sungen

お知らせ
思い出語りの修行編、続きをpixivで更新しています。
旅路③まで書きました。
鯰尾と今剣は完結しました(^^)pixivに完全版が投稿してあります。
刀剣は最近投稿がpixivメインになりつつありますのでそちらをご覧下さい。
こちらはバックアップとして置いておこうと思ってます。

ただいま鬼滅の刃やってます。のんびりお待ち下さい。同人誌作り始めました。
思い出語り続きは書けた時です。未定。二話分くらいは三日月さん視点の過去の三日鯰です。

誤字を見つけたらしばらくお待ちください。そのうち修正します。

いずれ作品をまとめたり、非公開にしたりするかもしれないので、ステキ数ブクマ数など集計していませんがステキ&ブクマは届いています(^^)ありがとうございます!

またそれぞれの本丸の話の続き書いていこうと思います。
いろいろな本丸のどうしようもない話だとシリーズ名長すぎたので、シリーズ名を鯰尾奇譚に変更しました。

よろしくお願いします。

妄想しすぎで恥ずかしいので、たまにフォロワー限定公開になっている作品があります。普通のフォローでも匿名フォローでも大丈夫です。sungenだったりさんげんだったりしますが、ただの気分です。

投稿日:2019年07月19日 15:31    文字数:3,513

思い出語り 夏⑩ ー旅路ー①

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ここから少しだけ三日月の話になります。鯰尾は少しお休み。
続きはまた書いたときにアップします。予定は未定です。
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思い出語り 夏⑩ ー旅路ー①

日も暮れた宿場町、その裏路地の片隅で二人の男が会話していた。
同じ宿の下働きであろう。湯を沸かす為の薪を運んでいる。

「おい。あの骨の化け物、隣の客達も見たってよ。向こうの宿も大騒ぎだ」
「何。すると旦那さん達の見間違えじゃあなかったのか?こええなぁ、迷惑だなぁ。お前は見たのか?」
「いいや。俺が見た時にはいなかった。だが今度は――大きな鬼も」

「そこの者」

そこにちょうど、一人の侍が通りかかった。
男達は固まった。

傘で顔を隠しているが、背丈が高い――。
ありふれた旅装束に、草履、脚絆。
棒を布切れで包み下げている。
それはもちろん刀だろう。気配が侍のそれだ。

「俺は今しがた着いた所なのだが」

「へ、へえ?」
「この宿に泊まっても良いか?」
どうやら客のようだ。男達は顔を見合わせた。
先程の会話は聞こえていなかったらしい。

「へえ、ですが、今日は、宿のそばを化け物がうろついていたとかで……。客が逃げていきましてね。うちには人っ子一人いねえんです、できれば他の宿に行かれた方が……」
「――化け物?それは大変だなぁ。どういうものだ?」
いやにのんびりした口調だ。
「骨の化け物と、鬼だそうで。あっしらは見て無いんですが」

その時、一人の女が戸口から顔を出した。二十半ばの女だった。
「――あんた達、何油売ってるの、危ないから早く入りなさい!戸を閉めて――」

「その人は?」
「お富さん」「お客さんですが、どうします?」
「……あんた、お侍さん?」

「ああ。そうだ」
「背丈はあるね。――お侍さんでいいかい、腕に自信はおありですか?」
女はその客を見た。宿には侍も多く泊まる。長物を持っているし、一目でそれと分かった。

「そうだなぁ。まだまだ、と言った所かな。故あって諸国を旅している。宿代はあるぞ」
客は懐を示した。
旅慣れているようだ。

客の正直な物言いに女は呆れたようだ。

「まだまだなのかい……、でも、宿探ししてるなら、今日一晩、泊まって行ってくれないかい?お代は半値でいいからさ。腕の立つやつが全部逃げたんだ。――それに、もう今じゃどこも一杯だよ。うちから出て行った客でさ」
女は苦笑した。
「それは大変だな。俺で良ければ泊まって良いか?」
「あー、助かるよ。おとっさんもおっかさんも寝込んじまって……、さ、どうぞ入って下さい。ああ、もちろん表からね。足を洗ってあげるよ。ほら、あんた達も、五助はおっとさんに達に伝えて、寝込んでる場合じゃ無いって言って」

女が言って、男達はへえ、と言って慌ただしく動き始める。

「こんな時だから、不自由させるかも知れないけど、半分だからね」
「あっはは。あいわかった」
客は鷹揚に笑い、女に連れられ表に回った。

「しっかし、なんで裏側を通って来たんだい?」
普通は旅籠の並ぶ、表の道を歩いてくるものだ。しかもこんな時間に。
「野良猫を追っていたら、道に迷ってしまってなぁ」
「はあ。そいつは難儀だったね、どうぞこしかけて下さいな」

客は椅子に座わった。
女は傘を取って長椅子に置いて、桶を用意して、振り返って――。ぽかんとした。

「まあ、こりゃなんだ?……」

「?どうかしたか」
客は小首を傾げた。

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客は同じ人間とは思えないほど整った顔立ちをしていた。
そういう場合は自然、もてなしにも熱が入る。

聞けばこの客は、剣術を磨くために旅をしているらしい。
そうなれば、先程までの不安も何処へやら。女将は逃げた料理番の代わりに腕を振るった。

「こんなものですみませんねぇ」
「お酒は?」
「遠慮する。化け物が出ては困るからな」
食事の間も、刀をさりげなく側に置いている。
「そうですね!」
お富はすっかり舞い上がっている。

「お富さん、ちょっとこっち」
そんなお富を一助と喜之助が呼び止めた。

「なんだい?」
「……いや、あの客、本当に人間で?」
「は?」
一助の言葉にお富はぽかんと口をあけた。
「まさか鬼が化けてるんじゃあ……」
お富は、あはは、と声を上げて笑った。
「何言ってるんだい。そんな訳無いって。見なよ、あの装束も草履も。全部、化けたにしては年季が入ってるし。そりゃちょっと見た事無いくらいの優男だけどさ――いかにも腕は立ちそうじゃないかい?」
「でくのぼう、かもしれませんよ」
一助が言った。
「いやいや、確かにあの御仁は強そうだ」
喜之助が言った。
「だろう。私の目に狂いは無いって。まあちょっと頼りなさそうだけどさ」
「……、まあ、そうですね」
一助も頷いた。

「それより、鬼だ。今日は危ないから、皆、この隣の部屋で寝るんだよ」
「危ないって、大げさな」

「でも……、本当に、恐いよ」

■    ■ ■

「失礼ですが、お侍さんのお名前は?すいません宿帳がまだでして」
喜之助が帳面を持って尋ねた。
「名前か。三郎という。近江の出だ」

主人も女将も、明らかに偽名だと思った。
こんな立派な侍には似つかわしくないと思ったのだ。
まあ、本当に三郎かもしれないが。名前の一部という可能性もある。
試しに土地の話題を振ってみたらすらすらと答えた。
のんびりとした話し方は京の訛りにも思えるが、近江なら京には近い。
その辺りの役人かもしれない。

「そうですか」
それ以上詮索はせずにいると、三郎から話しかけて来た。

「ところで、化け物が出たと聞いたが、見たのか?」
「――ええ、ええ、見ましたとも」
女将は状況を語った。

「近頃、この宿場町で、骨のお化けが出たって聞いてたんです。でも、そんなのデタラメだろうって――そういう話は、言っちゃあ何ですが、旅の話しで良くあることで……、でも三日前に、角の家で人が斬られたって聞いて。戸締まりには気を付けていたんです。そしたら」

宿の一室で悲鳴が聞こえ、夫婦が駆け付けると――。

そこは一階の部屋だったのだが。開け放たれた窓の外に骨の化け物が、浮いていた。
「ふむ。どのくらいいた?」
「百!……いえ、そんなにいなかったかな、五十くらい?」
「いや、二十か三十だろう?びゅうびゅう飛んで、……おおぉ」
思い出したら恐くなったらしい。
夫婦はしばし黙り込んでしまった。

「そうだ、鬼もいて……」「鬼がこう、大きな刀を持って……」
さらに震えながら鬼の風体を語った。
「こっちに入ってくる!って思ったら、急に、いなくなったんだよ!」

「ははは。それは客も逃げるなぁ」
三郎は笑った。

「――今、宿にいるのは男二人と、お主らと娘だけか?」
三郎が尋ねた。
「いえ、あと一人、孫がいます」「娘の子でして……まだ三つです」
「それは恐いだろう。今日はできれば男達も、皆、隣で寝ると良い。家人が固まっていた方が俺も動きやすい。このふすまを開けて寝よう」

この部屋は二間続きになっていて、守りやすい。
「そちらの入り口は箪笥でも置いて塞ごう、何、念の為だ」

何か来るというような口ぶりで、一層不安になった。
「あの、もし何かあったら……というか、来るんですか?」
「追い払って頂けるんですか、というか化け物相手に?」
「ははは。任せておけ。まあ……何事も無ければ良いが」
三郎が笑った。

■   ■ ■

夜半。三日月は目を開けた。

「やはり来たか」
もちろん寝入ってはいなかった。布団を跳ね、包みを剥がし太刀をかまえる。

「ひい!」
眠っていなかったのだろう。
夫が起きあがり、妻も起き上がり、他の者達を起こし皆で震え上がった。

「そこから動かぬように。すぐ終わる」
三日月はすとん、とふすまを閉め、廊下に出た。

「――仲間が消え焦ったか?」
気配は、短刀が三、脇差が一、打刀が二振。
見えはしないが。――動きが分かる。

三日月は微笑んだ。

「人と言うのも、中々にやるものだ」

■    ■ ■

切り結ぶ音、何かが斬れる音が聞こえたかと思ったら、しばらくして音がしなくなった。
しゅ、とふすまが開いた。

「ひいいいいいいいい!!!」
恐怖のままに叫ぶ。
「終わったぞ」

「……え」
顔を出したのは三郎だった。
古めかしい太刀を持っている。

「ば、ばけものは……」
お富がなんとか言った。

「倒した。実は先だって、大将を仕留めてきたところでな。あれが最後だ。もう心配はないだろう」

「へ、へえ……」
「心配なら三日ほど逗留しよう。半値でいいか?」
三郎は微笑んだ。

〈おわり〉
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思い出語り 夏⑩ ー旅路ー①
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思い出語り 夏⑩ ー旅路ー①

日も暮れた宿場町、その裏路地の片隅で二人の男が会話していた。
同じ宿の下働きであろう。湯を沸かす為の薪を運んでいる。

「おい。あの骨の化け物、隣の客達も見たってよ。向こうの宿も大騒ぎだ」
「何。すると旦那さん達の見間違えじゃあなかったのか?こええなぁ、迷惑だなぁ。お前は見たのか?」
「いいや。俺が見た時にはいなかった。だが今度は――大きな鬼も」

「そこの者」

そこにちょうど、一人の侍が通りかかった。
男達は固まった。

傘で顔を隠しているが、背丈が高い――。
ありふれた旅装束に、草履、脚絆。
棒を布切れで包み下げている。
それはもちろん刀だろう。気配が侍のそれだ。

「俺は今しがた着いた所なのだが」

「へ、へえ?」
「この宿に泊まっても良いか?」
どうやら客のようだ。男達は顔を見合わせた。
先程の会話は聞こえていなかったらしい。

「へえ、ですが、今日は、宿のそばを化け物がうろついていたとかで……。客が逃げていきましてね。うちには人っ子一人いねえんです、できれば他の宿に行かれた方が……」
「――化け物?それは大変だなぁ。どういうものだ?」
いやにのんびりした口調だ。
「骨の化け物と、鬼だそうで。あっしらは見て無いんですが」

その時、一人の女が戸口から顔を出した。二十半ばの女だった。
「――あんた達、何油売ってるの、危ないから早く入りなさい!戸を閉めて――」

「その人は?」
「お富さん」「お客さんですが、どうします?」
「……あんた、お侍さん?」

「ああ。そうだ」
「背丈はあるね。――お侍さんでいいかい、腕に自信はおありですか?」
女はその客を見た。宿には侍も多く泊まる。長物を持っているし、一目でそれと分かった。

「そうだなぁ。まだまだ、と言った所かな。故あって諸国を旅している。宿代はあるぞ」
客は懐を示した。
旅慣れているようだ。

客の正直な物言いに女は呆れたようだ。

「まだまだなのかい……、でも、宿探ししてるなら、今日一晩、泊まって行ってくれないかい?お代は半値でいいからさ。腕の立つやつが全部逃げたんだ。――それに、もう今じゃどこも一杯だよ。うちから出て行った客でさ」
女は苦笑した。
「それは大変だな。俺で良ければ泊まって良いか?」
「あー、助かるよ。おとっさんもおっかさんも寝込んじまって……、さ、どうぞ入って下さい。ああ、もちろん表からね。足を洗ってあげるよ。ほら、あんた達も、五助はおっとさんに達に伝えて、寝込んでる場合じゃ無いって言って」

女が言って、男達はへえ、と言って慌ただしく動き始める。

「こんな時だから、不自由させるかも知れないけど、半分だからね」
「あっはは。あいわかった」
客は鷹揚に笑い、女に連れられ表に回った。

「しっかし、なんで裏側を通って来たんだい?」
普通は旅籠の並ぶ、表の道を歩いてくるものだ。しかもこんな時間に。
「野良猫を追っていたら、道に迷ってしまってなぁ」
「はあ。そいつは難儀だったね、どうぞこしかけて下さいな」

客は椅子に座わった。
女は傘を取って長椅子に置いて、桶を用意して、振り返って――。ぽかんとした。

「まあ、こりゃなんだ?……」

「?どうかしたか」
客は小首を傾げた。

1 / 2
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客は同じ人間とは思えないほど整った顔立ちをしていた。
そういう場合は自然、もてなしにも熱が入る。

聞けばこの客は、剣術を磨くために旅をしているらしい。
そうなれば、先程までの不安も何処へやら。女将は逃げた料理番の代わりに腕を振るった。

「こんなものですみませんねぇ」
「お酒は?」
「遠慮する。化け物が出ては困るからな」
食事の間も、刀をさりげなく側に置いている。
「そうですね!」
お富はすっかり舞い上がっている。

「お富さん、ちょっとこっち」
そんなお富を一助と喜之助が呼び止めた。

「なんだい?」
「……いや、あの客、本当に人間で?」
「は?」
一助の言葉にお富はぽかんと口をあけた。
「まさか鬼が化けてるんじゃあ……」
お富は、あはは、と声を上げて笑った。
「何言ってるんだい。そんな訳無いって。見なよ、あの装束も草履も。全部、化けたにしては年季が入ってるし。そりゃちょっと見た事無いくらいの優男だけどさ――いかにも腕は立ちそうじゃないかい?」
「でくのぼう、かもしれませんよ」
一助が言った。
「いやいや、確かにあの御仁は強そうだ」
喜之助が言った。
「だろう。私の目に狂いは無いって。まあちょっと頼りなさそうだけどさ」
「……、まあ、そうですね」
一助も頷いた。

「それより、鬼だ。今日は危ないから、皆、この隣の部屋で寝るんだよ」
「危ないって、大げさな」

「でも……、本当に、恐いよ」

■    ■ ■

「失礼ですが、お侍さんのお名前は?すいません宿帳がまだでして」
喜之助が帳面を持って尋ねた。
「名前か。三郎という。近江の出だ」

主人も女将も、明らかに偽名だと思った。
こんな立派な侍には似つかわしくないと思ったのだ。
まあ、本当に三郎かもしれないが。名前の一部という可能性もある。
試しに土地の話題を振ってみたらすらすらと答えた。
のんびりとした話し方は京の訛りにも思えるが、近江なら京には近い。
その辺りの役人かもしれない。

「そうですか」
それ以上詮索はせずにいると、三郎から話しかけて来た。

「ところで、化け物が出たと聞いたが、見たのか?」
「――ええ、ええ、見ましたとも」
女将は状況を語った。

「近頃、この宿場町で、骨のお化けが出たって聞いてたんです。でも、そんなのデタラメだろうって――そういう話は、言っちゃあ何ですが、旅の話しで良くあることで……、でも三日前に、角の家で人が斬られたって聞いて。戸締まりには気を付けていたんです。そしたら」

宿の一室で悲鳴が聞こえ、夫婦が駆け付けると――。

そこは一階の部屋だったのだが。開け放たれた窓の外に骨の化け物が、浮いていた。
「ふむ。どのくらいいた?」
「百!……いえ、そんなにいなかったかな、五十くらい?」
「いや、二十か三十だろう?びゅうびゅう飛んで、……おおぉ」
思い出したら恐くなったらしい。
夫婦はしばし黙り込んでしまった。

「そうだ、鬼もいて……」「鬼がこう、大きな刀を持って……」
さらに震えながら鬼の風体を語った。
「こっちに入ってくる!って思ったら、急に、いなくなったんだよ!」

「ははは。それは客も逃げるなぁ」
三郎は笑った。

「――今、宿にいるのは男二人と、お主らと娘だけか?」
三郎が尋ねた。
「いえ、あと一人、孫がいます」「娘の子でして……まだ三つです」
「それは恐いだろう。今日はできれば男達も、皆、隣で寝ると良い。家人が固まっていた方が俺も動きやすい。このふすまを開けて寝よう」

この部屋は二間続きになっていて、守りやすい。
「そちらの入り口は箪笥でも置いて塞ごう、何、念の為だ」

何か来るというような口ぶりで、一層不安になった。
「あの、もし何かあったら……というか、来るんですか?」
「追い払って頂けるんですか、というか化け物相手に?」
「ははは。任せておけ。まあ……何事も無ければ良いが」
三郎が笑った。

■   ■ ■

夜半。三日月は目を開けた。

「やはり来たか」
もちろん寝入ってはいなかった。布団を跳ね、包みを剥がし太刀をかまえる。

「ひい!」
眠っていなかったのだろう。
夫が起きあがり、妻も起き上がり、他の者達を起こし皆で震え上がった。

「そこから動かぬように。すぐ終わる」
三日月はすとん、とふすまを閉め、廊下に出た。

「――仲間が消え焦ったか?」
気配は、短刀が三、脇差が一、打刀が二振。
見えはしないが。――動きが分かる。

三日月は微笑んだ。

「人と言うのも、中々にやるものだ」

■    ■ ■

切り結ぶ音、何かが斬れる音が聞こえたかと思ったら、しばらくして音がしなくなった。
しゅ、とふすまが開いた。

「ひいいいいいいいい!!!」
恐怖のままに叫ぶ。
「終わったぞ」

「……え」
顔を出したのは三郎だった。
古めかしい太刀を持っている。

「ば、ばけものは……」
お富がなんとか言った。

「倒した。実は先だって、大将を仕留めてきたところでな。あれが最後だ。もう心配はないだろう」

「へ、へえ……」
「心配なら三日ほど逗留しよう。半値でいいか?」
三郎は微笑んだ。

〈おわり〉
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