2月新刊予定の尾月
2月尾月オンリーで発行しようとしている原稿のサンプルになります。部数のアンケートはしない予定です。
手に取る前にこちらを見て了承していただきたく、サンプル上げする事にしました……
同イベントで発行される犬耳メイドのはじめいどちゃんのアンソロ本に参加させていただいており、その寄稿作品の内容の続き?のようなものになります。
【ざっくりした内容説明】
尾形の家に来てから10年経つのに未だに子供のままで(今更)疑問に思ったらどうやら人間と主従契約した半獣人に稀に出る「呪いの淫紋」が出ていてそのせいで成長が止まっていたけど解決方法が主人と性交渉することなので諦めた尾形にはじめいどちゃんが「大人になって役に立ちたい」と切実に頼んできたので尾形は倫理を殺してかなえてあげることにしたよ!
という、未成年との性交渉描写バシバシの内容になります。
ご了承いただいた上で、当日お求めいただけると助かります。
サンプル内ではまだ事に及んでいません。
よろしくお願いいたします。
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※注意※
2月尾月オンリーで発行しようとしている原稿のサンプルになります。部数のアンケートはしない予定です。
手に取る前にこちらを見て了承していただきたく、サンプル上げする事にしました……
同イベントで発行される犬耳メイドのはじめいどちゃんのアンソロ本に参加させていただいており、その寄稿作品の内容の続き?のようなものになります。
【ざっくりした内容説明】
尾形の家に来てから10年経つのに未だに子供のままで(今更)疑問に思ったらどうやら人間と主従契約した半獣人に稀に出る「呪いの淫紋」が出ていてそのせいで成長が止まっていたけど解決方法が主人と性交渉することなので諦めた尾形にはじめいどちゃんが「大人になって役に立ちたい」と切実に頼んできたので尾形は倫理を殺してかなえてあげることにしたよ!
という、未成年との性交渉描写バシバシの内容になります。
ご了承いただいた上で、当日お求めいただけると助かります。
サンプル内ではまだ事に及んでいません。
よろしくお願いいたします。
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「おれ、オトナになれるの? もっとひゃくのすけの役に立ちたい」
澄んだ海のような瞳は真っ直ぐ尾形を捉えて離さなかった。このままの姿──棒を振り回しながら外で遊んで泥だらけになってこちらが世話をするメイドでいいと思っていた尾形の胸に届いてしまい、ひとまず大きく息を吐いた。
***
尾形はふと、犬の半獣人のはじめを家に迎えてから十年近く経つことに気が付いた。自分の横でもたもたとガーゼを止めていたテープを剝がしているはじめを隻眼でジッと見つめると、小首をかしげてこちらを見返した。
「お前、ずっとチビだな」
尾形は上半身をあらわにし、足置きに腰をかけて座っている。尾形の左肩の怪我に当てていたガーゼをそっと外しているはじめを見ながらそうつぶやいた。
半獣人などそんなものかと思っていたが、勇作のところにいる半獣人達はあっという間に成体に成長しているのを思い出す。個体差なのだろうか、と思うが、だとしても、記憶は良い方だと思うが知能も年相応のまま、体などは肉付きは良くなったものの、ほぼ出会った頃のままだった。
「そのうち大きくなる。安心しろひゃくのすけ」
左肩に新しいガーゼを当てながら、どこから湧いているのかわからない自信とともにフンと鼻息を吐いてふんぞり返るはじめを、尾形も負けじとフンと鼻で笑ってやった。
「ちょっと怖い話すると怖くなってひとりで寝れなくなるくせに」
「ちがう! ひゃくのすけが怖がってたらかわいそうだから、おれが一緒にねてやってんだよ!」
肩を怒らせながら反論するはじめに、再びフンと鼻であしらい、尾形はテープを適当な大きさにちぎってはじめに渡す。ガーゼを落ちないように押さえている圧が若干痛いが、ひとりで替えるのは難しく、やむを得ず手伝ってもらっている。
「傷口どうなってた」
話題を変えて訊ねれば、フンフンと怒っていたはじめの態度が一瞬で大人しくなり、しゅんと耳が垂れて俯いた。
「……そんなに悪くないとおもう」
はじめが受け取ったテープを真っすぐ広げるため手を離したので、尾形は右手を伸ばしてガーゼを押さえる。慎重に真っすぐ貼り付けたのを確認して、尾形は手を離してもう一枚テープを切る。同じように二か所貼り付けて、剥がれないようにペタペタと押さえつける。
数日前、勇作からの(厄介な)頼まれごとを遂行するために治安の悪い地域へと赴く事になった。尾形はさすがに軍服ではなく、ハンチング帽にくたびれたジャケット、眼帯もフォーマルな物ではなくどこにでもある医療用のものと仕込みの杖、はじめも耳を隠せる大きめのキャスケット帽で耳を隠し、小汚いジャケットとズボンを履かせて、斜めがけの鞄で尻尾を目立たなくしていた。いつも太腿に縛って隠し持っているコンバットナイフはふくらはぎに付け、袖には折りたたみの小型ナイフを隠し入れて持たせていた。準備は万全で、本人も街に到着する前は仕事、と張り切っていた。しかし街について歩いていると、はじめはみるみるうちに委縮し、浅く早い呼吸と体の震えが始まっていた。
そんな状態のはじめを連れての調査はできず、やむを得ず引き返そうとした時、男が襲ってきた。それに気が付いたのは尾形で、その時はじめを庇ってナイフを受けた。今回の調査対象でもあった、主に子供の人身売買シンジゲート。はじめをダシに、と思っていたが、動けなくなる事は想定外だった。男は明らかにはじめを狙っており、邪魔な保護者である尾形を消す必要があった。仕込み杖の銃で男を撃ち、音で仲間が寄ってくる前にはじめを抱えて逃げた。街はずれに隠した車にどうにかたどり着き、追手が来ないよう回りながら勇作の指定した場所へ逃げ、医者に処置をしてもらって尾形の屋敷に戻ったのは数日後であった。傷はそこまで深くはないが縫う必要があり、大きな病院へ行くのも手間だったので町医者に無理を言って処置してもらった。屋敷に戻ってから、やむを得ずいつも世話になっている怪しい医者の家永にかかり、そして今に至る。
引き取ってから時間が経っていて忘れていたが、以前はこういう劣悪な環境にいたはじめにとって、あの街の雰囲気のせいで記憶が呼び起され、みるみるうちに委縮してしまったのだった。
はじめが、尾形の元に来る前の話を進んで語った事はない。尾形も招集されたテロ組織の制圧作戦中、地下牢に閉じ込められていた数十人の半獣人を保護した。堪らず顔を歪めるほど劣悪な環境、逃げられないようにみな一様に鎖で繋がれ、中にはすでに事切れて腐敗が進んでいるものもいたらしい。尾形は地下牢の発見現場に居合わせたが、優先度が低いと判断しすぐに場を離れた。
その中で暴れ回って中々確保出来ず、致し方なく強硬手段にて保護した子供、というのがまさにはじめであった。隊員に怪我人も出ており、捨ておけばいいものをわざわざ、と当時──いや今でも思っていた。現場にいた鶴見の指示だったらしい。
保護されたあとも暴れまわり、手が付けられないと鶴見の元に行き、なにをどうしたのか不明だがどうにか落ち着いたのを尾形が引き取ったという訳だった。他にも保護された者もいたが心身共に状態は良くなく、結局のところ誰かに引き取られて生きているのははじめぐらいだった。
関係者はその場で射殺だったため、テロ組織の潜伏していた設備から推測するしかないが、相当厳しい訓練を強いられ、時には殺し合いもさせられていた可能性は高い。はじめが子供ながらに耐えれたのは、半獣人にしてはかなり獣寄りの気質と、戦闘スキルが異常に高かったおかげじゃないかと鶴見は話していた。
軍功によって叙爵し、ちょうど屋敷も持たされ、これ以上余計なものはいらないと思っていたが、鶴見の「命令」で引き取ることになった。半獣人との主従の契約をするも、彼が大人になったら暇を出すつもりでいたことに今更思い出す。
戦闘スキルは申し分ない、狙撃手に必要な観測手としてもそれなりに上達した。文字も覚え、読み書きも出来る様になり、テーブルマナーもそれなりに出来て、最近は珈琲の淹れ方も覚えた。つまり情が湧いたせいで暇を出す話をすっかり忘れていた訳だった。
色々と思い返していると、はじめの小さな手が怪我とは関係のない右腕にそっと触れた。肘の近くの前腕にある傷跡をなぞり、すぐに離れる。
今回の左肩の怪我も、右腕の怪我も、どちらもはじめを庇って出来た傷だった。背後に立っているため表情は見えないが、先ほどまでの威勢のよさは見る影もなく、ただ静かに尾形の背後にいるだけだった。
「かすり傷だ。銃は持てる。気にするな」
振りかえらずにそう言ってやると、小さな声で、うん、と返ってくるだけだった。
***
さすがに十年近く経っても六〜七歳程度の子供のままでいることに疑問を持つ。今更、と思うが、半獣人の従属を身近に置くことが初めての尾形にとっては、彼らの生態についてはほとんどわかってなかった。もしかすると個体差なのだろうと思うが、ここまで体型も知能も変わらないのはさすがに何かしら異常があるのかもしれない、と、致し方なく家永に相談することにした。
「あら、ご存じなかったのですか?」
あいも変わらず年齢不詳の家永は、尾形の疑問に対してあっさりそう返した。
「は?」
知っていて黙ってたのか、と、そう言い返すと、聞かれませんでしたので、とまたもやあっさり返される。
「はじめちゃんのここ──」
下着だけで診察台に横になっているはじめの腹部を出しながら指で示す。引き攣ったケロイド状の怪我の跡が大きく残るその場所に、何か入墨のような模様がみえる。
「淫紋が出ています」
つまり呪われているんですよ。軽く説明する家永を、左目で睨むように見る。
「……どういうことだ?」
上体を起こし、尾形の様子に戸惑いの視線を投げるはじめの手を、問題ない事を伝えるために優しく撫でる。
「本当に何もご存じないのですね?」
驚いた様子で話す家永に尾形は口を閉じた。奴の言う通り、何も知らないのは事実だったから。
「この呪いの淫紋は、人間と主従契約を結んだ半獣人に極稀に出る症状です。性欲が強い個体とか、主人の人間の欲望が出るとか色々言われますけど、詳しくはわかっていません」
その呪いが発現すると、その時点で成長が止まるだけで健康上の問題はないと言う。しかし、原因はわからないが解決方法は知られている。言葉を止める家永に、尾形は何だ、と急かす。するとジッと見つめ、聞きたいですか、と勿体ぶるので、早く言うよう促した。
「淫紋が消えるまで、主従を結んだ主人と性行為をするんですよ」
尾形は自分の耳から入った情報をうまく処理できず、聞き返すように首をかしげた。
「だから、主人との性行為、つまりセックスですよ、レディに言わせる趣味でもおありですか」
「いやジジイだろ」
さすがに間髪入れずに突っ込みをすると、ちゃんと聞いているじゃないですか、と息を吐いて、はじめの頬に手を添えた。
「死ぬまでずっと若いままでいられるなんて、なんと羨ましい事か……」
指の背で頬をゆっくりと撫でる。最近乾燥により少しカサついてはいるが、子供のハリのある肌には間違いない。うっそりとその感触を楽しむ家永に、戸惑うはじめの犬耳がへたりと垂れていく。
「おいやめろ」
手首を掴んで離し、はじめと家永との間に入って背に隠す。冗談ですよとクスクス笑う目は笑っておらず、だからこいつに相談するのは嫌だったんだとため息をつく。
「さて冗談はともかく、どうするんですか?」
「他の方法……、例えば行為が必要なのか、それとも、体液? が必要なのか」
「体液だとしたら、飲ませるか入れるかすれば良いと?」
「そうだ、そういう方法は」
「それは難しいのでは……ああ、文献がありますよ」
診察室の奥の本棚へ向かい、上の棚から一冊の本を取り出す。パラパラとめくりながらゆっくり戻ってくるのがもどかしく、近くへ寄って本を覗き込む。
「ああ、ほら、主人が女で発症した半獣人が男の例がある。それも性交渉で解呪して大人になったと」
事例になった主人と半獣人の年齢を見て吐き気を催す。子供と性行為をするなんて頭がおかしいだろ、と心中で吐き捨てる。かつて、精神を病み、まだ子供だった自分へ向かってくる母親を思い出して胃液が上がるのをぐっと堪えた。
「……なら、例えば、なんだ、達する事が条件なら」
「確かそのあたりもとっくに検証されて……ああここ、ほら」
次の事例は男の主人に女の半獣人。主人の性器を挿入することは最後まで避け、何度も性的に達した状態にしたものの淫紋は薄まらず、やむを得ず挿入に踏み切り解呪し成体へなった、と。
「やたら具体的に書いてあるのが気持ち悪い」
初老の男主人が語ったであろう記録の文面から、児童性愛者の嬉々たるそれを感じて本音を吐き捨てる。
「問題なのは同性の主従の場合ですねぇ、ほら」
男性同士事例、上手く出来ず現状維持を選択、おおよそ寿命の年数で半獣人が死去した事により解呪し、遺体は老化した。女性同士事例、互いに挿入する道具などを使用し、数年単位で解呪し成体になるも関係悪化により契約解除、その後不明。
尾形は本を見るのを止めていたが、家永が余計な世話で端折って読み上げ、否応なしに情報が入り、たまらず目頭を押さえた。大きくため息を付いて顔を上げ、はじめを見た。
「呪いは健康上問題ない、そしてたとえ解呪しなくても寿命通り生きる、だな」
「そうですね」
「わかった、ありがとう。はじめ、もう服を着ていいぞ」
声を掛けると、不安そうに耳を垂らしながら、診察台からゆっくり降りる。着替える素振りを見せないはじめに、尾形が近づいて診察台の下の籠からメイド服を取り出した。
「もう大丈夫だ、帰ろう」
着替えを手伝うために屈んで服を持ち上げるが、じっと尾形を見つめて動こうとしない。
「はじめ、どうし──」
「ひゃくのすけ」
遮る様に名前を呼ばれ、尾形は口を閉じた。子供特有の濁りのない瞳が尾形を捕まえる。
「おれ、オトナになれるの?」
そう問われ、尾形は息を飲む。どうにか言葉を探し、口を開く。
「方法はあるが、かなり難しい。失敗する事もある」
相手は子供だ。一瞬想像するが、自らの倫理がそれを強制的に遮断する。すまんはじめ、俺には出来ない、と胸中で謝るのが聞こえたのか、ギュッと肩に力が入り、拳が握り込まれた。
「おれ、オトナになって、もっとひゃくのすけの役に立ちたい。もっと、体が大きくなって、もっともっと、ひゃくのすけの事、守りたい」
一度、目を伏せて唇を噛みしめ、そして息を吸う。震えながら息を吐き、そしてまた視線を戻す。
「ひゃくのすけ、おれ、オトナになりたい」
澄んだ海のような瞳は真っ直ぐ尾形を捉えて離さなかった。
黙って見守る家永がそっと尾形の肩に手を置いた。腹を括れよ、とでも言いたげなその仕草に、尾形は答えることなくジッとはじめを見つめ返している。
尾形は、自身が思っている以上に救われていることに自覚がなかった。ただ明確な自覚はないが、なんとなくコイツがいてよかったと思う瞬間がある。だからこそ、このままの姿で彼が死ぬまで面倒を看てやるつもりだった。ただ、十年近くも共にいれば、情が沸くのは尾形だけではなかった。
愚直なまでに真っすぐな願いは、尾形の胸に届いてしまった。
尾形は大きなため息をつくと、口元を緩めてはじめの頭を優しく撫でた。
***
(サンプルここまで)
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尾形はふと、犬の半獣人のはじめを家に迎えてから十年近く経つことに気が付いた。自分の横でもたもたとガーゼを止めていたテープを剝がしているはじめを隻眼でジッと見つめると、小首をかしげてこちらを見返した。
「お前、ずっとチビだな」
尾形は上半身をあらわにし、足置きに腰をかけて座っている。尾形の左肩の怪我に当てていたガーゼをそっと外しているはじめを見ながらそうつぶやいた。
半獣人などそんなものかと思っていたが、勇作のところにいる半獣人達はあっという間に成体に成長しているのを思い出す。個体差なのだろうか、と思うが、だとしても、記憶は良い方だと思うが知能も年相応のまま、体などは肉付きは良くなったものの、ほぼ出会った頃のままだった。
「そのうち大きくなる。安心しろひゃくのすけ」
左肩に新しいガーゼを当てながら、どこから湧いているのかわからない自信とともにフンと鼻息を吐いてふんぞり返るはじめを、尾形も負けじとフンと鼻で笑ってやった。
「ちょっと怖い話すると怖くなってひとりで寝れなくなるくせに」
「ちがう! ひゃくのすけが怖がってたらかわいそうだから、おれが一緒にねてやってんだよ!」
肩を怒らせながら反論するはじめに、再びフンと鼻であしらい、尾形はテープを適当な大きさにちぎってはじめに渡す。ガーゼを落ちないように押さえている圧が若干痛いが、ひとりで替えるのは難しく、やむを得ず手伝ってもらっている。
「傷口どうなってた」
話題を変えて訊ねれば、フンフンと怒っていたはじめの態度が一瞬で大人しくなり、しゅんと耳が垂れて俯いた。
「……そんなに悪くないとおもう」
はじめが受け取ったテープを真っすぐ広げるため手を離したので、尾形は右手を伸ばしてガーゼを押さえる。慎重に真っすぐ貼り付けたのを確認して、尾形は手を離してもう一枚テープを切る。同じように二か所貼り付けて、剥がれないようにペタペタと押さえつける。
数日前、勇作からの(厄介な)頼まれごとを遂行するために治安の悪い地域へと赴く事になった。尾形はさすがに軍服ではなく、ハンチング帽にくたびれたジャケット、眼帯もフォーマルな物ではなくどこにでもある医療用のものと仕込みの杖、はじめも耳を隠せる大きめのキャスケット帽で耳を隠し、小汚いジャケットとズボンを履かせて、斜めがけの鞄で尻尾を目立たなくしていた。いつも太腿に縛って隠し持っているコンバットナイフはふくらはぎに付け、袖には折りたたみの小型ナイフを隠し入れて持たせていた。準備は万全で、本人も街に到着する前は仕事、と張り切っていた。しかし街について歩いていると、はじめはみるみるうちに委縮し、浅く早い呼吸と体の震えが始まっていた。
そんな状態のはじめを連れての調査はできず、やむを得ず引き返そうとした時、男が襲ってきた。それに気が付いたのは尾形で、その時はじめを庇ってナイフを受けた。今回の調査対象でもあった、主に子供の人身売買シンジゲート。はじめをダシに、と思っていたが、動けなくなる事は想定外だった。男は明らかにはじめを狙っており、邪魔な保護者である尾形を消す必要があった。仕込み杖の銃で男を撃ち、音で仲間が寄ってくる前にはじめを抱えて逃げた。街はずれに隠した車にどうにかたどり着き、追手が来ないよう回りながら勇作の指定した場所へ逃げ、医者に処置をしてもらって尾形の屋敷に戻ったのは数日後であった。傷はそこまで深くはないが縫う必要があり、大きな病院へ行くのも手間だったので町医者に無理を言って処置してもらった。屋敷に戻ってから、やむを得ずいつも世話になっている怪しい医者の家永にかかり、そして今に至る。
引き取ってから時間が経っていて忘れていたが、以前はこういう劣悪な環境にいたはじめにとって、あの街の雰囲気のせいで記憶が呼び起され、みるみるうちに委縮してしまったのだった。
はじめが、尾形の元に来る前の話を進んで語った事はない。尾形も招集されたテロ組織の制圧作戦中、地下牢に閉じ込められていた数十人の半獣人を保護した。堪らず顔を歪めるほど劣悪な環境、逃げられないようにみな一様に鎖で繋がれ、中にはすでに事切れて腐敗が進んでいるものもいたらしい。尾形は地下牢の発見現場に居合わせたが、優先度が低いと判断しすぐに場を離れた。
その中で暴れ回って中々確保出来ず、致し方なく強硬手段にて保護した子供、というのがまさにはじめであった。隊員に怪我人も出ており、捨ておけばいいものをわざわざ、と当時──いや今でも思っていた。現場にいた鶴見の指示だったらしい。
保護されたあとも暴れまわり、手が付けられないと鶴見の元に行き、なにをどうしたのか不明だがどうにか落ち着いたのを尾形が引き取ったという訳だった。他にも保護された者もいたが心身共に状態は良くなく、結局のところ誰かに引き取られて生きているのははじめぐらいだった。
関係者はその場で射殺だったため、テロ組織の潜伏していた設備から推測するしかないが、相当厳しい訓練を強いられ、時には殺し合いもさせられていた可能性は高い。はじめが子供ながらに耐えれたのは、半獣人にしてはかなり獣寄りの気質と、戦闘スキルが異常に高かったおかげじゃないかと鶴見は話していた。
軍功によって叙爵し、ちょうど屋敷も持たされ、これ以上余計なものはいらないと思っていたが、鶴見の「命令」で引き取ることになった。半獣人との主従の契約をするも、彼が大人になったら暇を出すつもりでいたことに今更思い出す。
戦闘スキルは申し分ない、狙撃手に必要な観測手としてもそれなりに上達した。文字も覚え、読み書きも出来る様になり、テーブルマナーもそれなりに出来て、最近は珈琲の淹れ方も覚えた。つまり情が湧いたせいで暇を出す話をすっかり忘れていた訳だった。
色々と思い返していると、はじめの小さな手が怪我とは関係のない右腕にそっと触れた。肘の近くの前腕にある傷跡をなぞり、すぐに離れる。
今回の左肩の怪我も、右腕の怪我も、どちらもはじめを庇って出来た傷だった。背後に立っているため表情は見えないが、先ほどまでの威勢のよさは見る影もなく、ただ静かに尾形の背後にいるだけだった。
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振りかえらずにそう言ってやると、小さな声で、うん、と返ってくるだけだった。
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さすがに十年近く経っても六〜七歳程度の子供のままでいることに疑問を持つ。今更、と思うが、半獣人の従属を身近に置くことが初めての尾形にとっては、彼らの生態についてはほとんどわかってなかった。もしかすると個体差なのだろうと思うが、ここまで体型も知能も変わらないのはさすがに何かしら異常があるのかもしれない、と、致し方なく家永に相談することにした。
「あら、ご存じなかったのですか?」
あいも変わらず年齢不詳の家永は、尾形の疑問に対してあっさりそう返した。
「は?」
知っていて黙ってたのか、と、そう言い返すと、聞かれませんでしたので、とまたもやあっさり返される。
「はじめちゃんのここ──」
下着だけで診察台に横になっているはじめの腹部を出しながら指で示す。引き攣ったケロイド状の怪我の跡が大きく残るその場所に、何か入墨のような模様がみえる。
「淫紋が出ています」
つまり呪われているんですよ。軽く説明する家永を、左目で睨むように見る。
「……どういうことだ?」
上体を起こし、尾形の様子に戸惑いの視線を投げるはじめの手を、問題ない事を伝えるために優しく撫でる。
「本当に何もご存じないのですね?」
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「淫紋が消えるまで、主従を結んだ主人と性行為をするんですよ」
尾形は自分の耳から入った情報をうまく処理できず、聞き返すように首をかしげた。
「だから、主人との性行為、つまりセックスですよ、レディに言わせる趣味でもおありですか」
「いやジジイだろ」
さすがに間髪入れずに突っ込みをすると、ちゃんと聞いているじゃないですか、と息を吐いて、はじめの頬に手を添えた。
「死ぬまでずっと若いままでいられるなんて、なんと羨ましい事か……」
指の背で頬をゆっくりと撫でる。最近乾燥により少しカサついてはいるが、子供のハリのある肌には間違いない。うっそりとその感触を楽しむ家永に、戸惑うはじめの犬耳がへたりと垂れていく。
「おいやめろ」
手首を掴んで離し、はじめと家永との間に入って背に隠す。冗談ですよとクスクス笑う目は笑っておらず、だからこいつに相談するのは嫌だったんだとため息をつく。
「さて冗談はともかく、どうするんですか?」
「他の方法……、例えば行為が必要なのか、それとも、体液? が必要なのか」
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「そうだ、そういう方法は」
「それは難しいのでは……ああ、文献がありますよ」
診察室の奥の本棚へ向かい、上の棚から一冊の本を取り出す。パラパラとめくりながらゆっくり戻ってくるのがもどかしく、近くへ寄って本を覗き込む。
「ああ、ほら、主人が女で発症した半獣人が男の例がある。それも性交渉で解呪して大人になったと」
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「確かそのあたりもとっくに検証されて……ああここ、ほら」
次の事例は男の主人に女の半獣人。主人の性器を挿入することは最後まで避け、何度も性的に達した状態にしたものの淫紋は薄まらず、やむを得ず挿入に踏み切り解呪し成体へなった、と。
「やたら具体的に書いてあるのが気持ち悪い」
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尾形は本を見るのを止めていたが、家永が余計な世話で端折って読み上げ、否応なしに情報が入り、たまらず目頭を押さえた。大きくため息を付いて顔を上げ、はじめを見た。
「呪いは健康上問題ない、そしてたとえ解呪しなくても寿命通り生きる、だな」
「そうですね」
「わかった、ありがとう。はじめ、もう服を着ていいぞ」
声を掛けると、不安そうに耳を垂らしながら、診察台からゆっくり降りる。着替える素振りを見せないはじめに、尾形が近づいて診察台の下の籠からメイド服を取り出した。
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相手は子供だ。一瞬想像するが、自らの倫理がそれを強制的に遮断する。すまんはじめ、俺には出来ない、と胸中で謝るのが聞こえたのか、ギュッと肩に力が入り、拳が握り込まれた。
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一度、目を伏せて唇を噛みしめ、そして息を吸う。震えながら息を吐き、そしてまた視線を戻す。
「ひゃくのすけ、おれ、オトナになりたい」
澄んだ海のような瞳は真っ直ぐ尾形を捉えて離さなかった。
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愚直なまでに真っすぐな願いは、尾形の胸に届いてしまった。
尾形は大きなため息をつくと、口元を緩めてはじめの頭を優しく撫でた。
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(サンプルここまで)
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