる。
「よし! これで中身は完成」
 次に手に取ったのはコッペパン。真ん中に切れ目を入れて、「そうだ!」と思い出す。
「確かソースが塗られていたよね、中濃ソースでいいかな」
 切れ目の内側にソースを塗ったパンの中に先程の具材を詰めれば……
「光忠特製たまごサンドの出来上がりだ!」
 審神者に付いて行った先で立ち寄った珈琲店で食べたたまごサンドを再現してみようと思い立ったのが、先日。出陣や内番の入っていない今日しかないと、早速作ってみたのだ。
 出来上がったのは二つ。店で食べたのは小さめなコッペパン二つだったが、今日は大きめのを用意した。一つは審神者にもう一つは自分用に。美味しくできただろうか。
(今日の近侍は、鶴さんだったよね)
「主、いいかな?」
 審神者の部屋をノックして返事を聞いてから中に入れば、今日の近侍の鶴丸が丁度出てくるところだった。
「おっ!旨そうなもの持っているなぁ、差し入れかい?」
 食べやすいように、と二つに切り分けられたたまごサンドを見て鶴丸が声を掛けた。
「うん、この前遠征に行ったとき食べたたまごサンドの味が忘れられなくてね、作ってみたんだ。そうだ! 鶴さん良かったらもう一個作ったのがあるから食べて見ない?」
「それは断れんな~頂こう!」
 鶴丸の返事を聞いて燭台切はほっとした。もう一個自分用にと思ってはいたが一緒に食べてほしいと思いながら作ったのだ、鶴丸に。審神者の部屋にいる気がしたが正解だった。
 机にたまごサンドと珈琲を置いて「時間が出来たら食べてね」と声を掛ける。今日が期限だという書類とパソコンを交互に見て疲れた顔の審神者は「ありがとぉぉ!!」と叫んでいた。
「鶴さん手伝った方が良かったんじゃ……?」
「一応声は掛けたんだけどな! あれは刀剣男士に手伝ってもらっちゃあまずいらしいぜ。重要な機密事項とやらが含まれているらしい」
「そうなんだ」
 これが初期刀の歌仙が近侍だった日には「なぜぎりぎりにやるのか、雅じゃない!」と怒り狂ったろうから、今日の近侍が鶴丸なのは良かったんだろう。

「へぇこれがさっきのたまごサンドかい?」
「そう! 今、珈琲入れるね!」と手際よく二人分の珈琲と切り分けたたまごサンドが鶴丸の前に出される。
 香り立つ豆の匂いに鶴丸はそわそわとする。半分に切り分けられたそれを大口を開けて口に含む。口の中いっぱいにたまごと良く絡んだからしマヨネーズが広がり、ほんのり甘いパンに塗られたソースがふわりと薫る。
「うまいっな!」
 溢れるほどに盛られた具材がひとつ、ふたつ皿に落ちていく。淹れたての珈琲を一口飲んで向かいの燭台切をやっと見た。
「そう言ってくれると作った甲斐があったよ。この前主と入ったお店で食べたんだけど、再現できてるかな。あとで主にも感想聞かなくちゃ」
 にこにこと話す燭台切も同じく口に運んで「美味しいね!」と満足そうだ。
「そのお店今度現代遠征に行く際には寄らないとだな!」
 鶴丸は懐から小さなノートを取り出してメモをした。
「鶴さんそれは?」
「あぁこれな、現代遠征に行ったり万屋街に行った連中から聞いたおすすめスポットだ!」
「面白そうだね」
「例えば、伽羅坊おすすめ猫カフェに歌仙はプラネタリウム、肥前はご飯とみそ汁がおかわりし放題のとんかつ屋、包丁と秋田からは美味しいクレープの店、それから……」
 数ページにわたり書かれたおすすめスポットに今食べているたまごサンドも加わる。イラスト付きで。
「チェーン店だからいろんなとこにあるよ。楽しそうだね、僕も一緒に行きたいな」
 向かいに座る燭台切の皿はもう空っぽだ。最後の一口をごくりと飲み込んでから鶴丸は口を開いた。
「なら……この前加州と大和守が主と泊ったっていう『星が綺麗に見える宿』も、一緒に来てくれるかい?」
 片目をぱちりとして薄い唇がゆっくり開く。
「もちろん」
 分かってるのだろうか、本当に? そう思い見上げた先には鶴丸の反応を伺うように見つめてくる彼がいる。形のいい耳が赤くなっている。
(あぁ覚悟を決めるのは俺の方か)
「今夜ちゃんと言うから待っててくれるかい、光坊」
 今日は同室の伽羅坊に貞坊は遠征でいない。こくり、と頷くのを見届けた。

 自覚したのはいつだったか。「演練に行ってくる!」と食べ終わった早々に鶴丸は出て行ってしまった。鶴丸の座っていた席のテーブルには桜の花びらがひとひら落ちている。
(鶴さんはいつから? 僕は)
 あれはまだ練度が低かった出陣で敵の槍兵に不意を突かれ中傷を負った。突かれた箇所から広がる痛みに顔をしかめ真剣必殺を繰り出してかろうじて勝ったが、戦闘が終わり敵の気配が霧散したあとも続くジクジクと身体を苛んだ。「大丈夫か!?」声と共に部隊長である鶴丸が手を差し出し肩を貸してくれた。ただそれだけで身体の痛みがスーッと引いていく。
「かっこ悪いところ見せちゃったな……」と落ち込んでいると鶴丸が頭をクシャクシャと撫でてくる。むず痒いような気持ちになって鶴丸を見れば淡い金色の瞳があった。
「勝てたんだからこれは名誉の負傷さ」
 傷が塞がったわけではないのに不思議と痛みが消えるどころか胸の内側がじわりと温かくなる。
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2.星ときどきごはん

 厨で片づけをしながら歌仙が話す先日の遠征先での出来事に鶴丸は相槌を打っている。
「気の張った任務で疲れていたんだろうが、このプラネタリウムのナビの声が聴きたいからって僕を誘っておいて隣で爆睡されるとはね!」
「その割には帰って来た時主もお前も機嫌良く見えたがな」
 鶴丸の言葉にふっと目を眇め「それはだね」と続ける。
「プラネタリウムを出た後、手土産を買いにショッピングモールを歩いていたんだけど、主の昔の友人に出くわしたんだ。主がしゃべらないで!って目配せしてきたから黙って後ろにいたんだけど」
 どうやら主の友人たちは歌仙の事を彼女と思ったようだ、と。うらやましがられ、満更でもない審神者を見て色々気が抜けてしまったそうだ。
「今日僕と一緒に来れて本当に良かった、って本丸に帰るまで手を離さなくてねまったく!」
 思い出したのか歌仙の表情が綻んでいる。
「それはいい思い出だな」
 うんうん、と鶴丸は頷きながら取り出した小さなノートにメモをしていく。

 面白い話を聞いたらメモを取るという行為はこれで5件目だ。畑当番で一緒だった秋田が季節限定の山盛り苺パフェを粟田口の兄弟たちと食べに行った話(その後包丁からも同様の話をされた)、食事の時隣り合わせた肥前がご飯とみそ汁が食べ放題のとんかつ屋に主と南海先生と行った話、出陣先の帰り道見上げた星空を見ながら大和守と加州が審神者と宿泊したという宿の星空はもっと綺麗だったという話、家の猫から威嚇された大倶利伽羅が実は猫カフェ帰りだったという話。そのどれもが彼らの心に色鮮やかに残っていて、思い出して話すときの表情が鶴丸をワクワクさせた。
 最初は機会があれば行ってみようと思い書いていたメモも歌仙の話を聞いた時には、俺なら誰と行きたいかと考えるようになった。みんなでわいわいするのが楽しいだろうからやっぱり伽羅坊、光坊、貞坊を誘って四人で行くか……
「プラネタリウムに行って星が綺麗な宿は伽羅坊には断られそうだ。いやそもそも飯だって誘っても断られてるな。貞坊もみんな揃ったら来てくれそうだが、うーん」
「光坊ならまぁ大丈夫だろ!」
 よし季節限定パフェは万屋街にあるから終わってしまう前に早く行かないと、現代遠征を主に頼むのは難しそうだから星空を見るのは本丸の屋根からでも、とんかつ屋はあの店だよな、猫カフェは……とメモを見ながら考えていると、この話をした時の相手の反応に何か違う期待を持っていることに気付いた。
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3.好きなところは

 この本丸の伊達組のなかで一番に顕現したのは鶴丸だ。その次が大倶利伽羅、そして燭台切、最後に太鼓鐘である。燭台切が伊達から水戸に移ったあとに鶴丸は伊達家に入る。だから伊達の家で一緒にいたことはない。この本丸に顕現された時、鶴丸のことを見た燭台切が思ったのは「もしかして」だ。
(もしかして織田にいた五条国永の刀だろうか)
 織田に居た頃の記憶はあまりなく、それは鶴丸も同様だったので本丸に来た当初はじめましての状態だった。審神者が政府から渡された刀剣マニュアルを手に「お前たち旧知の仲とあるのになぁ」と言ったので二振り顔を合わせて「そうなのかい?」と返したことを覚えている。
 それでもいつの間にか「鶴さん」「光坊」と呼び合う仲になったし最初に感じた「もしかして」はすっかり忘れていた。思い出したのは共に出陣した時のことだ。その日の出陣先は曇天、戦いの最中に降り出した雨に足場はぬかるみ運悪く検非違使が出現した。青く光る敵の攻撃に中傷を負った鶴丸がいつもより低く静かに声を出し切り込む。鋭さがました眼光に傍で戦っている燭台切は何度も目を奪われた。
(あぁやっぱり、そうだ)
 織田の屋敷で見たその姿と今の姿が重なっていく。色鮮やかに脳裏に刻まれた彼の姿が……
「よそ見かい? 危ないぜ!」鶴丸の言葉に目前に迫る敵の刃から身をかわす。今は戦いに集中しないといけない。腰を落として刀を構える。
「参る!」

「いやぁ、戦いの後の風呂ってのは最高だな、光坊?」
「そうだねぇ」
 二振りは手入れ部屋から出てすぐに風呂場へと向かった。
「鶴さん、僕少しだけ織田でのこと思い出したよ。今日戦っているあなたの姿を見て」
「ん? そうかい俺の来歴に織田にあったともあるが光坊いや光忠の刀たちに会ってたのか記憶があやふやだな。覚えてる個体もあるんだろうがなぁ」
「うんそうだよね、伊達で一緒に居れなかったから織田での記憶が残ってたらいいんだけど。僕も信長が集めた刀の中にいたかもぐらいの認識だからね」
「記憶の中の俺はかっこよかったかい?」
「そりゃもう! 鶴が舞ってるような鮮やかさで」
「光坊はかっこいいものが好きだもんな」
「そうだよ好きなんだ」
 声に出してみればストンと落ちる。共に戦場で戦うことも、ご飯を食べることも、畑に行くことも、万屋に行くことも、こうやって風呂場で語り合うことも、鶴丸と過ごす時間がとても好きなことに。
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4.そわそわ

 遠征に二振りが行ってしまった部屋はやけに広く感じられた。昼間に鶴丸から言われたことを思い出して落ち着かないまま夕餉と風呂を済まして部屋に戻れば誰もいない。布団を引いて寝るだけの時間なのだが、話をするのに布団敷いていいのか迷ってしまう。
 人の心とはなんと複雑なんだろう……ただ自覚した「好き」という気持ちを伝えるだけなのにさっきから心臓の動きがおかしい気がするし、戦に行く前のそわそわと似たような心地がする。
(鶴さんも同じなんだろうか?)
 その時「すまん遅くなった」と鶴丸が部屋に入って来た。
「光坊、明日は内番も出陣予定もないよな?」
「うん特に用事は入ってないよ」
「良かった、昼に話していた行きたいとこの話しなんだが現代遠征を急に入れてもらうのは無理だったが……主に聞いたら「遊びにじゃないなら」任務という体で二人で遠征に出てもいいと言われてな!」
 部屋に戻るのが遅くなったのは主に出陣先の相談をしていたかららしい。
「へぇそれでいいとこは見つかったのかい?」
 鶴丸の金の瞳がきらりと光った。
「もちろんだ!季節は夏、江戸の後期とる山中に遡行軍が出るらしいまだ偵察部隊を出してる段階なんだと。範囲が広いから色んな本丸から派遣されるみたいだ。この任務が二人一組で動くやつらしくてな」
「明日にすぐ出陣決まるなんて急だね?」
 あぁ~それはだな、と鶴丸が燭台切の方を見ずに話し始めた。
「星の見える宿に一緒に泊まりに行ってくれるか聞いたろう」
「うん」
「光坊が作ったたまごサンドのきっかけになった店にもとんかつ屋にも歌仙の言ってたプラネタリウムにも伽羅坊の言ってた猫カフェにも俺は光坊と行きたいと思った」
 いつの間にか鶴丸は燭台切の少しうつむいた顔を見上げるように顔を覗き込んでいる。
「今までこれが何なのか自覚出来てなかったんだが、俺は光坊の事そういう意味で『好き』なんだなって今日、はっきりわかった」鶴丸は「ちょっと遅かったかい?」と笑った。燭台切の方も「そう」なんだろうと気付いたのも同時だった。うぬぼれでもなんでもなく彼が他に向ける感情とは少し違うものが自分に向けられていることに。
「僕は、僕はね鶴さんが自覚するよりほんのちょっとだけど先に『好き』って自覚してたよ」
「じゃあ光坊の方がちょっと先輩だな、晴れて両想いになった俺たちはこれからどうすればいいと思う、先輩?」いたずらっぽくウィンクしながら聞いてくる鶴丸に「うーんじゃあ今日は布団くっつけて寝て見る?」と返す。
「そういうとこほんと可愛いよなぁ」とぎゅうぎゅうと抱きしめられて「ちょ、鶴さん! 苦しいよ」と口では言いながら胸の奥がじんと温かくなって両手を背中に回した。

 それから二振りは仲良く布団を二つ分敷いて寝る前はおやすみのキスをするらしい、という鶴丸指南のもとたどたどしく唇を合わせた。遠征に赴くのは何日になるのかは分からないが、貞ちゃんたちが部屋に戻ったらこれはもうできないね、と呟けばこっそり隠れてどこかでしようぜ、と綺麗な目を細めて言ってくる。返事の代わりに口をもう一度近づけて合わせる。鶴丸の口が少し開いて舌が絡み合う。合わさった胸の音がどくどくとしていて頭の中はじんっと痺れる。
「おやすみ鶴さん」
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