蜜りんご

ダイの大冒険のラーハルト×ヒュンケルにドはまりしました。10年ぶりの二次創作活動で楽しい毎日です。

投稿日:2022年06月08日 12:38    文字数:14,024

【ラーヒュン】10年後の世界

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pixivで掲載していた「10年後の世界」の完全版です。

ラーハルトが大魔王没後10年の世界にタイムスリップして30代ヒュンケルとせっせするお話です。
ヒュンケルが語尾に♡をつけるエッチなおねえさんでも許せる方のみどうぞ。
控え目ながらラーハルトの喘ぎもあります。ラーヒュンです。
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【side Hynckel】

 一瞬、ヒュンケルは何が起きたのかわからなかった。つい今しがたまでソファでラーハルトとキスをしていたはずなのに。





 大魔王との戦いから十年。数年前に勇者ダイも見つかり、冥竜王ヴェルザーとの戦いも終わった。
 勇者と共に魔界に旅立った唯一無二の友であり生涯の伴侶でもあるラーハルトも帰還を果たしヒュンケルは魔界での戦いには行かなかったものの、人間界の守りを固めるためその知力と経験を惜しまずささげ、影の功労者となっていた。

 今や二人は、ダイからの招集がない限り、人里離れた森で静かに暮らす生活を送っている。
 ラーハルトは魔族の血が流れているためか十年経った今でも肉体的な衰えはほとんどない。戦闘スキルという意味ではむしろ十年前とは比べ物にならないくらい飛躍していた。一方で年を重ねた落ち着きと冷静さもあり、パプニカ重鎮からも一目置かれる存在である。
 ヒュンケルはというと、以前のような筋力や腕力はないものの、日常生活やちょっとした剣技をふるう程度には問題ないほどに回復を果たし、今はカール王国でアバンの研究の手伝いをしている。といっても城仕えではなく、ヒュンケルの仕事は主に魔術書の類の解読だ。そのため、彼は基本的には自宅に書斎を持ち、そこで仕事を行っていた。日に当たらない生活のためか、ヒュンケルの肌はより一層白磁のような白さを持ち彼の風貌を中性的なものにしていた。

 一カ月前、ダイからの依頼でラーハルトが魔物の調査に旅立った。
 それが先ほど帰ってきたのだ。
 離れていた時間を埋めるかのように体を重ねるつもりでいるのはお互い目を見ただけで分かり、ヒュンケルは愛おしさに導かれるまま、恋人に身を任せた。ソファに押し倒されて何度も何度も唇を合わせて、ゆっくりと服を開けさせられる快感を味わう。ラーハルトの手が触れる度に体の熱は高まり、腹の奥が疼く。ほしい、ほしいとカラダが叫ぶ。数え切れぬほど愛されてきた身は知っているのだ、この男と触れ合うと蕩けるような満ち足りた心地になることを。何年経っても変わらない。むしろ、年を経るほどに馴染んでいくカラダの触れ合いにヒュンケルは悦びを得るのだ。愛しい男はそれを正しく見積もって、ゆっくりと下衣を脱がせると受け入れたくて仕様がない後孔の周りを優しく愛撫した。
「ん、ラーハルト……」
 もっと奥に触れて欲しいのだという目で訴えかけるとラーハルトが苦笑する。
「久しぶりなんだ。もう少し」
 じっくり味合わせろ、と宥めるような口づけが落ちてくる。ヒュンケルはこの瞬間が堪らなく好きだった。愛おしさと戯れと信頼と。共に歩んできた月日の重なりに心が震える。

 そうやって唇を重ねた後、目をあけるとそこにはラーハルトが居た。
 正確に言えば、二十代前半と思しき年若いラーハルトが。ひどく驚いた顔をしている。
「ラーハルト? モシャスか? なぜー」
 多少ならば魔法を使える恋人が、ふざけて若い頃に化けているのか?
 問い質そうとしたが全てを言い終わる前に、体をうつ伏せにひっくり返されて両腕を後ろで拘束されてしまった。
「っ! おい、ラー……!」
「貴様、何者だ? ヒュンケルをどうした⁉」
「ヒュンケルはオレだが」
「ふざけるな……‼」
「ああ、っっ‼」
 ミシミシと骨が軋む。ラーハルトが本気で怒っているのがわかった。このままでは本当に骨を折られかねない。なぜだかわからないが目の前にいるのはどうやら本当に若い頃のラーハルトらしい。まずは、彼を落ち着かせなければ。
「ま、待て、ラーハルトっ」
「話す気になったか?」
「は、話すから落ち着け。いいか、オレはヒュンケルだ。ただし、お前から見たら未来の……な」
「なん、だと?」

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【side Larhart】

 ヒュンケルを抱いていたはずだった。
 いや、押し倒して半ば無理やり犯そうとしたのだ。戦闘で昂った熱を抑えきれなくて衝動的に目の前の白い体を組み敷いていた。怯えはない、けれどどこか諦めたかのようなヒュンケルの顔。いつものことだ。交わる時、彼はいつもその顔をする。文句も言わずただ受け入れる。

「オレは誰も幸せにはできない。だが、それでもこの身がラーハルトの役に立てるなら……好きに使って構わん」

 そう言って何でもないことのように己が身を差出す。天罰でも受けるような顔をして。この行いが正しいことではないことくらいわかっている。けれど彼の言葉に、態度に、無性に腹が立って噛み付くようにキスをした。
 そして目を開けると、見知らぬ男が眼下にいたのだ。

 ラーハルトは組み伏せた銀髪の男を眺める。

 見知らぬ、というのは嘘だった。感じる気配だけであれば誰よりも身近な男……ヒュンケル、そのもの。そのせいで一瞬、対応が遅れる。が、すぐに、本来いるべき友の姿が見えないことに急激に不安を覚えてその男を組み伏せたのだった。見た目で言えば、銀髪にオリーブグレイの瞳という知っている姿に酷似している。しかしヒュンケルより明らかに年齢が上である。体つきも幾分か、細く、肌は一層白い。
 その男の口から衝撃的な言葉が紡がれた。
「オレはヒュンケルだ。ただし、お前から見たら未来の……な」
「なん、だと?」
「疑うなら、オレの胸元を見てみろ」
 用心深く彼の胸元を探れば、果たしてそこには薄く紫色に輝くアバンのしるし。馬鹿な、という思いと同時にやはりと納得した。目の前にいるのは未来のヒュンケル。それは受け入れざるを得ない現実なのだとわかった。ただ、周りを見渡せばそこは知らない部屋で未だに状況は不明。ならば今はそれを明らかにすることが先決だ。
 ラーハルトは拘束を解くと、未来のヒュンケルに向き直った。
「お前が未来のヒュンケルということはわかった。だがここはどこだ?」
「オレとラーハルトの家だ。突然、ラーハルトが消えてお前が現れた」
「ではここは未来、なのか?」
「そういうことだな」
 正直、パニックである。突然、未来に来てしまった。己が未来に来たということは未来の自分は過去に行ったのだろうか。ラーハルトの頭の中を様々な疑問が巡る。けれど目の前の銀髪の男は、特段、取り乱した様子はない。
「随分、落ち着いているんだな」
 友が突然消えたというのに、という言葉は辛うじて飲み込んだものの、さほど大切な存在ではないということを突きつけられたようでラーハルトは胸の奥が痛んだ。それに気付いたのか、あるいは違う意味なのか、ヒュンケルは慰めるように微笑んだ。
「心配するな。ラーハルトなら無事だ、そのうち戻るさ。あいつは強い。どんな時も戻ってくる」
「なぜ、そう言える?」
「『誓い』があるからな」
 そう言うと、ヒュンケルは左手の薬指にはめた小さなリングに唇を寄せた。
「これは『誓いの指輪』……ラーハルトがくれたものだ。あいつと対で持っている。もとは1つだった貴石を分けてこの指輪の裏側に埋め込んでものだ。ラーハルトに万一のことがあればこの指輪は崩れ去る。これがまだここに『ある』と言うことは少なくともあいつは生きている。生きているならここに帰ってくるさ。必ず。」
 確信に満ちた瞳。ヒュンケルは友の生還を露ほども疑っていない。それにラーハルトは胸の奥が熱くなった。己の手で汚してしまった関係もいずれ清算され友としてこんな風に信頼を得る日がくるのだろうか。そう思うと、胸のつかえが少し取れた気がした。
「問題はお前をどうやって戻すかだが……生憎、それはオレにもわからん。何か心当たりはあるか? ラーハルト、お前、直前まで何をしていたんだ?」
「何って……ダイ様の行方がわかるアイテムがあると言うのでダンジョンに入って……」
 途端、脳裏には組み敷いた白い体が過ぎる。
 そうだ、無事にアイテムを入手したもののモンスターとの闘いで昂った気持ちを抑えきれず、ダンジョンの外で待つ友と合流した時、己は友を犯そうと……そこでラーハルトはようやく気づく。今の今まで気が動転してその異様さに気づかなかった。だが、よく考えればおかしい。

 なぜ、目の前の友の上着ははだけ、下は何も穿いていないのだ?

「ラーハルト?」
 突然、黙ってしまったのを訝しんでヒュンケルが話しかけるがラーハルトはそれどころではない。
「ちょっと待てヒュンケル。お前、なぜ裸なんだ? ふ、服を着ろ‼」
「なぜ、って……未来のお前と愛し合っていたからな」
「あ、愛しあって????」
「セックスしていたんだ。お前だってそうだろう?」
 ヒュンケルとは肉体関係はある。だが、それは『愛』という甘美な言葉で表現できるようなものではない。そもそも、己の知りうる限り、ヒュンケルはあっけらかんとこんなことを話す奴ではない。
「は、恥ずかしい奴め! 貴様、本当にヒュンケルか?」
 ぎりっと睨みつけたはずなのに気圧される事もなくむしろクスクスと男は笑った。
「何がおかしい」
「すまん。随分、初々しい反応だったから。ひょっとしてお前、まだオレを抱いてないのか?」
「ヒュンケルと交わったことはある! あるが……って、おい、貴様、どこを触っている!?」
 見れば、ヒュンケルの手はラーハルトの股間の膨らみを優しく撫でていた。
「ふふ、可愛い奴だな。中途半端な状態にしてしまったようだから責任をとってやる」
 言うや否やヒュンケルはラーハルトのペニスを取り出すと、その先端にチュウっと口付ける。
「お、おい、ヒュン!」
「すごいな、ちょっとキスしただけなのにどんどん固くなって……♡」
 嬉しそうにささやくとヒュンケルは目の前のペニスに鼻を近づけ雄の匂いを愉しんだ。
「ん、ラーハルト……♡」
 先端から根元までヒュンケルは余すことなく舌で愛撫する。挿入時とはまた異なるヌルヌルとした感触と視界からの刺激にラーハルトの頭は混乱した。どうして、なぜ。止めさせなければ、と思うがそれよりも快感が勝った。制止しようとヒュンケルに伸ばされた手はなすすべも無くそのまま彼の頭に添えられるだけ。はむ、と柔らかな唇が敏感な陰嚢を緩く食んで、チュウっと吸い上げる。与えられたことのない刺激に思わず身体が跳ねると、下から見上げてくるオリーブグレイの瞳とぶつかった。
「可愛いな、ラー」
「ふざけるなっ! もう止めっ……」
「ダメだ♡」
 陰嚢を手でやわやわと転がし、敏感な裏筋を舌でツウっとなぞる。むせかえるような雄の匂いとドクドクと脈打つ熱。堪能するようにヒュンケルはラーハルトのペニスを先端からゆっくりと咥え込んだ。
「ぐっ……!あ、……」
 初めてのことだった。ヒュンケルが愛おしそうに自分の性器を咥えるなんて。視界からの刺激と直接的に与えられる快楽にクラクラする。現実なのか、これは。ただただ与えられる快感に翻弄されていると突然、ヒュンケルがペニスを喉奥でキュっと締め付け、ジュルリと強く吸い上げた。途端、あ、と思った時にはヒュンケルの口の中に精を吐き出していた。
「っ、ヒュンケルっ!」
 しまった、早く吐き出させなければ、そう思って彼を引き剥がせばそこには恍惚とした顔の男。れ、と口を開き白濁にまみれた舌をラーハルトに見せつけてから、それをごくりと飲み込んだ。
「お前……!」
 信じられなかった。
 いつも己の下で耐えるように犯されるだけの友からは想像もつかない姿。頬を上気させ愛おしげにペニスをしゃぶり精飲する等、あの清廉な男と同一人物とは思えない。ぐるぐると脳内を巡る疑問がついぞ口からこぼれ出た。
「お前は、なぜ……そんなことができるのだ?」
「なんだ? お前のヒュンケルはしないのか?」
「あ、当たり前だ! アイツは望んでこんなことはしない。いつもオレが無理やり……!」
脳裏に過ぎるのは
「お前の役に立てるのなら、オレのカラダなど好きにしてくれ」
そう言って静かに目を閉じて身を差し出す友の姿。こんな関係を望んだわけではなかったのに。

「ラーハルト」
名を呼ばれ顔を上げれば真っ直ぐこちらを見つめる未来のヒュンケル。その視線に射すくめられた。
「お前、ヒュンケルオレのことをどう思っているんだ? 体のいい性玩具か?」
「ち、違う‼」
「じゃあ、なんだ?」
「友だ」
「貴様は友とこんなことをするのか? なぜ、友なのにカラダの関係を持った?」
「それ、は……」
 言葉が出てこなかった。ヒュンケルに求めているものが友としての情と呼ぶにはいささか大きすぎる自覚はある。けれどそれを何と形容すべきか、よくわからなかった。ただ
「抱けば、アイツを……ヒュンケルを繋ぎ止められるかと思ったんだ」

 初めての交合は半ば事故のようなものだった。
 勇者を探す旅を始めて数ヶ月後、立ち寄った街の祭りの賑わいに誘われてお互いしこたま酒を飲んだ。それがまずかった。剥き出しの本心がとろりと溢れて、出る。
「ラーハルト、もうオレを置いていけ。足手まといだろう?」
 ヒュンケルが漏らした言葉に無性に腹が立って、気づくと強引に体を繋げていた。
「オレは誰も幸せにできない。お前の役に立てぬなら捨てて行ってくれ」
 友がその言葉を口にする度、胸の奥がちりちりと痛んだ。決して他者からの好意を、思慕を、受け入れないヒュンケル。今日は共にいられた。だが、明日は? いつまで側にいられるんだろうか? いつか己の視線の意味に気づいた時、ヒュンケルは眼の前から消えてしまうのではないか? その恐れは徐々にラーハルトの心を蝕む。ついには、ドロリと溶け出てしまった。

 行為の後、罵られることさえ覚悟して謝罪したというのにヒュンケルはこともなげにいうのだ。
「溜まっていたんだろう、オレで役に立てたなら良かった」
「お前が嫌でなければオレの体を使えばいい」
「他所で探す手間が省けるし、お互いで済ませるのが合理的だろう」

 眩暈がした。そんなつもりではなかったというのに。

 けれど
「少なくともカラダの関係があるうちは……アイツが“役に立てている”と思えるうちは、離れないだろうと」
 そう思って、それを飲み下したのだ。

「それから何度も抱いたが、いつも耐えるような顔をする。お前のように気持ちよさそうではない……」
 うなだれるラーハルトを静かに見つめ、ヒュンケルは盛大なため息をついた。
「まぁ、半分はヒュンケルオレの責任だな。お前も大概だが……おい、ラーハルト」
「なんだ?」
「教えてやろうか? ヒュンケルオレが気持ちよくなれる抱き方を」

 にこりとした微笑みは、聖母か淫魔か。
 いずれにせよ、ラーハルトには断る理由がなかった。

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【side Hynckel】

「じゃあ教えてやる、オレが気持ち良くなれる抱き方を」

 ヒュンケルはそう言って若い半人半魔の男、過去からやってきた二十代前半のラーハルトをソファに押し倒しその股間の上に自分の剥き出しの股を重ねて座った。ぴたりと性器同士が直に触れ合うとその熱さにほうっとため息が漏れる。こちらとて交わるのは久しぶりなのだ。存分に堪能したい。その思いから自然と腰が揺れた。
「っ! おい、ヒュンケルっ!」
 ちらりと見れば、眼下の若い男は情欲を抑えきれずその顔は火照りうっすらと上気している。けれどそれを悟られまいと目を逸らす姿はあまりにも新鮮で、ヒュンケルに小さな悪戯心が湧いた。もっと煽ってこの男の本心を暴きたい。そして、そうすれば恐らく初心なこの男も己が秘めているものが単なる友情ではないことを身を持って理解するだろう。
 己の名を呼んだ男にヒュンケルは微笑みかける。
「何だ? 年増のオレでは気乗りせんか?」
「っ……そうではない。が、本当に良いのか……ラーハルトオレとお前は恋仲なのだろう……その、ここのオレに悪いんじゃないか……」
「ふふ、妙なところで律儀なやつだな……好きだぞ、お前のそう言う所♡」
「だが……」
「心配するな。これは『練習』だ。昔のヒュンケルオレを気持ちよくするための……そのためならオレのラーハルトは怒りはしない。そんなに器の小さな男ではない」
 脳裏に恋人の顔が過ぎるが、過去の自分に抱かれたからと言って特段取り乱す様は考えられなかった。そんなことで揺らぐほど脆い絆ではないことは互いによくわかっている。
 けれど目の前の年若い男にはまだそれが理解できないのだろう。顔に出ている。
「まぁ、ヤりたくないと言うなら無理強いはしないが」
「そうではない! が、お前が下だ……上に乗られるのは性に合わん」
「随分、偉そうな生徒だな。どうせ挿れるのはお前なんだからいう通りにしろ」
 黙らせるようにグチュっと腰を揺らせば再び性器が擦れあう。と、ラーハルトからは小さな喘ぎが漏れた。一度、精を放って落ち着いた筈のペニスも再び硬度を増しており、口では文句を言いながらも興奮していることがわかる。それにヒュンケルもあてられる。触れ合う互いの性器をひとまとめに掌で包み込むとゆっくりと腰を揺らした。
「あ、ん、んっ……ラー♡」
「あっ、クッ! こらっ動くな……っ」
「可愛いな、ラーハルト♡」
「くそ! この後、善がり狂わせてやる」
「それはお手並拝見だな。まずはいつもみたいにやってみろ」
 どうぞ召し上がれ♡ とばかりにラーハルトの首に腕を回し胸を差し出す。が、ラーハルトはそれには目もくれずヒュンケルの尻の割れ目に手をかけた。
「おい、いきなり挿入か?」
「それ以外、どうしろというのだ」
 さも当然のように言う男に軽い目眩を覚えて、ヒュンケルははたと思い至る。そういえば、
「昔のお前は前戯が下手くそで、確かに痛かったな……」
「⁉」
 プライドの高い男である。己の腕前をコケにされれば黙ってはいられない。文句の一つも言ってやりたくなるものである。が、ラーハルトは言うのをグッと堪えた。その顔があまりにも悲しそうだったからか、慰めるようにヒュンケルが頬に唇を寄せる。
「まぁそんな顔をするな。未来のラーハルトは超絶に上手いから。お前もそのうちそうなるさ」
「腹が立つな……だが、オレが未熟なのは認めよう。で、どうすれば良いのだ?」
「そうだな、まずは胸を触ってみろ」
 男の手を取るとそれを自分の胸元に触れさせる。実の所、前戯で一番好きなのは胸だった。それも乳首が特に。そこを引っ張られたり捏ねくり回されるとジンと甘く痺れ腹の奥が疼いた。男らしくないその快楽は自分がラーハルトの雌なのだと、つがいなのだと強く意識させられる。アバンの使徒の長兄であることも元軍団長であることも関係のない「ただのヒュンケル」として理性も何もかも手放して委ねられる……そんな相手はラーハルトだけ。だからこそ、この若い雄にもそこを触ってほしかったし、そこを触ることで相手を雌にできることも知って欲しかった。そして年若い自分ヒュンケルを蕩けさせてほしい――
 そう思って手を導くと、男は戸惑いながらも両の中指の腹でそっと乳頭に触れる。
「優しく触ってくれ」
 ねだればラーハルトは神妙な顔で頷いた。
 小さなピンク色の突起。女の胸ほどはっきりとしてはいないそこを、それでもラーハルトは請われるまま丁寧に愛撫する。元来は自分が認めたものは丁重に扱う男なのだ。乳輪の周りをなぞったり先端を押し潰したりして刺激を与えるとまだそんなに固くなっていなかった乳首もぷっくりと立ち上がり艶かしく濃い色を帯びる。十分に腫れあがった乳首を親指と中指で摘み上げクリクリと回し人差し指でキュッと押さえると、ヒュンケルからは甘ったるい嬌声が漏れた。
「あっ……ラーハルト……」
「好いか?」
「好い。触れているのがお前だと思うとそれだけイきそうだ」
 その言葉にラーハルトがごくりと喉を鳴らす。興奮しているのはヒュンケルだけではなかった。乱れる姿に煽られる。もう一度ごくりと喉がなりその目は乳首に釘付けになった。その意図を正しく読み取りヒュンケルは再びねだるのだ。
「舐めてくれ、ラー」
 男は返事の代わりにその乳首にむしゃぶりついた。舌先で乳首の周りをなぞり軽く噛んだりちゅうっと吸い上げるとラーハルトの頭を抱えたヒュンケルの体がビクビクと震える。
「ん♡ん♡ラー♡♡イイっ……♡♡」
「胸を吸われて善がるとは、女みたいだな」
「んぅ♡ラーハルトのせいだからな……!」
「そんなにオレに吸われるのが好きか」
「好きだ。鋭い犬歯が乳首に当たって気持ちいい♡♡」
 本心だった。たとえいつのラーハルトであろうが彼に愛撫され抱かれるのはこの上もなく満たされる。確かに最初は快感を口にすることに抵抗があった。淫らで汚れた自分をさらけ出すのは恐ろしくひたすら唇をかみしめて苦痛にも快楽にも耐えた。けれど。

 あれはいつのことだったか、旅の途中、森の中で突然告げられた言葉。
「好きだ。愛している」
 他者からの恋慕の情など、受け付けるべきではないと思っていたはずなのになぜだかラーハルトの言葉だけはするりと胸の内に滑り込んで。ああ、それは望んでいた言葉なのだと、己の頬を伝う涙で気づいた。
「我慢するな」
「声を出せ」
「全部、見せてくれ」
 交わるたびに熱の籠った眼差しを向けてくる男は、固く閉じた蕾の花びらをそうっとめくるように一枚一枚、己の拒絶の皮を剝いでいった。そうして裸になった身と心を美しいと言って泣きそうな顔で笑うのだ。己と同じ、人の世にも魔物の世にもなじめぬ男。その男になら委ねてもよいような気がして 声を、出した。

「あっ……」
 突然、ペニスを握り込まれてヒュンケルは体がビクリと震える。
「何を考えている? ヒュンケル」
眼前の若い雄の姿はたやすく過去を呼び覚ます。
「ふふ、初めて好きだと言ってくれた時のことを思い出していた」
「オレが、か?」
「そうだ」
 お前以外いるはずがないだろう。こちらとしてはそういう思いだが、目の前の男は怪訝顔だ。
「まだ納得できないか、ラーハルト?」
 今、まさにこんなにも求めあっているのに?と問えば男はますます眉間のしわを深くした。
「これは…ただの肉欲かもしれんぞ?」
「往生際の悪い奴だな。お前が、ただの肉欲だけでオレと十年以上も共に過ごすわけがないだろ」
「十年以上…?そんなに長くお前はオレと一緒にいるのか?」
「そうだ。まぁもちろん四六時中、一緒ではないがな。お前はダイの頼みとなるとすぐに出かけていくし……」
「あ、当たり前だ。主君の命令が第一だ!」
 混乱しながらもそこだけは譲らない、と強く言う男にヒュンケルは苦笑いをする。全くもって本当に忠義に厚い男である。そしてそれこそがラーハルトを信頼できる理由だ。
「お前のそういう所、好きだぞ、ラーハルト」
「ヒュンケル、貴様……! か、簡単にそういうことを言うな!」
「ふふ、恥ずかしがるな。本当に可愛いな」
「恥ずかしがってなどおらん!」
「ならば怖気付いたか?」
 するり、とヒュンケルが腕を伸ばしラーハルトを抱きしめた。
「もっと触ってくれ、ラーハルト。もっとお前を感じたい」
 妖艶とも言える微笑みを浮かべて誘えば、若い男のタガは簡単に外れる。
「くそっ……! お前が煽ったんだからな!」
 男はヒュンケルを押し倒すと強引に足を開かせてその秘部を目掛け、たかぶった雄をいきなり押しつけた。
「うっ、あ! ラー、待って……!」
 ググッと押し込めば先端が少し奥に入ったものの、摩擦が酷くなかなか先には進まない。それを力任せに押し込もうとするラーハルトをヒュンケルは体を突っぱねるようにして制する。
「待てと言っている! ばかハルト!」
「お、お前が誘ったんだろう⁉」
「そうだが……いくらオレでもいきなりそんなデカいのは入らん! 前戯をしっかりしろと言っているだろう⁉ ほら、そこに香油がある。それでオレのここをほぐすんだ」
 グイッと足を自ら持ち上げ、ヒュンケルが己の秘部を指でくぱぁと開いて見せた。綺麗なピンク色にぬらぬらと光るそこは妖しくラーハルトを誘惑する。ぷつりと男の中で何かが切れる音がした。

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【side Larhart】

「んっ、う……ラーハルト……っ!」
 荒い吐息とぴちゃりという淫猥な水音が室内に響き渡る。窓の外には大きな満月。月灯が眼下にいる銀髪の男を美しく照らした。白い肢体と紅潮した頬のコントラストが得も言えぬ艶かしさを生み出している。
「ヒュンケル……」
 ラーハルトは己の行動が信じられなかった。ヒュンケルが開いて見せたのはただの排泄器官だと言うのに酷く己の雄を刺激して、気づくとそこにむしゃぶりついていた。ツゥと舌を差し入れて窄まりの縁をぐるりとなぞる。途端にビクビクとヒュンケルの体が反応した。
「あぅ……♡ ラーハルトぉ……♡」
 ナカをかき回すように舐める度に、赤く色づいた唇から惚けたような声がこぼれるのが堪らない。素直に快感を伝える姿も、ねだり甘える姿も見たことはない。いつも抱いている禁欲的なヒュンケルとは違う姿。もっと、聞きたい。もっと、知りたい。もっと、欲しい。もっと、奥に入りたい。もっと、もっと。
 ラーハルトはヒュンケルから口を離すと、香油を手に取り己のペニスに塗りたくった。そこは痛いほど膨れ上がっている。もう限界だった。
「っ! ヒュンケル、挿れるからな」
 声をかけたのはせめてもの理性。けれどそれが精一杯。これ以上、前戯など出来ない。そんな余裕はない。一刻も早くこの男を自分のものにしたい。しなければならない。脳裏に浮かぶのはそんな思いで。
 ラーハルトは今度こそ、ヒュンケルの秘部にペニスをゆっくりと挿入する。十分に解されてはいないだろうそこは、香油の滑りのおかげか、それでも男をやわらかく受け止めた。
「ラー、慌てる、なよ……あ♡ オレは……逃げたりしないぞ?」
「っは……! 嘘をつけ! ……いつも、お前は……どこかに消えてしまいそうだ……!」
 犯していると言うのに、それでも何処か余裕を見せているヒュンケルに苛立ちが募る。
 まるで求めているのはこちらだけのよう。するりと手をすり抜けてこぼれ落ちてしまいそうな男。こんなにも焦がれているのに。腹立ちまぎれに、鎖骨に、胸に、肩口に唇を寄せて嚙みつくように貪る。バチンと腰を強く打ち付けるとヒュンケルから悲鳴のような甲高い嬌声があがった。
「あうっ! ラーハルト! はげしっ……! あ、あ!」
 強すぎる刺激から逃れようとしたのかヒュンケルが体を捩るがラーハルトはそれも許さない。
「ヒュンケル! 逃がさんぞ。お前はオレの……!」
 再びガッチリと細くしなやかな腰を掴んで律動を繰り返すと呼応するようにヒュンケルの赤い唇からは甘い吐息がこぼれた。
「はっ……ん! あぅっ! 大丈夫だ……ん、あ、オレは逃げないから……!あ、ああっ‼」
「っ! クソッ……! ヒュンケルっ! は、ぁ……」
「んっ……! すごいっ……奥まで……! こんなの、あっ……‼」
「ヒュンケル……! ヒュンケル‼‼」
 目の前の痴態と絡み付く媚肉に頭がグラグラする。逃がさない。繋ぎ留めたい。離したくない。縋るような思いが肥大して、ラーハルトは欲に任せるまま腰を振った。パンパンと肉と肉がぶつかる音が、部屋中に響いてさらに男を高ぶらせる。
「ふぅ……! クッ! イくぞ、ヒュン、ケルっ……!」
「あ、あっ……ラー……ハルト……!」
 一層強く奥に腰を叩きつけると、まるで待っていたかのようにヒュンケルのナカはキュウゥッとペニスを包み込んで締め付け、たまらずラーハルトは奥に欲を吐き出す。と同時に、ヒュンケルの腹の上でも白濁が弾けた。
 達した体をどさりとベッドに横たえて、ヒュンケルを見ると潤んだ瞳にぶつかった。頬にはいくつか涙の筋があり、体の至る所に歯形がついていた。
 しまった、やりすぎだ。
 ラーハルトの胸には深い罪悪感が去来する。
 ヒュンケルを気持ち良くしてやる。そういう抱き方をするつもりだったのに、これではいつもと変わらないではないか。
 ツキリ。心がきしむ音。
 唇をかみしめ、ラーハルトは「すまない」と短く詫びてヒュンケルから離れようとするが、それを当のヒュンケルが押し止めた。
「ラー、ヤったらスグにさよならなんて情緒の無い奴だな。少しはオレをいたわれ」
「だが、こんな……乱暴をした男と一緒に居たくはないだろう? 結局、お前を気持ち良くしてやることはできなかった……」
「は? 気持ち良かったぞ? お前がしてくれることなら、何だって」
「バカな」
 あまりにまっ直ぐに見つめてくる瞳をラーハルトは直視できない。思わず顔を反らしてしまう。すると、白い手が伸びてそっとラーハルトの首に絡んだ。
「ラーハルト、キスしてくれ」
 とろりとした瞳で委ねてくる様は、心の奥底の甘い部分を刺激して、形容しがたい、熱いような苦しいような気持ちを呼び起こす。
「ヒュンケル……」
 目線が重なれば自然と唇も重なった。これまで乱暴にしか貪ったことのない、ヒュンケルの唇はしっとりと柔らかく、蜜をたっぷり含んだ果実を食んでいるかのようだった。舌を挿し込こめば、中はひたすらに甘くて、柔らかくて、その感触にクラクラする。甘露を味わうように唇を重ねればヒュンケルは満足げにほほ笑んだ。
「上手じゃないか、ラーハルト」
「だまれ」 
「ふふ、褒めてるんだ。素直に喜べ」
「本当に生意気な口だ」
 言い終わるや否やラーハルトはヒュンケルの唇を再び塞いだ。今度はそれに呼応するようにヒュンケルもうっとりと舌を絡める。その表情に、仕草に、ラーハルトは乾いた大地が水を吸いこむように満たされる。初めてだった。ヒュンケルとこんなにも心地よいキスをすることは。
「ん……らー。気持ちいい……なぁ、お前のヒュンケルにもキスしてやれよ?」
「あいつはこんなこと、望んでいない」
「それはお前の思い込みだろう。本人が言ってるんだぞ?」
「だが、ヒュンケルは……本心ではオレから離れたがっている。それくらいオレにもわかる」
「……臆病者め」
「なんだと……?」
臆病者とは穏やかではない。いくらヒュンケルでもそんな侮辱は許さない――と抗議の声を上げるつもりで開いた口を今度はヒュンケルに塞がれる。
「もう一度、聞くぞ、ラーハルト。お前、ヒュンケルオレのことをどう思っているんだ。本当にただの友なのか?こんなキスをするのに?もう逃げるな。いい加減認めたらどうだ?」
「そ、そういうお前こそ……!友のくせにこ、こんな……! 目を離せばどこかに消えてしまいそうなくせに……!」
「オレはラーハルトを愛している。望んでくれるならいつまでもそばにいる。オレの居場所はもうお前の隣しかないんだ」
 縋るような、諭すような、穏やかな目をしてヒュンケルがそっと囁いた。己の本心を易々と晒すことはしない男が口にした言葉――ヒュンケルの真心――は、ラーハルトに深く深く沁みこんで、胸の奥を熱くさせる。それはずっと欲していたものだった。
 この男はラーハルトオレを信じている。信じて、委ねているのだ。そんな関係が未来にはある。あるのだ。なんという希望だろう。なんという祝福だろう。ラーハルトは鼻の奥がツンとしてじわりと目頭が温かくなるのを感じた。
「ヒュンケルは本当にオレの傍に居るのか……?」
「ああ、命の続く限り。いつまでも。まぁ少なくともあと十年は共に居るから安心しろ」
 ヒュンケルの指がラーハルトの頬に触れる。優しく宥めるように雫のあとを撫でた。
「なぁ、お前は? ラーハルトの『本当』が知りたい」
「オレは――」
 最初は“それ”を何といえば良いのかわからなかった。友というには手に余るこの想い。けれど、今なら言える。
「オレは、ヒュンケルを愛している」
 まっすぐヒュンケルを見つめる瞳。それはもう逃げないことを決めた瞳。
「ようやく言えたな、ラーハルト。全く強情な奴だ」
「そう簡単にいくか!友だと思っていた相手なんだぞ」
「ふふ、初心な奴め♡」
 ヒュンケルはラーハルトの肩に手をかけ、耳元に唇を寄せた。
「こんなに激しいセックスは久しぶりだ。すごくよかった♡♡」
「あんな犯すようなのがいいのか?」
「いつもラーは優しく抱くから刺激的だったぞ♡ だが、まぁまだ慣れていないオレには確かに酷だな。ラーハルト、もう少しゆっくり丁寧に抱いてやれ、キスは上手いんだから。挿入するときは……」
「わかった、もう言うな。そんなに言うならもう一戦するぞ⁉」
 黙れ、という代わりにラーハルトはヒュンケルの唇を塞いだ。
 と、その時、ラーハルトの体が白く光り輝きだす。見ればつま先から体が消え始めている。元の世界に戻るのだと、直感した。
「ラーハルト……戻るんだな」
「ああ、そうみたいだ……また、会えるか?」
「十年後に会えるさ」
 まだ消えていないラーハルトの頬に手を伸ばしヒュンケルはその唇に己の唇を重ねた。
 そうして目を開けると、そこにはラーハルトが居た。
 この世界の、元のラーハルト。
「また、会えたな……ヒュンケル。ただいま」
「ああ、おかえりラーハルト」
 静かに、静かに見つめ合って二人はゆっくり唇を重ねた。



<10年後の世界 おしまい>

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【あとがき】
某絵描き様から「30代のラーヒュンがタイムスリップして20代のラーヒュンにセックス指南する話はどう?」と天啓を与えられまして、なんだぞれはとても美味しいぞ!!!!!とたぎる思いで書いた物語です。
途中、諸々あって書き上げるまでに時間がかかりましたがついに仕上がりました♡
えっちなおねえさんにヒュンケルはいかがでしたでしょうか??は大変楽しく書きましたが、皆様にも楽しんでいただけたでしょうか?よろしければご感想など頂けますと、嬉しいです。
このシリーズ(?)ご好評であれば、30代ラー✖️20代ヒュンのシーンも書きたいと思います!
頑なな20代ヒュンを大人なラーがトロトロにしちゃいます♡

それではここまでお読みいただき本当にありがとうございました!!!


 
 

 
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【ラーヒュン】10年後の世界

キーワードタグ R18  ダイの大冒険  ヒュンケル  ラーハルト  ラーハルト×ヒュンケル  ラーヒュン  原作終了後  ハート喘ぎ 
作品の説明 pixivで掲載していた「10年後の世界」の完全版です。

ラーハルトが大魔王没後10年の世界にタイムスリップして30代ヒュンケルとせっせするお話です。
ヒュンケルが語尾に♡をつけるエッチなおねえさんでも許せる方のみどうぞ。
控え目ながらラーハルトの喘ぎもあります。ラーヒュンです。
【ラーヒュン】10年後の世界
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【side Hynckel】

 一瞬、ヒュンケルは何が起きたのかわからなかった。つい今しがたまでソファでラーハルトとキスをしていたはずなのに。





 大魔王との戦いから十年。数年前に勇者ダイも見つかり、冥竜王ヴェルザーとの戦いも終わった。
 勇者と共に魔界に旅立った唯一無二の友であり生涯の伴侶でもあるラーハルトも帰還を果たしヒュンケルは魔界での戦いには行かなかったものの、人間界の守りを固めるためその知力と経験を惜しまずささげ、影の功労者となっていた。

 今や二人は、ダイからの招集がない限り、人里離れた森で静かに暮らす生活を送っている。
 ラーハルトは魔族の血が流れているためか十年経った今でも肉体的な衰えはほとんどない。戦闘スキルという意味ではむしろ十年前とは比べ物にならないくらい飛躍していた。一方で年を重ねた落ち着きと冷静さもあり、パプニカ重鎮からも一目置かれる存在である。
 ヒュンケルはというと、以前のような筋力や腕力はないものの、日常生活やちょっとした剣技をふるう程度には問題ないほどに回復を果たし、今はカール王国でアバンの研究の手伝いをしている。といっても城仕えではなく、ヒュンケルの仕事は主に魔術書の類の解読だ。そのため、彼は基本的には自宅に書斎を持ち、そこで仕事を行っていた。日に当たらない生活のためか、ヒュンケルの肌はより一層白磁のような白さを持ち彼の風貌を中性的なものにしていた。

 一カ月前、ダイからの依頼でラーハルトが魔物の調査に旅立った。
 それが先ほど帰ってきたのだ。
 離れていた時間を埋めるかのように体を重ねるつもりでいるのはお互い目を見ただけで分かり、ヒュンケルは愛おしさに導かれるまま、恋人に身を任せた。ソファに押し倒されて何度も何度も唇を合わせて、ゆっくりと服を開けさせられる快感を味わう。ラーハルトの手が触れる度に体の熱は高まり、腹の奥が疼く。ほしい、ほしいとカラダが叫ぶ。数え切れぬほど愛されてきた身は知っているのだ、この男と触れ合うと蕩けるような満ち足りた心地になることを。何年経っても変わらない。むしろ、年を経るほどに馴染んでいくカラダの触れ合いにヒュンケルは悦びを得るのだ。愛しい男はそれを正しく見積もって、ゆっくりと下衣を脱がせると受け入れたくて仕様がない後孔の周りを優しく愛撫した。
「ん、ラーハルト……」
 もっと奥に触れて欲しいのだという目で訴えかけるとラーハルトが苦笑する。
「久しぶりなんだ。もう少し」
 じっくり味合わせろ、と宥めるような口づけが落ちてくる。ヒュンケルはこの瞬間が堪らなく好きだった。愛おしさと戯れと信頼と。共に歩んできた月日の重なりに心が震える。

 そうやって唇を重ねた後、目をあけるとそこにはラーハルトが居た。
 正確に言えば、二十代前半と思しき年若いラーハルトが。ひどく驚いた顔をしている。
「ラーハルト? モシャスか? なぜー」
 多少ならば魔法を使える恋人が、ふざけて若い頃に化けているのか?
 問い質そうとしたが全てを言い終わる前に、体をうつ伏せにひっくり返されて両腕を後ろで拘束されてしまった。
「っ! おい、ラー……!」
「貴様、何者だ? ヒュンケルをどうした⁉」
「ヒュンケルはオレだが」
「ふざけるな……‼」
「ああ、っっ‼」
 ミシミシと骨が軋む。ラーハルトが本気で怒っているのがわかった。このままでは本当に骨を折られかねない。なぜだかわからないが目の前にいるのはどうやら本当に若い頃のラーハルトらしい。まずは、彼を落ち着かせなければ。
「ま、待て、ラーハルトっ」
「話す気になったか?」
「は、話すから落ち着け。いいか、オレはヒュンケルだ。ただし、お前から見たら未来の……な」
「なん、だと?」

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【side Larhart】

 ヒュンケルを抱いていたはずだった。
 いや、押し倒して半ば無理やり犯そうとしたのだ。戦闘で昂った熱を抑えきれなくて衝動的に目の前の白い体を組み敷いていた。怯えはない、けれどどこか諦めたかのようなヒュンケルの顔。いつものことだ。交わる時、彼はいつもその顔をする。文句も言わずただ受け入れる。

「オレは誰も幸せにはできない。だが、それでもこの身がラーハルトの役に立てるなら……好きに使って構わん」

 そう言って何でもないことのように己が身を差出す。天罰でも受けるような顔をして。この行いが正しいことではないことくらいわかっている。けれど彼の言葉に、態度に、無性に腹が立って噛み付くようにキスをした。
 そして目を開けると、見知らぬ男が眼下にいたのだ。

 ラーハルトは組み伏せた銀髪の男を眺める。

 見知らぬ、というのは嘘だった。感じる気配だけであれば誰よりも身近な男……ヒュンケル、そのもの。そのせいで一瞬、対応が遅れる。が、すぐに、本来いるべき友の姿が見えないことに急激に不安を覚えてその男を組み伏せたのだった。見た目で言えば、銀髪にオリーブグレイの瞳という知っている姿に酷似している。しかしヒュンケルより明らかに年齢が上である。体つきも幾分か、細く、肌は一層白い。
 その男の口から衝撃的な言葉が紡がれた。
「オレはヒュンケルだ。ただし、お前から見たら未来の……な」
「なん、だと?」
「疑うなら、オレの胸元を見てみろ」
 用心深く彼の胸元を探れば、果たしてそこには薄く紫色に輝くアバンのしるし。馬鹿な、という思いと同時にやはりと納得した。目の前にいるのは未来のヒュンケル。それは受け入れざるを得ない現実なのだとわかった。ただ、周りを見渡せばそこは知らない部屋で未だに状況は不明。ならば今はそれを明らかにすることが先決だ。
 ラーハルトは拘束を解くと、未来のヒュンケルに向き直った。
「お前が未来のヒュンケルということはわかった。だがここはどこだ?」
「オレとラーハルトの家だ。突然、ラーハルトが消えてお前が現れた」
「ではここは未来、なのか?」
「そういうことだな」
 正直、パニックである。突然、未来に来てしまった。己が未来に来たということは未来の自分は過去に行ったのだろうか。ラーハルトの頭の中を様々な疑問が巡る。けれど目の前の銀髪の男は、特段、取り乱した様子はない。
「随分、落ち着いているんだな」
 友が突然消えたというのに、という言葉は辛うじて飲み込んだものの、さほど大切な存在ではないということを突きつけられたようでラーハルトは胸の奥が痛んだ。それに気付いたのか、あるいは違う意味なのか、ヒュンケルは慰めるように微笑んだ。
「心配するな。ラーハルトなら無事だ、そのうち戻るさ。あいつは強い。どんな時も戻ってくる」
「なぜ、そう言える?」
「『誓い』があるからな」
 そう言うと、ヒュンケルは左手の薬指にはめた小さなリングに唇を寄せた。
「これは『誓いの指輪』……ラーハルトがくれたものだ。あいつと対で持っている。もとは1つだった貴石を分けてこの指輪の裏側に埋め込んでものだ。ラーハルトに万一のことがあればこの指輪は崩れ去る。これがまだここに『ある』と言うことは少なくともあいつは生きている。生きているならここに帰ってくるさ。必ず。」
 確信に満ちた瞳。ヒュンケルは友の生還を露ほども疑っていない。それにラーハルトは胸の奥が熱くなった。己の手で汚してしまった関係もいずれ清算され友としてこんな風に信頼を得る日がくるのだろうか。そう思うと、胸のつかえが少し取れた気がした。
「問題はお前をどうやって戻すかだが……生憎、それはオレにもわからん。何か心当たりはあるか? ラーハルト、お前、直前まで何をしていたんだ?」
「何って……ダイ様の行方がわかるアイテムがあると言うのでダンジョンに入って……」
 途端、脳裏には組み敷いた白い体が過ぎる。
 そうだ、無事にアイテムを入手したもののモンスターとの闘いで昂った気持ちを抑えきれず、ダンジョンの外で待つ友と合流した時、己は友を犯そうと……そこでラーハルトはようやく気づく。今の今まで気が動転してその異様さに気づかなかった。だが、よく考えればおかしい。

 なぜ、目の前の友の上着ははだけ、下は何も穿いていないのだ?

「ラーハルト?」
 突然、黙ってしまったのを訝しんでヒュンケルが話しかけるがラーハルトはそれどころではない。
「ちょっと待てヒュンケル。お前、なぜ裸なんだ? ふ、服を着ろ‼」
「なぜ、って……未来のお前と愛し合っていたからな」
「あ、愛しあって????」
「セックスしていたんだ。お前だってそうだろう?」
 ヒュンケルとは肉体関係はある。だが、それは『愛』という甘美な言葉で表現できるようなものではない。そもそも、己の知りうる限り、ヒュンケルはあっけらかんとこんなことを話す奴ではない。
「は、恥ずかしい奴め! 貴様、本当にヒュンケルか?」
 ぎりっと睨みつけたはずなのに気圧される事もなくむしろクスクスと男は笑った。
「何がおかしい」
「すまん。随分、初々しい反応だったから。ひょっとしてお前、まだオレを抱いてないのか?」
「ヒュンケルと交わったことはある! あるが……って、おい、貴様、どこを触っている!?」
 見れば、ヒュンケルの手はラーハルトの股間の膨らみを優しく撫でていた。
「ふふ、可愛い奴だな。中途半端な状態にしてしまったようだから責任をとってやる」
 言うや否やヒュンケルはラーハルトのペニスを取り出すと、その先端にチュウっと口付ける。
「お、おい、ヒュン!」
「すごいな、ちょっとキスしただけなのにどんどん固くなって……♡」
 嬉しそうにささやくとヒュンケルは目の前のペニスに鼻を近づけ雄の匂いを愉しんだ。
「ん、ラーハルト……♡」
 先端から根元までヒュンケルは余すことなく舌で愛撫する。挿入時とはまた異なるヌルヌルとした感触と視界からの刺激にラーハルトの頭は混乱した。どうして、なぜ。止めさせなければ、と思うがそれよりも快感が勝った。制止しようとヒュンケルに伸ばされた手はなすすべも無くそのまま彼の頭に添えられるだけ。はむ、と柔らかな唇が敏感な陰嚢を緩く食んで、チュウっと吸い上げる。与えられたことのない刺激に思わず身体が跳ねると、下から見上げてくるオリーブグレイの瞳とぶつかった。
「可愛いな、ラー」
「ふざけるなっ! もう止めっ……」
「ダメだ♡」
 陰嚢を手でやわやわと転がし、敏感な裏筋を舌でツウっとなぞる。むせかえるような雄の匂いとドクドクと脈打つ熱。堪能するようにヒュンケルはラーハルトのペニスを先端からゆっくりと咥え込んだ。
「ぐっ……!あ、……」
 初めてのことだった。ヒュンケルが愛おしそうに自分の性器を咥えるなんて。視界からの刺激と直接的に与えられる快楽にクラクラする。現実なのか、これは。ただただ与えられる快感に翻弄されていると突然、ヒュンケルがペニスを喉奥でキュっと締め付け、ジュルリと強く吸い上げた。途端、あ、と思った時にはヒュンケルの口の中に精を吐き出していた。
「っ、ヒュンケルっ!」
 しまった、早く吐き出させなければ、そう思って彼を引き剥がせばそこには恍惚とした顔の男。れ、と口を開き白濁にまみれた舌をラーハルトに見せつけてから、それをごくりと飲み込んだ。
「お前……!」
 信じられなかった。
 いつも己の下で耐えるように犯されるだけの友からは想像もつかない姿。頬を上気させ愛おしげにペニスをしゃぶり精飲する等、あの清廉な男と同一人物とは思えない。ぐるぐると脳内を巡る疑問がついぞ口からこぼれ出た。
「お前は、なぜ……そんなことができるのだ?」
「なんだ? お前のヒュンケルはしないのか?」
「あ、当たり前だ! アイツは望んでこんなことはしない。いつもオレが無理やり……!」
脳裏に過ぎるのは
「お前の役に立てるのなら、オレのカラダなど好きにしてくれ」
そう言って静かに目を閉じて身を差し出す友の姿。こんな関係を望んだわけではなかったのに。

「ラーハルト」
名を呼ばれ顔を上げれば真っ直ぐこちらを見つめる未来のヒュンケル。その視線に射すくめられた。
「お前、ヒュンケルオレのことをどう思っているんだ? 体のいい性玩具か?」
「ち、違う‼」
「じゃあ、なんだ?」
「友だ」
「貴様は友とこんなことをするのか? なぜ、友なのにカラダの関係を持った?」
「それ、は……」
 言葉が出てこなかった。ヒュンケルに求めているものが友としての情と呼ぶにはいささか大きすぎる自覚はある。けれどそれを何と形容すべきか、よくわからなかった。ただ
「抱けば、アイツを……ヒュンケルを繋ぎ止められるかと思ったんだ」

 初めての交合は半ば事故のようなものだった。
 勇者を探す旅を始めて数ヶ月後、立ち寄った街の祭りの賑わいに誘われてお互いしこたま酒を飲んだ。それがまずかった。剥き出しの本心がとろりと溢れて、出る。
「ラーハルト、もうオレを置いていけ。足手まといだろう?」
 ヒュンケルが漏らした言葉に無性に腹が立って、気づくと強引に体を繋げていた。
「オレは誰も幸せにできない。お前の役に立てぬなら捨てて行ってくれ」
 友がその言葉を口にする度、胸の奥がちりちりと痛んだ。決して他者からの好意を、思慕を、受け入れないヒュンケル。今日は共にいられた。だが、明日は? いつまで側にいられるんだろうか? いつか己の視線の意味に気づいた時、ヒュンケルは眼の前から消えてしまうのではないか? その恐れは徐々にラーハルトの心を蝕む。ついには、ドロリと溶け出てしまった。

 行為の後、罵られることさえ覚悟して謝罪したというのにヒュンケルはこともなげにいうのだ。
「溜まっていたんだろう、オレで役に立てたなら良かった」
「お前が嫌でなければオレの体を使えばいい」
「他所で探す手間が省けるし、お互いで済ませるのが合理的だろう」

 眩暈がした。そんなつもりではなかったというのに。

 けれど
「少なくともカラダの関係があるうちは……アイツが“役に立てている”と思えるうちは、離れないだろうと」
 そう思って、それを飲み下したのだ。

「それから何度も抱いたが、いつも耐えるような顔をする。お前のように気持ちよさそうではない……」
 うなだれるラーハルトを静かに見つめ、ヒュンケルは盛大なため息をついた。
「まぁ、半分はヒュンケルオレの責任だな。お前も大概だが……おい、ラーハルト」
「なんだ?」
「教えてやろうか? ヒュンケルオレが気持ちよくなれる抱き方を」

 にこりとした微笑みは、聖母か淫魔か。
 いずれにせよ、ラーハルトには断る理由がなかった。

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【side Hynckel】

「じゃあ教えてやる、オレが気持ち良くなれる抱き方を」

 ヒュンケルはそう言って若い半人半魔の男、過去からやってきた二十代前半のラーハルトをソファに押し倒しその股間の上に自分の剥き出しの股を重ねて座った。ぴたりと性器同士が直に触れ合うとその熱さにほうっとため息が漏れる。こちらとて交わるのは久しぶりなのだ。存分に堪能したい。その思いから自然と腰が揺れた。
「っ! おい、ヒュンケルっ!」
 ちらりと見れば、眼下の若い男は情欲を抑えきれずその顔は火照りうっすらと上気している。けれどそれを悟られまいと目を逸らす姿はあまりにも新鮮で、ヒュンケルに小さな悪戯心が湧いた。もっと煽ってこの男の本心を暴きたい。そして、そうすれば恐らく初心なこの男も己が秘めているものが単なる友情ではないことを身を持って理解するだろう。
 己の名を呼んだ男にヒュンケルは微笑みかける。
「何だ? 年増のオレでは気乗りせんか?」
「っ……そうではない。が、本当に良いのか……ラーハルトオレとお前は恋仲なのだろう……その、ここのオレに悪いんじゃないか……」
「ふふ、妙なところで律儀なやつだな……好きだぞ、お前のそう言う所♡」
「だが……」
「心配するな。これは『練習』だ。昔のヒュンケルオレを気持ちよくするための……そのためならオレのラーハルトは怒りはしない。そんなに器の小さな男ではない」
 脳裏に恋人の顔が過ぎるが、過去の自分に抱かれたからと言って特段取り乱す様は考えられなかった。そんなことで揺らぐほど脆い絆ではないことは互いによくわかっている。
 けれど目の前の年若い男にはまだそれが理解できないのだろう。顔に出ている。
「まぁ、ヤりたくないと言うなら無理強いはしないが」
「そうではない! が、お前が下だ……上に乗られるのは性に合わん」
「随分、偉そうな生徒だな。どうせ挿れるのはお前なんだからいう通りにしろ」
 黙らせるようにグチュっと腰を揺らせば再び性器が擦れあう。と、ラーハルトからは小さな喘ぎが漏れた。一度、精を放って落ち着いた筈のペニスも再び硬度を増しており、口では文句を言いながらも興奮していることがわかる。それにヒュンケルもあてられる。触れ合う互いの性器をひとまとめに掌で包み込むとゆっくりと腰を揺らした。
「あ、ん、んっ……ラー♡」
「あっ、クッ! こらっ動くな……っ」
「可愛いな、ラーハルト♡」
「くそ! この後、善がり狂わせてやる」
「それはお手並拝見だな。まずはいつもみたいにやってみろ」
 どうぞ召し上がれ♡ とばかりにラーハルトの首に腕を回し胸を差し出す。が、ラーハルトはそれには目もくれずヒュンケルの尻の割れ目に手をかけた。
「おい、いきなり挿入か?」
「それ以外、どうしろというのだ」
 さも当然のように言う男に軽い目眩を覚えて、ヒュンケルははたと思い至る。そういえば、
「昔のお前は前戯が下手くそで、確かに痛かったな……」
「⁉」
 プライドの高い男である。己の腕前をコケにされれば黙ってはいられない。文句の一つも言ってやりたくなるものである。が、ラーハルトは言うのをグッと堪えた。その顔があまりにも悲しそうだったからか、慰めるようにヒュンケルが頬に唇を寄せる。
「まぁそんな顔をするな。未来のラーハルトは超絶に上手いから。お前もそのうちそうなるさ」
「腹が立つな……だが、オレが未熟なのは認めよう。で、どうすれば良いのだ?」
「そうだな、まずは胸を触ってみろ」
 男の手を取るとそれを自分の胸元に触れさせる。実の所、前戯で一番好きなのは胸だった。それも乳首が特に。そこを引っ張られたり捏ねくり回されるとジンと甘く痺れ腹の奥が疼いた。男らしくないその快楽は自分がラーハルトの雌なのだと、つがいなのだと強く意識させられる。アバンの使徒の長兄であることも元軍団長であることも関係のない「ただのヒュンケル」として理性も何もかも手放して委ねられる……そんな相手はラーハルトだけ。だからこそ、この若い雄にもそこを触ってほしかったし、そこを触ることで相手を雌にできることも知って欲しかった。そして年若い自分ヒュンケルを蕩けさせてほしい――
 そう思って手を導くと、男は戸惑いながらも両の中指の腹でそっと乳頭に触れる。
「優しく触ってくれ」
 ねだればラーハルトは神妙な顔で頷いた。
 小さなピンク色の突起。女の胸ほどはっきりとしてはいないそこを、それでもラーハルトは請われるまま丁寧に愛撫する。元来は自分が認めたものは丁重に扱う男なのだ。乳輪の周りをなぞったり先端を押し潰したりして刺激を与えるとまだそんなに固くなっていなかった乳首もぷっくりと立ち上がり艶かしく濃い色を帯びる。十分に腫れあがった乳首を親指と中指で摘み上げクリクリと回し人差し指でキュッと押さえると、ヒュンケルからは甘ったるい嬌声が漏れた。
「あっ……ラーハルト……」
「好いか?」
「好い。触れているのがお前だと思うとそれだけイきそうだ」
 その言葉にラーハルトがごくりと喉を鳴らす。興奮しているのはヒュンケルだけではなかった。乱れる姿に煽られる。もう一度ごくりと喉がなりその目は乳首に釘付けになった。その意図を正しく読み取りヒュンケルは再びねだるのだ。
「舐めてくれ、ラー」
 男は返事の代わりにその乳首にむしゃぶりついた。舌先で乳首の周りをなぞり軽く噛んだりちゅうっと吸い上げるとラーハルトの頭を抱えたヒュンケルの体がビクビクと震える。
「ん♡ん♡ラー♡♡イイっ……♡♡」
「胸を吸われて善がるとは、女みたいだな」
「んぅ♡ラーハルトのせいだからな……!」
「そんなにオレに吸われるのが好きか」
「好きだ。鋭い犬歯が乳首に当たって気持ちいい♡♡」
 本心だった。たとえいつのラーハルトであろうが彼に愛撫され抱かれるのはこの上もなく満たされる。確かに最初は快感を口にすることに抵抗があった。淫らで汚れた自分をさらけ出すのは恐ろしくひたすら唇をかみしめて苦痛にも快楽にも耐えた。けれど。

 あれはいつのことだったか、旅の途中、森の中で突然告げられた言葉。
「好きだ。愛している」
 他者からの恋慕の情など、受け付けるべきではないと思っていたはずなのになぜだかラーハルトの言葉だけはするりと胸の内に滑り込んで。ああ、それは望んでいた言葉なのだと、己の頬を伝う涙で気づいた。
「我慢するな」
「声を出せ」
「全部、見せてくれ」
 交わるたびに熱の籠った眼差しを向けてくる男は、固く閉じた蕾の花びらをそうっとめくるように一枚一枚、己の拒絶の皮を剝いでいった。そうして裸になった身と心を美しいと言って泣きそうな顔で笑うのだ。己と同じ、人の世にも魔物の世にもなじめぬ男。その男になら委ねてもよいような気がして 声を、出した。

「あっ……」
 突然、ペニスを握り込まれてヒュンケルは体がビクリと震える。
「何を考えている? ヒュンケル」
眼前の若い雄の姿はたやすく過去を呼び覚ます。
「ふふ、初めて好きだと言ってくれた時のことを思い出していた」
「オレが、か?」
「そうだ」
 お前以外いるはずがないだろう。こちらとしてはそういう思いだが、目の前の男は怪訝顔だ。
「まだ納得できないか、ラーハルト?」
 今、まさにこんなにも求めあっているのに?と問えば男はますます眉間のしわを深くした。
「これは…ただの肉欲かもしれんぞ?」
「往生際の悪い奴だな。お前が、ただの肉欲だけでオレと十年以上も共に過ごすわけがないだろ」
「十年以上…?そんなに長くお前はオレと一緒にいるのか?」
「そうだ。まぁもちろん四六時中、一緒ではないがな。お前はダイの頼みとなるとすぐに出かけていくし……」
「あ、当たり前だ。主君の命令が第一だ!」
 混乱しながらもそこだけは譲らない、と強く言う男にヒュンケルは苦笑いをする。全くもって本当に忠義に厚い男である。そしてそれこそがラーハルトを信頼できる理由だ。
「お前のそういう所、好きだぞ、ラーハルト」
「ヒュンケル、貴様……! か、簡単にそういうことを言うな!」
「ふふ、恥ずかしがるな。本当に可愛いな」
「恥ずかしがってなどおらん!」
「ならば怖気付いたか?」
 するり、とヒュンケルが腕を伸ばしラーハルトを抱きしめた。
「もっと触ってくれ、ラーハルト。もっとお前を感じたい」
 妖艶とも言える微笑みを浮かべて誘えば、若い男のタガは簡単に外れる。
「くそっ……! お前が煽ったんだからな!」
 男はヒュンケルを押し倒すと強引に足を開かせてその秘部を目掛け、たかぶった雄をいきなり押しつけた。
「うっ、あ! ラー、待って……!」
 ググッと押し込めば先端が少し奥に入ったものの、摩擦が酷くなかなか先には進まない。それを力任せに押し込もうとするラーハルトをヒュンケルは体を突っぱねるようにして制する。
「待てと言っている! ばかハルト!」
「お、お前が誘ったんだろう⁉」
「そうだが……いくらオレでもいきなりそんなデカいのは入らん! 前戯をしっかりしろと言っているだろう⁉ ほら、そこに香油がある。それでオレのここをほぐすんだ」
 グイッと足を自ら持ち上げ、ヒュンケルが己の秘部を指でくぱぁと開いて見せた。綺麗なピンク色にぬらぬらと光るそこは妖しくラーハルトを誘惑する。ぷつりと男の中で何かが切れる音がした。

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4 / 5


【side Larhart】

「んっ、う……ラーハルト……っ!」
 荒い吐息とぴちゃりという淫猥な水音が室内に響き渡る。窓の外には大きな満月。月灯が眼下にいる銀髪の男を美しく照らした。白い肢体と紅潮した頬のコントラストが得も言えぬ艶かしさを生み出している。
「ヒュンケル……」
 ラーハルトは己の行動が信じられなかった。ヒュンケルが開いて見せたのはただの排泄器官だと言うのに酷く己の雄を刺激して、気づくとそこにむしゃぶりついていた。ツゥと舌を差し入れて窄まりの縁をぐるりとなぞる。途端にビクビクとヒュンケルの体が反応した。
「あぅ……♡ ラーハルトぉ……♡」
 ナカをかき回すように舐める度に、赤く色づいた唇から惚けたような声がこぼれるのが堪らない。素直に快感を伝える姿も、ねだり甘える姿も見たことはない。いつも抱いている禁欲的なヒュンケルとは違う姿。もっと、聞きたい。もっと、知りたい。もっと、欲しい。もっと、奥に入りたい。もっと、もっと。
 ラーハルトはヒュンケルから口を離すと、香油を手に取り己のペニスに塗りたくった。そこは痛いほど膨れ上がっている。もう限界だった。
「っ! ヒュンケル、挿れるからな」
 声をかけたのはせめてもの理性。けれどそれが精一杯。これ以上、前戯など出来ない。そんな余裕はない。一刻も早くこの男を自分のものにしたい。しなければならない。脳裏に浮かぶのはそんな思いで。
 ラーハルトは今度こそ、ヒュンケルの秘部にペニスをゆっくりと挿入する。十分に解されてはいないだろうそこは、香油の滑りのおかげか、それでも男をやわらかく受け止めた。
「ラー、慌てる、なよ……あ♡ オレは……逃げたりしないぞ?」
「っは……! 嘘をつけ! ……いつも、お前は……どこかに消えてしまいそうだ……!」
 犯していると言うのに、それでも何処か余裕を見せているヒュンケルに苛立ちが募る。
 まるで求めているのはこちらだけのよう。するりと手をすり抜けてこぼれ落ちてしまいそうな男。こんなにも焦がれているのに。腹立ちまぎれに、鎖骨に、胸に、肩口に唇を寄せて嚙みつくように貪る。バチンと腰を強く打ち付けるとヒュンケルから悲鳴のような甲高い嬌声があがった。
「あうっ! ラーハルト! はげしっ……! あ、あ!」
 強すぎる刺激から逃れようとしたのかヒュンケルが体を捩るがラーハルトはそれも許さない。
「ヒュンケル! 逃がさんぞ。お前はオレの……!」
 再びガッチリと細くしなやかな腰を掴んで律動を繰り返すと呼応するようにヒュンケルの赤い唇からは甘い吐息がこぼれた。
「はっ……ん! あぅっ! 大丈夫だ……ん、あ、オレは逃げないから……!あ、ああっ‼」
「っ! クソッ……! ヒュンケルっ! は、ぁ……」
「んっ……! すごいっ……奥まで……! こんなの、あっ……‼」
「ヒュンケル……! ヒュンケル‼‼」
 目の前の痴態と絡み付く媚肉に頭がグラグラする。逃がさない。繋ぎ留めたい。離したくない。縋るような思いが肥大して、ラーハルトは欲に任せるまま腰を振った。パンパンと肉と肉がぶつかる音が、部屋中に響いてさらに男を高ぶらせる。
「ふぅ……! クッ! イくぞ、ヒュン、ケルっ……!」
「あ、あっ……ラー……ハルト……!」
 一層強く奥に腰を叩きつけると、まるで待っていたかのようにヒュンケルのナカはキュウゥッとペニスを包み込んで締め付け、たまらずラーハルトは奥に欲を吐き出す。と同時に、ヒュンケルの腹の上でも白濁が弾けた。
 達した体をどさりとベッドに横たえて、ヒュンケルを見ると潤んだ瞳にぶつかった。頬にはいくつか涙の筋があり、体の至る所に歯形がついていた。
 しまった、やりすぎだ。
 ラーハルトの胸には深い罪悪感が去来する。
 ヒュンケルを気持ち良くしてやる。そういう抱き方をするつもりだったのに、これではいつもと変わらないではないか。
 ツキリ。心がきしむ音。
 唇をかみしめ、ラーハルトは「すまない」と短く詫びてヒュンケルから離れようとするが、それを当のヒュンケルが押し止めた。
「ラー、ヤったらスグにさよならなんて情緒の無い奴だな。少しはオレをいたわれ」
「だが、こんな……乱暴をした男と一緒に居たくはないだろう? 結局、お前を気持ち良くしてやることはできなかった……」
「は? 気持ち良かったぞ? お前がしてくれることなら、何だって」
「バカな」
 あまりにまっ直ぐに見つめてくる瞳をラーハルトは直視できない。思わず顔を反らしてしまう。すると、白い手が伸びてそっとラーハルトの首に絡んだ。
「ラーハルト、キスしてくれ」
 とろりとした瞳で委ねてくる様は、心の奥底の甘い部分を刺激して、形容しがたい、熱いような苦しいような気持ちを呼び起こす。
「ヒュンケル……」
 目線が重なれば自然と唇も重なった。これまで乱暴にしか貪ったことのない、ヒュンケルの唇はしっとりと柔らかく、蜜をたっぷり含んだ果実を食んでいるかのようだった。舌を挿し込こめば、中はひたすらに甘くて、柔らかくて、その感触にクラクラする。甘露を味わうように唇を重ねればヒュンケルは満足げにほほ笑んだ。
「上手じゃないか、ラーハルト」
「だまれ」 
「ふふ、褒めてるんだ。素直に喜べ」
「本当に生意気な口だ」
 言い終わるや否やラーハルトはヒュンケルの唇を再び塞いだ。今度はそれに呼応するようにヒュンケルもうっとりと舌を絡める。その表情に、仕草に、ラーハルトは乾いた大地が水を吸いこむように満たされる。初めてだった。ヒュンケルとこんなにも心地よいキスをすることは。
「ん……らー。気持ちいい……なぁ、お前のヒュンケルにもキスしてやれよ?」
「あいつはこんなこと、望んでいない」
「それはお前の思い込みだろう。本人が言ってるんだぞ?」
「だが、ヒュンケルは……本心ではオレから離れたがっている。それくらいオレにもわかる」
「……臆病者め」
「なんだと……?」
臆病者とは穏やかではない。いくらヒュンケルでもそんな侮辱は許さない――と抗議の声を上げるつもりで開いた口を今度はヒュンケルに塞がれる。
「もう一度、聞くぞ、ラーハルト。お前、ヒュンケルオレのことをどう思っているんだ。本当にただの友なのか?こんなキスをするのに?もう逃げるな。いい加減認めたらどうだ?」
「そ、そういうお前こそ……!友のくせにこ、こんな……! 目を離せばどこかに消えてしまいそうなくせに……!」
「オレはラーハルトを愛している。望んでくれるならいつまでもそばにいる。オレの居場所はもうお前の隣しかないんだ」
 縋るような、諭すような、穏やかな目をしてヒュンケルがそっと囁いた。己の本心を易々と晒すことはしない男が口にした言葉――ヒュンケルの真心――は、ラーハルトに深く深く沁みこんで、胸の奥を熱くさせる。それはずっと欲していたものだった。
 この男はラーハルトオレを信じている。信じて、委ねているのだ。そんな関係が未来にはある。あるのだ。なんという希望だろう。なんという祝福だろう。ラーハルトは鼻の奥がツンとしてじわりと目頭が温かくなるのを感じた。
「ヒュンケルは本当にオレの傍に居るのか……?」
「ああ、命の続く限り。いつまでも。まぁ少なくともあと十年は共に居るから安心しろ」
 ヒュンケルの指がラーハルトの頬に触れる。優しく宥めるように雫のあとを撫でた。
「なぁ、お前は? ラーハルトの『本当』が知りたい」
「オレは――」
 最初は“それ”を何といえば良いのかわからなかった。友というには手に余るこの想い。けれど、今なら言える。
「オレは、ヒュンケルを愛している」
 まっすぐヒュンケルを見つめる瞳。それはもう逃げないことを決めた瞳。
「ようやく言えたな、ラーハルト。全く強情な奴だ」
「そう簡単にいくか!友だと思っていた相手なんだぞ」
「ふふ、初心な奴め♡」
 ヒュンケルはラーハルトの肩に手をかけ、耳元に唇を寄せた。
「こんなに激しいセックスは久しぶりだ。すごくよかった♡♡」
「あんな犯すようなのがいいのか?」
「いつもラーは優しく抱くから刺激的だったぞ♡ だが、まぁまだ慣れていないオレには確かに酷だな。ラーハルト、もう少しゆっくり丁寧に抱いてやれ、キスは上手いんだから。挿入するときは……」
「わかった、もう言うな。そんなに言うならもう一戦するぞ⁉」
 黙れ、という代わりにラーハルトはヒュンケルの唇を塞いだ。
 と、その時、ラーハルトの体が白く光り輝きだす。見ればつま先から体が消え始めている。元の世界に戻るのだと、直感した。
「ラーハルト……戻るんだな」
「ああ、そうみたいだ……また、会えるか?」
「十年後に会えるさ」
 まだ消えていないラーハルトの頬に手を伸ばしヒュンケルはその唇に己の唇を重ねた。
 そうして目を開けると、そこにはラーハルトが居た。
 この世界の、元のラーハルト。
「また、会えたな……ヒュンケル。ただいま」
「ああ、おかえりラーハルト」
 静かに、静かに見つめ合って二人はゆっくり唇を重ねた。



<10年後の世界 おしまい>

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【あとがき】
某絵描き様から「30代のラーヒュンがタイムスリップして20代のラーヒュンにセックス指南する話はどう?」と天啓を与えられまして、なんだぞれはとても美味しいぞ!!!!!とたぎる思いで書いた物語です。
途中、諸々あって書き上げるまでに時間がかかりましたがついに仕上がりました♡
えっちなおねえさんにヒュンケルはいかがでしたでしょうか??は大変楽しく書きましたが、皆様にも楽しんでいただけたでしょうか?よろしければご感想など頂けますと、嬉しいです。
このシリーズ(?)ご好評であれば、30代ラー✖️20代ヒュンのシーンも書きたいと思います!
頑なな20代ヒュンを大人なラーがトロトロにしちゃいます♡

それではここまでお読みいただき本当にありがとうございました!!!


 
 

 
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