篠川えすうじ

マンガ・絵と小説で活動中。
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※原則ゲームの123軸で書いております。
※小説サイトには元カレ・元カノの登場やポリアモリーなどが登場したりします。可能な限り注釈に書いていますが、ネタバレになる場合、話の本筋でない場合は言及しておりませんのでご了承ください。

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投稿日:2019年04月23日 11:27    文字数:1,835

【4/21新刊サンプル】「僕は何度でも君と恋に落ちる」

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なるほどくんが記憶障害になるお話です。
イベント当日朝まで原稿をやっていたため、アップするのが遅れてごめんなさい。

全28ページ、表紙のみオンデマンド印刷のコピー本、A5、300円になります。
またR18ですので、年齢のご確認にご協力ください。
1 / 1
目が覚めた。
隣に銀髪の青年がいる。
目鼻立ちが整っている。
誰だろう。
「成歩堂!起きたか!」
その青年は僕の顔を見て安堵の表情を浮かべる。
成歩堂?
「ナルホドウって何?」
そう言えば真っ青な顔をして青年はその場に崩れ落ちた。
暫くして看護師がミツルギさんしっかりしてください!と部屋に駆け込む。
ああ、ここって病室なんだ。
医者が来て、幾つか僕に質問し、これは……と言って、ミツルギさんこっちへと彼を引っ張っていった。
彼の名前はミツルギさんなのか。
親戚とかなのかな。
綺麗な人だ。

暫くしてその青年は僕の元にやってきた。
「君の名前はわかるかね」
「さっき医者にも聞かれただろ。僕、ナルホドウって言うんだよね?」
「そうだ、成歩堂龍一。音楽家のご両親が著名な作曲家の元に名付けられたのだよ」
「それで、僕はどうして記憶がない訳?それよりその両親は?フツー親が来るんじゃないのか?」
「それは……君のご両親は今ブルガリアで仕事をしているからだ。連絡はついたので、飛行機で向かっている。君は事故に巻き込まれたのだよ」
「ところで君は?僕の従兄弟、とか?」
そこでその青年は一瞬泣きそうな顔をした。
「……いや、君の……親友だよ」
しかし、その物言いには自分は引っ掛かった。
「あれ?でも親友って病室に立ち会い出来たっけ?あれ。どうしてこんなこと知ってるんだろう。出来ないよね?親戚だけだ。しかも親い」
彼は僕の目を見ないように、目線を足下に向けている。
「お兄さん、ミツルギって言うの?ミツルギは名字だよね。従兄弟ではないらしいし、親戚なら親戚って言う筈だ……だから」
「……やめてくれ」
消去法だ。難しくはない。
「君は……僕の配偶者?」
そう言うと彼は涙を流した。
堪えきれなかったようで、嗚咽に変わる。
そんな彼が可哀想に思えて、ベッドから身を乗り出して、彼を抱き締める。
「……早く気付かなくってごめんな」
確かに彼のことは美しい人だと思うし、大切しなくてはいけないという気持ちがあった。
これは記憶を無くす前の自分が彼に抱いていた気持ちそのものなんだろう。
僕は彼の頭にキスをした。


退院は午後には言い渡された。
体には異常がもう見受けられないかららしい。
「……記憶と言うものは不安定なものなので、取り戻す可能性もあるらしい。漢方も貰った」
「うん」
「家に帰ろう。車は駐車場に停めているから」
「わかったよ」
悪趣味って思わせるテカテカで真っ赤なスポーツカーに乗せられて、郊外へと走る。
丘を上って、高級住宅地らしきところを抜けて、ピンクの家の前で車は止まった。
車庫があり、そこに車を入れるためにバックする。
「ここだ」
「凄い……」
玄関を開けると、家そのものは広くは無かったが、玄関に飾られている絵画、坪、観葉植物、彫刻、様々な麗しいものがひしめいていて、感嘆せざるを得なかった。
「お金持ちなんだね」
「……男二人で子供もいない。君は弁護士だし、私も公務員とは言え専門職の検察官だ。こんなものだろう」
「そうなのかな?すげぇや……」
「ところで疲れているだろう。寝椅子がそこにある。それとも寝室の方が良いかな?」
「あ、確かに疲れたかも。寝ていい?」
「ああ、そこの階段を登れば二階の寝室になる。案内する」
そう言って彼は廊下の向こうにある階段を上っていく。
僕も後に続く。
ここだ、とミツルギはドアを開ける。
「……あれ?これダブルベッドじゃないよね?」
「それがどうした」
「二人で、寝ないのか?」
「そうするときもあるが、しないときも多い。仕事でお互い寝る時間がずれるから、お互い個別の寝室もあるのだ。これは君の寝室、と言うより自室だな。余り入ったことは無かったが……散らかっているな」
「僕、片付け苦手だったんだな……ごめん」
「良い。今度、掃除の者にさせるから」
「掃除も人にさせてるんだ……」
彼は目新しい部屋をキョロキョロ見渡す僕を置いて、布団をめくり、枕を叩く。
「シーツは新しい筈だ。ほら、さっさと寝ろ」
「添い寝は?」
「するか馬鹿者」
「あはは、ごめん」
「その、簡単な食事を用意するから、それまで休んでおけ」
「有難う。おやすみ」
甲斐甲斐しい豆な人なんだな、と思った。
彼が去った後に、布団を引き上げて思わず呟いた。
「僕って良い相手を選んだんだな……」
そして直ぐ様夢の世界へと旅立っていった。

<つづく>
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【4/21新刊サンプル】「僕は何度でも君と恋に落ちる」

キーワードタグ 裁きの庭  裁きの庭34  ナルミツ  成歩堂龍一×御剣怜侍  R18 
作品の説明 なるほどくんが記憶障害になるお話です。
イベント当日朝まで原稿をやっていたため、アップするのが遅れてごめんなさい。

全28ページ、表紙のみオンデマンド印刷のコピー本、A5、300円になります。
またR18ですので、年齢のご確認にご協力ください。
【4/21新刊サンプル】「僕は何度でも君と恋に落ちる」
1 / 1
目が覚めた。
隣に銀髪の青年がいる。
目鼻立ちが整っている。
誰だろう。
「成歩堂!起きたか!」
その青年は僕の顔を見て安堵の表情を浮かべる。
成歩堂?
「ナルホドウって何?」
そう言えば真っ青な顔をして青年はその場に崩れ落ちた。
暫くして看護師がミツルギさんしっかりしてください!と部屋に駆け込む。
ああ、ここって病室なんだ。
医者が来て、幾つか僕に質問し、これは……と言って、ミツルギさんこっちへと彼を引っ張っていった。
彼の名前はミツルギさんなのか。
親戚とかなのかな。
綺麗な人だ。

暫くしてその青年は僕の元にやってきた。
「君の名前はわかるかね」
「さっき医者にも聞かれただろ。僕、ナルホドウって言うんだよね?」
「そうだ、成歩堂龍一。音楽家のご両親が著名な作曲家の元に名付けられたのだよ」
「それで、僕はどうして記憶がない訳?それよりその両親は?フツー親が来るんじゃないのか?」
「それは……君のご両親は今ブルガリアで仕事をしているからだ。連絡はついたので、飛行機で向かっている。君は事故に巻き込まれたのだよ」
「ところで君は?僕の従兄弟、とか?」
そこでその青年は一瞬泣きそうな顔をした。
「……いや、君の……親友だよ」
しかし、その物言いには自分は引っ掛かった。
「あれ?でも親友って病室に立ち会い出来たっけ?あれ。どうしてこんなこと知ってるんだろう。出来ないよね?親戚だけだ。しかも親い」
彼は僕の目を見ないように、目線を足下に向けている。
「お兄さん、ミツルギって言うの?ミツルギは名字だよね。従兄弟ではないらしいし、親戚なら親戚って言う筈だ……だから」
「……やめてくれ」
消去法だ。難しくはない。
「君は……僕の配偶者?」
そう言うと彼は涙を流した。
堪えきれなかったようで、嗚咽に変わる。
そんな彼が可哀想に思えて、ベッドから身を乗り出して、彼を抱き締める。
「……早く気付かなくってごめんな」
確かに彼のことは美しい人だと思うし、大切しなくてはいけないという気持ちがあった。
これは記憶を無くす前の自分が彼に抱いていた気持ちそのものなんだろう。
僕は彼の頭にキスをした。


退院は午後には言い渡された。
体には異常がもう見受けられないかららしい。
「……記憶と言うものは不安定なものなので、取り戻す可能性もあるらしい。漢方も貰った」
「うん」
「家に帰ろう。車は駐車場に停めているから」
「わかったよ」
悪趣味って思わせるテカテカで真っ赤なスポーツカーに乗せられて、郊外へと走る。
丘を上って、高級住宅地らしきところを抜けて、ピンクの家の前で車は止まった。
車庫があり、そこに車を入れるためにバックする。
「ここだ」
「凄い……」
玄関を開けると、家そのものは広くは無かったが、玄関に飾られている絵画、坪、観葉植物、彫刻、様々な麗しいものがひしめいていて、感嘆せざるを得なかった。
「お金持ちなんだね」
「……男二人で子供もいない。君は弁護士だし、私も公務員とは言え専門職の検察官だ。こんなものだろう」
「そうなのかな?すげぇや……」
「ところで疲れているだろう。寝椅子がそこにある。それとも寝室の方が良いかな?」
「あ、確かに疲れたかも。寝ていい?」
「ああ、そこの階段を登れば二階の寝室になる。案内する」
そう言って彼は廊下の向こうにある階段を上っていく。
僕も後に続く。
ここだ、とミツルギはドアを開ける。
「……あれ?これダブルベッドじゃないよね?」
「それがどうした」
「二人で、寝ないのか?」
「そうするときもあるが、しないときも多い。仕事でお互い寝る時間がずれるから、お互い個別の寝室もあるのだ。これは君の寝室、と言うより自室だな。余り入ったことは無かったが……散らかっているな」
「僕、片付け苦手だったんだな……ごめん」
「良い。今度、掃除の者にさせるから」
「掃除も人にさせてるんだ……」
彼は目新しい部屋をキョロキョロ見渡す僕を置いて、布団をめくり、枕を叩く。
「シーツは新しい筈だ。ほら、さっさと寝ろ」
「添い寝は?」
「するか馬鹿者」
「あはは、ごめん」
「その、簡単な食事を用意するから、それまで休んでおけ」
「有難う。おやすみ」
甲斐甲斐しい豆な人なんだな、と思った。
彼が去った後に、布団を引き上げて思わず呟いた。
「僕って良い相手を選んだんだな……」
そして直ぐ様夢の世界へと旅立っていった。

<つづく>
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