【ジェネセフィ】再び愛を・前編
不死の体で受肉したセフィロス。生きる気力のないセフィロスを支えたのはかつて決別したジェネシスだった。共に旅を続けて一年。立ち直ろうとしているセフィロスにジェネシスはとある決心をするが──
※※※当作品は原作にはない恋愛関係(BL)を描写した非公式な二次創作です。苦手な方・ご理解のない方は閲覧をおやめください※※※
◆雰囲気◆
シリアス(not暗) 希望 救い
◆メモ◆
DC後の時間軸でシリアス、最後少し甘め。ジェネセフィ的にセフィロスの救いを考えました。
◆後編◆
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12573019
R18ですので注意。
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◆WEB初出◆
2020年2月29日
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茜色が大空に差した。今日は茜色と蒼色のグラデーションが綺麗な夕暮れの日だった。それらの色が混ざり合い、ほのかに紫色になっている。空と雲がその色に染められていて、幻想的なこの空間が夢心地を誘う。そして、春になったとは言えどもまだ冷たさを残す風が夢心地とは反対に感覚を研ぎ澄まさせる。
大地に足を踏みしめ見上げる空は翼で空を舞う時よりもずっと広大で、自由だった。セフィロスは空に想いを馳せ続ける。空を見上げ、大地にその足で確かに立ち、空気を肌で感じる。それは自身の確かな生を再確認する作業である。少し離れて後ろにはそれを見守るジェネシスの姿があった。
ジェネシスはLOVELESSを朗読しながらセフィロスと再会した時の記憶を辿る。
────────────
──長い戦いの果てに星は最終的な答えを出した。死を罰とはせず、再び受肉させ人間として生き永らえることがセフィロスの罰だった。狂気は眠り、代わりに目覚めたのは本来の人間としての良心。残るのは変えられない過去の罪と寄り添う人が誰もいない孤独だった。
憎悪や狂気だとしても自身の心を突き動かす原動力を失ったセフィロスにとって確かにこれは罰であった。ただそこに生き続けるだけ。強大な身体能力に反して本当は脆い心。傷だらけになった本来のセフィロスの心には生きる気力などなかった。生きていても、手にしているのは自身の罪と誰にも愛されていなかったという辛い現実だけ。セフィロスはどうせならそのまま消えてしまいたかった。だが死ねない。まるで実の母をなぞるかのようだった。
目覚めたジェネシスがしばらくしてそんなセフィロスと再会した時。気力を失い、抜け殻になったセフィロスをジェネシスは半ば強引に旅に連れ出した。
あの時。ジェネシスは己の真実を知った時、突如セフィロスとアンジールの前から姿を消した。セフィロスにとってはジェネシスは恋人でもあった。そこからだった。二人の関係に亀裂が入ったのは。友でも恋人でもなくなった。ジェネシスは友情や愛よりも復讐に身を焦がした。
だからこそ、ジェネシスがセフィロスを連れ出すのは友の立場としてだった。やり直したいと、せめて友としてでもやり直したいとジェネシスは思った。身を隠しながら、二人で旅を続けるうちに四季を一巡。そして今に至る。
今日は旅を始めて一年が過ぎた頃だった。セフィロスはジェネシスの朗読が終わると、先程と変わらず空を見上げたまま語りかけた。
「今更俺に何ができるのか……過去をどう背負えばいいか今でもわからない。だからおまえの夢を今の俺が叶えてやることはできない」
夢。それはジェネシスが少年の頃からの夢。英雄セフィロスにジェネシスが作ったバノーラホワイトを食べてもらうこと、である。ジェネシスの長年の夢をセフィロスは英雄ではない今の自分には叶えられないと考えていた。メテオ発動による混乱、ニブルヘイムや星痕で多くの死をもたらした自分には、と。セフィロスはそれでもと言葉を続ける。
「……いつか、その日が来るまで待っていてくれないか」
いつか、自分が変われたらその時にと未来に約束する。罰としての生を受けた自分の手を引き、導いたジェネシスに。半ば強引に旅に同行させたのはジェネシスの優しさだということをセフィロスは理解していた。セフィロスは見上げていた顔を戻す。
ジェネシスからはセフィロスが今、どんな顔でその言葉を口にしたかは見えない。ただ、風で銀色の長い髪が揺れるのが見えるだけだった。ジェネシスはゆっくりとセフィロスの背後の近くに立った。弱さをあらわにしても凛としたセフィロスの立ち姿は昔から変わらない。そんなことを思いながら。やっとセフィロスはジェネシスの方を向く。
「時間は十分にある。急がずともその日をずっと待っているさ」
ジェネシスはふっと微笑むと、より近い距離へ近づいた。そして、セフィロスの頬に片手で触れる。包むように。こんなに近い距離で、こんな触れ方をするのはこの旅では初めてだった。ジェネシスはずっとこの旅では友の立場であり続けた。
セフィロスは遠い日の関係を今のジェネシスの行動に戸惑いながら、思い出さずにはいられない。瞳にソルジャーの証である魔晄の輝き。二人の視線が重なる。夕暮れ時でもその輝きは衰えることはなかった。
「今までもこれからもおまえは俺の女神だ。だがそんな女神を……昔の俺は自分のことばかりで、おまえが俺やアンジールを信じようとしていたことに目も向けなかった。俺も過去の罪が許されることはない。だから今度こそ間違えはしない。一人で抱え込みはしない。セフィロス。おまえもそうやって一人で抱え込むな。もっと俺を頼ればいい」
セフィロスはジェネシスの言葉に明確に反応ができず、沈黙して目を伏せた。かつてのクラウドが幸せを感じれば感じる程、それを失う恐怖に苛まされたように。自身の罪を強く意識したように。元凶であるセフィロス自身もまた、皮肉にも同じように感じ始めていた。奪い続けてきた立場のセフィロスは置き去りにされる恐怖を知っていた。
だからこそ、大切なものを奪うということでクラウドにその恐怖を与えようとしていたのだろう。無償の愛情を知らず、親代わりの愛情をかけてくれた人に突如置き去りにされた。そのことがずっと心の底に無意識に残っていた。
セフィロスにとって置き去りにされることは、まるで自分という存在を忘れられているようで……そして愛されていないようで苦痛だったのだ。信じていたジェネシスとアンジールにも置き去りにされ、苦痛に耐えながらもそれでも信じていたかった。
誰しも喪失経験というものは人生の内に必ず体験をする。しかし、残酷な真実はセフィロスに「こんな存在であるがために元より愛されておらず置き去りにされた」と捉えさせた。同じ実験体の身であるアンジールとジェネシスは別として、まるで全ての存在に根底から自身の存在を否定されたようだった。
本当は人一倍愛されたかった。だが人々は強き英雄をセフィロスに求め続けた。その求めに応え続けてきた。そんなセフィロスが強き英雄でいられない程に、自身が造られた存在である事実が耐え難かった。耐え難い真実で壊れきってしまわないように人間の原初である母性を求めた。分かっていながらも、ジェノバを母だと思わなければ耐えきれなかったからだ。モンスターは人間には愛されないのだから。
そして、クラウド。たとえそれが憎悪で繋がる関係だとしても、誰からも忘れられてしまう苦痛よりかははるかに心地良かった。だからこそクラウドに執着した。そして、自分にない平凡な幸せを手に入れようとしているのがどこか憎らしかったのだ。たかだか一般兵程度の存在が自身を屈辱にも打ち倒し、自分にはない幸せを手に入れるのが許せなかった。
忘れられることに恐怖する中で、一点明確な不安があった。
(高純度のジェノバ細胞を持ち、星の罰を受ける俺は死ねない。だが、ジェネシスは……ジェネシスはどうなる?)
そういった人生を歩んできたセフィロスは二度目の生で再度得た親友、そしてかつての恋人だったジェネシスをまた失う苦痛を想像してしまう。誰も自分に寄り添ってくれない人生をまた生きたくはなかった。ジェネシスとはかつて友情と愛を育んだ仲であったからこそそれが怖く、愛情をもって触れてくるジェネシスの目を見ることができなかった。
「……セフィロス。手を出せ」
ジェネシスはセフィロスから手を離し、コートのポケットから何かを出した。
「別につけなくてもいい。ただ持ってくれるだけでも構わない」
セフィロスは右手に手渡されたものを見て、一瞬思考を止める。そして、セフィロスは思わずゆるく口元を上げた。
「……俺に渡さなかったやつか」
「セフィロス……なんだ、知ってたのか?」
「後からな。てっきり渡してくるものだと思ったが……あまりに渡さないものだから俺も忘れていた」
あの頃。神羅にいた頃。ある日突然、ジェネシスがぎこちなく、やたらアクセサリーについて話題を振ることがあった。身につけないのかと問われた時、セフィロスはそんなものは自分の柄じゃないと一蹴した。後に部屋のクローゼットに隠すようにしまわれたものを偶然見つけた時にセフィロスはジェネシスの意図を理解した。
しかし結局、ジェネシスが渡してくることはなかった。セフィロスはそういったものを貰いたいと特段気にする性格でもなかったので、いずれ忘れていた。
「指輪なんて、おまえの柄じゃないかもしれないだろうがこれはセフィロスに持っていてほしい」
セフィロスの右手の黒いグローブの上には銀色に輝く一文字のシンプルな指輪があった。ありきたりなデザインだからこそ、誰から貰うのかが重要な意味を持つ。セフィロスはやっとそんなことを理解した。特段そんなことを気にするような性格じゃなかったはずが、今は違った。
人は誰しも喪失からは逃れられない。だからこそ何か証を求める。それが子孫であれ、何か物であれ、功績であれ──
(あの時はこんなもの、くだらないと思っていたんだがな……)
セフィロスは左手のグローブを外した。左薬指にそっと証をつける。セフィロスは胸の前まで上げた左手に視線を落とす。その様子にジェネシスは目を見張った。
「ジェネシス、これはこういう意味で受け取ればいいのか?」
ジェネシスは予想外のことに言葉を詰まらせるが、すぐに気を取り直す。ジェネシスはこの指輪をずっと隠し持っていた。いつか渡したいと思っていても肝心なことはいつも言えない。行動できない。そんな性分だった。しかし、ジェネシスは今度こそ向き合わねばと今日この日に決意していた。だからこうやって友の立場を超えてセフィロスに触れている。そして渡せなかった指輪も渡している。頼れと伝えられている。
「セフィロス、あの時はおまえから離れて……独りにさせてすまなかった。友という立場以上にこれからはおまえの片割れとして側にいる。終焉が来るその時まで……俺はおまえを愛し続ける。もう二度と離さない」
「ああ……」
セフィロスはいつの間にかジェネシスの目を見れるようになった。そこには生きる気力を失った顔も、自虐的な顔も、邪悪な笑みを浮かべた星の支配者の顔もない。人間としての柔らかな微笑みだった。
ジェネシスもいつかはいなくなる。しかし、その時が来るまで大切に証を残し続ければいい。きっと二人で歩む時間が、今は傷一つない指輪に
これまで友として支えてきてくれた。これからは生涯寄り添う相手として支え合える。同じ黒い片翼を持つジェネシスなら。
「セフィロス──」
ゆっくりと近づくジェネシスの顔にセフィロスは目蓋を閉じ、確かな生を感じた。
俺はこの世界に生きている。きっともう一つのこの片翼は星からの少しばかりの温情なんだろう。
──救いはここに。
END
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コメント
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