山査子の丘へ~春の窓~
不幸体質が故に入院してしまった「みのる」の元に、賑やかな「諒太(りょうた)」が訪ねてきました。
サブタイトルが付いているのは、もしかして続きがあるかもしれない…という…。
続きが出来たらお知らせします。
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僕が事故に遭ったのは春休みが始まったばかりのことだった。家を出てしばらく歩いたところで、ハンドル操作を誤って突っ込んできた車と接触してしまった。もう1歩先を歩いていたら跳ね飛ばされていただろうというから、風邪気味でちょうど咳き込んで立ち止まっていたことが幸いしたらしい。おかげで命に関わるようなケガはなく、足の甲の骨を折っただけで済んだ。ただどうやら風邪のほうは軽い肺炎を起こしていたとのことで、救急搬送先の病院にそのまま入院することになった。
とりあえず処置をしてもらって寝かされたのは2人用の病室で、隣のベッドは空だった。ほかの大部屋の病床はちょうど埋まっているらしい。お金がかかるのではと心配になったけれど、大部屋が空くまでの措置だから心配はいらないと言われた。それから、子供はそんなこと考えなくていい、体を治すことだけを考えなさい、とも。担当の看護師さんはいい人のようだ。
しかし、不思議な縁もあるものだ。この病院に担ぎ込まれたのは偶然だけれど、ここは昔祖母が最後に入院していた病院だったのだから。あれはまだ僕が幼稚園に通っていた頃の話だ。祖母に懐いてた僕は、しょっちゅう母に連れてきてもらっては祖母に見守られながら病室の隅で塗り絵をやっていた。とはいっても、あの頃の建物じゃない。新しく建て直されていて、とても綺麗なビルになっていた。病室も当時に比べるとずいぶん明るい雰囲気だと思う。
寝転んで窓の外を見る。都会の真ん中だから周りはビルばかりだけれど、ベッドに横になれば景色のほとんどは空だった。雲一つない空。綺麗な青だ。こんなときでもなければゆっくり空を眺めることなんてなかっただろうな。
痛み止めのおかげで体は楽だった。気持ちも軽くなったのか、次第に眠たくなっていく。ついでにあちこち検査をすることにはなっているけれど、今日は休みだから本格的なのは明日からになるそうだ。どうせすることもないし、僕はそっと目を閉じた。
ふっと意識が戻る感じがした。変な夢を見てたな。どのくらい時間が経ったんだろうか。今の時間が知りたくて、サイドテーブルにあるはずの腕時計を探す。
その視線の途中で、見慣れたブレザーを見つけた。僕の高校の制服……?
「あっ。みのる! 目、覚めたか!?」
焦ったような声がするなとじわじわ理解している最中に、そいつは勢いよく僕に顔を近付けてきた。鬱陶しそうな黒い髪に、やんちゃそうな同じ色の瞳。いや、近いな。
飲んだ薬のせいなのか、まだ頭がぼんやりしてる。戸惑っている僕を置いてきぼりにして、大袈裟な動きで胸に手を当てたかと思うとはあっと息を吐く。
「あー、よかった。心配した! 事故に遭ったって聞いてさ。居ても立っても居られなくてすっ飛んできたんだ。うわ、足、包帯ぐるぐる巻きだな。骨折? 他はなんともないの?」
「ええと……その、骨折っていってもそんな酷くなくて……あとは擦り傷が少しと、肺炎で」
「うわあ、そりゃ踏んだり蹴ったりだな。まあ、うん、ここは思い切ってゆっくりするチャンスだと思ってしっかり体を休めたほうがいいぞ。心細いこともあるだろうけど、幼馴染みの諒太くんが来たからもう大丈夫だ!」
いかにも自信満々といった様子で彼は胸を張る。僕は言葉を継ごうとしたけれど、ぺちんと額を軽く叩かれた。
「んー、今は熱ないみたいだな。でも起こしちゃったよな、ごめん。今日は顔が見られてよかった。もうすぐ夕飯の時間だろ。それまでもう少し休んでなよ」
そして手をずらしてぽんぽんと頭を撫でてくれる。ふわっと甘い香りがした。……懐かしい温かさ。不思議と体に染み入るような優しい声。ああ、また眠たくなってくる。
視線だけを窓にやると、…………。夕暮れが迫ってくる。駄目だ、眠たい。
眠りに落ちる瞬間、さっきのうたた寝で見た夢の続きみたいな光景が頭の中に広がった。あれは朧げだったけど、今度ははっきり見える。小さな白い花が咲く木が両側に続く道。なのに体が動かなくて、足を踏み出せない。
寝慣れないベッドのせいか、夜明け前に痛み止めの効果が切れてきたせいか、あまり熟睡できないまま朝になった。ただ、ずっと横になっていたから体力は戻ってきたような感じがする。肺炎も軽いと言われただけあって、時々咳はひどくなるものの熱はたまに少し上がる程度だから食欲もしっかりある。おかげで夕飯の量が足りず、消灯になる頃には空腹でしんどかった。朝起きたらすぐに朝食かと思いきや、起こされたのは検温と血圧測定のためで、朝食までは間があるらしい。休めるのはいいけど、入院の間はずっとこの空きっ腹と付き合わなければいけないのかな。
検温に来た看護師さんが、昨夜のうちに親が来て入院の手続きをしていったと教えてくれた。面会時間が過ぎていたから病室までは来なかったそうだ。それでも心配でしょうから顔を見て行かれますか、と一応は聞いてくれたものの、親は断ったらしい。
そもそも。骨を折るケガをして、肺炎も起こしてて、救急車で運ばれましたなんて聞いたら普通の親だったらすぐに駆けつけてくるはずだ。うちは来ないんだろうなと思っていたけれど案の定だ。
僕は家族と折り合いが悪い。僕と母は血が繋がっているけれど、父は母の再婚相手だ。実の父は僕が小学生の頃出て行った。漏れ聞いた話を繋ぎ合わせると、どうやら父の浮気が原因だったらしい。新しい父が来たのはそれから1年ほどしてからのことだ。母は傷付いた自分を慰めてくれた唯一の人だと目を輝かせ、僕の意見を聞くこともなく再婚を決めた。もちろん母の幸せを考えれば賛成だ、でも僕の声を聞く姿勢を見せてくれてもよかったんじゃないかなと今でも思う。それから、義父はもともと僕のことをあまり好きではなかったようだ。まあ彼が結婚したのは母なのだから、僕はくっついてきた余計なおまけという認識だったんだろうと思う。母もそれに合わせるように徐々に僕を邪魔者として扱うようになっていった。そして妹が生まれると、僕の存在はいっそう“ないもの”になった。
とはいえ……。小学校の頃の放課後教室でも同じような境遇の子がいたから、これもよくあることなんだろう。僕の場合は高校にも通わせてもらってるし、食事が出ないなんてこともない。だから恵まれたほうなのだと思う。それで充分だ。
検査が一通り終わると本格的にやることがなくなった。安静にしていろということなのでとりあえずベッドに寝転ぶ。
今日はカーテンが半分閉められている。だから部屋の中で見えるのは天井とほぼ空っぽの棚、あとは消えたままのテレビくらいしかない。まあ、カーテンが開いてたところで入り口側のベッドが見えるだけだから面白味が変わるわけではないんだけど。仕方なくまた窓を眺める。今日は小さな雲がいくつか浮かんでいた。その下には頭だけが見えるビルの群れ。まったく見知らぬ場所なわけでもないけど、さすがに頭だけではなんのビルなんだかわからない。道路を歩いててビルの上を意識することなんてないからな。屋上にあんな看板があるだなんて知らなかった。
しばらくしてドアが開いた音がする。看護師さんだろうと思っていたけれど、カーテンの隙間からひょいと顔を見せたのは、
「諒太くんが来ましたよ~」
また来たのか。
にかっと笑い、ひらひらと手を振る。招いたわけでもないのにするっとカーテンの中に入ってきて、制服のブレザーをベッドの上に脱ぎ捨てる。
「……暇なの?」
「ご挨拶だなあ。みのるが心配なんだよ」
「昨日は言いそびれたけど、肺炎ってうつる可能性もあるから、来ないほうがいいんじゃないかな」
「そこは心配御無用! オレは丈夫だからな!」
自信満々に胸を張る。かと思うと顔をしかめて、せわしなく足元をごそごそとやり始めた。ああ、もしかして椅子かな。
「椅子ならこっち」
僕は窓際に置いてある丸椅子を指さす。ぱっと顔を輝かせたそいつは、ベッドに上ろうとしてぴたりと手を止め、斜め上を眺めて何事かを考えてる素振りをする。それから、うんうんと頷いたあとベッドの周りをぐるりと回って窓の前に置いてあった丸椅子を引き寄せてぴょんと座った。なんか、行動がいちいちうるさい。いや、黙ってるんだけど、どことなくうるさい感じがする。なんて言うんだろう……ああ、落ち着きがない……うん、それだ。
「オレはともかく、みのるのほうが暇そうだな」
椅子を前後にがたがたと揺らしながら、きょろきょろとベッドの周りを見回す。危ないな、転ぶぞ。
「テレビとかつけたらいいのに」
「個室じゃないから有料なんだよ。あんまり手持ちないし、昼間から見たい番組があるわけじゃないからもったいないし」
「ふーん」
「携帯いじろうにも、事故の時に落とした衝撃で壊れたみたいで電源が入らないし」
体を起こしてサイドテーブルに目をやる。無事だった腕時計と違って、なんの反応も示さない携帯電話は画面が見事に割れていた。つられてそれを見たそいつは、やけに真面目な顔をして頷いた。
「なるほど、これがみのるが負うはずだったケガを請け負ってくれたんだな」
へえ、身代わりになってくれたと言いたいのか。ずいぶん非科学的なことを言うなあ。……けど、そうだな、言うか。こいつなら。
僕が黙って聞いてたのに気をよくしたらしい。また得意げににやりと笑う。
「ま、諒太くんが来たからにはもう暇じゃないけどな!」
まったく、すごい自信だ。
ただ……そう言うだけあって、延々しゃべり続ける話は聞いてて楽しかった。公園で見つけた桜のつぼみの話とか、この近くを流れる川の源流の話とか、やたら雑学めいた話ばかりだったけれど、話し方が上手なんだろうな。たしかに夕飯まで一度も退屈だとは思わなかった。
次の日もやたらとにこにこしながらやってきたなと思っていたら、掲げたその手には黒いビニール袋があった。
「なんだ、何を持ってきたんだ」
「オレがいない時間にもみのるが暇しないように、いろいろ」
弾んだ足取りで窓際に向かい、丸椅子に勢いよく座る。ビニール袋をごそごそやると、中からは「いろいろ」と言った通りにあれこれ出てきた。
「文字パズルの本とー、こっちが数字パズルね。あとこれがクイズの本、謎解きの本。それから昔好きだったでしょ、でもちっちゃい子向けじゃ物足りないと思ったから、大人向け塗り絵の本~。色鉛筆も持ってきた」
「……よく知ってるな」
「そりゃもう。ちゃんと覚えてるよ」
よくもまあ、僕の好きそうなものばかり。そういえば、まだ母が再婚していなかった頃、仕事で出かけている時でも一人でも遊べるようにとパズルの本を置いて行ってくれたっけ。僕もおもちゃで遊ぶよりもこういうほうが好きだったから、天気のいい日には公園の木陰で延々問題を解いていたのを思い出す。
「これだけじゃないぞ。一緒に遊ぶのも持ってきた。じゃーん、どうやって遊ぶのかはよくわかんないけど絵が綺麗だったカードゲーム!」
たしかに、綺麗なイラストの箱だ。青々と葉を茂らせる木に緑色の美しい鳥が一羽とまっている様子がとても細かい筆致で描かれている。この感じはだいぶ玄人向けなような印象を受けるけど、大丈夫かな。
「ルールわかるのか?」
「言ったでしょ、どうやって遊ぶのかはわかんないって。だから、まずはじっくりルールを理解するとこから始めようぜ! お願いします!」
「ははっ、僕が覚えるんだ」
「心配しないで! 一応オレも隣で待機してるから!」
なんだそれ。完全に僕に任せるつもりか。それならそれでいいや。こういうの、嫌いじゃないから。
早速、手渡された平べったい箱のビニールを剥がす。蓋を開けると、説明書の冊子と折りたたまれた地図のような紙が入っていた。カードはその下だ。幹のカード、枝のカード、葉、根、それから花、鳥。種類が多いな。どれも美しいイラストの下に文字が書かれた枠があって、数字や記号も別に書かれてる。ああ、サイコロも2つ入ってた。
「複雑そうなゲームだな……。遊び方もたくさんあるみたい」
「んじゃまずはオーソドックスなやつにしようぜ」
「なら、これにしよう。カードだけを使う初心者向けのゲームだって。2人で対戦するらしいからちょうどいいね。ええと、このゲームの目的は森を作ることです。木のカードを重ねて森を作り、最上部に鳥のカードを載せます。5種類の鳥が先に並んだほうの勝利です、か」
「ふむふむ」
ルールもよくわからない状態で持ってきたものだから、果たしてどの程度真面目にゲームに取り組んでくれるのか。最初はそう思っていたけれど、ゲームが始まると彼はずいぶん真剣な表情になった。ルールをぶつぶつと呟きながら、手元の札からどれを出そうか悩んだり、山札から手札を引く時には「いいの来い、来い」と祈ったり。あんまり一生懸命なその表情を見ていると、なんだか気持ちが和んでくる。
結果、勝利数は僕のほうが多かった。悔しそうに頭を抱えた後、すぐにぱっと笑って「楽しかったな」と言った。うん。楽しかった。
カードの緑色をずっと見続けたせいだろうか、その夜も僕は夢の中で白い花を咲かせる木の下に立っていた。何度も見ているせいかあたりを見渡す余裕も出てきて、自分が立っているのが広い草原だというのがわかる。その木は左右に向かって広がっていて、大きな森になっているみたいだ。そこをまっすぐ貫く薄暗い道。もしかしてこれは臨死体験というやつなのだろうか、となんとなく思った。
飽きもせず諒太は毎日やってくる。もしかしたらゲームにはまってしまったのかなってくらい、毎日僕と対戦する。おかげで僕らは中級クラスのゲームも楽しめるようになっていた。いっそこのまま入院が長引いてもいいかも……いや、ダメだ、とりあえず元気にならなくちゃ。
諒太が帰ると、僕はパズルや塗り絵に手を付ける。特に、塗り絵は時間を忘れるくらい夢中になれた。そういえば誰だっけ、いつまでも塗り絵なんて幼稚だと馬鹿にしてきた奴は。もう忘れてしまったけど、そいつが言いふらしたのか、次第に周りからも馬鹿にされるようになってしんどくなったからやめたんだった。でも諒太は翌日僕の成果を見ていちいち褒めてくれた。僕も少しずつ昔の勘を取り戻すことができるのが嬉しかった。
今日も夕飯の片手間に、どの場所にどの色がふさわしいかと考える。相変わらず食事の量は足りなかったけれど、今は食べることよりそのあとの趣味の時間が来るのが楽しみでならなかった。
すっかり松葉杖に慣れた僕は、食べ終わった食器が載ったトレイを片手で持ち、廊下に置かれた回収用のワゴンまでそれを運ぶ。ワゴンはちょうどナースステーションの前にあった。
……ふと。僕の名前が聞こえた。思わず隠れて耳を澄ます。何。
電話……? 退院について相談したいけれど親に電話がつながらない、ということのようだった。僕に話すと不安がってしまうだろうから、どうしようか先生に相談しようと思っている、と。
一度も来てくれなかった、そこまではわかっていた。
でも、電話がつながらないということは……本格的に、僕が、いらない、んだ。
…………いらない。
どこかでふっつりと何かが切れたような音がした。
僕はベッドに上がり、頭から布団をかぶった。
いらないんだ。僕は。誰も。必要としてない。
わかってた、わかってた、でも。
どうしようもなく胸が痛む。頭の中がぐちゃぐちゃになる。熱いような冷たいような感触が体の中を暴れまわって、本当に暴れだしてしまいそうだ。
それを抑えようと、僕は布団の中で体を丸める。
誰も。
誰も?
目の奥に、楽しそうな笑顔が浮かぶ。
ずっと、傍にいてくれた。
「……諒太」
唇からこぼれる。
「うん」
……え?
声。
どうして。
がばっと飛び起きる。いつもの窓際の丸椅子に座って、諒太が、いた。椅子の端を掴んで、悲しそうに俯いてる。
「どうして」
声に出して聞くと、諒太はわずかに顔を上げた。
「みのるが呼んでくれたから」
泣きそうな顔、だけど声はとても暖かくて優しい。
「全部、いいよ。話して」
「……諒太」
胸の。奥の。隠してた気持ちが、溢れてしまう。
「……僕のことを、誰も、いらないって言う。お母さんは僕だけのお母さんだったのに、もう、僕はいらないんだって。本当のお父さんも、今のお父さんも、半分だけ血がつながった妹も、僕のことなんてどうでもいいんだ。誰も僕のことを見てくれない。学校に行けば友達はいる、でも、そうじゃなくて、誰かにいてほしい。傍にいてほしい。僕のことを見てほしい。僕は、僕はずっと、」
愛されたかった。
零れてしまった自分の言葉にはっとする。そうか、僕はずっと寂しかったんだ。僕だけを愛してくれる誰かに愛されたかった。
視界が、滲む。
諒太はまっすぐに真剣な顔で僕の目を見つめる。
「オレはみのるを幸せにする自信がある……って言い切れればいいんだけど……、ううん、でも、幸せにしたいって思ってる、すごく、本気で。オレならずっと一緒にいられる」
一度言葉を切った諒太は、まっすぐ僕に向かって手を伸ばした。
「毎晩あの森の前に立っている今のみのるなら、一緒に行けるんだ。なあ、みのる。だから、この手を取って」
……手、を。
この手を取っていいんだろうか。わずか数日前に出会ったばかりの諒太の手を。
僕は目を上げる。夜の窓には僕がひとりでベッドに座っているのが映っている。ああ、最初からそうだった。僕だけ。外が暗いから諒太が映っていないのがはっきりわかった。
そう。
諒太はこの世界の理の外にある存在だ。
でも。
「みのる……お願い」
「諒太……」
僕の傍にいてくれたのは諒太だ。
僕に手を差し伸べてくれたのは諒太だけだ。
僕は……。
諒太の笑顔をもっと見ていたい、と思った。
このままここにいるよりも、この手に連れられていったほうが、きっと僕は幸せだろう。
だから、
差し出されたその手を握った。
優しくて、力強くて、……温かい。
胸の中から溢れてきた懐かしい香りがする温かさに、涙が止まらなくなった。
「……ありがとう……」
耳に聞こえたその声は、僕のものだったか、諒太のものだったか。
滲む景色にすべてがたわんだように反響していて、僕にはわからなかった。
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