演者と舞台。
―登場人物と設定― 【枯月 景】先輩。 【木土 最】後輩。 職業:芸人 二人の会話と誰かの会話。 『袖振り逢わずとも他生の縁。また逢いましょう』
幸せそうな家族が一組。
男性が片腕で赤子を抱き、女性と手を繋ぎ歩いている。
ああ、懐かしい人に会ったな。
思わず顔が綻んでしまう。
そんな自分が気になったのか、隣に座る先輩が話しかけてきた。
「知り合い?」
「いえ、知らない人です」
現世ではね。
前世であの人がどんな人生を過ごしたのかをオレは知っている。
現世ではどうか、人並みの幸福を過ごせますように。
楽しそうに歩く二人の男性。御世辞にも売れているとは言い難い芸人だ。
仲良しな先輩と後輩だな。
妻も二人に気づき、僕に話しかけてきた。
「どうしたの?」
「なんでもないよ」
笑顔で誰かと話す様子なんて前世の彼なら絶対にありえない事だ。
前世でも舞台に立つ仕事をしていた彼が、今は人を笑わせるために舞台に立つなんて感慨深い。
どうか現世では、その手でたくさんの笑顔を…。
共に死刑台に登ったあの日を想い出した。
(最期に見た彼は冷たい眼差しで剣を振り下ろした)
(最後に見た彼は涙を流し来世の幸福を祈った)
終
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