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スレッド作成日:2022年09月11日 03:19  / 最終更新日:2025年01月14日 19:24 

月菅短文ログスレ

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過去にアンケートやリクエストを受付け、作成した短文をまとめておくスレ月菅版。
新しいのも投稿するかもしれません。
 
  • らき
    ID:457850  スレッド管理人  | らき | 2022年09月11日 14:03

    #1rtごとに書く予定のない小説の一部分を書く(2018/09/17)
    ☆その1☆ 子ども時代月島×子ども時代菅原 ※過去捏造注意!
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    「けい、いっつもイチゴのばっかで飽きないの?」
     小学校1年から英語の授業があるなんて、さすがに勉強得意なボクでも普段から使ってない言葉なんて未知の世界。
     でも、勉強の後は必ずお母さんがケーキを出してくれるのでがんばれる。ただし、兄ちゃんと一緒にいる時だけだけど。
    「イチゴは特別だから」

     誕生日、クリスマス、そういうイベントの時だけは、勉強やら部活やらで忙しい兄ちゃんも、お母さんもお父さんもみんな一緒だ。イチゴの乗ったケーキを見るだけでうきうきする。大好きな家族が思い浮かぶ。
    「ほんっと、幸せそうに食べるよなぁ~」
    ちょっとちょうだい、と言って、チョコクリームがついたフォークでボクのケーキを取ろうとするから、
    「やめて! ほら、あげるから!」
    と、ボクが食べていたフォークで生クリームとスポンジ、特別にイチゴもつけて、兄ちゃんの口に突っ込んでやった。

     ――――あれ? 僕に勉強を教えてくれてたのって、兄ちゃんじゃない。では、いつも一緒にケーキを食べてた、彼はいったい誰だった?

    「月島ぁ、一口ちょーだい!」
     口に運びかけてた肉まんを、肩越しに後ろからぱくりと食い付かれた。
    「けいって……呼んでましたよね?」
    「ん?」
     僕は、彼のこと――――
    (こーし……兄ちゃん?)


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  • らき
    ID:457851  スレッド管理人  | らき | 2022年09月11日 14:06

    ☆その2☆ 子ども月島×おとな菅原 ※時空の歪み&職業捏造注意!
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     子ども相手の仕事をしているのに、実は子どもは苦手だった。
     その純真な瞳でじっとこっちを見上げられると、どうしても笑顔がひきつってしまう。これはどうしようもない。
     子どもは敏感だから、少しでも偽の笑顔だと笑顔を返してくれない。
     だけど、いつの頃からか「こーし先生、好き!」と耳打ちしてくる子や、いきなり腿の辺りに抱きついてきて「大好き!」と告白されることが多くなってきた。男女問わずだ。
     これは、もしかして天職ってやつだったのかな?

    「蛍くんも来い来い~」
     おいで~と集合をかければ、わーっと集まってくる保育園児たちの中で、一人だけ無表情でつまらなそうにしている子がいる。月島蛍くんだ。
     彼の笑顔だけは、一度も見たことがない。もしかして、俺の笑顔はまだどこかひきつっているんだろうか?

     どうしたもんか……と、子どもたちに囲まれてしゃがんだまま、少しだけ気を抜いていたら、
    「あー! しょうくん、ズルい!」
    という声と、唇にごつん、と勢いのいいキス。
    「えっ誰? しょうくん?」
     えへへーと笑う太陽のような表情の向こう側に、鬼の形相が重なって見えた。
    「すがわらっ、せんせいは! ボクんだ! しょうようあやまれ!」
    って、ええ!?
     ヒーローのように俺の正面に飛び込んで来たのは、なんと蛍くんだった。

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  • らき
    ID:457853  スレッド管理人  | らき | 2022年09月11日 14:17

    #1RTごとに書く予定のない小説の一部分を書く(その2)(2019/12/05)
    キスしないと出られない部屋に閉じ込められる。涼しい顔で額にキスしたけれど「唇にしてください」と部屋のシステムに怒られる。
    #今日の二人はなにしてる https://shindanmaker.com/831289
    『夢のまた夢』
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     どこにしてもいいんだろ? と独り言のように呟いて、座り込んでいた月島の額にちゅっと軽くキスをした。
    「……なんも変わらねぇ。なんでだよ、しただろ!」
    「唇にしてください」
    「……は!? え、月島、お前起きてんのかよ!?」
     ぐらぐらとその両肩を揺すってみても反応はない。

     部活帰り、こんなところに公園なんてあったっけ、と、見慣れない背の低い柵で囲まれた小さな空間は、夕暮れ時のオレンジの明かりの中で不思議な存在感を放っていた。
     今ここに俺たちが閉じ込められているのも、幹の太い木の横にある緑色のベンチに見慣れた背中が腰を下ろしているのを見付けて、こんな所で何してんだ? と、俺が声を掛けてしまったのが発端。
     ベンチに座っていたのは月島。両目を閉じて、首が少し前に項垂れていたので、こんなとこで寝てたら風邪引くぞ、と、その肩に手を置いた瞬間。
    「ここは、キスをしないと出られない部屋です。ここから出る為には、彼にキスをしてください」
    と、月島の口が、月島の声で言い放った。
    「……月島、お前、俺をからかってんのか?」
     聞き返しても、揺さぶっても、目の前の月島はただただ静かに息をしているだけ。はっと周りを見回すと、公園だと思って入った空間は真っ白い部屋に取って変わり、ドアも窓もなければ、緑色の木製ベンチは白いソファになって、そこに座っていた月島の体は、ソファのクッションに少しだけふわりと沈み込んだ。
     月島が魔法使いでもなければ、こんな芸当が出来る筈もない。夢であっても、ここでただ覚めるのを待っているなら行動あるのみ、と、意識のない人間相手に天の声の指示通り決行してみれば、先程の返答。月島の声と声帯を使っているが、本人の意思ではないらしい。
    (でも、唇って……)
     さすがにそれは、恥ずかしすぎた。
     月島は俺にとって、とても美しい存在だ。性格は最悪。人類全員が気に入らないのではないかというくらい、口を開けば嫌味の応酬。そんな時の顔つきも最悪。だのに、バレーに向き合う姿は真っ直ぐで、嫌なら辞めるのなんて簡単なのに、キツイ練習に吐き気で真っ青になりながらも自分を追い詰めてきた。
     影山にポジションを奪われるよりも、では何故レギュラーが自分ではなくて月島なのか、それに納得出来ずに悩んだ時期もある。結局は身長か。確かに俺がブロックに飛ぶより月島の方がセンスがある。そう、体つきではなくこれまでの努力でもなくセンスなのだ。1年でレギュラーを取った3人には、ベンチ組の俺達にはないセンスがあった。
    (なんでこんな時に、こんなこと)
     ソファに二の腕を乗せて、下から月島の寝顔を見ながら、その陶磁器のような頬に指先を伸ばす。
     日を追う事に月島の頭脳と精神は研ぎ澄まされ、半分機械になりかけているのでは、と思う程、今そこにある彼の顔は触れても冷たいのではないか。 
     静かに閉じられた両の瞳は、中にある眼球の分ふっくらと丸みを帯びていても動く様子もなく、薄茶の楕円形の眉と、植物の葉を思わせる睫毛のその先端は尖って固くても肉の部分はつるりと滑らかで、緩い癖毛は光に反射すると金色に光る。本当に人形のような、
    (綺麗だな)
     俺は月島の隣に乗り上げて、彼の意識がないのをいい事にその肌に指を伸ばす。ハープを弾くように睫毛に指を滑らせ、その眉、柔らかな前髪と、耳から頬を指先と手のひらで撫で、ああ、何かが足りないと思ったら眼鏡を掛けていないのだ。故に、余計に造り物のような顔。
     頬よりもほんのり色付いた口唇に親指を這わせ、うっとりと、そこへ口唇を付けたのは、愛や恋とは違って己への慰めのような感情だった。
    「……そんなんじゃ、扉は開きませんよ」
     薄く開かれた月島の瞳には、俺の姿が映されて、紡がれた言葉は今度は本物の月島の声だったけれど、天使の壁画に口付けたような余韻に浸っていた俺は、その天使が熱を持って再び俺の口唇を塞いで、白いソファが二人分の重みを受けてずぶずぶと深く、雲の中に沈み込むように周りが真っ白になっても、ああ彼はちゃんと人間だったと安堵しながら、その口吻けに酔いしれる――――

     そこで、目が覚めた。
    (……夢、でしたか)
     まぁ、そうだろうな。と思う。けど、夢であったのなら、
    「菅原さん?」
    「は……え、月島!?」
     夢の中でされた月島からのキスに、その感触はリアルで、それを思い出して顔に一気に血が昇った、そんなどうしようもない顔を、すぐ横にいた月島に覗き込まれてしまった。
    「どうしたんですか? 真っ赤ですけど」
    「いやっ、いや……なんでも、ない……」
     あんな夢を見るなんて、俺はどうかしてる。月島のこと、俺はそんな邪な目で見ていたのだろうか?
    「出られてよかったですね」
    「そ、そうだな……よかった……って?」
    「僕のおかげですよ?」
    「――――は……?」
     月島はいつもするように眼鏡を外して、肩に掛けていたタオルでレンズを擦る。裸眼の瞳がふとこちらを向いて、目を細めて緩やかな笑顔を作る。
    「え……? 夢じゃ……」
    「夢? 夢の中で、僕とキスしたの? そんなに僕と、したかった?」
     え? え?
     訳も分からず俺が固まってしまうと、夢の中で俺がしたように、今度は月島が俺の口唇を親指でそっとなぞり、その仕草に、次に来る行動を想像して心臓が高鳴る。
     これもまた、夢なのだろうか。夢であるのなら、次に覚めた時には月島は消えている気がして、どうか覚めないようにと、彼のその手のひらを強く握った。

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  • らき
    ID:457855  スレッド管理人  | らき | 2022年09月11日 14:31

    らきお題アカより(2020/11/12)(お題は消失)
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     チョコ掛けのその細長い菓子を唇だけでもぐもぐと、時には上下にぷらぷらとさせて、思考が纏まると再び筆も唇も動き出すから彼の集中力に直結しているのだろう。
     普段は間食などしないのに珍しくコンビニでそんなものを買ってきて、お陰でその動きが気になってこっちの課題は全く進まないんですけど。
    「なした~月島? もうギブか~?」
    「煩いですよ。大体アナタから教わる教科なんてないし」
     机に突っ伏した僕の頭頂部をシャーペンの芯で悪戯して、楽しげに笑う彼の手首を掴んだまではいいけど、その先に進む勇気はまだない。
    「じゃあ、お前の知らないゲームでもする?」
     誘ってきたのは彼だった。

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  • らき
    ID:457858  スレッド管理人  | らき | 2022年09月11日 14:48

    君と過ごす夏(2021/07/12)https://t.co/YXp9DOfDFR
    菅原孝支の夏。淡く光る蛍を見つけて綺麗だと言う君が、どうしようもなく可愛くて、溶け合ってしまうようなキスをした。
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    「今年は一緒に行けなかったな~ホタル狩り」
     先生という職業を選んだこの人の周りには、歳を追うごとに小さな友人が増えていく。僕が傍にいないと背ばかりかつての師を追い越した子供に埋もれて、今回のように一瞬で終わる風物詩を共に見る機会を逃してしまう。
    「あ、ここにいたわ。金色ホタル」
     僕の後ろでベッドに寝そべって本を捲っていたその人の指が、くるくると僕の髪を絡めて遊び始める。
    「禿げたら責任とらせるけど」
    「やっぱりこの髪の色で名前付けたのかなぁ? 誕生日は時期外れだろ?」
    「9月でも一応生息してますよ。でもまぁ、満天の星空の下で生まれたからつけたとか言ってたっけ」
     俺も星とか虫が良かったな~とか勝手なことを言って、僕が散々この名前で苦労してきたのを知ってるくせに。
    「やっぱりこの髪色だよ」
     綺麗だな。と言うなら、アナタの色素の薄い髪も瞳も、高校の時から変わらない指先も。
    「こっちにもいるじゃんホタル。銀色の」
     甘い唇に引き寄せられて、溶ける。

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  • らき
    ID:457859  スレッド管理人  | らき | 2022年09月11日 14:50

    君と過ごす夏(2021/08/29)https://t.co/YXp9DOfDFR
    この時、この瞬間、君といられたことは、どんな奇跡にも敵わない。君との夏、僕の世界に君がいた夏。願わくば、君の夏の中に、僕がいますように。
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     あの夏の日のことを今でも夢に見る。ただの先輩と後輩として、貴方と過ごした夏の日。
    「月島先輩、ブロック教えてください!」
     貴方とはポジションも違ったから、僕の先生は別の高校の先輩だけど、相手に労いの言葉が出てこない僕に、こうして手のひらで激励してやればいいと教えてくれたのはあの人。
    (あの人の場合は頭だったけど)
     理解の早い後輩の肩を右手で掴んでパシンと背中を叩いてやれば、「ありがとうございます!」と満面の笑顔で返される。
     僕のこんな姿、貴方が見たら何て言うだろうか。「やれば出来るじゃねーか」って、背伸びをして髪を掻き混ぜてくれただろうか。あの笑顔が他の誰かに向けられるのを思うと、想像だけで息が詰まる。貴方がいる間に芽生えて欲しかった行き場のない感情は、喧しい蝉の鳴き声に掻き消される。
     もっと貴方を困らせてやればよかった。もっと貴方との時間が欲しかった。暑さでへばってる僕の姿でもいいから、誰かを見て笑う時、貴方の中に僕がいますように。

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  • らき
    ID:457869  スレッド管理人  | らき | 2022年09月11日 15:55

    夏の菅さん受けログ(2018/08/03)
    辺り一面の向日葵畑の中、楽しそうに笑う君が、どうしようもなく可愛くて、汗の伝う額に口づけた。
    #僕と君の夏 https://shindanmaker.com/545359
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    「スゲーいい写真撮れた! 月島見て!」
     そこには辺り一面の向日葵の中に溶け込んでいる僕の後ろ姿が写されていて、僕が笑うに笑えない苦い顔をしていると「月島を探せ!」とかケラケラ笑いながら肩を寄せてくる。
     これとこれとこれもいいだろ? 欲しいのある? とか聞きながら画面を手繰る指先はとても冷たそうで、揉み上げや項に流れる汗と同じようにそれもしょっぱいのだろうかなどと考える。日差しが強すぎて思考がおかしい。
    「大丈夫かぁ? 月島」
     僕が無言でいるとその人が帽子を脱がせて頭をぐしゃぐしゃと掻き混ぜ、僕もそれに倣ってその人の帽子を取って額を顕にさせるとそこに伝う塩分を舐め取った。

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  • らき
    ID:457870  スレッド管理人  | らき | 2022年09月11日 15:59

    夏の菅さん受けログ(2018/08/21)
    らきの月菅さんが恋に落ちたのは、「二人でいるのが当たり前じゃないことを知った時」です。
    #貴方が恋に落ちた瞬間はこちらです https://shindanmaker.com/805239
    フォロワーさんよりリクエストいただいた月菅
    『今もここに』
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     僕が山口と一緒にいるのは山口の方から僕に近寄ってくるからで、例えばこの先一番近い未来、僕たちが高校を卒業して別々の大学に進学して、山口とは年一度の同窓会くらいでしか会えなくなったとしても、僕も山口も、少しは寂しくなるのだろうけれど、大学では僕より大事な友達が出来て、連絡も途絶えがちになって、それでもたぶん僕たちの関係は何も変わらないのだろうから、物理的に離れるのなんて決して大したことではない。
     クラスメイトにしたって、烏野排球部のメンバーにしたって、きっとそれぞれどこかで彼らなりの生き方をしている姿が、その笑顔と共に容易く想像出来るから僕も、彼らに再び会うのが数年後であったとしても、顔を合わせればその瞬間に、今この時と同じ空気で言葉を交わすのだ。未来は決まっていないようで、粗方想像どおりに進む。
     淡々と、時間は流れていくものだと思っていた。実際に淡々と流れていた。その人との時間も、何か刺激的な出来事がある訳でもなく、ただいつからか隣にいることが多くなり、まるで空気のように。

     主将と関わるのは面倒くさい。エースとは日常会話するにしても、とりたてて話題が見当たらない。その人とだって――――昨日話した内容だって思い出せない日もある。どうせ「あっちい~」だの「今日の夕飯何だろ?」とか、そんな他愛もない会話。なのに、何でこの人の未来だけは想像出来ないんだろう?
    「月島~」
     その人が呼ぶから振り返る。僕が座っていれば隣に座ってくるし、立っていれば横に並ぶ。頻繁に、毎日繰り返される、決められた日課のように。
     今に始まったことじゃないけど、最初はそうではなかった。僕も意識していなかったから、でもきっと最初は「日向」であったり「影山」で、僕達が入部する前はきっと「田中」だったりしたのだろう。
     その人の声に反応するペットのように、自分の名を呼ばれなくてもその声がするだけで、ふと振り返るようになったのはいつからだろう?
    「つ・き・し・ま!」
     今でも時々、その声が僕の脳内で再生される。声と共に、綺麗に揃った白い歯を見せて笑う大きな口。するりと伸びる睫毛とその目元のほくろ。伸ばされた手は背伸びをしてようやく僕の頭に届くから、いつからか手を伸ばされただけで僅かに身を屈めるようになってしまった。
     触れられて、おどけて抱き締められて、その人の両腕が僕の体に巻きついてきゅっと締められた時の温度や、流れ込んで来る愛情。それはきっとみんなに均等に配られたものだけど、自分の中でどんどん特別になる。
    「月島?」
     昨夜は夢にまで出てきた。唄うように呼ばれる名前。脳に染み付いて、忘れられない。その人は別に死んでしまった訳でもないのに、なんでこんなに――――
     声を、思い出すだけで胸が締め付けられ、涙が出そうになるなんて、らしくもない。
     僕の隣にいないその人が、今どこで何をしているのかなんて、どうしても想像出来なかった。その人は今でも僕の隣で微笑んでいるから。

    「――――菅原さん」
    「…え、月島ぁ!? おまえ、何でここに!?」
     なんでって、アナタが隣にいないからでしょ。僕の隣にいないアナタなんて、アナタじゃないでしょ。
    「今年から、またよろしくお願いします。先輩」

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  • らき
    ID:457871  スレッド管理人  | らき | 2022年09月11日 16:04

    #1RTごとに書く予定のない小説の一部分を書く(その3)(2021/08/29~09/21)
    ■リクエスト内容:焼肉を食べる月菅/付き合ってる/高校卒業後
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     きっかけなんて、どっちからだっていいのだ。
     高校で出会った俺たちは、二歳差という呪われたループの中にいる。彼が高一、俺が高三の時は、彼も高校生活に慣れるのに忙しなく俺も大学受験、その翌年は彼に余裕が出来ても、俺が新しい環境に慣れるのに時間を作れず、更にその翌年は、今度は彼の大学受験。
     とにかく相手のことをちゃんと考える余裕のない年月が繰り返し繰り返し、これはお互いの就職まで待たないと何の進展も望めないのではないか。果たしてそれまで俺たちは何もなく、たまにはこうして一緒に外食をするくらいで、手を繋ぐとか――――
    「なんですか?」
     最近の焼肉屋は煙が出ない。出ない訳ではないが、煙で相手の顔がまったく見えないなんてことはない。
    「いやっ、お前の手、綺麗だな~って」
     香ばしく焼ける音を響かせて、月島が長い銀の菜箸で肉を網に乗せてくれている間、俺は悶々と今までの自分たち、これからの自分たちのことを考えて、無意識に目の前に伸ばされている月島の手を菜箸ごとそっと握っていた。
    「……手が大きいのも指が長いのも、この身長も、今ではありがたいと思えますけどね」
     月島の左手が俺の手に重なり、そっと外される。
    「どんどん食べないと、冷めますよ」
     焼きあがったものをひょいひょいと俺の方の皿に乗せて、残りを自分の方へと乗せる。高校の頃よりよく食べるようになった月島は、それでも好んで焼肉なんか食べないだろう。それは俺も同じ。ただ、月島が肉を食うという行為を、目の前で見たかったのだ。
    「……熱くないんですか? そんなふうに手で食べる人、初めて見ました」
    「え、そう? サンチュに巻いて食べるの普通じゃない?」
    「普通は箸で食べるでしょ」
    「いやっ、食べにくいし」
     皿の上でサンチュの上に月島が焼いてくれた肉を2枚程乗せて、タレが零れないようにはふっと手でそれを口に運んでいく。俺が食べる様をじぃっと見ている月島は、きっと俺と同じ考えなのに違いない。肉を食う行為はどことなくエロい。
    「お前、甘いの好きだからタレ派かと思ってたけど、塩のが好きなの? レモンとか平気だった?」
    「アナタみたいに七味とかラー油つける方がどうかと……濃い味が好きじゃないだけです」
    「野菜も食えよ~」
     焼肉よりステーキとかの方が良かったかな。箸で一枚一枚丁寧に、その都度塩やレモンを少量振りかけて食べる月島の姿は、別に普段と変わらない。もっとがっついたり肉にかぶりつく姿が見たいのに。
    「僕に野性味を求めても無駄ですよ」
    「おうふっ」
     頭の中を読まれてしまった。くっそ。今度は箸を使わない、そうだなナイフとフォークを使う料理を食べに行こう。それか蟹。蟹なら手を使うしかない。蟹がいいな。
    「月島、蟹は食える? 今度、蟹食いに行こ」
    「今は肉に集中してください」

     酒も飲んだけど、記憶が飛ぶ程ではなかった筈。月島が肉にかぶりつく姿が見たいとは思ってたけど、俺の二の腕にかぶりついているのは予想外。
    「菅原さん、筋肉落ちましたよね。でも、食べるならこのくらいが丁度いいかな」
     え、なになに俺食べられちゃうの? ここどこだっけ?
     二の腕の次はどこがいいかなと、月島は物色するように手を滑らせて、ふくらはぎから上へ伝って太腿へ、そして尻の方にまで手を伸ばす。
    「ちょっと待ってちょっと待って」
     俺たちはまだ手もろくに繋いでないくらい、清いお付き合いだったよね。二の腕はともかく、俺は太腿も尻も直に触れるような服を着てた? ていうか、いつの間に脱がされた? ほとんど服着てないですけど!?
    「ちょっと待って、月島…! ちょっとま……今日、…すんの?」
    「二人で焼肉食べに行くのって、そういう意味でしょ?」
     言いながら月島は、眼鏡越しに上目遣いに俺の目をじっと見て、その指先は俺の最後の砦に引っ掛かっており、えっやだ、それをそこで引き下げられたら、月島の目の前に俺の、俺の……
    「ちょっと待って、蟹食べに行ってから! 蟹!」
    「往生際が悪い」

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  • らき
    ID:457872  スレッド管理人  | らき | 2022年09月11日 16:06

    #1RTごとに書く予定のない小説の一部分を書く(その3)(2021/08/29~09/21)
    ■リクエスト内容:片想いしているツッキーが日向や影山の世話を焼くのをもやもやしながら見つめる/付き合ってない/両片想い?/烏野在学中
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    「俺も忘れてるとこあるかもしんねぇし、たまには月島も息抜きしたいだろ?」
     目敏い日向が菅原さんのその言葉にすぐに反応して、「いいんですか!?」なんて嬉々としてスライディング正座で話に割り込んでくるから、
    「君は黙ってて。菅原さんも、結構です」
     影山と日向が東大を目指すのでもない限り、高校一年の成績なんて赤点ギリギリ免れればいいのだから、わざわざ三年生の手を煩わせるまでもない。
     そういうつもりで放った台詞だったのだが、菅原さんの大きな両の瞳は少し悲しげな笑みを作って「そっか。わかった」と、人差し指で頬を搔いた。

    「ちょっと月島くん。…月島さん? 黙ってないで何か言えよ~。そんなに酷かった?」
     日向にせっつかれて、意識を手元のノートに戻す。
    「……数学は、とにかく公式覚えないと始まんない。繰り返しこの問題集解いて。英語は、今後もし君がバレーで世界目指すなら必須言語だから、そのつもりで取り組んで」
    「え、ちょっ、投げやりじゃないですかぁ?? ひどい」
    「王様も、今日はもういいでしょ? 帰ってから寝たら?」
     ぎゃあぎゃあ煩い日向と、ノートの上に突っ伏して寝こけている影山を残し、じゃあね。と、自分の鞄を掴んで席を立つ。1時間も付き合ったんだから、文句はないだろう。それに、今日は僕の方が役に立たない。それは自覚している。
     菅原さんには“結構です”なんて言ったけど、もし自分が勉強を教わる側だったら。そんな、申し訳ないことはしたくないし、授業を真面目に聞いていれば理解出来る内容で赤点を取るなんて恥なことは死んでもしない。と思いつつ、想像する。
     僕がノートにペンを走らせると、そこへ優しい指先が間違いを指摘する。ふと顔を上げればそこに、伏せられた瞳から生える量の少ない、けれど長さのある睫毛と、色素の薄い中にも僅かな桜色を乗せた唇が何かを呟いて、返事のない僕に向かって視線を上げる。
    (……)
     空想の中だというのに、目が合うと心臓が代わりに返事をする。ちゃんと聞いてたか? と言って笑う、その目尻にある小さなホクロに触れてみたい。と――――
     慌ててぶるりと頭を振って、妄想を掻き消した。こんな時ばかりは、アイツらのように頼れる先輩の前に無遠慮に走り寄れたらいいのに。いや、ああはなりたくないけど。
     日向と影山に構う機会を僕に阻まれて、あんな表情を見せられてしまったから、溜息を吐き出さずにはいられない程胃がムカムカとする。
     菅原さん本人に、この苛立たしい思いをぶつけてしまいたい。けれど、“好きだ”と告白したところで、接し方が分からない。
     手のかかる子ほど可愛いと、きっとあの人も思っている。あいつらみたいになりたくはないのに、自分にもあの笑顔を向けて欲しい。諸手を挙げて迎え入れて欲しい。
    (ああ、冗談じゃない)
     坂ノ下商店の前に差し掛かり、いい加減妄想を打ち消す。どう頑張ったって僕は彼らと同じようにはなれない。そしてきっと、あの人を傷付けるやり方でしか傍にはいられないのは、己の性格上分かりきっている。
    「お、月島? 今帰りか?」
     偶然か、それとも自分が通るのを確認して出て来たのか、商店の出入口からその人が声を掛ける。
    「……あ…、はい」
     今こんなところで鉢合わせなくたっていいのに、どこまでも自分はツイてない。
    「お前一人?」
     きょろりと辺りを伺って、菅原さんは僕の顔を覗き込む。そうです、僕一人です。日向も影山も置いてきました、すみません。と、嫌味のように言い放ってその場から逃げてしまいたかった。なのに、体は固まったままだ。
    「一緒に……帰ってもいい?」
     僕への接し方は、まだ確立されていないのだろう。怖々、という感じでいつもの困ったような笑みを浮かべる。
     その表情は、僕をイライラとさせる。

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  • らき
    ID:458125  スレッド管理人  | らき | 2022年09月14日 18:15

    らきへのお題(2019/01/18)https://t.co/jRaJDoyisD
    ①僕と結ばれないのなら君の存在意義など、
    ②「期待しても、良いの?」
    ③心が繋がらないのなら、せめて。
    の中から選ばれたのが③でした。
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    「月島、俺のこと好き?」
     この人は度々子どもみたいに、そんなことを聞いてくる。
    「はい、好きですよ」
     最近では面倒くさくなって、適当にそう躱している。すると、心が伴ってない! とか、もっと感情的に! とか、音楽の先生じゃあるまいし、指揮棒を翳す真似をしながら、さんはい! と振ってくるので、僕は余計に「好きです、好き好き」などと投げやりになる。
    「なんでそんなに確認するんですか」
    「俺はもっと、月島と愛情を深めたいんだよ」
     愛情ねぇ……と、僕がもう逃げるのを諦めたのをいいことに、柔軟中に背中に伸し掛かっていた菅原さんは、手のひらで僕の頭を犬を可愛がるように撫で始める。
    「そういうのは日向がいれば充分でしょ」
     僕を除く烏野一年は、みんな菅原さん大好き人間だし、一年だけじゃなく二年の先輩たちだって、この人に誉められたり撫でられたりするのを待ち望んでいる。
     実は僕は彼のような、八方美人でみんなに愛されてないと気が済まないみたいな人種が苦手だ。だから、あまり構って欲しくないのに、そういう僕だからこそ、この人は何かと寄ってくるのだ。
     あからさまに迷惑オーラを出していると、流石に気付いたのか、くっつけていた体をすっと引いた。僕に嫌われない為には、放っておいてくれるのが一番。ちゃんと先輩の仕事をしている人には、それなりに尊敬も返しているのだから、僕の場合はそれで充分でしょ?
    「――――分かった。月島が、愛のないセックスでいいって言うなら、それでいいよ」
    「セッ……!? はあ!? 何言ってんの!?」
     突然の爆弾発言に、ついタメ口になってしまう。
    「だってお前、撫でられたりくっついたりするのは好きだろ?」
    「好きっ、じゃないです! あなたが勝手に、くっついて来るんでしょ!」
     え~そう~? とか言いながらニヤニヤして、僕は迷惑なのに、あなたがしつこいから……。
     この人が日向や山口に構っている時、自然と目が離せなくなる。影山とは同じコートの上で、同じポジションで、顔を近付けて話しているのを目にする度に、胸の辺りがもやもやする。
     僕は単に、どうしてそんな笑顔が出来るのか。後から入って来た一年にポジション奪われて、どうしてそいつらにアドバイスやら労いや称賛の声を掛けられるのか。ただそれが不思議でならなかったのだ。誰も見ていないところで歪んだ顔を見せているのではないのか。気の抜けた諦めの、たかが部活だろ、という表情を見せているのではないのか。そんな顔が見られる日を、僕は期待していたから、ついこの人を目で追っていただけ。
     構われても逃げないでいたのは、逃げたって、逃げる程に余計にその手に捕まるから。
    「俺は、嫌われても月島とこうしてたい」
     そう言って、柄にもなく取り乱した僕の両脇から両手を差し入れて、背中に抱き付いてきた。僕は――――
     僕はやっぱりこの人が苦手だし、抱き付かれて顔が火照るのだって、好きとかそういう感情じゃない。と、何度も自分に言い聞かせて、
    「……勝手にしてください。着いていけない」
     心が。と、手のひらで顔を覆いながら呟いた。

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  • らき
    ID:458126  スレッド管理人  | らき | 2022年09月14日 18:17

    バレンタインポストから頂いたネタ(2019/03/15)
    「菅さんが女装して配ってくれるチョコ」
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    『これが最後の曖昧』

     スポーツをやっている男子というのはそれだけで格好良く見えるのだろう、部活に出てくる頃には各々チョコの一つや二つは貰っているので、バレー部恒例のそれで貰ったチョコが人生初めてのバレンタインとか、そういう悲劇は起きなかったようだが、自分だけは頑なに、その人が配るチョコには手を伸ばさなかった。
    「まあ結果は分かってたけど、みんなありがとな」
    「いいから早く着替えてくださいよ!」
     どピンクのリップを塗って、ばさばさと長い付け睫をしていては、せっかくの男前も台無しになるっていう見本。元から色白で、三年の中では一番線も細くて身長もほどほどな副主将ですら、やはりゴツさは否めない。誰のチョコが一番人気か、その結果は背番号で言うと2、1、3の順番なのだが、気を遣わずに正直に選んだら、1と3のチョコは一つも減らなかっただろう。
    「来年は更に化け物が増えるわけですね」
    「失礼な! 旭さん以上のゴリラはいねーんだから、みんな可愛くなるに決まってんだろ!」
    「田中ひどい」
     このノリも来年で終わりにしてもらおう、と考えてたら、「ちゃんと伝統は引き継げよ~! 見に来るからな」とか、唯一可愛らしい笑顔のその人がニシシと笑いながら言い放つ。ノリ切れない一年の面々は適当に返事をごまかして、菅原さん一緒に写真撮ってください! という日向の一言で、俺も俺もと、結局自分以外の全員がその人の周りにわらわら集まっていったので、僕は逃げるようにこそりと先に部室に着替えに行った。

    「はー、俺は悲しいわ~」
     部活の休憩中、その人が近寄ってきてわざとらしく愚痴を溢す。
    「お前、俺の目の前で旭のチョコ掴んで行ったろ。なんで素直に俺の取らないかな~」
    「すみません、 僕の好みじゃなかったので」
    「えっまじで……その辺詳しく聞かせてくんない」
    「擦れてなくて優しくて、心の清らかな人がいいと思って選びましたけど?」
     実際、東峰さんのが一番残りそうだったし、主将とどっちでも良かった。
    「俺はその真逆のイメージな訳?」
     ブーブーと口を尖らせて、さっきみたいに奇妙な赤じゃない、自然と透き通った薄い色の口唇。その方が断然綺麗で、目許も下向きに短めの睫毛を生やし、とても彼らしい。くるりと上向きに跳ねた、主張の強い睫毛など、まったく似合ってないし、あなたはそんな人じゃないでしょ?
    「今くれるなら、貰いますよ」
    「……意味が、分かりません先生」
    「別に、聞き流してください」
     はっきり言うつもりはないのだ。真面目なのかふざけてるのか、時々分からなくなるこの人だから。この人が曖昧にしているうちは、自分も曖昧に、それで離れていくならそれまでだし、でもなかなかこの人も付き合いがいいから付かず離れず。

    「おーい、月島~」
     帰り支度をしている時に、先に帰ったと思ったその人が部室の入り口で手招きしている。すぐにひょいと影へ引っ込むので、鞄を掴んでそちらへ顔を覗かせると、
    「はい」
     小さな包みが手渡された。恒例行事で配っていたのとは違う箱。
    「ちゃんと用意してたっつの」
    「……僕に?」
    「そ」
    「……えっと」
    「意味が分かりませんか? はっきり言いましょうか?」
     見てもその人の顔は普段どおりだし、もしかしたら他のヤツにも渡しているのかも。
    「来月、返事待ってるからな」
     んじゃ、と言って、ニッと笑った口許が暗がりに消える。しまった、何で受け取ってしまったんだ。今更返す訳にもいかないし、来月の返事だって?
     来月は、もう三月だ。そこで初めて僕は、卒業式がもうそこまで来ているのに気が付いた。

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  • らき
    ID:463913  スレッド管理人  | らき | 2022年11月11日 12:14

    先日開催されたエアブーで公開した月菅(2022/11/06)
    お題:菅原は案外奥手らしく、キスやハグどころか人と手を繋ぐことさえ恥ずかしいと言うのに月島の手を握る。恥ずかしいんじゃないの、と菅原に聞くと月島は友達だからいいと言う。月島はにっこり笑う菅原を拒めない。
    https://odaibako.net/gacha/9884

    『片恋に等しい』
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     “アンタら付き合ってんでしょ。この間デートしてたじゃん”
     “えー違うし。デートはするけど、付き合ってはないし”
    という女の子同士の会話が横から聞こえてきて、僕は(そういうもんなのか)とぼんやり思う。

     烏野高校バレー部の春高行きが決定して、少しだけ力の抜けた11月。練習も久々に休みで、菅原さんが「図書館行くんだけど、月島も付き合わない?」と訊いてきて、僕は「はい」とだけ返事をした。
     そのあと山口から誘われたカラオケ(日向・影山プラス谷地さん)も、クラスの女子から誘われた勉強会も、きっぱりと断った。それを菅原さんに伝えたら、「えっ、そっち行ったってよかったのに」と返される。その返事は想定内だ。
    「影山と日向は、どうせすぐバレーしに飛び出すだろうし、3人きりだと谷地さんに気を遣わせるので」
    「クラスの女子はよかったのかよ~。お前頭いいし、頼りにされてんだろ」
    「僕がいると、勉強にならないんです。頭じゃなくて、顔で呼ばれてるんで」
     中学の頃からそうです。と言うと、その人はツッコミもせず「へー。さすがだな」と淡々と返し、口元に薄っすら笑いを浮かべた。

     近頃の菅原さんは、どこかおかしい。まず今日の外出だって、僕は「はい」としか返事をしなかった。「付き合わない?」に対して「はい」だったら、「行けない」方の可能性だってあるのに。特に僕への誘いの場合。いつもなら、「どっちだよー」とツッコまれているところだ。
     さっきの会話も、山口と谷地さんを二人きりにしたことに関して何も言わないし、すべてにおいてどこか上の空で、僕が今日待ち合わせ場所に来なかったら、この人はどうしてたんだろう。
     そんな“上の空”な人に連れられて、図書館までの街路樹を並んで歩く。銀杏の黄金色が目を喜ばす秋晴れの日。

     いつの時期も図書館は近くの大学生や高校生で席も埋まっていて、隣合った2席を押さえられたのも奇跡に近い。そこへ上着を掛け、お互いに必要な本を探しに行く。
     “付き合ってなくても、デートはする”のなら。今日のこれだって、デートと言えるのではないか。菅原さんを好きという気持ちは、諦めに近いカタチで自分でも認めている。菅原さんの気持ちは分からない。
     誰にでも平等に伸ばされる手。向けられる笑顔。自分に向けられるそれが、特別甘く感じたことはない。けれど今日のように、僕だけを誘うのも初めてではない。
    (分からない)
     部活が終わった後など、下校途中に並んで歩いていると、突然手を握ってくることがある。僕が驚いて振り向くと、にっこり笑って「お前の手、デカいよな」などと言う。デカい手が好きなら東峰さんのを握っていればいいし、僕には「恥ずかしい?」なんて訊くくせに。
     “旭と手なんか繋いだら、ってか繋ごうと思わねぇわ。恥ずかしい”
     じゃあ何で、
     “月島は……友達からお願いします”
     いたずらする時と同じ笑顔で躱されたから、よく分からないのだ。あの人は。
    「まだ決まんねーの?」
     歴史書の陳列棚をぼんやりとさ迷っていたら、隣にその人がやって来てギクリとする。
    「ふはっ。…んだよー、エロい本でも探してんのかよ」
    「静かにしてください」
     出会ってから半年以上。それでもまだ、心臓が慣れない。
    「キスでもする?」
    「は!?」
     揶揄うのもいい加減にして、という思いでその人を睨むと、大きな瞳を真っ直ぐに向けて見上げてくる。一瞬だけすべての雑音が消え、その人の瞳がふと潤んだように見え、それからすっと視線だけが逸らされていく。僕は無意識にその人の腕を掴み、すると再び目が合って、その人の困ったようなへにゃりと崩れた笑顔と共に、静かな図書館のざわざわとした雑音が戻ってきた。
    「想像した? 恥ずかしいやつぅー」
    「……恥ずかしいこと言ったのはそっちでしょ」
    「席、盗られんぞ」
    と言って背中を向けたその人の耳が、どんどん赤く染っていくように見えるのは、僕の願望なんだろうか。
     はっきり言ってくれないと、分からない。僕からは、まだ言えない。

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  • らき
    ID:501174  | らき | 2025年01月14日 19:24

    HQ書き納めの月菅です。わたしのHQは月菅から始まりましたので、終わりも彼らで。
    初書き月菅はここに残ってます⇒https://pictbland.net/items/detail/1869928

    お題:甘え下手な月島。拒絶されるまで、と思って菅原に寄りかかってみると全く抵抗されないので引き際を見失う。
    https://odaibako.net/gacha/9884

    『恋なんてしたくなかった』

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    「こういうのも、今日で最後な気がする」
    と、その人が突然そんなことを言った。
     年が明ければ春高で、春高が終われば3年生は卒業。部活にも来ないだろうから、冬休み前の今日が最後。
     市民図書館に行きたい。と、菅原さんが言ったので、烏野からではバスと地下鉄で1時間近くかかるその場所へ、部活のない日にわざわざ帰宅時間に待ち合わせをして、自分たちの家とは逆方向のバスに乗る。
     図書館なんて、慣れたところの方が調べ物もはかどるし無駄がないのに、「新しい発見があるかもしれないだろ」といって、1分たりとも無駄にしたくないのは受験生である菅原さんの方だろうに、その人がそうしたいなら、と、なぜか僕も自分の時間を共に無駄にしている。
    「なぁ、肩貸して」
     電車内、横並びに座れたのをいいことに、その人が僕の肩に頭を寄りかからせる。
    「お前も、頭のせていーよ」
     とは言うけれど、公共の場で、誰が見ているとも限らないのに、人に笑われそうなことを僕が出来る訳もない。けれど、
    (……)
     “今日が最後”と言われて、菅原さんは、本当にこれを最後にする気なんだ。と、ふと思った。
     菅原さんの頭部はずっしりと重く、完全に脱力し切っている。ちらりと覗き見れば、丸いおでこに柔らかく落ちかかる前髪。櫛で梳きたくなるような睫毛が半月を描いている。
     この人は、色んな人の頭を撫でまくっているから知っているのだろうけど、僕はこの人には意図して触れたことがないから、その頭皮の熱さも知らない。
     そっと、僕の肩に預けられたその頭に頬を寄せる。すり、と耳まで滑らせ、初めて感じたその人の肌の直接の熱さに、ビリビリと脳が痺れた。いけない、と思い、すぐに自分の頭を起き上がらせる。
    「最後だって、言っただろ」
    「!……え」
     僕が身を離した瞬間、目を覚ましたのか、最初から寝てなどいなかったのか、菅原さんの腕が僕の後頭部に伸び、ぐいっと力を込めて頭を引き寄せられる。頭と頭を寄せ合った姿勢を余儀なくされ、カァーっと顔に血が上ってくる。
    「そのままでいて」と言われれば、僕も身動ぎできなくなる。
    「学生時代の思い出。制服のまま並んで座って、無意識下でくっついて寝るの。……手ぇ、繋いでもい?」
     誰が見てたって、寝てる俺たちには見えてないんだから、別に気にすることねーべ。って、どういう理屈なのか、この人みたいには目を閉じられないでいる僕は、現実世界の渦の中にいる。許可を得て手を繋いでいる時点で、無意識下ではない。
     中途半端な時間帯で、電車に揺られているのもお年寄りや小さな子の手を引く母親くらいなもので、気にする程の人目がないのが幸い。
    「さすがにみんなの前じゃあ、お前には罰ゲーム以外の何物でもないもんな」
     バスの中では、これでも我慢してやったんだ。と菅原さんは言い、隣り合わせの間で繋ぐ手の力を強くする。

     最初はいつだったか。
     確か、夏が始まる前。インターハイ宮城県予選で青葉城西に負けた後。
     バスで行く東京遠征、座席はだいたい学年ごとに集まって座る。指定席はないから、時々気分で入れ替えがあるが、特に誰とも会話したくもないし静かに過ごしたかった僕はなるべく早めにアイマスクをして寝に入る。
    「月島、もう寝た?」
     構うなオーラを放つそんな僕に話しかけてくるのは山口か、二年の賑やかしいスタメン二人くらいだ。その誰でもない予想外の声に一瞬「?」となり、アイマスクを僅かにずらして声の主の顔を確かめた。
    「あ、別に邪魔するつもりないから。長旅だし、気分転換に隣座らして欲しくてさ。それだけ」
    「……どうぞ」
     さすがに先輩の隣でアイマスクをして寝入るのもどうなのかと思い、その人の動向を窺いつつ窓の外を眺める。
    「ああ、いいっていいって。いつもどおり寝とけよ。しごかれて疲れただろ?」
    と、周囲に気を遣ってか低めの静かな声音で、瞳を細めて柔らかに笑う。
     寝とけよ、と言った割に、その人は時々僕に疑問形の言葉を投げかける。それに対して「はい」とか「はぁ」とか面倒くさげに返している自分がそこにいたが、不思議とその人の声は子守唄のように心地好く、知らぬ間に僕は本当に寝てしまったようだ。
     ふと意識を取り戻すとまだ高速道路を走っている道中で、隣で僕だけに聞こえるようにおしゃべりをしていたその人は、頭を僕の肩に預けて静かに瞳を閉じていた。
     毎回ではないが、一か月に一度は同じようなことがあった。図書館にいるところを目撃されてからは、練習試合や遠征でのバス移動がない時には「月島、今日図書館行く?」と訊かれ、僕は予定が決まっていなければ「はい」と答えた。
     当然オレンジのチビや王様なんかがやいやい言ってくるが、僕も菅原さんも進学組だから、バレー馬鹿な奴らはそのうち諦める。山口は、別にいいのに気を遣っているのか、僕から解放されて喜んでいるのか、着いては来ずにいそいそと嶋田さんのところへサーブ練に行く。
     菅原さんが、なぜ僕に構ってくるのかよく分からなかったけれど、みんなに好かれているこの人を独り占めできるのは満更でもなかった。

    「僕が……最後の卒業生ですか?」
    「ん?」
     最初この人は、日向の面倒をずっと見ていた筈だ。そして影山。山口は、菅原さんの手を煩わせなかった。僕はずっと掴みどころがなかっただろう。こうして最後の最後まで、烏野メンバー全員から引き離してまで、最後の授業に付き合わせる。
     少し特別扱いを受けただけで、思い上がるなよ。と、僕は自分に言い聞かせる。確か菅原さんには弟がいた。僕みたいな面倒くさいガキの相手も、きっとこの人は手慣れているのだ。天性の兄属性であり、理想とされるサブリーダーであり、指導者にでもなった暁には、一人一人にこんな風に接していては、身体がいくつあっても足りなくなる。僕みたいなのに懐かれたら、どうなるか分かっていないのだこの人は。
    「日向も影山も、アナタから即座に学んで、すぐに親離れしましたよね。僕のことは、まだ心配なんですか」
     さすがにぱちくりと両目を開けて、菅原さんは僕の顔を至近距離から覗き込んでくる。
    「……俺って、お前たち一年生の通過儀礼かなんかになってんの?」
     こっちはそんなつもりねーし! と笑って、どしんと肩をぶつけて再び寄り掛かってくる。
    「言われてみれば、お前たち一年って、“三年生はこれで卒業だから”とか、“先輩たち差し置いて”とか、変な気回すヤツいねーよな。お前だけ若干、そういう常識的なとこあったかも。常識っていうのも変な話だけど」
     そう言いながら、再び僕の左手を取って、自分の右手と繋ぎ合わせる。
    「これは、そういうんじゃなくって、……あーでも、もしかしたらそうなのかも。日向と影山が、どんどん先に行っちゃうのは眩しくもあり、寂しくもあり……」
     かと言って、お前を繋ぎ止めようとするのは、先輩としてはアウトだと思うから。
     だから、最後。と改めて口にして、その人は再び瞳を閉じた。
     菅原さんの意見を纏めると、通過儀礼にしているのはこの人自身ではないか、と思った。
    「菅原さん、寂しかったんですね」
     これはいつもの、僕の揶揄い文句。それに対して菅原さんは、「うるせー」と、僕だけに聞こえる小さな声で呟き、僕の肩に頬擦りをするように頭を俯ける。
     車内アナウンスが、次の到着駅を告げる。あと3駅ほどで、隣り合わせで座るこの時間も終わる。
     軽く頭突きをするように、その人の頭に自分の頭をぶつける。無言で寝たふりをするので、二人の間で繋がれた手を、僕の方から繋ぎ直して指を深く絡める。
     僕からの積極的な行動に驚いたのか、その人は僅かに身を固くするから、目を閉じていてもまだ意識があることが僕にバレてしまう。
     離れがたい。後にも引けない。こんなの、さあ電車を降りるよとなった時、素の自分に戻れるのかも分からない。これを最後にすると言ったからには、菅原さんは、目を開けた瞬間から意識を切り替えるのだろう。
     そうこうしているうちに、降車駅の名前が告げられる。ぱっと瞳を開き、先に菅原さんが身動いだ。間を置かずして僕も立ち上がる。僕の顔を、大きな瞳が下から斜めに見上げ、愛しい我が子に贈るような笑顔が向けられる。
    「……何ですか、その顔」
    「デカくなったなーと思って」
    「親戚のおじさんですか」
    「もっと、子ども時代に会いたかった! おいたん、おいたん! って、追っかけてくる月島に会いたかった!」
    「何言ってんですか」
     この人が僕に向けるのは家族愛なのかと思うと、少し興醒めした。そしてその時気付いた。僕は、この人が日向や影山に向ける愛情とは、別のものを求めていたのだ。
    「────今からでも、アナタを追いかけたらダメですか」
     無邪気に笑顔で駆け寄ってくる子どもと比べたら、そりゃ可愛くないかもしれないけれど。
     席を立ち上がった瞬間に離されてしまった手のひらを、僕の方から追いかけてその人の手首を掴む。
     子どもの頃、散々兄に甘えてきた自分は、兄の烏野卒業と共に甘え方を忘れた。大人になったのだと勘違いしていたが、ターゲットさえ定まれば、本来の自分は執着心の強い人間だ。
     改札口の手前で、呆気に取られた顔をして立ち止まった菅原さんは、ただ呆然と僕を見上げるだけ。
     出口へ急ぐ乗客たちが、数人僕の背中にぶつかって、押されるままに僕は菅原さんを自分の腕の中に引き込む。
    「月島が、そんなこと言うなんて思ってもみなかった」
     その人の顔は、僕の胸に埋もれて見えないから、言葉どおりに受け取ると落胆させてしまったのかと感じた。
     菅原さんは、一度僕の胸にぐりぐりと自分の額を擦り付け、「も~~~」と呻いて僕の胸をドンドンドンと拳で叩く。ぴたりと動作を止めた後、すぐにぱっと顔を上げ、眉尻を下げた笑顔が僕に向けられる。
    「こんなとこで立ち止まってたら邪魔だろ! 行くぞ?」
     僕の胸で藻掻いたせいか、菅原さんの瞳は涙で潤んでいるように見えた。にししと歯を見せて笑う顔は、その人が見せるいつもの笑顔だったけれど、その涙と笑顔に別の意味があるのなら、今日で最後というセリフはどうか取り消して欲しかった。




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