真弓イツキ

Twitter. @mauming66(鍵)/ @knockers_9

洋画、海外ドラマ好き。
RPF(中の人)AU(パラレル)をメインに活動しています。
小説中心。
そのほか、オリジナルBL小説も書いています。

こちらではサイトやブログに載せたものの再録などを置いていく予定でいます。
その時々で好きなものを好きなだけ!必ずジャンルはタグ付けします。

RPF(ナマモノ)も載せていきますが、苦手な方はタグでの除外をお願いいたします。

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投稿日:2018年04月30日 22:13    文字数:2,690

5/3 スパコミ 無配見本

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東3ホール ヌ19b 『Knocker's #9』
当日直参しております。どうぞお立ち寄りの際はおしゃべりしていってくださいませ!

こちらは無配後、後日、サイト、短編集に再録予定です。
スペース告知代わりに、冒頭サンプルを置いておきます!

ものすっごいスランプだったんですが、何とか復活できました……たぶん……きっと!
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恋は弾丸

  ーーやあ、ブラクストン


 とても人に話すようなことではなかったが、俺と兄貴はその昔「恋人同士」だった時期がある。俺が十八の誕生日を迎えたその日からはじまって、十九になる前に、俺から離れた。
 もう、すっかり昔話だな。
 ティーンエイジャーの恋心は弾丸のようなものだ。勢いと殺傷力がすこぶる高い。俺は思春期の始まりからの数年来の片想いが実った喜びに浮かれてしまい、ウェストポイントの陸軍士官学校に通うため家を出て寮生活を送っている兄貴との遠距離恋愛に酔いしれた。手紙を書いてもらい、それを全部暗記した。大きな手で頬に触れられて、喜びとこみ上げる愛しさに涙目になったところでキスもした。
 兄貴が俺の誕生日の日にいわゆる「愛の告白」をしてくれたのも、ドラマクイーン化に拍車をかけたのだと思う。その瞬間は3インチ宙に浮いていたくらいだ。
 つまり、どういうことかと言えば、だ。
 今までちゃんと出来ていたことが、「平気」だったことがみんな駄目になってしまったのだ。たとえば、兄貴が決まった約束の時間以外に電話をすることができない(大きなストレスになる)ことに寂しさを覚え、しまいに苛立ちを感じるようになってしまった。
 他愛もないおしゃべりをしたくてたまらなかった。好きな時に好きなタイミングで手をつないだり、戯れるようにキスができると思っていた。
 それがティーンの考える恋愛で、それを兄貴相手に求めるのが間違っているのはわかっていても、願わずにはいられなかったのだ。物心ついた時から兄貴に優しくない世界から彼を守るために生きてきたのにも関わらず。
 まだ子供だと言い訳できる年でもなかったし、そういう育てられ方もしてこなかった。しかし「恋」のせいで、兄貴は「俺の男」だという困った独占欲が芽生えてしまった。
 大学を休んで車を飛ばしウェストポイントまで行ったことも一度や二度ではなかった。
 兄貴は授業があれば時間を作ってはくれなかったし、夕方まで待っていた俺に特別優しくしてくれるわけでもない。
 ただ、誕生日の日、兄貴はこう言ってくれたのだ。
 はじめてのぎこちないキスの後、ずっとこの日を待っていた、と。
 俺もだよ、俺だって待っていたと上ずった声で答えた俺に兄貴はさらにこう言ってくれた。
 とても、嬉しい。
 僕はブラクストンを愛している。
 ただ、その後も兄貴は今までの生活を態度を特に変えることはなかった。変化と言えば、俺がキスをねだれば「わかった」と言って返してくれる、それだけだった。抱きしめて欲しい、と正しいタイミングで伝えなければそれすらも「思いつかない」のだ。セックスも、そうだ。俺には知識もなく、度胸もなく、何度か誘いをかけようとしたが裸で抱き合うこともできなかった。結局、兄貴も俺も抱き合うたびに、キスが深くなるたびにペニスを大きくしていたことだけが、唯一救われる思い出だと言える。
 もしかすると、兄貴の告白はただの事実確認と報告であって、それ以上の展開を考えたこともなかったのかもしれない。
 と、なれば浮かれた方は結構きつい。愛しているという純粋な気持ちより、愛されたいという渇望が強くなり、どんどん自分が醜くなっていくのではないか、と怯えた。
 兄貴と親しくしているすべての人間が憎くなってしまいそうだった。たかだか、寮が同室というだけの名前も顔も知らない男だとかが。手紙もよくよく読めば単なる日記のようであることに気がついてしまった。
 やあ、ブラクストン。
 それから始まる淡々とした報告と、テイクケア&シーユーアゲインの繰り返し。
 幸い、俺の大学での成績は良かった。いくつかの論文が評価され飛び級で修士課程に編入 し、教授のアシスタントを担当するまでになっていた。
 心理学専攻を選んだのは親父の指示だ。元々興味はあったし、いつかそれを武器にすることになるだろうという漠然とした予感もあった。その時点では軍に入るつもりはなかったが、いずれそうなるだろうという気もしていた。
 だから、このまま兄と弟が「ロマンス」しているのが良い状態なのかどうかも理解していた、本当は。
 最初の一度きり以外で恋の成就の高揚感を味わうこともなく(不安いっぱいのキスとハグばかりだった)、俺は諦めることを選択した。これ以上求めるものが大きくなれば隠し切れなくなり、きっと兄貴が負担に思うことになるだろう。俺の方も兄貴への愛情を歪ませてしまうことになるのが怖かった。
 今まで通り。
 家族への忠誠を誓う。
 それに徹しようと覚悟を決めて、俺は兄貴に告げた。
「他に、好きな人ができたんだ」
 兄貴はそんな俺に表情を変えることはなかった。眉間に少し、しわが寄ったくらいだ。この繊細で整った美しい顔はそれこそ俺以外の何人からも愛されることになるだろう。
 高機能自閉症という症例を知っていて、支えることができる「まともな人間」はきっとそう少なくもない。
 今まで、狭い世界にいただけだ。
 だから、恋人に選ぶのは俺である必要がないんだよ、兄貴。気づいてないかもしれないけど。
「……どんな人間だ?」
 その聞き方はまるで動物の種類を問うような、どこかよそよそしい響きを持っていた。俺はそれに対して用意しておいた答えを返す。
「俺のことを何よりも大事にしてくれる人だよ」
 もちろん大嘘だ。俺は兄貴以外の誰にも心動かすことはない。今までも、これからもそうだろう。
 ただ、言葉を額面通りにしか受け取らない兄貴に言うにしてももう少し取り繕うべきだった。上手いやり方は他にもあった。たとえば、自然消滅とか。
 約束無しに兄貴が俺に会いに来たことは一年弱の間、一度もなかった。約束を取り付けるのもいつも俺の方からだった。何もしなければそのまま会わなくなるだけのことだ。
 だけれどこれこそ俺が兄貴に対して強く求めたものだということを知らせておきたかった。
 伝わったかどうかはまた別の話になるが。
「そうか……」
 兄貴の返事はこれで、終わりだった。詰るようなことも、すがりつくようなこともなく、やはり事実確認と報告に終始したようなものだ。
 最後のキスもハグもなかった。俺は恋心の強制終了と引き換えに、弟の顔を取り戻した。献身を気付かれないよう(まあ、気がつかないだろうが)、ただただ兄貴が生きやすくいられるように道の小石を拾って歩くような人生を選択したのだ。
 キスがもらえないなら、せめて。
 弟として側にいることを許して欲しいと、願いながら。
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恋は弾丸

  ーーやあ、ブラクストン


 とても人に話すようなことではなかったが、俺と兄貴はその昔「恋人同士」だった時期がある。俺が十八の誕生日を迎えたその日からはじまって、十九になる前に、俺から離れた。
 もう、すっかり昔話だな。
 ティーンエイジャーの恋心は弾丸のようなものだ。勢いと殺傷力がすこぶる高い。俺は思春期の始まりからの数年来の片想いが実った喜びに浮かれてしまい、ウェストポイントの陸軍士官学校に通うため家を出て寮生活を送っている兄貴との遠距離恋愛に酔いしれた。手紙を書いてもらい、それを全部暗記した。大きな手で頬に触れられて、喜びとこみ上げる愛しさに涙目になったところでキスもした。
 兄貴が俺の誕生日の日にいわゆる「愛の告白」をしてくれたのも、ドラマクイーン化に拍車をかけたのだと思う。その瞬間は3インチ宙に浮いていたくらいだ。
 つまり、どういうことかと言えば、だ。
 今までちゃんと出来ていたことが、「平気」だったことがみんな駄目になってしまったのだ。たとえば、兄貴が決まった約束の時間以外に電話をすることができない(大きなストレスになる)ことに寂しさを覚え、しまいに苛立ちを感じるようになってしまった。
 他愛もないおしゃべりをしたくてたまらなかった。好きな時に好きなタイミングで手をつないだり、戯れるようにキスができると思っていた。
 それがティーンの考える恋愛で、それを兄貴相手に求めるのが間違っているのはわかっていても、願わずにはいられなかったのだ。物心ついた時から兄貴に優しくない世界から彼を守るために生きてきたのにも関わらず。
 まだ子供だと言い訳できる年でもなかったし、そういう育てられ方もしてこなかった。しかし「恋」のせいで、兄貴は「俺の男」だという困った独占欲が芽生えてしまった。
 大学を休んで車を飛ばしウェストポイントまで行ったことも一度や二度ではなかった。
 兄貴は授業があれば時間を作ってはくれなかったし、夕方まで待っていた俺に特別優しくしてくれるわけでもない。
 ただ、誕生日の日、兄貴はこう言ってくれたのだ。
 はじめてのぎこちないキスの後、ずっとこの日を待っていた、と。
 俺もだよ、俺だって待っていたと上ずった声で答えた俺に兄貴はさらにこう言ってくれた。
 とても、嬉しい。
 僕はブラクストンを愛している。
 ただ、その後も兄貴は今までの生活を態度を特に変えることはなかった。変化と言えば、俺がキスをねだれば「わかった」と言って返してくれる、それだけだった。抱きしめて欲しい、と正しいタイミングで伝えなければそれすらも「思いつかない」のだ。セックスも、そうだ。俺には知識もなく、度胸もなく、何度か誘いをかけようとしたが裸で抱き合うこともできなかった。結局、兄貴も俺も抱き合うたびに、キスが深くなるたびにペニスを大きくしていたことだけが、唯一救われる思い出だと言える。
 もしかすると、兄貴の告白はただの事実確認と報告であって、それ以上の展開を考えたこともなかったのかもしれない。
 と、なれば浮かれた方は結構きつい。愛しているという純粋な気持ちより、愛されたいという渇望が強くなり、どんどん自分が醜くなっていくのではないか、と怯えた。
 兄貴と親しくしているすべての人間が憎くなってしまいそうだった。たかだか、寮が同室というだけの名前も顔も知らない男だとかが。手紙もよくよく読めば単なる日記のようであることに気がついてしまった。
 やあ、ブラクストン。
 それから始まる淡々とした報告と、テイクケア&シーユーアゲインの繰り返し。
 幸い、俺の大学での成績は良かった。いくつかの論文が評価され飛び級で修士課程に編入 し、教授のアシスタントを担当するまでになっていた。
 心理学専攻を選んだのは親父の指示だ。元々興味はあったし、いつかそれを武器にすることになるだろうという漠然とした予感もあった。その時点では軍に入るつもりはなかったが、いずれそうなるだろうという気もしていた。
 だから、このまま兄と弟が「ロマンス」しているのが良い状態なのかどうかも理解していた、本当は。
 最初の一度きり以外で恋の成就の高揚感を味わうこともなく(不安いっぱいのキスとハグばかりだった)、俺は諦めることを選択した。これ以上求めるものが大きくなれば隠し切れなくなり、きっと兄貴が負担に思うことになるだろう。俺の方も兄貴への愛情を歪ませてしまうことになるのが怖かった。
 今まで通り。
 家族への忠誠を誓う。
 それに徹しようと覚悟を決めて、俺は兄貴に告げた。
「他に、好きな人ができたんだ」
 兄貴はそんな俺に表情を変えることはなかった。眉間に少し、しわが寄ったくらいだ。この繊細で整った美しい顔はそれこそ俺以外の何人からも愛されることになるだろう。
 高機能自閉症という症例を知っていて、支えることができる「まともな人間」はきっとそう少なくもない。
 今まで、狭い世界にいただけだ。
 だから、恋人に選ぶのは俺である必要がないんだよ、兄貴。気づいてないかもしれないけど。
「……どんな人間だ?」
 その聞き方はまるで動物の種類を問うような、どこかよそよそしい響きを持っていた。俺はそれに対して用意しておいた答えを返す。
「俺のことを何よりも大事にしてくれる人だよ」
 もちろん大嘘だ。俺は兄貴以外の誰にも心動かすことはない。今までも、これからもそうだろう。
 ただ、言葉を額面通りにしか受け取らない兄貴に言うにしてももう少し取り繕うべきだった。上手いやり方は他にもあった。たとえば、自然消滅とか。
 約束無しに兄貴が俺に会いに来たことは一年弱の間、一度もなかった。約束を取り付けるのもいつも俺の方からだった。何もしなければそのまま会わなくなるだけのことだ。
 だけれどこれこそ俺が兄貴に対して強く求めたものだということを知らせておきたかった。
 伝わったかどうかはまた別の話になるが。
「そうか……」
 兄貴の返事はこれで、終わりだった。詰るようなことも、すがりつくようなこともなく、やはり事実確認と報告に終始したようなものだ。
 最後のキスもハグもなかった。俺は恋心の強制終了と引き換えに、弟の顔を取り戻した。献身を気付かれないよう(まあ、気がつかないだろうが)、ただただ兄貴が生きやすくいられるように道の小石を拾って歩くような人生を選択したのだ。
 キスがもらえないなら、せめて。
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