秋生(鮭の丸焼き)

萌えが滾った時に細々と投稿させて頂くと思います。
好きなジャンルは多種なので、雑多になりそうですがよろしくお願いします!

なお、pixivでは投稿しずらいものをこちらに投稿させて頂こうと思っております。

投稿日:2015年11月06日 13:15    文字数:1,638

【曽芭】光の先で笑う人

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pixivにアップしていたものになりますが、個人的なこんな空気感の師弟がとても好きです…!

和の文字パレット をお借りしました!
10.苗色 瑞雲 風そよぐ
https://mobile.twitter.com/needbeen_s/status/505144195518971905
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「曽良君、見て見て!稲の花が咲いてる!」
 田園の続く道をふらりふらりと歩いていた芭蕉が急に大声を上げた。
 先程までの老齢な歩き方はどこへやら、跳ねるように田んぼに走り寄る芭蕉に半歩後ろを歩いていた曽良は肩を竦める。
「走った上につまづいて頭から田んぼに突っ込んだりしないで下さいよ。
 まあそんな事になった所も見てみたいですが」
「具体的に怖い事を言わんといてよ!」
 口の両端を指で引っ張り、いーっと歯を剥き出しにして曽良に反論した芭蕉だったが、すぐに表情を変えて嬉しそうに目を細める。
「ほら、そんな事よりも稲の花だよ!小さいね、可愛いねえ」
 膝を折った芭蕉はゆらゆらと揺れる稲を柔らかく触り顔を近づける。隣に立った曽良も腰を折り稲を見つめた。
「ああ本当に咲いてますね。てっきり芭蕉さんの妄想かと思いました」
「何で君は素直に話を聞いてくれないの!」
「貴方がまともな事を言う事が少ないと思っているからですが」
「松尾、弟子にそんな風に思われてたの……」
 曽良の言葉に分かりやすく肩を落とす姿を横目で見てから、曽良は前に向き直す。稲の上方に開いた花は白く小さく、ただ歩いていただけでは見落としていたろうと感じた。
「稲の花は二時間程しか咲かないんですよね。これは本当に珍しいものを見れましたね」
 前を見たままでも分かる程に勢い良く体を上げた曽良の隣の気配は、今度は腕を振り回しているのか着ている着物の色が曽良の視界の端を掠める。
 「でしょ!松尾偉いでしょ、流石は周りを注意深く観察してるでしょ!褒めろ!」
 ふふん、と得意気な声が聞こえ曽良は隣を見た。
 案の定、胸を逸らして曽良を見ている芭蕉と目が合う。
「はい、良かったですね」
「感動が無い!もっと言葉を駆使して褒めて!俳聖褒めて!!」
 口を尖らせ更にじたばた動く芭蕉。その姿を見つめる曽良が指先揃え無言で手をゆっくり持ち上げると、一瞬の内に今度は顔を青ざめて両手を前に突き出して左右に振った。
「あ、いえ、何でもありません調子こきました、調子こきマッスオでした」
「その下らない語彙力どうにかならないんですか、何にでも松尾とかマッスオとかつけるのは非常に不快です」
「そこまで言う!?」
 すっかり意気消沈して項垂れる芭蕉の上を、すう、と風が吹いた。軽い素材の着物が風に乗り稲と共に小さく踊る。
 まだ色濃い緑を残す稲に着物が溶けるように見え、思わず瞬きをしてから曽良は納得した。芭蕉の着物の色と稲の色が良く似ていたのだ。
 それは光が生える、明るい苗色。
 稲を触っていた手が、気がつけば芭蕉の着物に触れて、その行動に曽良自身が驚いて目を開く。触れられた芭蕉は落としていた首を持ち上げると、曽良を伺うように見る。
 また、すう、と風が二人を包んだ。
 次の瞬間、芭蕉の顔が上を見て輝く。
「――曽良君、凄い!!見て見て、瑞雲だよ!!」
 つられるように後ろを振り返った曽良の目に、彩度を落とし始めた空に掛かった雲の群れが飛び込む。
 空に本来は浮かぶはずの無い、水色や黄色、桃色、緋色。
 視界に入った雲は多色が混ざり合いその姿を彩っている。
「凄い、今日は凄いよ曽良君!瑞雲は吉兆の印だよ!稲の花も見れたし、きっと今日は良いことがあるよ!」
 曽良の隣を飛び出し、畦道を駆け出した芭蕉は届くはずの無い雲に向かい飛び跳ねる。
 その時、逆光になった芭蕉の姿が、雲間から降りてきた光を受けて煌めいた。光が強くなり一瞬、曽良の目では姿を認識できなくなり。思わず曽良は探すように、立ち上がりながら手を伸ばしていた。

 その時、また風が吹いた。

 地に足を付けた芭蕉が振り返ると、芭蕉を包む苗色の着物が風を受けて舞い踊る。

 次の瞬間、朗々とした声が芭蕉から響いた。
 ゆっくりと言葉を紡ぎ、生み出された言葉たちは空気の中へと溶けて行く。

 色鮮やかな雲を背に詠われた句は、姿は、曽良には眩しく。
 ただ目を細め、伸ばした手を空中で握り込み。
 届かないその姿をただ、ただ、見つめていた。

/終

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【曽芭】光の先で笑う人
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「曽良君、見て見て!稲の花が咲いてる!」
 田園の続く道をふらりふらりと歩いていた芭蕉が急に大声を上げた。
 先程までの老齢な歩き方はどこへやら、跳ねるように田んぼに走り寄る芭蕉に半歩後ろを歩いていた曽良は肩を竦める。
「走った上につまづいて頭から田んぼに突っ込んだりしないで下さいよ。
 まあそんな事になった所も見てみたいですが」
「具体的に怖い事を言わんといてよ!」
 口の両端を指で引っ張り、いーっと歯を剥き出しにして曽良に反論した芭蕉だったが、すぐに表情を変えて嬉しそうに目を細める。
「ほら、そんな事よりも稲の花だよ!小さいね、可愛いねえ」
 膝を折った芭蕉はゆらゆらと揺れる稲を柔らかく触り顔を近づける。隣に立った曽良も腰を折り稲を見つめた。
「ああ本当に咲いてますね。てっきり芭蕉さんの妄想かと思いました」
「何で君は素直に話を聞いてくれないの!」
「貴方がまともな事を言う事が少ないと思っているからですが」
「松尾、弟子にそんな風に思われてたの……」
 曽良の言葉に分かりやすく肩を落とす姿を横目で見てから、曽良は前に向き直す。稲の上方に開いた花は白く小さく、ただ歩いていただけでは見落としていたろうと感じた。
「稲の花は二時間程しか咲かないんですよね。これは本当に珍しいものを見れましたね」
 前を見たままでも分かる程に勢い良く体を上げた曽良の隣の気配は、今度は腕を振り回しているのか着ている着物の色が曽良の視界の端を掠める。
 「でしょ!松尾偉いでしょ、流石は周りを注意深く観察してるでしょ!褒めろ!」
 ふふん、と得意気な声が聞こえ曽良は隣を見た。
 案の定、胸を逸らして曽良を見ている芭蕉と目が合う。
「はい、良かったですね」
「感動が無い!もっと言葉を駆使して褒めて!俳聖褒めて!!」
 口を尖らせ更にじたばた動く芭蕉。その姿を見つめる曽良が指先揃え無言で手をゆっくり持ち上げると、一瞬の内に今度は顔を青ざめて両手を前に突き出して左右に振った。
「あ、いえ、何でもありません調子こきました、調子こきマッスオでした」
「その下らない語彙力どうにかならないんですか、何にでも松尾とかマッスオとかつけるのは非常に不快です」
「そこまで言う!?」
 すっかり意気消沈して項垂れる芭蕉の上を、すう、と風が吹いた。軽い素材の着物が風に乗り稲と共に小さく踊る。
 まだ色濃い緑を残す稲に着物が溶けるように見え、思わず瞬きをしてから曽良は納得した。芭蕉の着物の色と稲の色が良く似ていたのだ。
 それは光が生える、明るい苗色。
 稲を触っていた手が、気がつけば芭蕉の着物に触れて、その行動に曽良自身が驚いて目を開く。触れられた芭蕉は落としていた首を持ち上げると、曽良を伺うように見る。
 また、すう、と風が二人を包んだ。
 次の瞬間、芭蕉の顔が上を見て輝く。
「――曽良君、凄い!!見て見て、瑞雲だよ!!」
 つられるように後ろを振り返った曽良の目に、彩度を落とし始めた空に掛かった雲の群れが飛び込む。
 空に本来は浮かぶはずの無い、水色や黄色、桃色、緋色。
 視界に入った雲は多色が混ざり合いその姿を彩っている。
「凄い、今日は凄いよ曽良君!瑞雲は吉兆の印だよ!稲の花も見れたし、きっと今日は良いことがあるよ!」
 曽良の隣を飛び出し、畦道を駆け出した芭蕉は届くはずの無い雲に向かい飛び跳ねる。
 その時、逆光になった芭蕉の姿が、雲間から降りてきた光を受けて煌めいた。光が強くなり一瞬、曽良の目では姿を認識できなくなり。思わず曽良は探すように、立ち上がりながら手を伸ばしていた。

 その時、また風が吹いた。

 地に足を付けた芭蕉が振り返ると、芭蕉を包む苗色の着物が風を受けて舞い踊る。

 次の瞬間、朗々とした声が芭蕉から響いた。
 ゆっくりと言葉を紡ぎ、生み出された言葉たちは空気の中へと溶けて行く。

 色鮮やかな雲を背に詠われた句は、姿は、曽良には眩しく。
 ただ目を細め、伸ばした手を空中で握り込み。
 届かないその姿をただ、ただ、見つめていた。

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