屋根裏と地下室
オリジナル/サンリオ男子/あんさんぶるスターズ
Tw300字ss
「はめ殺し」https://pictbland.net/blogs/view_body/1159319 オリジナルというかコッペリア二次
「つぼみのまま」https://pictbland.net/blogs/view_body/1266036 オリジナル百合
「十一番目の息子」https://pictbland.net/blogs/view_body/1310317 オリジナル歴史
「月夜にトロリー」https://pictbland.net/blogs/view_body/1347123 オリジナル
「をとこもすといふ」https://pictbland.net/blogs/view_body/1385661 オリジナル
「サギとカササギ」https://pictbland.net/blogs/view_body/1481026 オリジナル
「無重力でバタフライ」https://pictbland.net/blogs/view_body/1527226 二次サンダーバード
「アウギュステ前夜」https://pictbland.net/blogs/view_body/1527237 二次グランブルーファンタジー
「下り17:09発」https://pictbland.net/blogs/view_body/1586964 オリジナル
「となりのおばさん」https://pictbland.net/blogs/view_body/1636153 オリジナル
折本フェア用オリジナル「六月が終わる」https://pictbland.net/blogs/view_body/1559911
ペーパーウェル04用オリジナル「小5男子のペンケース」https://pictbland.net/blogs/view_body/1472997
オリジナルFT「きみの明日がぼくのすべて」https://pictbland.net/blogs/view_body/382709
サンリオ男子「康太、明かりをつけて。」祐康https://pictbland.net/blogs/view_body/538052
「ずるいともだち」祐康https://pictbland.net/blogs/view_body/651336
「ずるいともだち2」祐康https://pictbland.net/blogs/view_body/651339
※サンリオ男子は今後こちらhttps://pictbland.net/blogs/detail/160
あんさんぶるスターズ みどちあ二人が王子設定パロhttps://pictbland.net/blogs/view_body/730662
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2021年06月20日 21:07
【パーパーウェル 第6回】
【テーマ】散歩
【タイトル】枇杷の花が落ちれば
だいたい5700字
地元高校生に目をつけられてストーキングされる吸血鬼の話
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荷解きもそこそこに、彼は転居先の周辺を歩き回った。引っ越しの手配は、すべて人任せだった。知る人のいない土地で一人暮らしをするのだ。おおよその情報は聞いていたが、近辺は自分の目で確かめておきたかった。
三十年前に区画整理された地域で、教育機関や官庁が近い。彼が入居したのは、そのころに建てられた戸建ての平屋だった。所有者が別に所帯を構えた娘と同居するため、しばらく管理してほしいということだった。角地で、隣り合うのは畑という環境は、人付き合いがわずらわしい彼には好ましかった。
徒歩十分圏内に、コンビニエンスストアとドラッグストア、ホームセンター、スーパーは二店舗ある。郵便局と、役場、彼には関係がない小中学校と幼稚園も十分で行ける。人家と田畑が半々で、視界が開けている。引っ越したころは、よその庭先の薔薇や菖蒲が盛りで、彼はふらふらと散策するのを楽しんだ。
なるべく人のいない時間を見計らって出歩いていた。勤め人の多い地域で、日中は静かだった。農作業にいそしむ人もまばらで、車一台も出くわさずに散歩から帰ることも珍しくない。
珍しくないといえば、小学生に出くわすことだった。身の丈に見合わない大きなランドセルを背負った子どもたちは、おそらく低学年だろう。下校時間が日によってまちまちだった。
何度かすれ違って、子どもたちは彼に挨拶をするようになった。ギョッとする彼を尻目に、子どもたちは、ランドセルにくくりつけた防犯ブザーが揺らしながら去っていくのだった。
幼いとはいえ、見知らぬ人に声をかけられるのは、彼にとっては恐怖だった。
彼は日の出が早くなったのを幸いに、早朝に出かけすようになった。幸い、彼の用件のほとんどは、コンビニでまかなえる。ただし、朝から土いじりをする大人と顔を合わせるようになった。ついには、空が白みはじめて、花の色が判別できるころに出かけるようになった。
子どもたちの夏休みが終わって、虫の声が日に日に大きくなってきた。彼は、上京しなければならなくなった。家を出たのは昼下がりだった。
晩夏の陽射の強さに辟易する彼の背後から、ひそひそ声とカチャカチャと金属のこすれる音が聞えた。こそばゆさに腹をむずむずさせながら、彼は歩を早めた。
「こんにちは!」
ひそひそ声がやむやいなや、子どもたちが挨拶をして駆け寄ってきた。小学生四人は、彼に貼りつくように囲んでしまう。
「鈴木さん、こんにちは」
「鈴木さんって、浪人生なの?」
「引きこもりじゃないの?」
「犯人? 誰かを人質にしてる?」
「それは立てこもりっていうんだよ」
腰の位置までしかない体温の高い男の子たちは、矢継ぎ早に話しかけてくる。子どもたちの熱量に困惑しながら、彼は心中で反論する。
鈴木は家主の名字だ。家主の表札だけを掲げている。彼の見た目は若いが、実年齢は三十がらみだ。近所づきあいをしない彼を、奇異の目が向けられていることは、想像していた通りだ。
子どもたちに説明して誤解がとけると、彼は思わない。本当のことを話しても信じてはもらえないだろう。何より、口を開くこと自体が面倒だった。
「まあな、そんな感じ」
彼は、どうとでもとれるようにあしらった。鈴木さんの親族の気味の悪い引きこもりだと遠巻きにされた方が、彼には気が楽だ。
「そうなんだ」
「それじゃね、鈴木さん」
「バイバイ」
子どもたちは、たちまち熱を失って、去っていく。
すぐに歩きだせば、彼の足では子どもたちに追いついてしまう。またからまれるのは面倒だった。たいしたロスを生まない迂回路が思い浮かんだのは、散歩の賜物だった。
やにわに電車の時間が気になった。足を止めて、ポケットに入れたメモを見る彼の尻に、あたたかいものが当たった。幼いうめき声に、また小学生かと彼はうんざりする。
他の子より体の小さい男の子は、唇を引き結んで彼を見上げていた。
「ユズキ! 遅い!」
「ほんとに置いてくよ!」
さっきの男の子たちが怒鳴っている。子どもたちは、電信柱一本分、先に行っていた。
「今行く!」
ユズキも大声で返して、駆けだした。後ろから見ると、ランドセルに手足が生えているようだ。
彼はユズキが子どもたちに辿り着くまで見送った。そして、少しだけ遠回りして駅に向かったのだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
日付が変わるころ、彼は、コンビニエンスストアに出かけた。部屋着にモッズコートを羽織り、マフラーを巻いて、財布とスマートフォンをポケットに突っ込む。くるぶしまでの編上ブーツの紐をしっかり結び直す。
この十年ほどで、徒歩十分圏内に、コンビニエンスストアが三店舗増えた。おかげで彼の生活も便利になった。ドラッグストアとスーパー一店舗が店じまいしたが、だいたいコンビニの店頭にあるもので間に合う。
この夜も、コンビニで配達物を受け取り、いくつかの小荷物の発送の手続きをした。目に生彩のない少年が、おぼつかない手つきで伝票を処理する。
この時間帯は、どこのコンビニに行っても若いスタッフが混じっている。卒業間際の高校生が、暇を持て余して小遣い稼ぎに来ているのだと、顔なじみのスタッフが教えてくれた。
このあたりで、高校生ができるアルバイトは、隣町の工業団地のラインかピッキング、農作業の手伝いくらいだ。コンビニ勤務は、楽だと思われているのか、若いスタッフの入れ替わりのサイクルが速い。
彼は、店内を一周して、何も買わずに外に出た。
一週間ぶりの外だった。空は翳り、星がいくつか見えるだけだ。
立春が過ぎて、日当たりの良い庭では、梅がほころんでいる。
彼は、来た道を戻らず、新興住宅地の細道に逸れた。元は田畑で、ほとんどが数年前に売りに出された建売住宅だ。セダン一台分の幅の道が、あみだくじのように入り組んでいる。どの家も高い塀で囲まれ、地植えどころかプランターの草花も少なく、彼にとっては散歩コースとして魅力がない。
新興住宅地を抜けると、道路一本隔てたところに、古い瓦葺の一軒屋がある。ここの梅は、まだ咲いていない。花のない梅は、庭の農機具や自動車と同じ無機物のようにたたずんでいる。
この家の外庭は畑になっている。今は、白菜や長ねぎが育てられている。。畑の隅には、道路側から柿と枇杷、栗が1本ずつ、間を置いてある。奥にある枇杷は、彼が思った通り、花をつけていた。
夜の暗がりでも光るように見える梅と違って、枇杷の花は目立たない。彼は、夏にあれが枇杷の木だと知り、冬の昼間に枇杷の花も初めて知ったのだ。
あのころは、彼も日中出歩くことが多かった。古い家の庭をながめながらぶらぶら歩くのは、作業中のよい気分転換だった。
何をしているのかわからない若い男が、昼日中手ぶらで歩いているのは、周囲から見ると奇異であろうことは、彼自身認めていた。散歩する時間には注意していたが、それも億劫になり、ますます出不精になった。
足音がいくつか聞える。
彼は白いため息をついて、走り出した。
追手が何者なのか、わかっていた。夜とはいえ、人家のあるところで派手なことはしないだろうと、彼は考えていた。新興住宅地を抜ければ、駐在所がある。
息が上がる。脚が上がらない。走っていても、歩くのと差がない。日頃の不摂生を自嘲し、彼は歩をゆるめ、足を止めた。
四方から、静かな足音が彼を囲む。
追い詰められて門柱にもたれた彼の目の端に、庭先の車が目に入った。濃色のワンボックスだ。
「監視カメラがある」
彼は、背後の二階を指差した。
目的もなく散策しているうちに、各家庭の庭木だけでなく、車やバイクも把握している。
「ダミーだろ」
追跡者の一人が、言いながら刃物を抜く。刃渡りは匕首程度だ。
素早く間を詰められて、彼は観念した。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
追跡者の一人は、後ろ手につかんだ少年を連れていた。
少年は、彼が刺されて道路に崩れ落ちるのを目の当たりにして声を呑んだ。
刺した男は、彼の腕を軽く蹴って、言った。
「君、どうしてこの人をつけ回してたの?」
少年は、自分が問われているのだと慌てて口ごもる。
「いや……別に……あの」
少年はしどもどとして答えられない。
「深夜にふらついていて、君の親御さんは何も言わないの?」
「コンビニに行くくらいなら、特に何も言われないので」
「そう。じゃあ、帰らなくても問題ないね」
絶句する少年に、若い男はスマートフォンを突き出す。画面には、彼の写真が表示されていた。盗撮は今日だけではないことは、服装の違う彼の画像の多さからもわかった。
「どうしてこの人を撮っていたのかな?」
男はやわらかい物腰で畳みかける。
「……その人、死んだんですか?」
少年は視線を落としてたずねる。
「まだ息はあるけれど、死ぬのは時間の問題。人間、死ぬときは聴覚が最後まで生きているらしいから、聞かせてやったらどうかな」
男は、地べたに横たわる彼の肩を軽く踏む。
少年は大きく息を吐いた。
「その人……全然年取らないんですよ」
「それで?」
男は、少年のスマホをいじりながら、続きを促した。
「最初に気づいたのは友達なんですけど……子どものころはずっと年上に見えていたのに、今は僕たちと同じくらいに見えるって、おかしいじゃないですか。鈴木さん家に住んでいるのに、名字が違うし」
「この人の名前をどこで知ったのかな?」
「コンビニでバイトしている友達が、伝票の名前を見て」
「顧客情報を漏らしたって、君の友達をクビにしてもらおうか」
少年は息を呑み、顔を上げることができない。
「ストーキングの理由として納得できない」
「だって!」
「声、大きいね」
男に制されるが、少年はかまわず続ける。
「鈴木さんは行方不明だし、その人はずっと若いままだし、近所づきあいもないし、整形でもして逃げてる凶悪犯かなって」
「そういう想像をさせる危険な目に、君自身が遭ったのか?」
「みんなが言ってます」
「『みんな』というのは、誰?」
手が空いている一人が、彼の体を担ぎ上げた。
彼らが佇立する家の、玄関の明かりがついた。
男は、スマホを振った。
「これは預かっておく」
「困ります!」
「この人の画像を全部抜いて返す。スマホは自宅に送る」
拘束をはずされ、少年はぽかんとする。
「送るって……」
「住所も名前も調べればわかるでしょ。それじゃね、ユズくん」
いましめを解いて、男たちは静かに消えた。ユズキがほっとする間もなく、玄関に人影が見えた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
あみだくじのような道を抜け、二車線の路肩に停めていたセダンに、彼は運びこまれた。待機していた運転手は、後部座席に彼と男がおさまると、すみやかに発った。
「お疲れさまでした。怪我はありませんか?」
若い男性ドライバーは、大丈夫という返答を聞きながら、ルームミラーで後ろを確認する。
彼は、地面につけていた髪を気にしている。男は、足蹴にしたことを謝りながら、彼の肩の汚れを手で払っている。
「俺が頼んだんだから気にするな」
彼が真夜中にコンビニエンスストアに行くと、人の気配を感じるようになったのは、去年の年末だった。年が明けて、気のせいではないと確信して、男たちに連絡した。
男たちは、つきまといをこらしめて、この土地を離れることを提案した。転居の手配は、これまでと同じように、男たちの組織が用意してくれる。彼は、荷物をまとめて、決行を待っていた。
ユズキの主張を聞いて、彼の疑問は氷解した。
彼のような、若い独り身の男は、地域のコミュニティに入るのは難しい。身の上を正直に話すことも、適当にごまかしてやりすごすこともせず、物臭な彼は望んで孤立した。
月日が過ぎ、十年余前の小学生は、アルバイトをする年頃になった。閉塞した土地で成長した高校生は、噂から妄想を膨らませ、彼を暇つぶしのターゲットにしたのだ。
「ひとところに長くいすぎたんだよなあ」
「早いサイクルで引っ越しするのが理想なんだけどね」
「十年くらいなら、童顔だからでおし通せると思ってた」
彼は、窓に映る自分の顔から眼をそらす。インターチェンジ前のオレンジ色の街灯に照らされた横顔は、成長の止まった十八歳のままだ。
ユズキは、体こそ大きくなったが、どこか抜けているところは昔のままだった。
含み笑いをする彼をちらっと見遣り、男は言った。
「一応、条件に合ったところを探しているけど、長くても住むのは五年くらいがいいんじゃないか?」
「そうする」
彼は、転居先に望むのは、近くにコンビニエンスストアがあって、人家はまばら、できれば河川と坂がないところというものだった。希望にかなった場所があったとしても、人の入れ替わりが少ない、閉鎖的な土地だろうことは想像に難くない。真夜中の散歩で誰にも出会わず、もの言わぬ花に和みたいだけだ。
「今月中に決まらなかったら、ひとまずどこか適当なところでいいよ。次の住まいに期待するから」
梅が満開になれば、桜前線の話題が出る。年度替わりに咲く春の花を、彼は見たくなかった。どの花も爛漫とこの世の春を享受し、何の変化もない彼は取り残された感慨を強くし、同じ空の下に立ってはいけないように感じるのだ。せめて桜が咲く前に、引きこもれる場所にいたかった。
「候補はピックアップしているから、その中から決めてくれたら、すぐに入居できるように手配する」
そう言って、男は、ユズキのスマートフォンを見せる。
「こっちはどうする? 仲間内で画像を共有してるみたいだけど」
「どうするって?」
「仲間のアプリが正常に作動しないくらいの悪戯は仕掛けておこうか」
「手ぬるくないですか? 仲間の個人情報引き出して、向こう半年はデジタル機器でコミュニケーションとらせないくらいのことをしてもいい」
報復の相談をする男と運転手に、彼は「そうだねえ」と上の空で相槌を打つ。
あの夏の終わり、友だちに合流する手前でユズキは転んだことを、彼は思い出して笑った。
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