投稿日:2018年08月18日 21:29 文字数:3,867
【政竜・極道】『甘くなる、昇り竜の背骨』(サンプル)
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(サンプルは次項より)
『甘くなる、昇り竜の背骨』
2018年8月30日発送開始予定 A5/P62・700yen
燎二(政中)×勝利(竜中)
小説・シリアス・モブ攻め・流血あり・ハッピーエンド・R18
【あらすじ】
関東・鬼道会の若頭、石津勝利は、身寄りのない自分を拾ってくれた兄の組長・啓介の野望を叶えるべく、男に身を任せた。
無事に駒を進めた勝利だったが、ある日、噂を聞いて訪れた雀荘で、関西の博打打ち・木本燎二に出逢ってその器量に一目で惹かれてしまう。
それから数年後、何者かに勝利の子分が襲撃された。報復のために出向いた大阪で、勝利は聞きこみを頼りに燎二を探しはじめる。しかしそこに待ち受けていたのは、狡猾で好色な相馬組の組長で……。
「ゴクツマⅡ」と「ケツメイ」の政竜中身、極道クロスオーバー。
*
※フィクションであることをご理解いただける方のみお願いします。
※関係者に送りつける行為などはご遠慮ください。
※ネット上で表紙や中身を公開することはご遠慮ください。
※フリマアプリ・オークションには出品しないでください。(一般のファンの方の目に入ります)
*
今回もキレッキレのだっくるさんの漫画が入ります(笑)。
あとがきは「頼む、この際だから語らせてくれという編集後記」というめっちゃアツいのが入ってます。
がんばって相関図も作りました!
ほんとうにこのリョーカツの世界に引きずり込みたい作者の暑苦しい一冊です、どうぞよろしくお願いします。(笑)
(サンプルは次項より)
『甘くなる、昇り竜の背骨』
2018年8月30日発送開始予定 A5/P62・700yen
燎二(政中)×勝利(竜中)
小説・シリアス・モブ攻め・流血あり・ハッピーエンド・R18
【あらすじ】
関東・鬼道会の若頭、石津勝利は、身寄りのない自分を拾ってくれた兄の組長・啓介の野望を叶えるべく、男に身を任せた。
無事に駒を進めた勝利だったが、ある日、噂を聞いて訪れた雀荘で、関西の博打打ち・木本燎二に出逢ってその器量に一目で惹かれてしまう。
それから数年後、何者かに勝利の子分が襲撃された。報復のために出向いた大阪で、勝利は聞きこみを頼りに燎二を探しはじめる。しかしそこに待ち受けていたのは、狡猾で好色な相馬組の組長で……。
「ゴクツマⅡ」と「ケツメイ」の政竜中身、極道クロスオーバー。
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※フィクションであることをご理解いただける方のみお願いします。
※関係者に送りつける行為などはご遠慮ください。
※ネット上で表紙や中身を公開することはご遠慮ください。
※フリマアプリ・オークションには出品しないでください。(一般のファンの方の目に入ります)
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今回もキレッキレのだっくるさんの漫画が入ります(笑)。
あとがきは「頼む、この際だから語らせてくれという編集後記」というめっちゃアツいのが入ってます。
がんばって相関図も作りました!
ほんとうにこのリョーカツの世界に引きずり込みたい作者の暑苦しい一冊です、どうぞよろしくお願いします。(笑)
(サンプルは次項より)
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甘くなる、昇り竜の背骨
1
花山一家の本部長から連絡が入ったのは、翌日だった。
しかも電話番がとったのではない。勝利のプライヴェート用の携帯に入ったのだ。
昨晩、クラブで花山一家の総長と本部長に遭遇した。その瞬間は店に冷たいものが走ったが、啓介が挨拶をすると二人は快く受け容れた。総長は啓介が物怖じしないのを気に入り、並びつつも後ろに控えて、これも怯むことのない勝利に感心した。鬼道会が一本どっこでのし上がってきたことも、いまどき泥臭いと気に入ったらしいのだ。
てっぺんまで昇ってやる。それが啓介の生きるよすがだった。そして親のいない弟たちを食わせてやる。だから這い上がる。プライドもそうだが、確かに啓介には愛と呼べるものがあった。
勝利はそれをわかっていたから、どんなこともやってきた。命を預けると決めたあの日から、兄貴、いや親父になった啓介のためならば、まさに身体を張ってきた。
いま花山一家の本部長、末森から入った一本のこの電話は、ついに啓介を、国という規模のリングに乗せるチャンスなのだと、勝利はそう直感していた。
末森は、頭を支えるもの同士じっくり話したいのだという。総長を懐柔するだけでは足りない。側近も味方につけなければ安定はしない。勝利は二つ返事で承諾し、弟分の梶谷を連れて事務所を出た。
「兄貴、だいじょうぶですか」
一人しか連れていかないことに、梶谷は不安がっていた。勝利は微笑んで、バックドアを開ける弟の肩を叩く。
「何かあれば、お前がいるだろうがよ」
とたんに梶谷は眸を輝かせ、力強く頷く。頼られているという自覚を持たせることが、大事なのだ。
指定された赤坂のホテルに着くと、スイートだった。テーブルにはルームサービスと思しき食事が用意されていて、シャンパンのボトルも見えた。
出迎えた末森の子分は、部屋に招き入れると梶谷をじっと見た。繋がる別の部屋から出てきた若頭に、二人して頭を下げる。
「突然ですまないな」
「いえ」
勝利は顔を上げて、男を見た。昨晩は色つきの眼鏡をしていたが、裸眼だ。
「サシで話がしたい」
そう言うと、子分が頷いた。勝利も梶谷に目配せをして、そこに留まるようにと合図をする。梶谷は一瞬だけ縋るような目をしたが、なんとか思いとどまった。
「ひとりで寝るのに、こんなに部屋はいらねえのになあ」
ゆったりと歩く末森は、勝利に聞こえるようにぼやく。ドアを二枚、越えた。客用のベッドルームを通過して、黒い革張りのソファが置かれた広々としたリヴィングに出た。観葉植物と壁にかかる絵画と、六〇インチはあるだろうテレビが目立っていた。
末森は深々と息を吐きながら、ソファに腰を掛けた。許されない勝利はドアの前に立ったまま、黙って見ている。
明らかに交渉が始まる。もったいぶるような末森の仕草で、勝利は改めて、腹に力を入れた。
「石津君よ」
脚を組んで見上げる目を、見返す。
「あんたのとこは、愚連隊上がりだって言ったっけ」
「ええ」
「その傷、すごいもんだな」
勝利はわずかにだけ目線を下げて、唇だけで笑う。頬の傷のことだ。
「昔のことですよ」
「顔色ひとつ変えなかったっていうじゃねえの」
靖成を助けにカチコミをかけたあのとき、ほとんどを半殺しにした。どこかで生き残っている奴がそんな話をしたのだろう。花山にまでしっかり届いていることが恥ずかしくもあり、また鬼道会の名の大きさの証であると、勝利は肯定されたような安堵感があった。
ただこれを別段、箔だとは思っていない。そう思っていると思われても、癪なだけだ。
微妙な笑みのまま黙っている勝利に、末森が続ける。
「本多は、すごい男だな」
これにはすぐに返す。
「よくぞひとりでここまで、俺たちを引っ張ってきてくれたと思っていますよ」
末森が、前傾になった。膝の間で手を組んで、勝利を見上げる。
「それは、あんたがいたからじゃないのか。あんたがひとりで、兄貴をここまで持ち上げたようなもんだろう」
「買いかぶりすぎですよ」
ふうん、と気のない返事をして、末森は背を起こす。
「花山の下に入れば、兵隊の数も増える。シノギもしやすくなる」
来るか、と思った。勝利はじっと見据えて、続きを待った。
「念願なんだろ、デカくなるのが。あんたの兄貴を、デカくするのが」
末森はすこしも勝利から目線を外さない。
「そのためになら、あんた、何でもするか」
勝利は口を開く。
「――何をしますか」
男はさらに口角を上げた。
「抱かれたこと、あるか。男に」
勝利の顔色は変わらなかった。つとめて変わらないように、そう構えていた。
そう来るか。そういう趣味か。遠いところでそんなことを呟いていたが、はなから決めていたことだ。――なんでもするさ。啓ちゃんのためなら。
勝利は肩にかけていたジャケットを、床に落とした。目線は外さないまま、シャツのボタンを、ひとつずつ、外した。そしてシャツから袖を抜き、それも床に落とす。
手招きをする男に従い、勝利は、足を踏み出した。
*
<中略>=================
2
身内のシマが、大いに荒らされているという。
男は西の訛りを喋り、どの雀荘でもぼろ儲けだというのだ。いちどその男の顔を見てみたいと思ったのだが、すぐにはつかまらなかった。
聞けば、身震いするほどの、色男だという。
数日後、荒稼ぎをしている男がいると連絡を受けて向かった八王子の雀荘で、勝利はすぐに男を見つけた。白く煙る部屋のなかで、男の華やかさはすこしも霞んでいなかった。
もっとも遠い卓を囲んでいる男に、勝利は近づいた。周囲はすでに視線を勝利に向けていて、慌てて立ち上がり頭を下げる者もいる。その筋ではない男たちも手元が落ち着かなくなっていた。事によっては、逃げ出さなければならないのだ。
男だけが、気にしていない顔をしていた。銜え煙草で手元を見て、手際よくパイを並べている。
傍らに立った勝利が、黙ってその横顔を見下ろした。しばらくして、男は視線を上げないまま、口を開いた。
「なんか用か」
勝利は左手をコートのポケットに手を入れて、返した。
「強すぎる男がいるって、噂を聞いてね。どんな顔をしてるのか、見にきたのよ」
「――で、どんな顔だった」
微妙に訛った標準語で返すと、男は右に立つ勝利を見上げた。勝利は、その顔の造形に一瞬、瞬きを忘れた。
男は微笑んでいた。浅黒く、眉が濃い。見上げる目に隙はないくせに、なぜか穏やかで、甘い顔つきだった。
勝利は、微笑んで、言った。
「噂通りの、色男よ」
いつも以上に、囁くような声音になった。じっと見返していた男も、ふいに口角を緩めた。
「そりゃよかったなあ」
微笑みあうようなふたりの間に、緊張はすでになかった。しかし周囲は強張ったまま、それとなくこの卓を窺っていた。
男が煙草を揉み消して、立ち上がった。向かいあった勝利は、その背丈を優に超されたことに、どういうわけか、なんとなく満足をした。
「もう行くのかい」
「ああ。帰ろう思てたんや。また、どっかで」
男は背が高いくせに、勝利を上目で見るようにして顎を引き、笑んだ。そして傍らを抜けて、歩いていった。
振り返って、その広い背を見送る。いずれあの男の名は、こっちまで轟いてくる。そしていつか再会する。そのとき、どういう向き合いかたをするかはわからない。敵か味方かわからない。
男が扉を押して出てゆく。閉まるその隙間から、こちらを見る目が覗いて、消えた。
どちらにせよ、勝利はそのときが来るのを、いまから待ち遠しく感じていた。
*
(サンプルおわり)
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