投稿日:2018年12月16日 01:56 文字数:3,457
鯰尾奇譚13 あまり強く無い鯰尾の話 番外編2
ステキ数は非公開です
番外編の続きです。シリーズ名変えてどんな話か少し分かりやすくなった気がする。
ちなみに次回ようやく鶴鯰くっつきます。やれやれ。また書けたら上げます。
ちなみに次回ようやく鶴鯰くっつきます。やれやれ。また書けたら上げます。
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余り強く無い鯰尾のいる本丸 番外編2
「ただいまー、ねえ、主いますか?お部屋かな?」
春。鶴丸と街から戻るなり、鯰尾はキョロキョロと辺りを見回した。
鯰尾は鶴丸の着物をかぶっている。
たたた、と近侍部屋に続く廊下を走る。
「こら、走るなよ」
鯰尾はかくれんぼのおかげで、本丸では自由に動けるようになった。
まあ、何かに夢中になっていると柱にぶつかったりはするが。
手さぐりしつつ、壁をさわりながらなら大丈夫だ。
「はぁい!」
返事は帰って来るが、本人は帰ってこない。
「やれやれ」
鶴丸は苦笑し、後を追った。
「そう言うわけなんですけど、主さん!たまに電話つかっても良いですか?」
「ああ。まあ良いぞ」
主が言った。
主はすっかり鯰尾に甘くなった。それを言うなら他の刀剣達も、まるで孫のように可愛がっている。
「ありがとうございます!」
この声を聞くとなんでも許せてしまう。
それにこの鯰尾はかなり素直で頑張り屋だった。向こう見ずな所は相変わらずだが、そこが手がかかってさらに可愛い。
今はなぜか鶴丸の上着をかぶっている。
「どうしたんだその上着」
「ああ、街で小雨が降ってな。しかし最近雨が多いな」
鶴丸が言った。
「何だろうな。まあ街は今春だから、そのせいかもな……」
主は一人呟いた。
「鶴丸さん、上着」
鯰尾が上着を脱いで渡した。
「ねえ鶴丸さん、許可も出たし早速電話しましょう。あ、使い方は?」
鯰尾は連絡したくてしょうがないらしい。
「受話器とって、番号押すだけだ。鶴丸にやってもらえ」
「はぁい!行きましょう?」
「おいおい。落ち着けよ。一応、誰と付き合うかも報告だろう。なあ主、あちらには幽霊がいるらしいぜ」
鯰尾を眺めつつ、鶴丸は言った。
「……幽霊?」
主が首を傾げる。
「いやな、鯰尾が一振でいたんだが、その側に、今剣の幽霊がいたんだよ」
鶴丸は街で会った鯰尾と、彼が連れていた幽霊の今剣について話した。
「――って感じなんだが、交流しても大丈夫か?そもそも、君はあまり交流に積極的じゃなかったと思うが……?」
鶴丸が言うと、主はああ。と言った。
「うちは仕事がアレだからな。俺もこういう感じだし、今までしてこなかったんだが。……向こうが俺のガラの悪さを気にするんだよな。まあそういう事ももうそうないか……。しかしその本丸は気になるな」
主は少し考えて、そうだ。と呟いた。
「こんのすけ」
奥の座敷に声をかけると、一瞬でこんのすけが出てきた。
「はいっ!主様、なんでしょう?」
主はメモを貰った。
「ここの鯰尾がいる本丸なんだが。ちょっと特殊な案件かもしれない。幽霊刀剣がいるんだってよ。次の監査で、うちの誰かねじ込めるか?携帯番号しかないが……」
「では持ち主を特定し手配します!監査官は鶴丸様でよろしいですか?」
「ああ。それでいい」
「はっ」
シュッ!とこんのすけは奥へ戻った。
「相変わらず仕事が早いな」
鶴丸が言った。
「俺、こんちゃんと、あまり話した事ないです。姿も良くわからない」
鯰尾が言った。動きが素早い&式神だからか、霊視でも姿がよく見えないのだ。
主大好きなのこんのすけが廊下を走ると、とにかく早い。
「伝令中も、だいたいの形はとらえられるんですけど。早くって。長谷部さんよりすごいですよ。あ。それで、主。今から電話しても良いです……?」
鯰尾が心配そうに主を見る。
鯰尾自身は知らないようだが、この鯰尾は他の鯰尾と同じように、とても可愛らしい容貌をしている。
この鯰尾の場合、特に感情が出やすい。
……その目で見られると、断るのはしんどい。
鯰尾に自分が可愛いという自覚があればまだいいのだが……無自覚というのは恐ろしい。
「うっ。そうだな。……うーん。まあ調査に行けるなら、その後かな」
「それまでに、忘れられたら……?」
鯰尾がしょんぼりした。
「いや、さすがにソレはないだろ」
主は言った。目の見えない鯰尾、というのは向こうも驚いたはずだ。
「あ。そうだ主。いっそ、端末を買ってくれないか?」
鶴丸は言った。
「ん?」
「ほら、携帯式の。たまに見かけて、欲しいと思ってたんだ。まあ金はあるから許可だけで。鯰尾のおつかいに持たせてやりたい」
「……一人でおつかいか……」
主は暫く考えた。
鯰尾はまだ付き添いなしで外出したことはない。
色々心配なので、もう少し先だと思うが……最近調子も良さそうだしな……。
主は機械が苦手で、刀剣にも個人用の端末を持たせてこなかった。
長谷部やこんのすけがいれば事足りるのだが。本丸が広すぎて、たまに不便だと思う事もある。
おつかいとなれば確かにあった方が良いし、鯰尾は交流もしたいだろう。
――褒美みたいなもんかな。
主は膝を打った。
「主様!例の本丸の監査に、鶴丸様をねじ込めました!」
その時、シュッ、とこんのすけが報告した。
「よし、良くやった。端末、試しに買ってみるか。こんのすけ、個刀端末のカタログとかくれ」
「はい!」
用意の良いこんのすけが各種取り出した。
「……監査か。正体かくしておいて、後で驚かせるかな」
鶴丸は呟いた。
そうして皆が好きな端末を選んだ。鯰尾は簡単に扱える物にした。
選んだ後、鯰尾はこんのすけを呼んでみた。
「……ねえねえ、抱っこしていい?」
「……こんのすけを抱っこして良いのは主様だけです」
こんのすけが胸を反らせた。
「別にいいぞ」
「鯰尾様ーっ!」「わっ」
こんのすけがぱっと鯰尾の懐に飛び込んだ。
「わ、わわ?」
激しくしっぽを振り鯰尾の胸に体を擦り付ける。擦り付ける。くるくる回る。
鯰尾はかわいい、と言って喜んだ。こんのすけは鯰尾の顔を激しく舐めたりする。
「うわ、こらっ、触りすぎ!」
鯰尾が慌てた。こんのすけはコホン、と咳払いをして膝から下りた。
「失礼、はしゃぎすぎました。撫でたいときはいつでもお呼び下さい」
「やった!よろしくなー」
鯰尾が抱きしめるとこんのすけは、こんこん!と鳴いて鯰尾の口にキスをした。
こんのすけが、鶴丸をちらりと見た。
にやりと笑う――優越感のある表情を、鶴丸は確かに見た。
「……。ほどほどにな」
鶴丸は苦笑して言った。
「ただいまー、ねえ、主いますか?お部屋かな?」
春。鶴丸と街から戻るなり、鯰尾はキョロキョロと辺りを見回した。
鯰尾は鶴丸の着物をかぶっている。
たたた、と近侍部屋に続く廊下を走る。
「こら、走るなよ」
鯰尾はかくれんぼのおかげで、本丸では自由に動けるようになった。
まあ、何かに夢中になっていると柱にぶつかったりはするが。
手さぐりしつつ、壁をさわりながらなら大丈夫だ。
「はぁい!」
返事は帰って来るが、本人は帰ってこない。
「やれやれ」
鶴丸は苦笑し、後を追った。
「そう言うわけなんですけど、主さん!たまに電話つかっても良いですか?」
「ああ。まあ良いぞ」
主が言った。
主はすっかり鯰尾に甘くなった。それを言うなら他の刀剣達も、まるで孫のように可愛がっている。
「ありがとうございます!」
この声を聞くとなんでも許せてしまう。
それにこの鯰尾はかなり素直で頑張り屋だった。向こう見ずな所は相変わらずだが、そこが手がかかってさらに可愛い。
今はなぜか鶴丸の上着をかぶっている。
「どうしたんだその上着」
「ああ、街で小雨が降ってな。しかし最近雨が多いな」
鶴丸が言った。
「何だろうな。まあ街は今春だから、そのせいかもな……」
主は一人呟いた。
「鶴丸さん、上着」
鯰尾が上着を脱いで渡した。
「ねえ鶴丸さん、許可も出たし早速電話しましょう。あ、使い方は?」
鯰尾は連絡したくてしょうがないらしい。
「受話器とって、番号押すだけだ。鶴丸にやってもらえ」
「はぁい!行きましょう?」
「おいおい。落ち着けよ。一応、誰と付き合うかも報告だろう。なあ主、あちらには幽霊がいるらしいぜ」
鯰尾を眺めつつ、鶴丸は言った。
「……幽霊?」
主が首を傾げる。
「いやな、鯰尾が一振でいたんだが、その側に、今剣の幽霊がいたんだよ」
鶴丸は街で会った鯰尾と、彼が連れていた幽霊の今剣について話した。
「――って感じなんだが、交流しても大丈夫か?そもそも、君はあまり交流に積極的じゃなかったと思うが……?」
鶴丸が言うと、主はああ。と言った。
「うちは仕事がアレだからな。俺もこういう感じだし、今までしてこなかったんだが。……向こうが俺のガラの悪さを気にするんだよな。まあそういう事ももうそうないか……。しかしその本丸は気になるな」
主は少し考えて、そうだ。と呟いた。
「こんのすけ」
奥の座敷に声をかけると、一瞬でこんのすけが出てきた。
「はいっ!主様、なんでしょう?」
主はメモを貰った。
「ここの鯰尾がいる本丸なんだが。ちょっと特殊な案件かもしれない。幽霊刀剣がいるんだってよ。次の監査で、うちの誰かねじ込めるか?携帯番号しかないが……」
「では持ち主を特定し手配します!監査官は鶴丸様でよろしいですか?」
「ああ。それでいい」
「はっ」
シュッ!とこんのすけは奥へ戻った。
「相変わらず仕事が早いな」
鶴丸が言った。
「俺、こんちゃんと、あまり話した事ないです。姿も良くわからない」
鯰尾が言った。動きが素早い&式神だからか、霊視でも姿がよく見えないのだ。
主大好きなのこんのすけが廊下を走ると、とにかく早い。
「伝令中も、だいたいの形はとらえられるんですけど。早くって。長谷部さんよりすごいですよ。あ。それで、主。今から電話しても良いです……?」
鯰尾が心配そうに主を見る。
鯰尾自身は知らないようだが、この鯰尾は他の鯰尾と同じように、とても可愛らしい容貌をしている。
この鯰尾の場合、特に感情が出やすい。
……その目で見られると、断るのはしんどい。
鯰尾に自分が可愛いという自覚があればまだいいのだが……無自覚というのは恐ろしい。
「うっ。そうだな。……うーん。まあ調査に行けるなら、その後かな」
「それまでに、忘れられたら……?」
鯰尾がしょんぼりした。
「いや、さすがにソレはないだろ」
主は言った。目の見えない鯰尾、というのは向こうも驚いたはずだ。
「あ。そうだ主。いっそ、端末を買ってくれないか?」
鶴丸は言った。
「ん?」
「ほら、携帯式の。たまに見かけて、欲しいと思ってたんだ。まあ金はあるから許可だけで。鯰尾のおつかいに持たせてやりたい」
「……一人でおつかいか……」
主は暫く考えた。
鯰尾はまだ付き添いなしで外出したことはない。
色々心配なので、もう少し先だと思うが……最近調子も良さそうだしな……。
主は機械が苦手で、刀剣にも個人用の端末を持たせてこなかった。
長谷部やこんのすけがいれば事足りるのだが。本丸が広すぎて、たまに不便だと思う事もある。
おつかいとなれば確かにあった方が良いし、鯰尾は交流もしたいだろう。
――褒美みたいなもんかな。
主は膝を打った。
「主様!例の本丸の監査に、鶴丸様をねじ込めました!」
その時、シュッ、とこんのすけが報告した。
「よし、良くやった。端末、試しに買ってみるか。こんのすけ、個刀端末のカタログとかくれ」
「はい!」
用意の良いこんのすけが各種取り出した。
「……監査か。正体かくしておいて、後で驚かせるかな」
鶴丸は呟いた。
そうして皆が好きな端末を選んだ。鯰尾は簡単に扱える物にした。
選んだ後、鯰尾はこんのすけを呼んでみた。
「……ねえねえ、抱っこしていい?」
「……こんのすけを抱っこして良いのは主様だけです」
こんのすけが胸を反らせた。
「別にいいぞ」
「鯰尾様ーっ!」「わっ」
こんのすけがぱっと鯰尾の懐に飛び込んだ。
「わ、わわ?」
激しくしっぽを振り鯰尾の胸に体を擦り付ける。擦り付ける。くるくる回る。
鯰尾はかわいい、と言って喜んだ。こんのすけは鯰尾の顔を激しく舐めたりする。
「うわ、こらっ、触りすぎ!」
鯰尾が慌てた。こんのすけはコホン、と咳払いをして膝から下りた。
「失礼、はしゃぎすぎました。撫でたいときはいつでもお呼び下さい」
「やった!よろしくなー」
鯰尾が抱きしめるとこんのすけは、こんこん!と鳴いて鯰尾の口にキスをした。
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