sungen

お知らせ
思い出語りの修行編、続きをpixivで更新しています。
旅路③まで書きました。
鯰尾と今剣は完結しました(^^)pixivに完全版が投稿してあります。
刀剣は最近投稿がpixivメインになりつつありますのでそちらをご覧下さい。
こちらはバックアップとして置いておこうと思ってます。

ただいま鬼滅の刃やってます。のんびりお待ち下さい。同人誌作り始めました。
思い出語り続きは書けた時です。未定。二話分くらいは三日月さん視点の過去の三日鯰です。

誤字を見つけたらしばらくお待ちください。そのうち修正します。

いずれ作品をまとめたり、非公開にしたりするかもしれないので、ステキ数ブクマ数など集計していませんがステキ&ブクマは届いています(^^)ありがとうございます!

またそれぞれの本丸の話の続き書いていこうと思います。
いろいろな本丸のどうしようもない話だとシリーズ名長すぎたので、シリーズ名を鯰尾奇譚に変更しました。

よろしくお願いします。

妄想しすぎで恥ずかしいので、たまにフォロワー限定公開になっている作品があります。普通のフォローでも匿名フォローでも大丈夫です。sungenだったりさんげんだったりしますが、ただの気分です。

投稿日:2018年07月24日 08:48    文字数:10,289

鯰尾奇譚2 審神者同士の寄り合い

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いろいろな本丸のどうしようもない話シリーズ。
色々な本丸の鯰尾が出てきます。シリーズ順に読むとつながりが分かりやすいです。
1 / 7
注意

色々おかしい。
何が来ても平気な方向け。

・女審神者が出てくる。
・男審神者もいる。

1 / 7
2 / 7

審神者同士の寄り合い

……とは名ばかりの、つまり合コンである。

その女審神者は、真面目に審神者をやりすぎて婚期を逃しかけていた。


これはそろそろ不味いよ?と近侍のにっかり青江に、にっかりと言われ…刀剣男子同席の合コンに参加する事になった。

刀剣同席。つまり真面目で安心な合コンだ。
――では、どの刀剣をお供にするか?

かつてその合コンに参加した先輩、男性審神者と女性審神者(つまりこの二人はつきあっている)曰く、お供選びは慎重にとの事。
確かに、お互いの本丸を知ることはその審神者の人柄を知ることになる――とまでは行かないが参考にはなるだろう。
件の二人もお互いの刀剣男子を見てビビッと来たらしい。

室内と言えば脇差か短刀。
だが酒の…多分上品で無い席に短刀は以ての外。

なんとなく、短刀を連れて来る本丸の審神者とはご本人や短刀の練度によるが…付き合えないかもしれない。
極短刀や薬研あたりならまだ分かるけれど。それでもどうかと思う。
……そう思うと、確かに連れて行く刀剣は慎重に選んだ方がいい。

となると脇差…?今いるのは、青江、鯰尾、骨喰、堀川、浦島、物吉。
見た目的には青江だが、その女審神者は酒の席に青江を連れて行くのはどうかと思った。

……我が本丸の青江はとにかく下ネタと親父ギャグが多い。会合などに置いたら何を言い出すか分からない。
骨喰は下戸。一口飲んで倒れ鯰尾が騒いだのは懐かしい思い出だ。
堀川、浦島、物吉あたりもどこかしっくり来ない。
そんなに危険な事も無いだろうし、打刀の暇そうな者に頼もう。
陸奥守、大和守、加州あたりか。
初期刀の山姥切……は合コンには向かないかもしれない。

結局、加州に頼む事にした。
理由はこの本丸の加州はとても話上手、聞き上手だから。
自分がもし話題に困っても何とかしてくれるだろう。

「…どう?頼めるかな」
女審神者が加州に言った。

「任せといて!」
加州は笑顔で請け負った。
「うん、ありがとう。よろしく」

女審神者にとって加州清光は、頼れる姉、…いや、兄のような存在だ。
本丸の中でもそんな感じのポジションだし。
…乱とはまるで仲の良い姉妹のようだ。

審神者同士が結婚したら、それぞれの本丸はどうなるのか?
合コンに申し込みをする前に、幾人かの女審神者に聞いてみた。

結婚してもお互いの本丸にたまに顔を出す程度。それぞれ別の本丸を持つ。

だが政府のはからいで領地換えをして貰える事もある。
…これは審神者同士の子供は審神者になる可能性が高いからだ。
刀剣と恋愛沙汰を起こされるよりも、まだ健全という事だろう。

隣接させ専用のゲートをつくり、ほとんど一つの本丸のように二つの本丸の刀剣が自由に行き来している所もある。
件のビビッと来た二人の本丸だ。今度結婚するらしい。
…それはさすがにレアケースだと聞いた。
確かに、同じ顔の刀剣男子が勝手気ままに行き来していたら、ややこしい事この上ない。

ところで何を着ていけば良いのか。

女審神者は加州に相談した。
「着物が無難でいいと思う。洋服よりも男審神者受けするはず。こっちは真面目なんだからそうアピールしないとね」
「うん」
「ほら、あの着物あったよね、俺が顕現したときに着てた…白地に金の装飾がある袴が萌葱色の。あれが主に一番似合ってて良いと思う」
「ああ。あれ。――えっと。どこにしまったかな」
「お化粧は僕に任せて!主、素材は良いんだから、お洒落しないと!」
乱が言った。
「うん。ありがと…がんばる。彼氏欲しい。結婚したい」
……青江の話は怖かった。
「そうそう、がんばろ!」「主なら大丈夫だよ!」
加州と乱が励ましてくれた。
恋バナは二人の大好物だろう。

「主、良い人がいたら、加州に任せてでも、とにかくアドレスゲットしてくるんだよ?」
乱が言った。
「うん…」
そんな都合良く、いるだろうか。
「がんばる」
私達は決意を固めた。

ところに。どたどた!と言う足音が聞こえた。
その瞬間、加州と乱が私の箪笥からあさっていた化粧道具や、合コンの案内などを全て隠す。
私は部屋中央の座布団に急いで座る。
「~~♪」
肘掛けにもたれて、口笛など吹いてみる。

「あっるじー、しつれいしまーーーす☆」
外から声がかると同時にすぱーん!と障子が開く。

「あるじ!出陣してきましたよ!バサッと行って!ザックリ切りましたよ!完全勝利です☆褒めて下さい!」
良い笑顔の、鯰尾藤四郎がいた。

鯰尾はこの面子を見た。そしてあ、と言った。
「あーー分かった!ついに合コンに行くんですね!俺、応援しますよ!あ、俺、ついて行ってもいいですか?やった!合コンだ!お酒が飲める!」
鯰尾は嬉しそうだ。膝をついて目を輝かせ、私ににじり寄ってくる。
「俺は何着ていこうって、出陣服ですよね!?このアロハシャツじゃダメですか?ねえ!アリですよね?」
私はアロハシャツを取り出しぐいぐい近づいてくる鯰を押し返した。

――いやまて。誰がお前を外に出すと言った?

「待って。加州と行くから!」
「えー、そうだ、主も着ますかコレ!」
鯰尾が私に手を伸ばして、にたっと笑う。
「駄目だから!ウザッ」
私は全力で押し返す。
思い切り容赦なく蹴飛ばしてやっと離れた。
「そうそう、ずお兄は出番無し!」「鯰尾、残念だったね!」
乱と加州が言った。やや得意げに。

「えー…。行きたかったのに。あ、そうだ主、俺、骨喰と今度、現世に出かけたいんですけどいいですか?」
「待って、今度っていつ?」
私は言った。
「え?っさあ。明日とか、あさってとか?」
鯰尾は首を傾げた。
「――うそおっしゃい!鯰尾!あんた今から行く気でしょう!」
加州が腰に手を当て、眉をつり上げた。

「この鞄は何?」
加州が荷物を指さす。
鯰尾はあはははは!!と笑った。
「あ、ばれましたー?いや明日休みだから、ちょっと遠征に!いいですよね、じゃあいってきまs」
スパーン!といい音がした。乱がハリセンで叩いた音だ。
「鞄お触り禁止!!外出も禁止!」

「ええ~~乱の馬鹿ーっ」
鯰尾が頭を押さえて、不満そうに口を尖らせる。

「じゃあ☆今度、今度なら良いですよね?あ、そうだ合コン!絶対連れて行って下さい!」
「君はその日出陣だから。って言うか、――そういえば、どこで知ったの?」

鯰尾が目を丸くして、バッと大きく両手を広げた。

「もう本丸中の噂になってますよ!」

――お前が触れ回ったんだろ!!

私達は心の中で叫んだ。
察するに、察しなくても、情報源は…青江か。
「はぁあ…」
私達はため息をついた。
……そう。これが我が本丸でいちばん困った刀剣。

『やたら元気の良い鯰尾藤四郎』だ。

……どうしてこうなった?

「心配しなくても、俺がいれば絶対なんとかなりますって!!主のために良い人探してみせます!」
鯰尾はやたら得意げだ。
「いや、君は連れてかないから。もう、今からもう一回出陣してきなさい」
「ええ!あ。じゃあ、出陣したら連れて行ってくれるんですか!?うわーい!やったぁ!」
駄目だコイツ。話聞かない。

「ずお兄、うざい!加州が行くんだからね!!」
「鯰尾、刀解するぞオラぁ!」
乱と加州が言った時には、鯰尾はすでにいなかった。

「出陣してきまーす!」
という元気な声が本丸に響いた。
[newpage]

台風一過。
疲労だけが残った。

「…主、今からどこかに隠れた方が良くない?」
乱がげんなりした様子で言った。
「というか、合コンって一週間後だけど。それまで逃げられる?絶っ対無理ー…」
加州も頭を押さえる。

鯰尾に知られてしまった以上、ヤツがついてくるのは避けられない。

「うん……あきらめるしかないよね。あー…結婚、したかったな…」
私は遠くを見た。
あのKY鯰尾を連れて行ったら、他の審神者さんたちは絶句するだろう。

「いざとなったら、いち兄に折檻して貰えば良いよ」
「けど、鯰尾が聞くと思う?」
乱と加州が言った。
「……」
乱が首を振って、ため息をつく。
この本丸では鯰尾がやらかして一期一振が鉄拳制裁、というのがデフォルトだ。
鯰尾は一度自分の部屋で野球をやって、障子、電灯、箪笥、鏡を全滅させた事がある。
その場にいた骨喰は鯰尾が投げたバットを食らって中傷。手入れ出来たから良い物の、あれは酷かった。
何やら現世の漫画から影響を受けたらしい。
それからしばらく、なぜか本丸では野球が流行ってしまった。
陸奥守や泉和守や短刀達は素直で可愛いので、素直に真似してしまうのだ。鶴丸が乗るのもいけない。
いつのまにか三チームが結成、キャプテンは巻き添えの代名詞、三日月、対する鯰尾チーム。第三の前田。そして野球をしていた鯰尾が今度はボールを追ってガラスに突っ込んで重傷。

庭の鯉を勝手に裁いて骨喰と食べていたこともある。
…骨喰は記憶が無いから、とか言いつつ、いつも付き合っているが、だいたいとばっちりを受けてひどい目にあうのは骨喰だ。骨喰は鯉を食べて発疹が体中に出て、ぶっ倒れて手入れ部屋に担ぎ込まれた。鯰尾はピンピンしていた。骨喰に対する罪悪感は無いらしい。
その度に一期は叫び、ちょっとやりすぎでは無いか、という鉄拳制裁をするのだが――、ちなみに鯉の時はスマキにして桜の木に吊して棒で叩いていたし、野球の時は氷風呂に突っ込んで、その後にムチで百叩きにしていた。ふんどし一枚で十字架はり付け飯抜きのさらし刑は日常茶飯事。縛り上げて折檻なども良くやっている。
だが一期はドSなのか、たまにロウを垂らす口元が微笑んでいて、これも手に負えない。
垂らされる鯰尾がやや楽しげににやついているのがまたどうしようも無い。
この前は鯰尾がセーラー服を着て一期と謎の罰にいそしんでいた。
骨喰は毎回無表情で一期先生のお手伝い。
鯰尾、一期、骨喰、誰かそろって道を外れるあいつらを止めてくれ。ギャグマンガか。
どうしてこうなった……っ!
鯰尾が出陣しているときは、静かなのでしょっちゅう出陣させている。
うちには鯰尾なんていない。シリアスって何だっけ?が合言葉だ。

「……短い春だったなぁ…」
私はうなだれた。うん。これは無理。もう絶対無理だ。
「主!あきらめないで!僕、応援するから!」
「そうだよ、主!主ならきっとできる!鯰は私達が祖止するから!」
「いや、おおごとになるからそれもやめて……」
私は今までのパターンを思い出して言った。こうやって、皆が鯰尾にいつのまにか振り回されている。うちの本丸の子達は、本当に素直なのだ。

「短い春だった…」
私は言った。この本丸はおかしい。

「合コンはあきらめるよ…」
「駄目!それはだめっ!主、行こうよ!」
乱が言った。
「そうだよ、例え粉砕されるとしても!あきらめたらそこで終了だよ!メンタルの強さだけが主の取り柄なんだから!」
「乱…加州…」
乱は良い事を言う。

「……主」

と声がして、見ると骨喰が立っていた。今日も可愛い。

骨喰は、私の方へきて、首を傾げた。
「兄弟はどこだ?」
「出陣してるよ」
私は言った。

「……そうか」
しゅん、とまるで捨てれた子犬のような顔をする。

――これが、これがいけないんだ!
と私達は思った。
骨喰は鯰尾にものすごく懐いている。扱いの微妙さにもめげない。

骨喰が寂しそうに周囲を見回す。

「兄弟がいないと、…本丸が広く感じる」

「…う」
私は、そんな事言わないで!という気分になってしまった。
なにこのシリアスモード。ちょうど良いタイミングでそよ風が吹く。

「…」「…」
乱と、加州も無言で、そうだな、寂しいな、という顔をし出す。
だからなんで皆そうなんだよ!!
誰か突っ込んでくれ!

「――はっ」
そうだ、突っ込み役!
我が本丸には、突っ込み役が居ないのだ…!

私は立ち上がる。
「決めた!」

「突っ込みの出来る人、か突っ込みのできる刀剣の持ち主と結婚しよう」

「「えっ」」
「いいですね、それ!!」
声がして振り返ると、もう鯰尾が戻って来ていた。
骨喰はさも当然のように、鯰尾の隣にいる。

骨喰は口数は少ない。けれども、なんか楽しんでいるに違いない。

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「うわ!!男女ばかりですね!」
「合コンなんだから、当然でしょう…」
私は肩を落とした。
結局、鯰尾と、骨喰を連れて来た。
一振でも二振でも一緒だ。こいつらセットだし。

加州なら頼りになったのに。この子達等では…。
不安しか無い。ちゃんとしゃべれるだろうか。

―――。
終了後。
まとまった人達が、それぞれ話している。
その輪から外れた場所で。

「……何も話せなかった……」
私はがっくり項垂れた。というか、地に伏せた。

「大丈夫!次もその次もありますって!」
鯰尾がぽんぽんと私の背を叩く。
「――それとも、俺にしときますか?」
ささやくように、耳元で言われる。

「いや私、そう言う趣味無いから」
いっそ、そっちの趣味があれば良かったのに。
「あはは。残念ですね☆」
顔だけはいいのがムカツク。
骨喰も、こう、もう少し、突っ込みしてくれたらいいのに!
こういう時は、『兄弟、それはなんとかかんとかだ』とか!ばしっと!
――私は口べたで、上手い突っ込みセリフが考えられなくて、いつももどかしい思いをしている。

「…骨喰、帰ったら、突っ込みの練習しようか」
「??わかった」
かくなる上は、骨喰を突っ込み役に仕立てるしか無い。
ポジション的にも、骨喰が適任だろう――。

そこで。
「そうだ…吉○新喜劇!」
という声が聞こえた。

「それか、ほら、主さんに見せてもらった、ギャグマンガの主人公?」

私は顔を上げた。

「あれにそっくりでしたね…」
と少し遠くで話す声。

――見ると立ち去っていく後ろ姿。
男審神者と、さらさら揺れる黒髪の刀剣男子…つまり鯰尾がいた。

あれ、鯰尾、さっき居たっけ?
思い出せなかった。
「あ、俺だ。あるじ!ねえあれあれアレ!アレはさっき一番端っこで、自分の審神者にお酌してたヤツですよ!」
鯰尾が言った。
一番はしゃいだのは君だったけどね…。ん?これは意外といい突っ込みかも。
でももう少しいい突っ込みを…。
「声かけてきまーす!」
「あっ!ちょっと」

考えているうちに、鯰尾が飛び出して行った。

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ああ……。
さっぱり話せなかったな。

男審神者は項垂れていた。

合コンに勇気を出して――参加したは良い物の。さっぱり。
結局、鯰尾としっぽり酒を飲んだだけになってしまった。
ウチの鯰尾はものすごくお酌が上手いんだよなぁ。

「そう言えば、やたら騒がしい誰かの鯰尾がいたなぁ。ちょっとびっくりしたよ。次頑張るか…」
と鯰尾と話した。
「主さん。そう言えば。それ不思議なんですよ。刀剣って、座席の関係で一人一振でしょう?俺、数えたんですけど、数そろってました。誰か二振連れて来たのかな?」
「どうだろう、それにしても元気な鯰尾だったなぁ。乾杯の音頭取ってたから、主催者側かもしないね」
うちの鯰尾は結構大人しいんだな、と男審神者は思った。
「ほんと、あの腹芸にはびっくりしました。まるで――そうだ…吉○」

そんな事を話していたら。

「そこの俺!」
と声がした。
「!――」
鯰尾が驚いた様子で振り返った。

そこには鯰尾がいた。

次いで振り返った審神者は、あ、と思った。
――さっきの騒がしい鯰尾だ。
そしてどうやらこの鯰尾は、うちの鯰尾よりも練度が高いらしい。

その鯰尾は、にこにこと笑っている。
「ちょっとお話しませんかー?それか、今から一緒にどっかいこう!」

「……えっ?」
鯰尾が戸惑った。まさか自分が誘われるとは…という顔をしている。
誘い文句は三日月レベルだが。

「こら…!鯰尾っ」
と焦った様子で、一人の女性審神者が来た。
どうやら、この鯰尾の主らしい?

「?」
男審神者は首を傾げた。この女性に見覚えが無い。

「鯰尾…この女性(ひと)、さっきいたっけ?」
鯰尾にそっと聞く。
「えっと?あれ……あ。そう言えばいました。向かいの左の端っこで、骨喰と一緒にいた方です」
「あ、一番離れた場所か、そうか」
見ると、女審神者の後ろに骨喰がついて来ている。
女審神者は、金の装飾のある白い着物に、萌葱色の袴。
ワンレングスのかなり長い、亜麻色の髪…染めているようだが、大人しそうな審神者だった。

男審神者の鯰尾は、ん?と思った。
――影が薄かったので、というかこの鯰尾が騒がしくて気にしていなかったが、近くで見るとなかなかの美人だし、印象は悪く無いし、霊力も高そうだ。隣で今剣が頷いた。
これは良い機会かも…?
「出かけるって、今から?」
そう思ってから、鯰尾は、騒がしかった鯰尾に尋ねた。
少し乗り気に聞こえるように。
「そうそう!俺と骨喰とあるじがそっち行ってもイイ?なあぱーっと二次会とかさ!あるじさん、皆もいこーいこー!俺もっと飲みたい!」
騒がしい鯰尾が言った。

――こいつ軽っ。
と男審神者の鯰尾は思った。

「えー…、主、どうしますか?」
男審神者に聞いてみた。
「……え、ええと、そちらの主さんが良ければ…、どうですか?」
どうやら男審神者は、それもいいかな、と思ったらしい。

「…えっ。ええと?」「やったー!じゃあ行きましょう!」
女審神者が戸惑っているうちに、鯰尾が言って、無言の骨喰がセットでついてきた。

「俺達二人いるし!なんとかなりますって!」
女審神者の鯰尾が言う。隣には骨喰が当然のようにいる。

「じゃあ、あの、もしお邪魔でなかったら…?」
文字通り背中を押されて、真っ赤になった女審神者が言った。
「は、はぁ。もちろん、ご用意しますよ」
「主さん、今剣が先に知らせてくれるそうです」
鯰尾が言った。
「ん?それは助かる。じゃあ、良さそうかな。小さな本丸ですが、良かったら一刻ほど」

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「ただいまー」
と女審神者が鯰尾を連れて帰って来た。予定より大分遅い。

ばたばたばたばたばた!!と、もちろん寝ていなかった刀剣男子が総出で出迎える。
「主、どうだった!?」「良い人いた!?」
乱と加州が詰め寄った。

乱と加州は、できれば泊まるくらいの勢いで!と女審神者に言いつのっていた。
女審神者は、真面目な席なんだから、(鯰尾がいなければ)と言っていた。

「そんな大げさな」
女審神者が、ちょっと言いにくそうに言った。頬が赤い。

おや、と加州が思った。

「骨喰は?」
「それが。…酔っ払っちゃって。何で私骨喰を連れて行ったんだろ…」
がっくりと項垂れた。
そういえば骨喰は下戸だった。そのことをすっかり忘れていた。

「あっ!そうだった!!しまった!主たまにうっかりしてるよね」
加州が言った。
「それをいうなら加州もでしょー」
女審神者は言った。少し飲んだらしい。
「で、どこに骨喰を置いて来たの?」
――見ると主のそばの鯰尾はとても静かだ。

なんだろう、この違和感は。
「…?」
目が合うと、あいまいに微笑んで会釈を…?あれ?

鯰尾ってこれでよかった?
…こんなに美形だっけ?

「それがー……。鯰尾が勝手に泊まるって言うし…」
女審神者が頭を抱えた。
カチャ!と出陣服だった一期一振が刀、じゃなくてムチに手をかけた。
「――お仕置きが必要ですな?」
「違うって!……うん、まあ好きにして」
女審神者は言った。
「泊まる?ってどこに」

「――ぼくたちのほんまるですよ」
声が聞こえて、見ると、主の側の鯰尾の後ろから、今剣が顔を出していた。

「あっ」
と、声がして見ると、女審神者の本丸の今剣が驚いていた。

「ぼくですね!」
目を丸くする。
「ぼくです!」
今剣がにっこりと笑う。

「ん?ということは、このなまずおさんは…」
この本丸の今剣が言う。
「ぼくのほんまるの鯰尾さんです」
どこかの本丸の今剣が言った。

「そうなんですね!」

「一人で大丈夫って言ったんだけど。送って下さったんだよ。ほんと、いい鯰尾さんだよ…」
女審神者がしみじみと言った。
「どおりで。静かな訳だ。あんたうちに泊まってく?」
加州が言った。

鯰尾がふわりと微笑んだ。
「いえ、大丈夫です」

「!!!っ、そ、そう?」
加州が言った。
「――別人だ」
乱が呆然と呟く。

「では。俺達はこれで失礼します。――行こう、今剣」
「はい!」

鯰尾は女審神者に一礼し、今剣の手を引いて去って行った。

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「あんな鯰尾が良かったなぁ」
女審神者が言った。
もちろん、乱と加州が聞き役だ。

「それでそれで、どんな本丸だったの!?」
「それでそれで、どんな人?!?主やるね!」

座布団に座って、酔い覚ましの水を飲みながら、女審神者が語る。

「……どんなって、別にそんな風じゃないって。けど、すごく感じのいい本丸だったなぁ。今剣には驚いたけど」
「今剣?」
「ほら、さっきの――。あの子、幽霊なんだって」
「??え?」
「折れちゃって、その後も本丸に度々?現れる――、なんて不思議なこともあるもんだ…。あの人、やっぱ霊力高いのかな?」

「どのくらいの本丸だったの?」
「うちより大分土地は小さいけど、三日月と小狐丸と、鶴丸に、江雪さんもいた」
「じゃあ、そこそこ有望なんじゃない?今剣折れたのは初期だろうし」
加州が言う。

女審神者はうつむいた。

「でも特に世間話くらいしかしてないし…。今剣がおかしいから聞いたら、色々話してくれたけど…」

「別にまた会う約束とかしてないし…」
もじもじする。これが出会いだったら良いけど、そんな事は無いだろう。
「大丈夫だよ!きっと、向こうに泊まってるずお兄が上手くやって来るって!!多分」
乱が言った。
「いやー……、うーん…それより何かしでかなさないか心配…」
「イケメンだった?幾つくらいの人?」
加州の追求は続く。
「まあ、優しそうで、顔も悪くは無かったけど」

――と言うか、部屋の外で皆が聞き耳を立てている気がする。いや絶対いる。
特にその影、お前、一期一振だろ!!

「ああ、もう、はいはい、今日は寝ますー!!」
女審神者は手を叩いた。

〈おわり〉

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本丸設定
どうしようもない本丸No.2
『ギャグマンガ本丸』

女審神者…女性。二十代後半。青江に怖い話をされて合コンに参加。
霊力はけっこう強くてレア刀はコンプ済み。だがどの刀剣もどうしようもない。

鯰尾…ギャグマンガの主人公みたいな、めげないアホ。底抜けに明るい。
口癖は「まあ、なんとかなりますって☆」「俺がルールだ!」「きょる~んっ☆」
お仕置きシーンではお色気担当に早変わり。

一期一振…「お仕置きです!」「お覚悟!」とか言いつつ、骨喰と前田を従えてSM折檻を楽しむ粟田口の長兄。

骨喰…実は二振り目。一振り目は検非違使に遭遇+不運が重なって破壊されてしまった。希なシリアス回ではこの設定が使われる。
あまり深く考えない性格だが寂しがり屋。本人は気が付いていないが悪ノリする。下戸。

粟田口…数が多いので色々かり出される。サッカー、野球、ヨットレースなど。
この前は鯰尾と一緒に富士登山→八甲田山→チョモランマ遠征した。

三日月…威厳の無いおじいちゃん。絶好のタイミングで通りすがることが多い。
被害に遭うことも。
「なんだ、今日は何をしているのだ」「おお、骨喰」「あなや!」

鶴丸…ギャグライバル。よき友人というか、彼もボケ。持ちネタがいくつもある。だいたい止めに来た審神者と闘う。鯰尾を助けて裏切られることも。
姿が見えないときはヒッチハイクの旅に出ている。古代文明の遺跡をよく発見する。
「じゃあ俺は釘バットを集めてくるぜ」「それはいいな!やってみよう」「御用改めだ!」

加州と乱…二人揃って鯰尾をいびる姉ポジ。加州はノリ×2で姉キャラを演じているふしがある。

今剣…主に審判。石切丸、小狐丸、獅子王と合わせて解説なども担当する。
キレのある一言が好評。粟田口と一緒にいる事も多い。

青江…遺跡で都合の良い魔術知識を披露する。

薬研…マッドサイエンティスト。
先日本当に女体化の薬を作ってしまった。巨大ロボを作ったりもする。

手入れ部屋…フル稼働。
女審神者の本丸…運動場がある。

突っ込みは不在。どうしてこうなったー。


おまけ

鯰尾さん…まともな鯰尾。彼が来るとギャグマンガの鯰尾は忘れられるか出陣しているor折れてしまった事にされる。
意外とスルースキルがあって、なんとなく話に合わせてくれる。イケメンポジ。

今剣先生…おしえて、先生~!のかけ声で詳しい解説をしてくれる。 
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    07月15日 00:00 〜 12月01日 00:00
鯰尾奇譚2 審神者同士の寄り合い
1 / 7
注意

色々おかしい。
何が来ても平気な方向け。

・女審神者が出てくる。
・男審神者もいる。

1 / 7
2 / 7

審神者同士の寄り合い

……とは名ばかりの、つまり合コンである。

その女審神者は、真面目に審神者をやりすぎて婚期を逃しかけていた。


これはそろそろ不味いよ?と近侍のにっかり青江に、にっかりと言われ…刀剣男子同席の合コンに参加する事になった。

刀剣同席。つまり真面目で安心な合コンだ。
――では、どの刀剣をお供にするか?

かつてその合コンに参加した先輩、男性審神者と女性審神者(つまりこの二人はつきあっている)曰く、お供選びは慎重にとの事。
確かに、お互いの本丸を知ることはその審神者の人柄を知ることになる――とまでは行かないが参考にはなるだろう。
件の二人もお互いの刀剣男子を見てビビッと来たらしい。

室内と言えば脇差か短刀。
だが酒の…多分上品で無い席に短刀は以ての外。

なんとなく、短刀を連れて来る本丸の審神者とはご本人や短刀の練度によるが…付き合えないかもしれない。
極短刀や薬研あたりならまだ分かるけれど。それでもどうかと思う。
……そう思うと、確かに連れて行く刀剣は慎重に選んだ方がいい。

となると脇差…?今いるのは、青江、鯰尾、骨喰、堀川、浦島、物吉。
見た目的には青江だが、その女審神者は酒の席に青江を連れて行くのはどうかと思った。

……我が本丸の青江はとにかく下ネタと親父ギャグが多い。会合などに置いたら何を言い出すか分からない。
骨喰は下戸。一口飲んで倒れ鯰尾が騒いだのは懐かしい思い出だ。
堀川、浦島、物吉あたりもどこかしっくり来ない。
そんなに危険な事も無いだろうし、打刀の暇そうな者に頼もう。
陸奥守、大和守、加州あたりか。
初期刀の山姥切……は合コンには向かないかもしれない。

結局、加州に頼む事にした。
理由はこの本丸の加州はとても話上手、聞き上手だから。
自分がもし話題に困っても何とかしてくれるだろう。

「…どう?頼めるかな」
女審神者が加州に言った。

「任せといて!」
加州は笑顔で請け負った。
「うん、ありがとう。よろしく」

女審神者にとって加州清光は、頼れる姉、…いや、兄のような存在だ。
本丸の中でもそんな感じのポジションだし。
…乱とはまるで仲の良い姉妹のようだ。

審神者同士が結婚したら、それぞれの本丸はどうなるのか?
合コンに申し込みをする前に、幾人かの女審神者に聞いてみた。

結婚してもお互いの本丸にたまに顔を出す程度。それぞれ別の本丸を持つ。

だが政府のはからいで領地換えをして貰える事もある。
…これは審神者同士の子供は審神者になる可能性が高いからだ。
刀剣と恋愛沙汰を起こされるよりも、まだ健全という事だろう。

隣接させ専用のゲートをつくり、ほとんど一つの本丸のように二つの本丸の刀剣が自由に行き来している所もある。
件のビビッと来た二人の本丸だ。今度結婚するらしい。
…それはさすがにレアケースだと聞いた。
確かに、同じ顔の刀剣男子が勝手気ままに行き来していたら、ややこしい事この上ない。

ところで何を着ていけば良いのか。

女審神者は加州に相談した。
「着物が無難でいいと思う。洋服よりも男審神者受けするはず。こっちは真面目なんだからそうアピールしないとね」
「うん」
「ほら、あの着物あったよね、俺が顕現したときに着てた…白地に金の装飾がある袴が萌葱色の。あれが主に一番似合ってて良いと思う」
「ああ。あれ。――えっと。どこにしまったかな」
「お化粧は僕に任せて!主、素材は良いんだから、お洒落しないと!」
乱が言った。
「うん。ありがと…がんばる。彼氏欲しい。結婚したい」
……青江の話は怖かった。
「そうそう、がんばろ!」「主なら大丈夫だよ!」
加州と乱が励ましてくれた。
恋バナは二人の大好物だろう。

「主、良い人がいたら、加州に任せてでも、とにかくアドレスゲットしてくるんだよ?」
乱が言った。
「うん…」
そんな都合良く、いるだろうか。
「がんばる」
私達は決意を固めた。

ところに。どたどた!と言う足音が聞こえた。
その瞬間、加州と乱が私の箪笥からあさっていた化粧道具や、合コンの案内などを全て隠す。
私は部屋中央の座布団に急いで座る。
「~~♪」
肘掛けにもたれて、口笛など吹いてみる。

「あっるじー、しつれいしまーーーす☆」
外から声がかると同時にすぱーん!と障子が開く。

「あるじ!出陣してきましたよ!バサッと行って!ザックリ切りましたよ!完全勝利です☆褒めて下さい!」
良い笑顔の、鯰尾藤四郎がいた。

鯰尾はこの面子を見た。そしてあ、と言った。
「あーー分かった!ついに合コンに行くんですね!俺、応援しますよ!あ、俺、ついて行ってもいいですか?やった!合コンだ!お酒が飲める!」
鯰尾は嬉しそうだ。膝をついて目を輝かせ、私ににじり寄ってくる。
「俺は何着ていこうって、出陣服ですよね!?このアロハシャツじゃダメですか?ねえ!アリですよね?」
私はアロハシャツを取り出しぐいぐい近づいてくる鯰を押し返した。

――いやまて。誰がお前を外に出すと言った?

「待って。加州と行くから!」
「えー、そうだ、主も着ますかコレ!」
鯰尾が私に手を伸ばして、にたっと笑う。
「駄目だから!ウザッ」
私は全力で押し返す。
思い切り容赦なく蹴飛ばしてやっと離れた。
「そうそう、ずお兄は出番無し!」「鯰尾、残念だったね!」
乱と加州が言った。やや得意げに。

「えー…。行きたかったのに。あ、そうだ主、俺、骨喰と今度、現世に出かけたいんですけどいいですか?」
「待って、今度っていつ?」
私は言った。
「え?っさあ。明日とか、あさってとか?」
鯰尾は首を傾げた。
「――うそおっしゃい!鯰尾!あんた今から行く気でしょう!」
加州が腰に手を当て、眉をつり上げた。

「この鞄は何?」
加州が荷物を指さす。
鯰尾はあはははは!!と笑った。
「あ、ばれましたー?いや明日休みだから、ちょっと遠征に!いいですよね、じゃあいってきまs」
スパーン!といい音がした。乱がハリセンで叩いた音だ。
「鞄お触り禁止!!外出も禁止!」

「ええ~~乱の馬鹿ーっ」
鯰尾が頭を押さえて、不満そうに口を尖らせる。

「じゃあ☆今度、今度なら良いですよね?あ、そうだ合コン!絶対連れて行って下さい!」
「君はその日出陣だから。って言うか、――そういえば、どこで知ったの?」

鯰尾が目を丸くして、バッと大きく両手を広げた。

「もう本丸中の噂になってますよ!」

――お前が触れ回ったんだろ!!

私達は心の中で叫んだ。
察するに、察しなくても、情報源は…青江か。
「はぁあ…」
私達はため息をついた。
……そう。これが我が本丸でいちばん困った刀剣。

『やたら元気の良い鯰尾藤四郎』だ。

……どうしてこうなった?

「心配しなくても、俺がいれば絶対なんとかなりますって!!主のために良い人探してみせます!」
鯰尾はやたら得意げだ。
「いや、君は連れてかないから。もう、今からもう一回出陣してきなさい」
「ええ!あ。じゃあ、出陣したら連れて行ってくれるんですか!?うわーい!やったぁ!」
駄目だコイツ。話聞かない。

「ずお兄、うざい!加州が行くんだからね!!」
「鯰尾、刀解するぞオラぁ!」
乱と加州が言った時には、鯰尾はすでにいなかった。

「出陣してきまーす!」
という元気な声が本丸に響いた。
[newpage]

台風一過。
疲労だけが残った。

「…主、今からどこかに隠れた方が良くない?」
乱がげんなりした様子で言った。
「というか、合コンって一週間後だけど。それまで逃げられる?絶っ対無理ー…」
加州も頭を押さえる。

鯰尾に知られてしまった以上、ヤツがついてくるのは避けられない。

「うん……あきらめるしかないよね。あー…結婚、したかったな…」
私は遠くを見た。
あのKY鯰尾を連れて行ったら、他の審神者さんたちは絶句するだろう。

「いざとなったら、いち兄に折檻して貰えば良いよ」
「けど、鯰尾が聞くと思う?」
乱と加州が言った。
「……」
乱が首を振って、ため息をつく。
この本丸では鯰尾がやらかして一期一振が鉄拳制裁、というのがデフォルトだ。
鯰尾は一度自分の部屋で野球をやって、障子、電灯、箪笥、鏡を全滅させた事がある。
その場にいた骨喰は鯰尾が投げたバットを食らって中傷。手入れ出来たから良い物の、あれは酷かった。
何やら現世の漫画から影響を受けたらしい。
それからしばらく、なぜか本丸では野球が流行ってしまった。
陸奥守や泉和守や短刀達は素直で可愛いので、素直に真似してしまうのだ。鶴丸が乗るのもいけない。
いつのまにか三チームが結成、キャプテンは巻き添えの代名詞、三日月、対する鯰尾チーム。第三の前田。そして野球をしていた鯰尾が今度はボールを追ってガラスに突っ込んで重傷。

庭の鯉を勝手に裁いて骨喰と食べていたこともある。
…骨喰は記憶が無いから、とか言いつつ、いつも付き合っているが、だいたいとばっちりを受けてひどい目にあうのは骨喰だ。骨喰は鯉を食べて発疹が体中に出て、ぶっ倒れて手入れ部屋に担ぎ込まれた。鯰尾はピンピンしていた。骨喰に対する罪悪感は無いらしい。
その度に一期は叫び、ちょっとやりすぎでは無いか、という鉄拳制裁をするのだが――、ちなみに鯉の時はスマキにして桜の木に吊して棒で叩いていたし、野球の時は氷風呂に突っ込んで、その後にムチで百叩きにしていた。ふんどし一枚で十字架はり付け飯抜きのさらし刑は日常茶飯事。縛り上げて折檻なども良くやっている。
だが一期はドSなのか、たまにロウを垂らす口元が微笑んでいて、これも手に負えない。
垂らされる鯰尾がやや楽しげににやついているのがまたどうしようも無い。
この前は鯰尾がセーラー服を着て一期と謎の罰にいそしんでいた。
骨喰は毎回無表情で一期先生のお手伝い。
鯰尾、一期、骨喰、誰かそろって道を外れるあいつらを止めてくれ。ギャグマンガか。
どうしてこうなった……っ!
鯰尾が出陣しているときは、静かなのでしょっちゅう出陣させている。
うちには鯰尾なんていない。シリアスって何だっけ?が合言葉だ。

「……短い春だったなぁ…」
私はうなだれた。うん。これは無理。もう絶対無理だ。
「主!あきらめないで!僕、応援するから!」
「そうだよ、主!主ならきっとできる!鯰は私達が祖止するから!」
「いや、おおごとになるからそれもやめて……」
私は今までのパターンを思い出して言った。こうやって、皆が鯰尾にいつのまにか振り回されている。うちの本丸の子達は、本当に素直なのだ。

「短い春だった…」
私は言った。この本丸はおかしい。

「合コンはあきらめるよ…」
「駄目!それはだめっ!主、行こうよ!」
乱が言った。
「そうだよ、例え粉砕されるとしても!あきらめたらそこで終了だよ!メンタルの強さだけが主の取り柄なんだから!」
「乱…加州…」
乱は良い事を言う。

「……主」

と声がして、見ると骨喰が立っていた。今日も可愛い。

骨喰は、私の方へきて、首を傾げた。
「兄弟はどこだ?」
「出陣してるよ」
私は言った。

「……そうか」
しゅん、とまるで捨てれた子犬のような顔をする。

――これが、これがいけないんだ!
と私達は思った。
骨喰は鯰尾にものすごく懐いている。扱いの微妙さにもめげない。

骨喰が寂しそうに周囲を見回す。

「兄弟がいないと、…本丸が広く感じる」

「…う」
私は、そんな事言わないで!という気分になってしまった。
なにこのシリアスモード。ちょうど良いタイミングでそよ風が吹く。

「…」「…」
乱と、加州も無言で、そうだな、寂しいな、という顔をし出す。
だからなんで皆そうなんだよ!!
誰か突っ込んでくれ!

「――はっ」
そうだ、突っ込み役!
我が本丸には、突っ込み役が居ないのだ…!

私は立ち上がる。
「決めた!」

「突っ込みの出来る人、か突っ込みのできる刀剣の持ち主と結婚しよう」

「「えっ」」
「いいですね、それ!!」
声がして振り返ると、もう鯰尾が戻って来ていた。
骨喰はさも当然のように、鯰尾の隣にいる。

骨喰は口数は少ない。けれども、なんか楽しんでいるに違いない。

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「うわ!!男女ばかりですね!」
「合コンなんだから、当然でしょう…」
私は肩を落とした。
結局、鯰尾と、骨喰を連れて来た。
一振でも二振でも一緒だ。こいつらセットだし。

加州なら頼りになったのに。この子達等では…。
不安しか無い。ちゃんとしゃべれるだろうか。

―――。
終了後。
まとまった人達が、それぞれ話している。
その輪から外れた場所で。

「……何も話せなかった……」
私はがっくり項垂れた。というか、地に伏せた。

「大丈夫!次もその次もありますって!」
鯰尾がぽんぽんと私の背を叩く。
「――それとも、俺にしときますか?」
ささやくように、耳元で言われる。

「いや私、そう言う趣味無いから」
いっそ、そっちの趣味があれば良かったのに。
「あはは。残念ですね☆」
顔だけはいいのがムカツク。
骨喰も、こう、もう少し、突っ込みしてくれたらいいのに!
こういう時は、『兄弟、それはなんとかかんとかだ』とか!ばしっと!
――私は口べたで、上手い突っ込みセリフが考えられなくて、いつももどかしい思いをしている。

「…骨喰、帰ったら、突っ込みの練習しようか」
「??わかった」
かくなる上は、骨喰を突っ込み役に仕立てるしか無い。
ポジション的にも、骨喰が適任だろう――。

そこで。
「そうだ…吉○新喜劇!」
という声が聞こえた。

「それか、ほら、主さんに見せてもらった、ギャグマンガの主人公?」

私は顔を上げた。

「あれにそっくりでしたね…」
と少し遠くで話す声。

――見ると立ち去っていく後ろ姿。
男審神者と、さらさら揺れる黒髪の刀剣男子…つまり鯰尾がいた。

あれ、鯰尾、さっき居たっけ?
思い出せなかった。
「あ、俺だ。あるじ!ねえあれあれアレ!アレはさっき一番端っこで、自分の審神者にお酌してたヤツですよ!」
鯰尾が言った。
一番はしゃいだのは君だったけどね…。ん?これは意外といい突っ込みかも。
でももう少しいい突っ込みを…。
「声かけてきまーす!」
「あっ!ちょっと」

考えているうちに、鯰尾が飛び出して行った。

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ああ……。
さっぱり話せなかったな。

男審神者は項垂れていた。

合コンに勇気を出して――参加したは良い物の。さっぱり。
結局、鯰尾としっぽり酒を飲んだだけになってしまった。
ウチの鯰尾はものすごくお酌が上手いんだよなぁ。

「そう言えば、やたら騒がしい誰かの鯰尾がいたなぁ。ちょっとびっくりしたよ。次頑張るか…」
と鯰尾と話した。
「主さん。そう言えば。それ不思議なんですよ。刀剣って、座席の関係で一人一振でしょう?俺、数えたんですけど、数そろってました。誰か二振連れて来たのかな?」
「どうだろう、それにしても元気な鯰尾だったなぁ。乾杯の音頭取ってたから、主催者側かもしないね」
うちの鯰尾は結構大人しいんだな、と男審神者は思った。
「ほんと、あの腹芸にはびっくりしました。まるで――そうだ…吉○」

そんな事を話していたら。

「そこの俺!」
と声がした。
「!――」
鯰尾が驚いた様子で振り返った。

そこには鯰尾がいた。

次いで振り返った審神者は、あ、と思った。
――さっきの騒がしい鯰尾だ。
そしてどうやらこの鯰尾は、うちの鯰尾よりも練度が高いらしい。

その鯰尾は、にこにこと笑っている。
「ちょっとお話しませんかー?それか、今から一緒にどっかいこう!」

「……えっ?」
鯰尾が戸惑った。まさか自分が誘われるとは…という顔をしている。
誘い文句は三日月レベルだが。

「こら…!鯰尾っ」
と焦った様子で、一人の女性審神者が来た。
どうやら、この鯰尾の主らしい?

「?」
男審神者は首を傾げた。この女性に見覚えが無い。

「鯰尾…この女性(ひと)、さっきいたっけ?」
鯰尾にそっと聞く。
「えっと?あれ……あ。そう言えばいました。向かいの左の端っこで、骨喰と一緒にいた方です」
「あ、一番離れた場所か、そうか」
見ると、女審神者の後ろに骨喰がついて来ている。
女審神者は、金の装飾のある白い着物に、萌葱色の袴。
ワンレングスのかなり長い、亜麻色の髪…染めているようだが、大人しそうな審神者だった。

男審神者の鯰尾は、ん?と思った。
――影が薄かったので、というかこの鯰尾が騒がしくて気にしていなかったが、近くで見るとなかなかの美人だし、印象は悪く無いし、霊力も高そうだ。隣で今剣が頷いた。
これは良い機会かも…?
「出かけるって、今から?」
そう思ってから、鯰尾は、騒がしかった鯰尾に尋ねた。
少し乗り気に聞こえるように。
「そうそう!俺と骨喰とあるじがそっち行ってもイイ?なあぱーっと二次会とかさ!あるじさん、皆もいこーいこー!俺もっと飲みたい!」
騒がしい鯰尾が言った。

――こいつ軽っ。
と男審神者の鯰尾は思った。

「えー…、主、どうしますか?」
男審神者に聞いてみた。
「……え、ええと、そちらの主さんが良ければ…、どうですか?」
どうやら男審神者は、それもいいかな、と思ったらしい。

「…えっ。ええと?」「やったー!じゃあ行きましょう!」
女審神者が戸惑っているうちに、鯰尾が言って、無言の骨喰がセットでついてきた。

「俺達二人いるし!なんとかなりますって!」
女審神者の鯰尾が言う。隣には骨喰が当然のようにいる。

「じゃあ、あの、もしお邪魔でなかったら…?」
文字通り背中を押されて、真っ赤になった女審神者が言った。
「は、はぁ。もちろん、ご用意しますよ」
「主さん、今剣が先に知らせてくれるそうです」
鯰尾が言った。
「ん?それは助かる。じゃあ、良さそうかな。小さな本丸ですが、良かったら一刻ほど」

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「ただいまー」
と女審神者が鯰尾を連れて帰って来た。予定より大分遅い。

ばたばたばたばたばた!!と、もちろん寝ていなかった刀剣男子が総出で出迎える。
「主、どうだった!?」「良い人いた!?」
乱と加州が詰め寄った。

乱と加州は、できれば泊まるくらいの勢いで!と女審神者に言いつのっていた。
女審神者は、真面目な席なんだから、(鯰尾がいなければ)と言っていた。

「そんな大げさな」
女審神者が、ちょっと言いにくそうに言った。頬が赤い。

おや、と加州が思った。

「骨喰は?」
「それが。…酔っ払っちゃって。何で私骨喰を連れて行ったんだろ…」
がっくりと項垂れた。
そういえば骨喰は下戸だった。そのことをすっかり忘れていた。

「あっ!そうだった!!しまった!主たまにうっかりしてるよね」
加州が言った。
「それをいうなら加州もでしょー」
女審神者は言った。少し飲んだらしい。
「で、どこに骨喰を置いて来たの?」
――見ると主のそばの鯰尾はとても静かだ。

なんだろう、この違和感は。
「…?」
目が合うと、あいまいに微笑んで会釈を…?あれ?

鯰尾ってこれでよかった?
…こんなに美形だっけ?

「それがー……。鯰尾が勝手に泊まるって言うし…」
女審神者が頭を抱えた。
カチャ!と出陣服だった一期一振が刀、じゃなくてムチに手をかけた。
「――お仕置きが必要ですな?」
「違うって!……うん、まあ好きにして」
女審神者は言った。
「泊まる?ってどこに」

「――ぼくたちのほんまるですよ」
声が聞こえて、見ると、主の側の鯰尾の後ろから、今剣が顔を出していた。

「あっ」
と、声がして見ると、女審神者の本丸の今剣が驚いていた。

「ぼくですね!」
目を丸くする。
「ぼくです!」
今剣がにっこりと笑う。

「ん?ということは、このなまずおさんは…」
この本丸の今剣が言う。
「ぼくのほんまるの鯰尾さんです」
どこかの本丸の今剣が言った。

「そうなんですね!」

「一人で大丈夫って言ったんだけど。送って下さったんだよ。ほんと、いい鯰尾さんだよ…」
女審神者がしみじみと言った。
「どおりで。静かな訳だ。あんたうちに泊まってく?」
加州が言った。

鯰尾がふわりと微笑んだ。
「いえ、大丈夫です」

「!!!っ、そ、そう?」
加州が言った。
「――別人だ」
乱が呆然と呟く。

「では。俺達はこれで失礼します。――行こう、今剣」
「はい!」

鯰尾は女審神者に一礼し、今剣の手を引いて去って行った。

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「あんな鯰尾が良かったなぁ」
女審神者が言った。
もちろん、乱と加州が聞き役だ。

「それでそれで、どんな本丸だったの!?」
「それでそれで、どんな人?!?主やるね!」

座布団に座って、酔い覚ましの水を飲みながら、女審神者が語る。

「……どんなって、別にそんな風じゃないって。けど、すごく感じのいい本丸だったなぁ。今剣には驚いたけど」
「今剣?」
「ほら、さっきの――。あの子、幽霊なんだって」
「??え?」
「折れちゃって、その後も本丸に度々?現れる――、なんて不思議なこともあるもんだ…。あの人、やっぱ霊力高いのかな?」

「どのくらいの本丸だったの?」
「うちより大分土地は小さいけど、三日月と小狐丸と、鶴丸に、江雪さんもいた」
「じゃあ、そこそこ有望なんじゃない?今剣折れたのは初期だろうし」
加州が言う。

女審神者はうつむいた。

「でも特に世間話くらいしかしてないし…。今剣がおかしいから聞いたら、色々話してくれたけど…」

「別にまた会う約束とかしてないし…」
もじもじする。これが出会いだったら良いけど、そんな事は無いだろう。
「大丈夫だよ!きっと、向こうに泊まってるずお兄が上手くやって来るって!!多分」
乱が言った。
「いやー……、うーん…それより何かしでかなさないか心配…」
「イケメンだった?幾つくらいの人?」
加州の追求は続く。
「まあ、優しそうで、顔も悪くは無かったけど」

――と言うか、部屋の外で皆が聞き耳を立てている気がする。いや絶対いる。
特にその影、お前、一期一振だろ!!

「ああ、もう、はいはい、今日は寝ますー!!」
女審神者は手を叩いた。

〈おわり〉

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本丸設定
どうしようもない本丸No.2
『ギャグマンガ本丸』

女審神者…女性。二十代後半。青江に怖い話をされて合コンに参加。
霊力はけっこう強くてレア刀はコンプ済み。だがどの刀剣もどうしようもない。

鯰尾…ギャグマンガの主人公みたいな、めげないアホ。底抜けに明るい。
口癖は「まあ、なんとかなりますって☆」「俺がルールだ!」「きょる~んっ☆」
お仕置きシーンではお色気担当に早変わり。

一期一振…「お仕置きです!」「お覚悟!」とか言いつつ、骨喰と前田を従えてSM折檻を楽しむ粟田口の長兄。

骨喰…実は二振り目。一振り目は検非違使に遭遇+不運が重なって破壊されてしまった。希なシリアス回ではこの設定が使われる。
あまり深く考えない性格だが寂しがり屋。本人は気が付いていないが悪ノリする。下戸。

粟田口…数が多いので色々かり出される。サッカー、野球、ヨットレースなど。
この前は鯰尾と一緒に富士登山→八甲田山→チョモランマ遠征した。

三日月…威厳の無いおじいちゃん。絶好のタイミングで通りすがることが多い。
被害に遭うことも。
「なんだ、今日は何をしているのだ」「おお、骨喰」「あなや!」

鶴丸…ギャグライバル。よき友人というか、彼もボケ。持ちネタがいくつもある。だいたい止めに来た審神者と闘う。鯰尾を助けて裏切られることも。
姿が見えないときはヒッチハイクの旅に出ている。古代文明の遺跡をよく発見する。
「じゃあ俺は釘バットを集めてくるぜ」「それはいいな!やってみよう」「御用改めだ!」

加州と乱…二人揃って鯰尾をいびる姉ポジ。加州はノリ×2で姉キャラを演じているふしがある。

今剣…主に審判。石切丸、小狐丸、獅子王と合わせて解説なども担当する。
キレのある一言が好評。粟田口と一緒にいる事も多い。

青江…遺跡で都合の良い魔術知識を披露する。

薬研…マッドサイエンティスト。
先日本当に女体化の薬を作ってしまった。巨大ロボを作ったりもする。

手入れ部屋…フル稼働。
女審神者の本丸…運動場がある。

突っ込みは不在。どうしてこうなったー。


おまけ

鯰尾さん…まともな鯰尾。彼が来るとギャグマンガの鯰尾は忘れられるか出陣しているor折れてしまった事にされる。
意外とスルースキルがあって、なんとなく話に合わせてくれる。イケメンポジ。

今剣先生…おしえて、先生~!のかけ声で詳しい解説をしてくれる。 
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