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投稿日:2023年04月02日 10:48    文字数:2,800

隠す気の無い逢瀬

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某掲示板の二人。
喋り方が上手く掴めてないので捏造過多で進みます。
1 / 1

 他人が見れば乱雑に積まれたファイルや書類。
 しかし、使う本人には分かりやすく置かれているそれらの中心に、お世辞にも健康そうだ、とは言えない白衣の男が座っていた。
 採取したサンプルの検査結果、サイボーグの設計書、人体実験の実施課題。
 とっとっ、と指で机を叩く音をさせながら白衣の男、宝条は書類や液晶画面と睨めっこをしている。
 突如、知ることとなった『デビル因子』という存在。
 それと共に出された『デビル因子』と『ジェノバ細胞』の共同研究及び、運用の話。
「また、こんな暗い部屋に居るのか」
「研究者が研究所に居て何が悪い」
 不躾に、たった一度のノックと共に現れたのは、宝条とは正反対の体躯に恵まれた三島平八。
 共同の話を持ちかけてきた張本人だ。
 因子と細胞の研究がこの男にとってどのような利があるのか、宝条には興味が無い。
 ただ潤沢な資金と、日々研究に没頭できる環境が好ましかった。
「お主は外に出なさ過ぎる」
「私が出ずとも君が持ってくるだろう」
 平八から差し出されるメモリーカード。恐らくは新たな資料。
「……君の子供らの様子はどうだね?」
「目に見えた変化は無い。性交している様子はあるがな」
「よく分かるな」
「仁、孫は分かり易いな。いつもなら胸まで開けている上着を首元いっぱいまで閉める。息子は緩めようとしたネクタイを締め直し、ジャケットすら脱ごうとせん」
 よくもまあ詳しく観察しているものだ、と宝条は舌を巻く。
「そうじゃ、丁度顔を見に行くところでな。一緒に来い。記録を撮ってもらおう」
 椅子に座っていた宝条を、平八は肩に軽々と担ぎ上げる。
「ふざけるな! 降ろせ、この、ギガースがっ!」
「相変わらず軽い。少しは身体を動かしたらどうだ」

「さて。数週間、記録を撮った訳じゃが」
 平八の体躯に対して、あまりにも頼りない椅子がぎしりと鳴る。
 とはいえ、宝条が常にいるこの部屋にあるのはその一脚だけだ。
「そうだな……三島一八は性交があった次の日に、デビルへの変化が幾分か早くなった。風間仁は壁や床へ投げつけられた後の復帰速度が上がった。セフィロスとストライフはまだデータが少なすぎるな」
「ふむ」
「細胞の持ち主の特性が出ているのだとしたら面白い、が、この報告を君の上でしなければいけない理由は何だ」
 ぺらりと資料を捲る宝条は、頼りない椅子に座る平八の足の上で横向きになるようにして、座っていた。
「この部屋が狭いのと、お主が軽くて小さいからじゃ」
「……話にならないな」
 

 
 ────── 
 

 
「来てやったぞ、宝条」
 真っ直ぐ伸びた研究所の廊下。
 神羅カンパニーに三島財閥が出資する形で造られたこの場所で、パトロンである三島平八に、施設責任者でもある宝条は堂々と嫌な顔を晒していた。
「パトロン殿が来られるとは連絡を受けておりませんが」
「言うてないからのう。連絡して変に気を回されたくないのでな」
 あっけらかんと笑って言う平八に対して、盛大な溜め息を宝条は贈った。
「上に立つ者ならば、下への示しとしてそれなりの態度と行動をとって規範となって欲しいものです」
「儂の気が向いたら考えておこう。……ところで、その喋り方で通す気か?」
 宝条は、平八と話す為に止めていた歩みを再開させた。
「何処へ行く」
「新しい兵隊の稼働試験だ」
 軽い革靴の足音を消すかのように、重い足音が続いて鳴る。
「ほおう。それに儂は参加出来んのか?」
 喜色満面。それが見なくても分かる程に嬉しそうな声を上げる平八に、宝条が正反対の表情をする。
「出来ない、と言ったところで無理矢理参加する為に来たのだろう? 君は加減を知らないから試験日を教えるなと言い含ませていたというのに何処から嗅ぎつけてきた」
「ふっふ、優秀な部下に恵まれておってなぁ」
「……まあいい。元より君が満足出来なくては外には出せん。スクラップにするのだけは止めてくれ」
「お。今回は話が早いではないか」
 これで何回目だと思っている、という言葉を平八を睨む事で飲み込んだ。
「はあ……君のは三大欲求ではなく、戦闘欲を加えた四大欲求だな」
「ふはは、違いない。しかもここへ来れば全て解消出来るときたものだ。出資したのは正解だったのう」
「こちらとしては禁欲願いたいな。そういえば、いい加減スーツ等を持ち帰ってくれ。ここは君の別宅では無いんだ」
「研究の邪魔になるような物でもあるまい?」
「私の、邪魔に、なっているんだ」
 
「なあ。あの二人の会話おかしくないか?」
「そうか? きっと博士が接待の準備とかさせられてんだろ」
「うーん?」

 宝条の顔に青筋が立つ。
 周りの研究員達も訓練室をモニターしながら閉口していた。
「スクラップにするなと言っただろう!」
「いやいや、すまん。存外楽しくてな」
 宝条は室内に繋がるマイクに向かって怒りを露わにする。
 珍しい剣幕に周りは驚き戸惑っているのだが、的になっている本人は涼しい笑顔を浮かべていた。
「あの一体にどれだけの労力と金が掛かっていると思って……!」
「悪かったと言っておろう。金はまた出すし、データも取れたじゃろ?」
「……まあ、有用な数値は取れたが……はあ、もういい。回収班が入るから入れ替わりで出てくれ」
 ぷつりと宝条はマイクのスイッチを切る。
 そこからは普段の彼通りに戻ったのだが、それも平八が顔を出すまでだ。
「そこの。次はいつになる?」
 ぱたぱたと歩いていた若手の研究員を捕まえ、平八は次の予定を聞き出そうとする。
「え、えぇっと……ほ、宝条博士ぇー」
「無視していい。どうせ鼠に聞いて勝手に来る」
 手に持った資料から目を離さずに、助けを求める研究員にそう言い放つ。
「なんじゃ、鼠駆除はせんのか」
「したところで、イタチごっこなのは目に見えているだろう? いいからシャワーでも浴びてきたらどうかね」
「そうじゃな。それなら服を取りに行かんとなぁ?」
 ニヤリと笑う平八。
 言わんとする事を察した宝条は、盛大な溜め息を吐きながら持っていた資料を隣の人物に預け、この後の指示を出した。
「……損傷が酷いところと浅いところは特にチェックしておけ。他の時にも役立つかもしれん。……では、行きましょうか。パトロン殿」
「お主は不機嫌が分かりやすいのう」
「分かりやすくしているんですよ。部屋でふとした時に貴方の匂いがしてとても不愉快なのだから」
「はははっ、そうか、それは悪かった」

 連れ立って部屋を出ていく二人を研究員達は横目で見送る。
「やっぱ変だってぇ」
「止めろ止めろ。考えさせるな」
「後ろ盾と仲が良いのは費用の心配が無くて良いだろうが」
 そんな会話があったかどうかは、分からない。
 
 
 
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 しかし、使う本人には分かりやすく置かれているそれらの中心に、お世辞にも健康そうだ、とは言えない白衣の男が座っていた。
 採取したサンプルの検査結果、サイボーグの設計書、人体実験の実施課題。
 とっとっ、と指で机を叩く音をさせながら白衣の男、宝条は書類や液晶画面と睨めっこをしている。
 突如、知ることとなった『デビル因子』という存在。
 それと共に出された『デビル因子』と『ジェノバ細胞』の共同研究及び、運用の話。
「また、こんな暗い部屋に居るのか」
「研究者が研究所に居て何が悪い」
 不躾に、たった一度のノックと共に現れたのは、宝条とは正反対の体躯に恵まれた三島平八。
 共同の話を持ちかけてきた張本人だ。
 因子と細胞の研究がこの男にとってどのような利があるのか、宝条には興味が無い。
 ただ潤沢な資金と、日々研究に没頭できる環境が好ましかった。
「お主は外に出なさ過ぎる」
「私が出ずとも君が持ってくるだろう」
 平八から差し出されるメモリーカード。恐らくは新たな資料。
「……君の子供らの様子はどうだね?」
「目に見えた変化は無い。性交している様子はあるがな」
「よく分かるな」
「仁、孫は分かり易いな。いつもなら胸まで開けている上着を首元いっぱいまで閉める。息子は緩めようとしたネクタイを締め直し、ジャケットすら脱ごうとせん」
 よくもまあ詳しく観察しているものだ、と宝条は舌を巻く。
「そうじゃ、丁度顔を見に行くところでな。一緒に来い。記録を撮ってもらおう」
 椅子に座っていた宝条を、平八は肩に軽々と担ぎ上げる。
「ふざけるな! 降ろせ、この、ギガースがっ!」
「相変わらず軽い。少しは身体を動かしたらどうだ」

「さて。数週間、記録を撮った訳じゃが」
 平八の体躯に対して、あまりにも頼りない椅子がぎしりと鳴る。
 とはいえ、宝条が常にいるこの部屋にあるのはその一脚だけだ。
「そうだな……三島一八は性交があった次の日に、デビルへの変化が幾分か早くなった。風間仁は壁や床へ投げつけられた後の復帰速度が上がった。セフィロスとストライフはまだデータが少なすぎるな」
「ふむ」
「細胞の持ち主の特性が出ているのだとしたら面白い、が、この報告を君の上でしなければいけない理由は何だ」
 ぺらりと資料を捲る宝条は、頼りない椅子に座る平八の足の上で横向きになるようにして、座っていた。
「この部屋が狭いのと、お主が軽くて小さいからじゃ」
「……話にならないな」
 

 
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「来てやったぞ、宝条」
 真っ直ぐ伸びた研究所の廊下。
 神羅カンパニーに三島財閥が出資する形で造られたこの場所で、パトロンである三島平八に、施設責任者でもある宝条は堂々と嫌な顔を晒していた。
「パトロン殿が来られるとは連絡を受けておりませんが」
「言うてないからのう。連絡して変に気を回されたくないのでな」
 あっけらかんと笑って言う平八に対して、盛大な溜め息を宝条は贈った。
「上に立つ者ならば、下への示しとしてそれなりの態度と行動をとって規範となって欲しいものです」
「儂の気が向いたら考えておこう。……ところで、その喋り方で通す気か?」
 宝条は、平八と話す為に止めていた歩みを再開させた。
「何処へ行く」
「新しい兵隊の稼働試験だ」
 軽い革靴の足音を消すかのように、重い足音が続いて鳴る。
「ほおう。それに儂は参加出来んのか?」
 喜色満面。それが見なくても分かる程に嬉しそうな声を上げる平八に、宝条が正反対の表情をする。
「出来ない、と言ったところで無理矢理参加する為に来たのだろう? 君は加減を知らないから試験日を教えるなと言い含ませていたというのに何処から嗅ぎつけてきた」
「ふっふ、優秀な部下に恵まれておってなぁ」
「……まあいい。元より君が満足出来なくては外には出せん。スクラップにするのだけは止めてくれ」
「お。今回は話が早いではないか」
 これで何回目だと思っている、という言葉を平八を睨む事で飲み込んだ。
「はあ……君のは三大欲求ではなく、戦闘欲を加えた四大欲求だな」
「ふはは、違いない。しかもここへ来れば全て解消出来るときたものだ。出資したのは正解だったのう」
「こちらとしては禁欲願いたいな。そういえば、いい加減スーツ等を持ち帰ってくれ。ここは君の別宅では無いんだ」
「研究の邪魔になるような物でもあるまい?」
「私の、邪魔に、なっているんだ」
 
「なあ。あの二人の会話おかしくないか?」
「そうか? きっと博士が接待の準備とかさせられてんだろ」
「うーん?」

 宝条の顔に青筋が立つ。
 周りの研究員達も訓練室をモニターしながら閉口していた。
「スクラップにするなと言っただろう!」
「いやいや、すまん。存外楽しくてな」
 宝条は室内に繋がるマイクに向かって怒りを露わにする。
 珍しい剣幕に周りは驚き戸惑っているのだが、的になっている本人は涼しい笑顔を浮かべていた。
「あの一体にどれだけの労力と金が掛かっていると思って……!」
「悪かったと言っておろう。金はまた出すし、データも取れたじゃろ?」
「……まあ、有用な数値は取れたが……はあ、もういい。回収班が入るから入れ替わりで出てくれ」
 ぷつりと宝条はマイクのスイッチを切る。
 そこからは普段の彼通りに戻ったのだが、それも平八が顔を出すまでだ。
「そこの。次はいつになる?」
 ぱたぱたと歩いていた若手の研究員を捕まえ、平八は次の予定を聞き出そうとする。
「え、えぇっと……ほ、宝条博士ぇー」
「無視していい。どうせ鼠に聞いて勝手に来る」
 手に持った資料から目を離さずに、助けを求める研究員にそう言い放つ。
「なんじゃ、鼠駆除はせんのか」
「したところで、イタチごっこなのは目に見えているだろう? いいからシャワーでも浴びてきたらどうかね」
「そうじゃな。それなら服を取りに行かんとなぁ?」
 ニヤリと笑う平八。
 言わんとする事を察した宝条は、盛大な溜め息を吐きながら持っていた資料を隣の人物に預け、この後の指示を出した。
「……損傷が酷いところと浅いところは特にチェックしておけ。他の時にも役立つかもしれん。……では、行きましょうか。パトロン殿」
「お主は不機嫌が分かりやすいのう」
「分かりやすくしているんですよ。部屋でふとした時に貴方の匂いがしてとても不愉快なのだから」
「はははっ、そうか、それは悪かった」

 連れ立って部屋を出ていく二人を研究員達は横目で見送る。
「やっぱ変だってぇ」
「止めろ止めろ。考えさせるな」
「後ろ盾と仲が良いのは費用の心配が無くて良いだろうが」
 そんな会話があったかどうかは、分からない。
 
 
 
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