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pictBLand
作品ID2631231
投稿日2026年08月19日 19:07
文字数19,738字

カナリヤ 16

ケンカ仲直り編(魔法動物管理局出向編)2/2です⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝ 奪っちゃったー♪(古い) 相変わらず大から小まで嘘をついていますが、この話をしたいからワースくんの資格をでっち上げたんすよね。「そうだった、有資格者……!」って地団駄踏みそうなオーターさんが何気にお気に入りです笑 アギトさんの性格や使役竜含め、だいたい捏造しているので間違っても検証なさいませんよう。

◆◇◆◇◆



オーターのデスクには、殆ど使用されない内線がある。
なんせ、緊急の連絡は魔法局支給の端末に来るし、個人的な伝言うさぎに連絡を寄越すような猛者は弟子かワースくらいだ。内線番号も、魔法魔力管理局の人間ですらほぼ知らない。恐らく……おそらく、把握しているのは人材管理局の炎の神杖カルド・ゲヘナくらいだろう。そもそもオーターが席にいると確信して掛けられる人物は、カルドしかいない。逆に言えば、そんないわく付きの内線電話が鳴ると言うことは、「そういうこと」なのだ。オーターは、実弟からの連絡にあれだけ逡巡しながら通話に出た人物とはとても思えないような素早さでその着信を取る。

「どこですか?」

最早「何の要件か」など一切聞く気のないオーターは迷いなく頭の中で数日の出張予定を算段する。しかし、電話口のカルドの答えに眉を顰めた。

「水竜保護区?」
──ええ。……今朝の話が現実になって申し訳ないですが

特に申し訳なさそうには聞こえないカルドの声には淡々とした響きがあった。オーターはますます眉間の皺を深くする。

「アギトが抑え込めない事態が起きたのですか?」

悪いがかなり、現実的とは思えない。
アギト・タイロンは魔法動物の取り扱いに関して右に出るものはいない。神覚者のご多分に洩れず歳若くはあるが、使い魔としている「カバたん」が非常に強力で希少なドラゴンでもある。それを使役する以上、凡百のドラゴンは大抵アギトの元にこうべを垂れる。危険動物……とりわけ、竜種における意思疎通と調教の腕は歴代の神覚者、或いは魔法動物の専門家を以てしても、肩を並べる者はない。歴代最高峰と言って良いだろう。あれで危険生物全般に好かれやすい性質も持っているので、水竜保護区域など、寧ろ彼の独壇場の筈である。実のところ、ワースが行かずとも、水竜との意思疎通は測れた筈だ。禁書管理局への支援要請があったのも、半分はソフィナが論文の材料にワースが実践できる案件を探していたことと、不確定な事象ゆえにアギトが自分以外でドラゴンの扱いを任せられる部下を探していたに過ぎない。どちらかといえば、魔法生物管理局内で片が付きそうな話に、ソフィナがワースを捩じ込んだ、と言う方が実情には近かった。アギトは他局から人材の受け入れが可能なほど、余裕があった筈なのだ。

「……もしかして、ワースの身に何かありましたか」
──いえ、そういう報告は受けていません。というか、ワースくん由来の支援要請ではありません

ソフィナの言った「禁書使いに対する配慮」かと身構えたが、ピシャリと応じたカルドの見解は、概ね標準的なものであった。
水竜保護区の保護個体たちに暴走の兆候が見られ、市民に危険が及ぶ恐れがある。水竜出没可能性がある広域な市街地を護れる魔法使いを寄越して欲しい、と。まさしく魔法魔力管理局の所管である。こうなればオーターに否やはない。今からならまだ夜行の列車がまだ残っている筈である。

──出発前に一度、ツララの所に寄ってもらえますか?
「……?」
──ツララから、まだ開発中の移動用魔法道具の貸出をする、と

ライオの時には開発中のゴーグル貸付けを渋った人間とは思えない発言である。彼女にしては破格の申し出だ。怪訝そうなオーターに、カルドは笑う。

──「オーターの恋バナが楽しかったから」とのことです。水竜保護区は遠いですし、借りておいた方が良いですよ
「……分かりました」

あまりにも準備が良すぎる。カルドが事前にどこまで調整してからオーターに話を持って来ているのか、やや空恐ろしいところがあったが、コレが出来るのが人材管理局だろう。オーターは何も考えずにカルドの計画に乗ってやるとする。

「ワースはどうしていますか?その情報は来てますか?」
──アギトからの通信には追加情報はないですね。「やや危険な仕事を任せたが、禁書管理局が出した人材ならやり切れる範囲」とのこと
「…………相変わらず、ですね」

アギトは神覚者の中でもかなり信心深い部類だ。自ら苦諦に身を投じて神への信仰の実践を行う辺り、筋金入りである。その為か非常に純粋で、誇張や見栄は彼に通じない。言われたらそのように受け止め、そのように扱う。それを分かっているソフィナが伝えたワースの人材評価が誤っているとは思わないが、ワースが処理できるギリギリを攻めている可能性はあった。

「支援要請を受け付けます。状況が安定するまで、私は水竜保護区へ出張しますから、そのつもりで」

カルドに答えたその言葉は、そのままフロアにいる魔法魔力管理局員への申し送りだ。内線を切ったオーターはその足で魔法研究局へと足を運んだ。魔法研究局で待ち構えていたツララはカラカラと笑って「たとえ破損してもその残骸を持ち帰ること」を条件に、移動用の試作品魔法道具を手渡してくれた。



***



魔法局がある地点から半日以上を要する移動の幾つかをツララ貸出しの魔法道具でショートカットしたオーターは、それでも太陽が顔を出し人々が動き出した頃合いで、水竜保護区の麓の街に到着した。さすがに車内では仮眠を取ったが、だいぶ強行軍でまだ筋肉に強張りを感じる。カルドが寄越したアギトの支援要請に寄れば、保護区近くの村民たちを丸ごと避難させた市民会館がそのまま対策本部になっており、アギトも研究所職員たちもそこにいる。

「状況は」

想定よりもずっと早いオーターの到着に、しばし驚愕の表情でいたアギトは、しかし部下に記録を持って来させる。ワースからの定期連絡である。

「…………」

時間と地図上の地点、そして出会ったドラゴンの種類、逃げた先を克明に記すその記録上、いくらかの寄り道をしながら水竜の「王」がいる泉を目指したワースが未だその近くに到達できていないことを如実に示していた。オーターが最終の夜行便に乗ったくらいの時刻に、野営をするとの連絡が来ている。
あの子が、野営。……いや、泥魔法使いかつ禁書「リトルデビル」の支援があるのだから、然程の危険はないだろうが、心配は心配である。

「なんにせよ、オーター、貴方が素早く来てくれて助かりました。これでワースくんと合流できます」
「貴方が行くのですか?」

アギトは一瞬だけ虚をつかれた表情をして、しかし大きく頷いた。その表情を見て、オーターは自分が愚問をしたことに気が付いた。

「この中で、最もドラゴンの取り扱いに慣れていますから」
「…………」

そう言って、アギトは使い魔のカバたんの頭を撫でる。彼の考えは尤もだ。市街地という広範囲を守るためにオーターは呼ばれた。たしかに、砂魔法を行使するオーターは、それなりに意味のある結界を市街地と保護区の間に敷いて、単身でやってきたドラゴンを捕獲する程度のことは出来るだろう。その自信はある。禁書管理局長のソフィナは自分の統制下にいる禁書使いの処遇を気にするが、アギトにとっては最優先すべきは魔法生物の状況であって、魔法生物のケアに動いている局員の状況ではない。ワースの元に駆け付けたいと思うのはオーターの私情であって、この状況に相応しい振る舞いではないだろう。

「ワースくんには少々無理をさせましたが……彼は、危険生物取扱甲種の有資格者でしょう。水竜の扱いを任せられます」

オーターは一瞬頭を抱えたくなった。
そう言えばそうだった。ワースはイーストン魔法学校では複数の研究室に顔を出していた影響か、幾らかの難資格を取っている。普通に、学生の時分にドラゴンを含む危険幻想生物を飼育できるような資格を取得しているのはどうかと思う。これはあくまで教員側が持つべき資格で、学生が中等部の時分から持っているのは早熟過ぎないか。お陰でワースはそれなりの年次の職員よりもドラゴン育成経験がある新卒になってしまっている。……いや、いまオーターがジタバタ暴れたところでワースが取得した資格は泡のように消えたりはしないのだけど、気持ち的に。というか、今、年若い同僚の判断力に疑義を唱えた先輩のようになっている。そう言うつもりでは全くないのに。オーターは密かに、自分の至らなさにショックを受けた。

「……すみません、弟が心配で、出過ぎたことを言いました」
「ワース・ウォーカーくんはオーターさんの弟でしたか」
「…………、……彼は他家へ養子に行ってまして」

純粋に驚いた風情のアギトを見ながら、腹の奥がチクチクとする。いや、彼には全く悪意はないのだ。この状況、苗字が違うことに純粋な疑問を抱いているだけで、なんとも言い難いオーターの感情を逆撫でしている訳ではない。一応それなりに同僚と過ごしてきてオーターは理解出来ているが、アギトはこの感じで大丈夫なのか。「なるほど通りで苗字が違う、」と頷いている天然な後輩を前に妙な危機感を抱きながら、オーターもまた頷く。

「市街地の守りは任されました。……襲ってくる可能性があるのは水竜だけですか」

アギトや周囲の研究者に聞き取った限り、怒り狂っているらしい泉の「王」たる水竜が命令できる範囲のドラゴンはざっくりと「水竜保護区域のもの」であるらしい。それは水竜どころか地竜、風竜、その他の亜種が含まれる。まぁ、「王」と呼ばれるほどのドラゴンであればさもありなん、というところではある。一般にドラゴンは千年の時を生きると言われてはいるが、野生では火炎系の魔力を持つ魔法生物はそもそも水竜とは相性が悪く、近くにはいないから、火属性以外は全て、と言うことになる。この保護区における「泉」がそれだけ力のある水源であることの裏返しだろう。
ワースが野営した地点と、そこからドラゴンたちに奇襲されにくい地形を研究者たちが割り出す。一応彼らにもワースを「借りている人材」と思う程度の人の心がある事にオーターは少々安堵した。市街地の状況を確認し、速やかに砂魔法で街を保護する。実際の巡回をどうするか、街にいる魔法警備隊とドラゴン研究者たちと打ち合わせの為にオーターが席を外している間、ワースからの定期連絡が来たそうだ。まさしくアギトが街を出発しその連絡をワースにしようとしていたタイミングであったこと、「事態を引き起こしている水竜を捕らえた。」との内容に、魔法生物管理局の面々が混乱の渦に叩き込まれたのは太陽も揚々として登り始めた時分であった。

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北都
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