投稿日:2018年06月26日 22:11 文字数:3,750
My attendant planets 〜宵の明星・後日談(前)
ステキ数は非公開です
前章「宵の明星」の後日談になります。短編ではありますが、次章への繋ぎでもあります。
※こちらは試し読み公開になります。
「My attendant planets」は全文無料公開を終了しました。ありがとうございました!
こちらの続きは「第三巻」に収録されております。
ちょっとお知らせ。
共同の作者である桜桃愛さんが、本編の裏話的な4コマ漫画をちょっとずつ描いて下さっております!
本編とは少々シチュエーションが違っていたりもしますが、軽い導入として是非ご覧戴けましたら!!
キミホシアカウントのTwitterの方で不定期掲載しております。掲載済みのものはモーメントとしてまとめてあります。
モーメントはこちら→ https://twitter.com/i/moments/1008733754452398080
尚、Twitterの方では愛さん、縹両者のイラストや小ネタ漫画なども気紛れにUPしたりしておりますので、よろしければこの機会にフォローしていただければ嬉しいです!
Teitter → https://twitter.com/kimihoshi_hnd
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◇◆◇
幸いにも、この年梅雨入り宣言は遅かった。
たなびく雲は青空のほとんどを薄く覆っているが、どうやら雨粒が落ちてくる心配はなさそうだ。
整備された駅前ロータリーだが、緑で染まった山は目前。
行楽シーズンなど特に考慮しなくても差し支え無い、熟年客は相変わらず多い。むしろ暑くも無く寒くも無いこの時期は、体力にさほど自信の無い者がトレッキングをするのに最適とも言える。
そんな中、場の大半を占める客より断然若い…少年はひとりで、改札を出た。
肩に掛かったディバッグの紐を握る。
「…やっぱり。一回だけでも会いたいもん…な」
一人で来るな、と言われた。危険が解消したのではないからと。
しかし彼はどうしても、自分の為に傷を負った相手を労いたかったのだ。ただ、待っているよりも自ら赴いて…。
*
桜街の慈光院。本堂の脇に建った自宅へ戻るなり、慈玄はばったりと倒れ込んだ。
帰るまではと、それなりに気を張っていたらしい。「人型を保つだけで精一杯」というのは、誇張でもなんでもなかった。
「…大丈夫?!」
慌てて駆け寄った和宏に、大きな掌がひらひらと振られて無事を伝える。
「何、ちっと疲れただけだ。寝てりゃあなんとかなる。法要はずらして貰ったし、どうやら檀家に死人も出てねぇようだしな」
結局二日も寺を空けてしまったのだから、そのあたりの調整はしたのだろう。
そういえばと自分の格好を確認した和宏も、遠出から帰還したとは思えない制服姿だ。
「…とにかく、布団敷くし。無理しないで寝てろよ?」
「あぁ、悪ぃな。そうさせて貰う」
和宏が床を用意すると、気怠げに立ち上がった慈玄は手を引かれ、そちらに移動する。着替えもせず横になり、直ぐさま寝息を立て始めた。
投げ出された手を、少年の手がそろそろと拾う。そのまま、ぎゅっと握りしめ。
「…お疲れさま。ごめんな?」
普段なら家に二人きりになれば、キスのひとつも迫られる。そんな暇さえ、今日は無かった。握った指には熱が籠もり、漏れる呼吸もやや荒い。
天狗が風邪をひくことは無いだろうが、見た目の状態はそれに近い。
閉じた慈玄の瞼に、和宏はそっと唇で触れた。
難事に立ち向かう決意はしたものの、一緒に居ると誓った相手のこんな状況を目の当たりにしてはやはり不安が募る。
人間である自分は、所詮我が儘を通しただけで何の手出しも出来ないのでは無いかと。
情けない、と和宏は思う。そして、己の判断は間違ってはいなかっただろうかと同じ問いを頭に過ぎらせていた。
誰も君を責めはしないと、慈海は言った。慈玄だって今更離れるなどと言えば、本気で引き止めるに違いない。
それでも、先行きの見えない今が和宏には気がかりだった。もう一人…力を摩耗して消えた、一見軽薄に見える茶髪の天狗のことも。
「…起きたら、お粥でも作ってやるな」
泣きそうに笑って、聞こえていない言葉を和宏は慈玄にかけた。
翌朝から、見掛けだけは日常に戻った。
前日夕方から眠っていた慈玄も目を覚ました。まだ身体は重そうであったが。
和宏は登校し、昼寝を交えつつも慈玄は寺の仕事を少しずつ片付ける。
ただ山から戻って後、二人が身体を重ねることはまだ出来ずにいた。そうは言っても情愛で結ばれた関係、「される」のが当たり前になっていた和宏にすれば若干の淋しさを覚えたし、逆に慈玄にしても相手の心境を慮って触れられずにいるのは口惜しくもあった。
「お前達の住む街には、根の深い闇がある」
中峰の不吉な予言は、未だその正体が知れない。妖力の落ちた慈玄が、出来る範囲で探ってみても、僅かな異変さえ感じ取れずにいた。
街の様子は、以前同様穏やかで静かだ。高台である門の外から眺めても、微かな靄さえ見当たらない。
向こうの出方が見えるまでは、対処の施しようがないのに苛立つ。そんな気持ちは、愛する少年の前ではおくびにも出さぬとも。
一見平和な数日が過ぎた後、慈海が寺を訪れた。
幸いにも、この年梅雨入り宣言は遅かった。
たなびく雲は青空のほとんどを薄く覆っているが、どうやら雨粒が落ちてくる心配はなさそうだ。
整備された駅前ロータリーだが、緑で染まった山は目前。
行楽シーズンなど特に考慮しなくても差し支え無い、熟年客は相変わらず多い。むしろ暑くも無く寒くも無いこの時期は、体力にさほど自信の無い者がトレッキングをするのに最適とも言える。
そんな中、場の大半を占める客より断然若い…少年はひとりで、改札を出た。
肩に掛かったディバッグの紐を握る。
「…やっぱり。一回だけでも会いたいもん…な」
一人で来るな、と言われた。危険が解消したのではないからと。
しかし彼はどうしても、自分の為に傷を負った相手を労いたかったのだ。ただ、待っているよりも自ら赴いて…。
*
桜街の慈光院。本堂の脇に建った自宅へ戻るなり、慈玄はばったりと倒れ込んだ。
帰るまではと、それなりに気を張っていたらしい。「人型を保つだけで精一杯」というのは、誇張でもなんでもなかった。
「…大丈夫?!」
慌てて駆け寄った和宏に、大きな掌がひらひらと振られて無事を伝える。
「何、ちっと疲れただけだ。寝てりゃあなんとかなる。法要はずらして貰ったし、どうやら檀家に死人も出てねぇようだしな」
結局二日も寺を空けてしまったのだから、そのあたりの調整はしたのだろう。
そういえばと自分の格好を確認した和宏も、遠出から帰還したとは思えない制服姿だ。
「…とにかく、布団敷くし。無理しないで寝てろよ?」
「あぁ、悪ぃな。そうさせて貰う」
和宏が床を用意すると、気怠げに立ち上がった慈玄は手を引かれ、そちらに移動する。着替えもせず横になり、直ぐさま寝息を立て始めた。
投げ出された手を、少年の手がそろそろと拾う。そのまま、ぎゅっと握りしめ。
「…お疲れさま。ごめんな?」
普段なら家に二人きりになれば、キスのひとつも迫られる。そんな暇さえ、今日は無かった。握った指には熱が籠もり、漏れる呼吸もやや荒い。
天狗が風邪をひくことは無いだろうが、見た目の状態はそれに近い。
閉じた慈玄の瞼に、和宏はそっと唇で触れた。
難事に立ち向かう決意はしたものの、一緒に居ると誓った相手のこんな状況を目の当たりにしてはやはり不安が募る。
人間である自分は、所詮我が儘を通しただけで何の手出しも出来ないのでは無いかと。
情けない、と和宏は思う。そして、己の判断は間違ってはいなかっただろうかと同じ問いを頭に過ぎらせていた。
誰も君を責めはしないと、慈海は言った。慈玄だって今更離れるなどと言えば、本気で引き止めるに違いない。
それでも、先行きの見えない今が和宏には気がかりだった。もう一人…力を摩耗して消えた、一見軽薄に見える茶髪の天狗のことも。
「…起きたら、お粥でも作ってやるな」
泣きそうに笑って、聞こえていない言葉を和宏は慈玄にかけた。
翌朝から、見掛けだけは日常に戻った。
前日夕方から眠っていた慈玄も目を覚ました。まだ身体は重そうであったが。
和宏は登校し、昼寝を交えつつも慈玄は寺の仕事を少しずつ片付ける。
ただ山から戻って後、二人が身体を重ねることはまだ出来ずにいた。そうは言っても情愛で結ばれた関係、「される」のが当たり前になっていた和宏にすれば若干の淋しさを覚えたし、逆に慈玄にしても相手の心境を慮って触れられずにいるのは口惜しくもあった。
「お前達の住む街には、根の深い闇がある」
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是非、コメントを投稿して頂き、皆様と共にBLを愛する場所としてpictBLandを盛り上げていければと思います。
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