【ハルカグ】冬を越えて届く言葉は
完全にギリギリ!ギリギリ!読み返せてもいないんですけど相変わらずの愛だけは詰めています(笑)
あと絶対に使い古されたネタですがやりたくて!被ってたらすみません、ハルカグ大好きです!
そんな冬の小話です(笑)
追記→
時間軸おかしくね?って今気がついたんですけど仕事後の頭でこれ以上無理でした!ちがうこれおかしいね?時間軸おかしいね?ひーーーんすみません!!もーーーえーーーといつか直します、フィーリングであのお願いしますすみません…
追記2→
タイムアタックですが手直ししましたまことにすみません…!
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厚手の手袋の指先を擦り合わせながら息を吹きかければ、じんわりと温かくなる指先を覆うように自分の息が白くなる。
人混みの中に居てもやっぱりあったかくはならねぇんだよなあ、などと思いながら加具山は混雑した人波の中で一人ため息を吐いた。
「おーい、カグやん!」
その時、ふと耳に届いた大きな声。振り返るとお揃いのニット帽を被った大河と宮下が手を振っていた。
「おお、大河と涼音も来たのか」
「お正月休みの最後なら多少は空いてるかなあと思ったんだけど、そうでもなかったわね」
「そうだなあ」
「元旦は外してと思ったけど考えてることはみんな同じってヤツだな!」
話していれば前方からがらんがらんと鐘のなる音。
翌日の平日を迎える最後の日曜日、正月の初詣にやってきた三人が出会ったのは偶然だった。
「しっかしさみぃな!」
「ほんとよね、あったかい格好はしてきたけど今年は寒い!」
「オレには熱々に見えますけどね」
「へ?」
加具山の言葉に首を傾げた大河を加具山はちらりと横目で見つめ。宮下と大河の頭を無言で指差す。その手につられるように涼音と大河はお互いのニット帽を見れば途端に恥ずかしそうな笑顔を浮かべた。
「やだ加具山君ってば目ざといわね!」
「いって⁈」
照れ隠しなのか割と本気のスナップの利いた宮下の攻撃に加具山は声を上げたが、宮下と大河は視線を合わせて笑っており気にする様子も無い。
いや幸せそうなのは良いんだけどペアルックしてたら流石にわかるだろ、っていうかオレなにこれ当て馬?当て馬⁈
お付き合いは順風満帆な幸せそうな二人を見つめて加具山が溜息をまた一つ吐き、一人で先に行くかと足を早めた時だった。
下を向いて歩いていたせいで広い背中に思い切りぶつかってしまった。
「痛ぇな!」
「あ、すんませんーーって、あれ」
「あれ。加具山さんじゃないスか」
「榛名!あれ、お前なんでここに?」
ドスの効いた声に顔を上げた加具山と、思い切り不機嫌そうに振り返った榛名はしばし見つめ合い。とりあえずぶつかって来たのが部の先輩と分かった為か、表情を和らげた榛名は加具山の言葉に首を竦めた。
「姉ちゃんの付き添いで初詣っス。当の本人はお守りやらなんやらで先に行っちまってどうしようかと思ってたとこでした」
「あ、お前、姉ちゃんいるのか」
「っス。つかオレ、初詣なんか興味ねえしはやく帰りてえ」
「ここまで来ておいてそのセリフかよ!」
こうして部活外で会ったのは初めてだったが、なんら変わらない榛名の様子に笑ってしまう。
「お、なんだカグヤン誰と話してるかと思えば榛名か」
「あ、宮下先輩も居たンすか!あけましておめでとうございます!」
「おい、オレも隣に居るんだけど」
「ああ、はい、大河先輩もあけましておめでとうございます」
「お前もっと公平な態度取れよな!」
「あっはっは!」
失恋したとは言え、宮下に好意をまだ多少持っている榛名の態度に加具山がまた笑っていれば榛名が憮然とした様子で見下ろしてきた。
「なに笑ってンすか!」
「いやお前は裏表がないなと」
「人を単純人間みたいに言わないで下さいよ!」
「いや榛名は分かりやすいわよ」
「宮下先輩まで!」
会う予定も無かった面々に始業日前に会ったことに改めて笑いつつ、動き始めた人波に流れて四人は前へと歩き出した。
「あ、そうだカグヤン!せっかく今日会ったし、あとで屋台奢るよ」
「おお大河太っ腹じゃん!涼音の前だからか?」
「バッ、そんなんじゃねえっての!」
「あ、そっか加具山君、今日は1/3よね!私も何か奢るよ」
「良いのか?ありがとな」
「なんか今日ありましたっけ?」
二年生達がわいわいと話していれば頭一つ上の所から降りてきた声に三人は顔を上げる。不思議そうな一年生の顔に大河は加具山の頬を突っついた。
「1/3はカグヤンの誕生日なんだよ」
「あ、そーなんスか。えーと、お誕生日おめでとうございます。あとそうだ、言ってなかった。あけましておめでとーございます」
きょとんとした顔をしながらも榛名の口から出てきた言葉に加具山はまた笑っていた。
「おう、サンキュー」
それは榛名が一年、加具山が二年の冬のことだった。
* * * *
「おにーちゃん、彼女からの電話ー?」
「うるっさいよ、お前はテレビ見てろ!あ、悪い」
『大丈夫っスか、なんか叫んでましたけど』
「いや、妹が……あ、いや。なんでもねえ」
携帯の着信を取りながら、居間の炬燵から抜ける加具山の後ろを尚も声をかけてくる声にもう一度「うるさい!」と声を掛けつつ、自分の部屋に戻りながら加具山は携帯に耳を当てた。
「んで、どうした?」
『あ、まずは明けましておめでとうございます!』
「おお、明けましておめでとう。なんだよ、それ言いに電話してきたのか?」
『それも一つっスね』
「一つ?こんな夜に?」
自分の部屋の扉を開けながら後手に扉を閉めた時、ふと時計を見ると時計はちょうど0時になったところだった。
『はい!1/3!カグさん誕生日おめでとーございます!』
「へ」
『だから!誕生日!』
「え、あ、ありがと」
先ほどまで家族全員の声とテレビの賑やかな居間から、一人の何の音も無い静かな部屋に入った瞬間に言われたそのお祝いの言葉。何にも邪魔されることなく届いた言葉は加具山にとって予想外で思わずぶっきらぼうな声になっていた。
『思ったよりも嬉しがってもらえてない気がする』
「え、あ、違う違う!つかお前が誕生日とか覚えてると思わなかったし、そんなんでわざわざ電話してくると思わないから、その、なんつーか驚いて」
『へへ、じゃあサプライズ成功っスね!』
電話口から聞こえてくる跳ねたような嬉しそうな声音に加具山もつられて微笑んでしまう。
「なんだよ、本当にサプライズだよ」
『だって昨年はオーカワに先越されたしさ!今年は一番に言いたかったし!つか誕生日にわざわざ連絡すんのなんてカグさんくらいっスよ』
「おま、なに、えっ」
『カグさん照れてる⁈』
「うるっせえ!」
思わずまた突き放すように言ってしまったが電話の向こうの声はケラケラと笑い声をあげている。
ふと一年前の初詣の時を思い出す。あの頃はこうして電話をわざわざしてくるなんて想像もしてなかった。
『そんで、誕生日プレゼントなんスけど』
「プレゼント?お前が?」
『なんスか!その反応!』
「だってそれこそ、なんつーかお前らしくねえっていか」
『プレゼントは最高にオレらしいと思いますよ』
電話口からの声が先ほど前の明るい声から急に真剣味を帯びた声に変わる。思わず加具山が背筋を伸ばした時、耳に彼の声が届いた。
『カグさん、甲子園に行きましょう』
「ーー!」
その言葉に息を飲む。正月ムードの脳内に突然、何度も何度も見たテレビの中の暑い日差しが蘇る。同時に振り返った見慣れたマウンドの景色を思い出す。大きい筈の背中が小さく見えた、あの夏の景色。胃がキリリと、一瞬締め付けられる。
『オレ、カグさん達が負けたとは思ってない。負けたのはオレです。だからもう一度、チャンスください』
加具山の脳裏に、初めて見た、自分よりも大きな体から、恵まれた体格から、整った顔から溢れた大粒の涙。あんな涙を見たのは初めてだった。
『カグさんをマウンドに立たせれないけど。だけど、アンタに教えてもらったことと、引き継いだ番号持って、オレは絶対甲子園に立ちますから』
加具山の夏は今年で終わった。もう戻りたくても戻れない、その夏の一瞬。
まるで夢物語のようなその言葉なのに、加具山には聞こえてきた言葉が絵空事には聞こえなかった。確かな何かの確証があるように、何故か耳に、心に落ちる。
『ね、最高のプレゼントでしょ!』
突然、がらりと変わった声にハッと携帯を握り直す。
「ーーって、プレゼントって」
胃の痛みと同時に、心の奥が沸き立つような感覚。それを処理できずに出てきた言葉はどこか茶化すような慌てた声で、出した声の当人が焦る。
言いたいのはそうじゃなく、と心の中で弁明をする。するとそれと同時だった。
『オレ、有言実行ですから』
慌てた加具山の声に被さるのは力強い声。それはどこにも茶化した様子は無い。
『誰よりも先におめでとうも言いたかったし、甲子園だって本気っスからね。カグさんと行くのが一番大事なんスよ』
「お前……」
見えない筈の後輩の姿が目の前に見える気がして加具山はぎゅっと目を閉じた。
たった一年前。一年の間に色々とあった。名前の呼び方も、距離も変わった。何より変わったのはーー
『そんで』
聞こえた声に加具山は目を開く。すると明るい大声が耳に届いた。
『カグさん、今年も大好きっス!』
「お、おま!!」
急に変わった内容とその言葉。加具山は言葉に詰まるが電話口からは更に声が追い打ちをかけてくる。
『はい、カグさんは!』
「はあ⁈え、いやその」
『さんはい!』
「ああああもう、オレも!同じだよ!」
『同じ?なにが?』
「〜〜〜ッ!……好きだよ!お前が!」
『!!!いま、いまのもう一回ーー』
「またな!!」
電話口の声を遮って通話ボタンを押す。押してから顔を覆っていればドアの外から物音がした。
「おにーちゃん、やっぱり彼女じゃん!」
「はあ⁈ちょ、お前は何聞いてるんだよ!」
携帯を机に置いてドアを開け、そこに居た妹に食って掛かれば後ろでまた着信が机の上で響く。
一年前。明けましておめでとうも言うのを忘れて後からついでのように言われたことが嘘のように。
加具山さん、の呼び方がカグさんになって、そして、あの夏を甲子園に手が届きそうだ、なんて全力で駆け抜けて。
自分の夏は確かに終わったのに、そんなことお構いなしに。いやそれを踏まえて。榛名は、加具山の手を引いていく。
そして。
オレ達は、先輩後輩よりも、ずっとーー
「〜〜ッ」
「あ、お兄ちゃん顔が赤い!ねえ彼女さん紹介してよー」
「もうお前うるさいよ!」
彼女、じゃないんだけどな。
心の中でそっとそれだけ言葉を返す。
ーー甲子園がプレゼント、って!
まだ机の上で携帯は鳴り続ける。
なんだか笑いたくなる、不思議な高揚感はどれのせいだと加具山は笑い出していた。
ーーそれは榛名が二年、加具山が三年生の冬の、お話。
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