sungen

お知らせ
思い出語りの修行編、続きをpixivで更新しています。
旅路③まで書きました。
鯰尾と今剣は完結しました(^^)pixivに完全版が投稿してあります。
刀剣は最近投稿がpixivメインになりつつありますのでそちらをご覧下さい。
こちらはバックアップとして置いておこうと思ってます。

ただいま鬼滅の刃やってます。のんびりお待ち下さい。同人誌作り始めました。
思い出語り続きは書けた時です。未定。二話分くらいは三日月さん視点の過去の三日鯰です。

誤字を見つけたらしばらくお待ちください。そのうち修正します。

いずれ作品をまとめたり、非公開にしたりするかもしれないので、ステキ数ブクマ数など集計していませんがステキ&ブクマは届いています(^^)ありがとうございます!

またそれぞれの本丸の話の続き書いていこうと思います。
いろいろな本丸のどうしようもない話だとシリーズ名長すぎたので、シリーズ名を鯰尾奇譚に変更しました。

よろしくお願いします。

妄想しすぎで恥ずかしいので、たまにフォロワー限定公開になっている作品があります。普通のフォローでも匿名フォローでも大丈夫です。sungenだったりさんげんだったりしますが、ただの気分です。

投稿日:2018年12月16日 01:56    文字数:3,457

鯰尾奇譚13 あまり強く無い鯰尾の話 番外編2 

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番外編の続きです。シリーズ名変えてどんな話か少し分かりやすくなった気がする。

ちなみに次回ようやく鶴鯰くっつきます。やれやれ。また書けたら上げます。
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余り強く無い鯰尾のいる本丸 番外編2

「ただいまー、ねえ、主いますか?お部屋かな?」
春。鶴丸と街から戻るなり、鯰尾はキョロキョロと辺りを見回した。
鯰尾は鶴丸の着物をかぶっている。

たたた、と近侍部屋に続く廊下を走る。
「こら、走るなよ」
鯰尾はかくれんぼのおかげで、本丸では自由に動けるようになった。
まあ、何かに夢中になっていると柱にぶつかったりはするが。
手さぐりしつつ、壁をさわりながらなら大丈夫だ。
「はぁい!」
返事は帰って来るが、本人は帰ってこない。
「やれやれ」
鶴丸は苦笑し、後を追った。

「そう言うわけなんですけど、主さん!たまに電話つかっても良いですか?」
「ああ。まあ良いぞ」
主が言った。
主はすっかり鯰尾に甘くなった。それを言うなら他の刀剣達も、まるで孫のように可愛がっている。
「ありがとうございます!」
この声を聞くとなんでも許せてしまう。
それにこの鯰尾はかなり素直で頑張り屋だった。向こう見ずな所は相変わらずだが、そこが手がかかってさらに可愛い。
今はなぜか鶴丸の上着をかぶっている。
「どうしたんだその上着」
「ああ、街で小雨が降ってな。しかし最近雨が多いな」
鶴丸が言った。
「何だろうな。まあ街は今春だから、そのせいかもな……」
主は一人呟いた。
「鶴丸さん、上着」
鯰尾が上着を脱いで渡した。

「ねえ鶴丸さん、許可も出たし早速電話しましょう。あ、使い方は?」
鯰尾は連絡したくてしょうがないらしい。
「受話器とって、番号押すだけだ。鶴丸にやってもらえ」
「はぁい!行きましょう?」
「おいおい。落ち着けよ。一応、誰と付き合うかも報告だろう。なあ主、あちらには幽霊がいるらしいぜ」
鯰尾を眺めつつ、鶴丸は言った。
「……幽霊?」
主が首を傾げる。
「いやな、鯰尾が一振でいたんだが、その側に、今剣の幽霊がいたんだよ」

鶴丸は街で会った鯰尾と、彼が連れていた幽霊の今剣について話した。

「――って感じなんだが、交流しても大丈夫か?そもそも、君はあまり交流に積極的じゃなかったと思うが……?」
鶴丸が言うと、主はああ。と言った。
「うちは仕事がアレだからな。俺もこういう感じだし、今までしてこなかったんだが。……向こうが俺のガラの悪さを気にするんだよな。まあそういう事ももうそうないか……。しかしその本丸は気になるな」
主は少し考えて、そうだ。と呟いた。

「こんのすけ」
奥の座敷に声をかけると、一瞬でこんのすけが出てきた。
「はいっ!主様、なんでしょう?」
主はメモを貰った。
「ここの鯰尾がいる本丸なんだが。ちょっと特殊な案件かもしれない。幽霊刀剣がいるんだってよ。次の監査で、うちの誰かねじ込めるか?携帯番号しかないが……」
「では持ち主を特定し手配します!監査官は鶴丸様でよろしいですか?」
「ああ。それでいい」
「はっ」
シュッ!とこんのすけは奥へ戻った。

「相変わらず仕事が早いな」
鶴丸が言った。
「俺、こんちゃんと、あまり話した事ないです。姿も良くわからない」
鯰尾が言った。動きが素早い&式神だからか、霊視でも姿がよく見えないのだ。
主大好きなのこんのすけが廊下を走ると、とにかく早い。
「伝令中も、だいたいの形はとらえられるんですけど。早くって。長谷部さんよりすごいですよ。あ。それで、主。今から電話しても良いです……?」
鯰尾が心配そうに主を見る。

鯰尾自身は知らないようだが、この鯰尾は他の鯰尾と同じように、とても可愛らしい容貌をしている。
この鯰尾の場合、特に感情が出やすい。
……その目で見られると、断るのはしんどい。
鯰尾に自分が可愛いという自覚があればまだいいのだが……無自覚というのは恐ろしい。

「うっ。そうだな。……うーん。まあ調査に行けるなら、その後かな」
「それまでに、忘れられたら……?」
鯰尾がしょんぼりした。
「いや、さすがにソレはないだろ」
主は言った。目の見えない鯰尾、というのは向こうも驚いたはずだ。

「あ。そうだ主。いっそ、端末を買ってくれないか?」
鶴丸は言った。
「ん?」
「ほら、携帯式の。たまに見かけて、欲しいと思ってたんだ。まあ金はあるから許可だけで。鯰尾のおつかいに持たせてやりたい」
「……一人でおつかいか……」
主は暫く考えた。

鯰尾はまだ付き添いなしで外出したことはない。
色々心配なので、もう少し先だと思うが……最近調子も良さそうだしな……。

主は機械が苦手で、刀剣にも個人用の端末を持たせてこなかった。
長谷部やこんのすけがいれば事足りるのだが。本丸が広すぎて、たまに不便だと思う事もある。
おつかいとなれば確かにあった方が良いし、鯰尾は交流もしたいだろう。
――褒美みたいなもんかな。
主は膝を打った。

「主様!例の本丸の監査に、鶴丸様をねじ込めました!」
その時、シュッ、とこんのすけが報告した。
「よし、良くやった。端末、試しに買ってみるか。こんのすけ、個刀端末のカタログとかくれ」
「はい!」
用意の良いこんのすけが各種取り出した。
「……監査か。正体かくしておいて、後で驚かせるかな」
鶴丸は呟いた。

そうして皆が好きな端末を選んだ。鯰尾は簡単に扱える物にした。

選んだ後、鯰尾はこんのすけを呼んでみた。
「……ねえねえ、抱っこしていい?」
「……こんのすけを抱っこして良いのは主様だけです」
こんのすけが胸を反らせた。
「別にいいぞ」
「鯰尾様ーっ!」「わっ」
こんのすけがぱっと鯰尾の懐に飛び込んだ。
「わ、わわ?」
激しくしっぽを振り鯰尾の胸に体を擦り付ける。擦り付ける。くるくる回る。
鯰尾はかわいい、と言って喜んだ。こんのすけは鯰尾の顔を激しく舐めたりする。
「うわ、こらっ、触りすぎ!」
鯰尾が慌てた。こんのすけはコホン、と咳払いをして膝から下りた。
「失礼、はしゃぎすぎました。撫でたいときはいつでもお呼び下さい」
「やった!よろしくなー」
鯰尾が抱きしめるとこんのすけは、こんこん!と鳴いて鯰尾の口にキスをした。
こんのすけが、鶴丸をちらりと見た。
にやりと笑う――優越感のある表情を、鶴丸は確かに見た。

「……。ほどほどにな」
鶴丸は苦笑して言った。

1 / 2
2 / 2


翌日。あっと言う間に端末は届き、まず鶴丸と鯰尾が近侍部屋で試した。
三つ登録できる連絡先は五件。主、本丸、骨喰、鶴丸、あちらの鯰尾を登録した。
一期一振は迷った末に外され、かなり落ち込んでいた。
鶴丸に教えられて主も挑戦したが、意外と簡単で拍子抜けした。

今、鶴丸は隣の部屋いる。
「もしもし、鶴丸さん、元気ですかー!?きこえますかー!?」
『ああ。元気だ。君、そんなに叫ばなくていい』
隣部屋同士で会話する。
この本丸はやたらでかい城だ。端末は大いに役に立つだろう。

「すごいですね、これ!」
鯰尾が目を輝かせた。主は目を細めた。
「皆に配ってきます!!」
鯰尾は箱を抱えてバーン!と障子にぶつかった。障子は派手な音を立てて外れた。
倒れる障子と一緒に鯰尾も転ぶ。
「あ、おい!」
主は慌てて鯰尾を起こした。
「手入れだな。おい、鶴丸。配っておいてくれ」
「なんだなんだ。おい大丈夫か?」
「はひ……。あっ、端末!無事!?」
「まあ、大丈夫だろ。配っておくから君は手入れだ」
「はぁい……障子が」
「やっておく」
「どうも~」
鯰尾はふらふら~と歩いて行った。

「ふっ」
鶴丸と主は顔を見合わせて、どちらともなく笑ってしまった。

鶴丸が笑いながら障子を直す。
「しかし、彼は落ち着きがないな。普通はもっと慎重になる物じゃないのか?」
「どうなんだろうなぁ……鶴丸、そういえば、会った鯰尾はどのくらいうちのと違ったか?いや同じか?」
「!!いや、それが君、おっと、すまんが。先に配ってくる、――っと」
鶴丸もぶつかりそうになったが、上手く避けた。

「全く。気を付けろよ~」「~ああ」
主は苦笑し、障子の具合を見た。鯰尾がぶつかった所に大きな穴が開いている。
しかもどうやったのか、一カ所。ちょうど……頭の上の方?にも穴がある。

「ここって、あれか?触角か?堅いのか?」
主は一人で笑った。

不具合のある、でも元気で明るい鯰尾。
……先輩のようには、ならないと思うが……。

「……他の本丸の鯰尾か。見てみたいなぁ」
主は呟いた。

〈おわり〉
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鯰尾奇譚13 あまり強く無い鯰尾の話 番外編2 
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余り強く無い鯰尾のいる本丸 番外編2

「ただいまー、ねえ、主いますか?お部屋かな?」
春。鶴丸と街から戻るなり、鯰尾はキョロキョロと辺りを見回した。
鯰尾は鶴丸の着物をかぶっている。

たたた、と近侍部屋に続く廊下を走る。
「こら、走るなよ」
鯰尾はかくれんぼのおかげで、本丸では自由に動けるようになった。
まあ、何かに夢中になっていると柱にぶつかったりはするが。
手さぐりしつつ、壁をさわりながらなら大丈夫だ。
「はぁい!」
返事は帰って来るが、本人は帰ってこない。
「やれやれ」
鶴丸は苦笑し、後を追った。

「そう言うわけなんですけど、主さん!たまに電話つかっても良いですか?」
「ああ。まあ良いぞ」
主が言った。
主はすっかり鯰尾に甘くなった。それを言うなら他の刀剣達も、まるで孫のように可愛がっている。
「ありがとうございます!」
この声を聞くとなんでも許せてしまう。
それにこの鯰尾はかなり素直で頑張り屋だった。向こう見ずな所は相変わらずだが、そこが手がかかってさらに可愛い。
今はなぜか鶴丸の上着をかぶっている。
「どうしたんだその上着」
「ああ、街で小雨が降ってな。しかし最近雨が多いな」
鶴丸が言った。
「何だろうな。まあ街は今春だから、そのせいかもな……」
主は一人呟いた。
「鶴丸さん、上着」
鯰尾が上着を脱いで渡した。

「ねえ鶴丸さん、許可も出たし早速電話しましょう。あ、使い方は?」
鯰尾は連絡したくてしょうがないらしい。
「受話器とって、番号押すだけだ。鶴丸にやってもらえ」
「はぁい!行きましょう?」
「おいおい。落ち着けよ。一応、誰と付き合うかも報告だろう。なあ主、あちらには幽霊がいるらしいぜ」
鯰尾を眺めつつ、鶴丸は言った。
「……幽霊?」
主が首を傾げる。
「いやな、鯰尾が一振でいたんだが、その側に、今剣の幽霊がいたんだよ」

鶴丸は街で会った鯰尾と、彼が連れていた幽霊の今剣について話した。

「――って感じなんだが、交流しても大丈夫か?そもそも、君はあまり交流に積極的じゃなかったと思うが……?」
鶴丸が言うと、主はああ。と言った。
「うちは仕事がアレだからな。俺もこういう感じだし、今までしてこなかったんだが。……向こうが俺のガラの悪さを気にするんだよな。まあそういう事ももうそうないか……。しかしその本丸は気になるな」
主は少し考えて、そうだ。と呟いた。

「こんのすけ」
奥の座敷に声をかけると、一瞬でこんのすけが出てきた。
「はいっ!主様、なんでしょう?」
主はメモを貰った。
「ここの鯰尾がいる本丸なんだが。ちょっと特殊な案件かもしれない。幽霊刀剣がいるんだってよ。次の監査で、うちの誰かねじ込めるか?携帯番号しかないが……」
「では持ち主を特定し手配します!監査官は鶴丸様でよろしいですか?」
「ああ。それでいい」
「はっ」
シュッ!とこんのすけは奥へ戻った。

「相変わらず仕事が早いな」
鶴丸が言った。
「俺、こんちゃんと、あまり話した事ないです。姿も良くわからない」
鯰尾が言った。動きが素早い&式神だからか、霊視でも姿がよく見えないのだ。
主大好きなのこんのすけが廊下を走ると、とにかく早い。
「伝令中も、だいたいの形はとらえられるんですけど。早くって。長谷部さんよりすごいですよ。あ。それで、主。今から電話しても良いです……?」
鯰尾が心配そうに主を見る。

鯰尾自身は知らないようだが、この鯰尾は他の鯰尾と同じように、とても可愛らしい容貌をしている。
この鯰尾の場合、特に感情が出やすい。
……その目で見られると、断るのはしんどい。
鯰尾に自分が可愛いという自覚があればまだいいのだが……無自覚というのは恐ろしい。

「うっ。そうだな。……うーん。まあ調査に行けるなら、その後かな」
「それまでに、忘れられたら……?」
鯰尾がしょんぼりした。
「いや、さすがにソレはないだろ」
主は言った。目の見えない鯰尾、というのは向こうも驚いたはずだ。

「あ。そうだ主。いっそ、端末を買ってくれないか?」
鶴丸は言った。
「ん?」
「ほら、携帯式の。たまに見かけて、欲しいと思ってたんだ。まあ金はあるから許可だけで。鯰尾のおつかいに持たせてやりたい」
「……一人でおつかいか……」
主は暫く考えた。

鯰尾はまだ付き添いなしで外出したことはない。
色々心配なので、もう少し先だと思うが……最近調子も良さそうだしな……。

主は機械が苦手で、刀剣にも個人用の端末を持たせてこなかった。
長谷部やこんのすけがいれば事足りるのだが。本丸が広すぎて、たまに不便だと思う事もある。
おつかいとなれば確かにあった方が良いし、鯰尾は交流もしたいだろう。
――褒美みたいなもんかな。
主は膝を打った。

「主様!例の本丸の監査に、鶴丸様をねじ込めました!」
その時、シュッ、とこんのすけが報告した。
「よし、良くやった。端末、試しに買ってみるか。こんのすけ、個刀端末のカタログとかくれ」
「はい!」
用意の良いこんのすけが各種取り出した。
「……監査か。正体かくしておいて、後で驚かせるかな」
鶴丸は呟いた。

そうして皆が好きな端末を選んだ。鯰尾は簡単に扱える物にした。

選んだ後、鯰尾はこんのすけを呼んでみた。
「……ねえねえ、抱っこしていい?」
「……こんのすけを抱っこして良いのは主様だけです」
こんのすけが胸を反らせた。
「別にいいぞ」
「鯰尾様ーっ!」「わっ」
こんのすけがぱっと鯰尾の懐に飛び込んだ。
「わ、わわ?」
激しくしっぽを振り鯰尾の胸に体を擦り付ける。擦り付ける。くるくる回る。
鯰尾はかわいい、と言って喜んだ。こんのすけは鯰尾の顔を激しく舐めたりする。
「うわ、こらっ、触りすぎ!」
鯰尾が慌てた。こんのすけはコホン、と咳払いをして膝から下りた。
「失礼、はしゃぎすぎました。撫でたいときはいつでもお呼び下さい」
「やった!よろしくなー」
鯰尾が抱きしめるとこんのすけは、こんこん!と鳴いて鯰尾の口にキスをした。
こんのすけが、鶴丸をちらりと見た。
にやりと笑う――優越感のある表情を、鶴丸は確かに見た。

「……。ほどほどにな」
鶴丸は苦笑して言った。

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翌日。あっと言う間に端末は届き、まず鶴丸と鯰尾が近侍部屋で試した。
三つ登録できる連絡先は五件。主、本丸、骨喰、鶴丸、あちらの鯰尾を登録した。
一期一振は迷った末に外され、かなり落ち込んでいた。
鶴丸に教えられて主も挑戦したが、意外と簡単で拍子抜けした。

今、鶴丸は隣の部屋いる。
「もしもし、鶴丸さん、元気ですかー!?きこえますかー!?」
『ああ。元気だ。君、そんなに叫ばなくていい』
隣部屋同士で会話する。
この本丸はやたらでかい城だ。端末は大いに役に立つだろう。

「すごいですね、これ!」
鯰尾が目を輝かせた。主は目を細めた。
「皆に配ってきます!!」
鯰尾は箱を抱えてバーン!と障子にぶつかった。障子は派手な音を立てて外れた。
倒れる障子と一緒に鯰尾も転ぶ。
「あ、おい!」
主は慌てて鯰尾を起こした。
「手入れだな。おい、鶴丸。配っておいてくれ」
「なんだなんだ。おい大丈夫か?」
「はひ……。あっ、端末!無事!?」
「まあ、大丈夫だろ。配っておくから君は手入れだ」
「はぁい……障子が」
「やっておく」
「どうも~」
鯰尾はふらふら~と歩いて行った。

「ふっ」
鶴丸と主は顔を見合わせて、どちらともなく笑ってしまった。

鶴丸が笑いながら障子を直す。
「しかし、彼は落ち着きがないな。普通はもっと慎重になる物じゃないのか?」
「どうなんだろうなぁ……鶴丸、そういえば、会った鯰尾はどのくらいうちのと違ったか?いや同じか?」
「!!いや、それが君、おっと、すまんが。先に配ってくる、――っと」
鶴丸もぶつかりそうになったが、上手く避けた。

「全く。気を付けろよ~」「~ああ」
主は苦笑し、障子の具合を見た。鯰尾がぶつかった所に大きな穴が開いている。
しかもどうやったのか、一カ所。ちょうど……頭の上の方?にも穴がある。

「ここって、あれか?触角か?堅いのか?」
主は一人で笑った。

不具合のある、でも元気で明るい鯰尾。
……先輩のようには、ならないと思うが……。

「……他の本丸の鯰尾か。見てみたいなぁ」
主は呟いた。

〈おわり〉
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また、そのステキ!が作者様の背中を押し、次の作品へと繋がっていくかもしれません。
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