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最終更新日:2024年03月26日 17:12

【2024/02/11イベ用】お題あり/短文公開所

非会員にも公開
メインで公開したかった話が書き上げられそうにないため、急遽お題で短文テキストを上げることにしました。
時間の許す限り追加していきます。
【作成予定CP】
黒菅・月菅・双子菅・あとは間に合えば
イベントサイト⇒https://picrea.jp/event/38813d9a6e5332787f13dac070d265339c4c711beea8b21f82966684bda30e79
  らき
  • 2024年03月26日 17:12
    【双子菅】「寒いと目元が赤くなる孝支くんと、わかってても泣いてるみたいに見えて何故かハラハラする双子。」
    お題ガチャ『冬のふたり』https://odaibako.net/gacha/9518

    ※エッチまで持ち込みたかったのですが、ぐだぐだ長くなってしまったので何事もなく終わってます。治とはその日の夜に、侑(と治も?)とは試合後の夜にすることはしてると思われます。

    この記事は省略されています。続きを読むにはここをクリックしてください。



    『彼が逃げない理由なんて、とっくの昔に知ってる』


    「サム! おまえ、何コーシくん泣かしとんのや!」
     待ち合わせ場所に遅れて到着した侑が目撃したのは、双子の片割れに頬を両手のひらで挟み込まれ、目元を赤くしている菅原の姿だった。
    「泣かしてないわ。おまえが来んのおっそいからや」
     宮城在住の菅原がわざわざ関西まで出向いてくるのは、部活の後輩で今や世界で活躍する影山と日向が直接対決する時くらいしかない。丸一日の休みを取るのが難しい職業であり、”たかが”と言われてしまうスポーツ観戦に、その貴重な休みを惜しまず使用するのは後輩への愛に他ならない。
    「なんでおまえらが出迎えんだよ~」
     日向の所属するバレーボールチームに侑も所属している。というより、侑が所属していたチームに日向が入団した訳だが、「俺は日向と影山にしか、今日行くって伝えてなかったのに」なぜかその、今は日向の先輩である侑が、ここに来ているのはおかしな話。侑より先に菅原を出迎えた双子の片割れは特に。
    「んな、冷たいことゆわんくてもえーやん。ショーヨーくん今日雑誌の取材やってゆうから、俺が代わりにコーシくんを迎えにきたんやで♡」
    「30分も遅れて来たやつがよおゆうわ」
    「うっさいなぁ! おまえと違て忙しいんじゃ、有名人は!」
     そもそも自分が菅原の到着時間に間に合いそうにないからと、大阪駅近くに住んでいる双子の片割れに連絡したのは侑自身だ。
     しゃべり始めたら止まらない双子(特に侑)には付き合いきれんと、自分の頬を包んでいた治の両手を剥がして菅原が「もういいから、早くホテルまで案内しろよ」と呆れ混じりに呟けば、「マジか、コーシくんからホテル誘われたわ」「おまえよか俺のが先に孝支くん出迎えたんや。なんにしても、俺が先や」と、話が違う方向へ行きそうだったので、
    「俺が宿泊するビジホだよ! 土地勘ねーから案内しろっての!」
    と、ついには大声で双子を𠮟りつける。よく通る菅原の声は、大阪梅田の開けた駅構内の喧噪の中でもすぱりと突き抜け、一瞬だけ注目を集めた。


    「孝支くん、また目元赤なっとるやん。せやからタクシー拾おゆうたのに」
     ぐるぐると首に巻き付けられた薄青色のマフラーから半分覗く菅原の、その目元に治が自分の手の甲を宛がい、横から顔を覗き込んで両手で菅原の頬をさすさすと摩りながら包み込む。
    「コーシくん、肌白いほうやもんな。泣いとるみたいで心配になるわ」
     けど、そこが可愛えんよなぁなどと破顔しながら呟き、双子の片割れを肘で追いやりながら、侑は逆に菅原のマフラーを解きにかかる。
    「お待たせいたしました、こちらお部屋の鍵と――――」
     ホテルのフロントでチェックインをしている……ので、ヘタに目立ちたくないから左右から絡んでくる双子のことは自分に憑りついている怨霊だとでも思ってスルーしていた菅原も、解いたマフラーから露わになった自分の頬に侑がキスしようとしてきたところで、さすがに「わぁ!」と叫んで両腕を振り上げた。何事にも動じない訓練でも受けているようなフロントマンも、さすがにびくりと肩を震わせる。
    「あ、あの、お客様……」
    「はー……。すみません、なんでもないです。俺、双子の霊に憑りつかれてるみたいで、時々こう、ゾワゾワっと」
    「そ、そうなんですね。当ホテルは腕のいいアロマセラピストと契約しておりまして、よろしければお部屋からこちらの番号にお電話いただければ予約が取れますので除霊……、いえ、お疲れの体を癒されては」
     菅原に一喝されて数秒その場でステイしていた双子は、フロントと菅原のやり取りをそのすぐ後ろで聞きながらこそこそと耳打ちを交わし、とりあえず菅原のチェックインが済むのをおとなしく待った。
     実際には怨霊ではないので、双子の姿が気になっていたフロントマンも、だがプロ根性で一切彼らに視線を送ることはせず、菅原(たち)がその場を離れると、デスクの陰で額の汗をハンカチで拭った。翌月初め、彼がホテルロビーにある収納棚の雑誌類を入れ替えるその時になって、ようやくその双子の正体に気付くのだった。

     
    「マジでおまえらさ。自分たちが有名人だって、もう少し自覚してくんねーかな」
     チェックインしている時も、ロビーの傍らで雑誌を捲っていた少し年上のお姉さんがたが、自分が見ている雑誌の表紙と宮ツインズの姿を見比べて二度見三度見しているのにも菅原は気付いていた。a○a○だかnon-○だか、つい最近表紙を飾ったばかりの二人だ。
    「たぶんコーシくんのこと、俺らのマネージャーやって大概の人は思うとるようやから大丈夫やろ」
    「こないだ三人でおるとこ、すっぱ抜かれてもうたもんな」
     そうなのだ。ツインズ周辺、どちらか片方でも、平日休日拘らず常にひとりふたりのファンや、まずい時には雑誌記者がその中に紛れている。双子に対する菅原の態度が塩なので、妙な噂は書き立てられてはいないが、双子にやけに懐かれているあの青年は誰なのか。バレー関係者でもなし、稲荷崎関係者でもなし、そういえばアドラーズの影山選手とも親しかったような。日向選手とも……ということはバレー関係者なのか? という憶測だけが飛び交っている。菅原は一般人であるし男なので、決定的な瞬間が捕らえられるまでは深追いはされないという点においては安心「すっぱ抜かれて、大丈夫とかねーし!」……安心でもないらしい。
    「そもそも俺は、ホテルまで案内しろって言ったけど、何で中まで着いて来てんだよ」
    「俺ら怨霊なんやって。そりゃ憑かれとる当人の傍にずっとおらなあかんやろ」
     菅原が部屋に入るなり扉を閉めようにも、大型犬2匹にがっちりと扉を押さえこまれ、片方が正面から菅原をホールドすると、もう片方がオートロックの上に、更に簡単には逃げられないように内側から鍵を閉め、ドアガードをぱたりと閉じる。
    「あかんくないー! 怨霊なら退散しろー!」
     ギャーギャー騒いでも、こうなっては後の祭り。2対1では勝てようもないのも毎度のこと。
    「コーシくん、お風呂入ろな。体洗ったげるし♡」
    「狭いっ! 狭いから!」
     そうこうしているうちに菅原はベッドの上に押し倒され、後ろ向きに馬乗りになった侑に靴や靴下、下履きを取り去られ、侑が菅原の足を押さえている間に治が上半身の衣服を剥がし、それそれと二人に担がれバスルームまで運搬される。
     今どきのビジネスホテルは、1泊1万を切る安宿でもバスルームは外国風で広々としているところも多い。バスタブに全員で入るのはさすがに狭いが、菅原だけを湯船に入れて二人がかりで世話をするくらいなら、さほど無理ではない。
    「や、だ、や……!」
    「孝支くん、口閉じてへんと泡でむせてまうよ」
     だばだばとバスタブに湯を張りながら、髪を泡立て、上半身を泡立て、息の合った双子のコンビプレイは菅原を隅々まで綺麗にしていくのと共に、菅原も泡まみれの体を二人がかりの手のひらと指先で、洗浄目的で擦られるだけではなく弱いところを重点的に責められて、抵抗も虚しくあっという間に脳が痺れて甘い声が喉の奥から上がり始める。
    「冷え冷えで赤なっとる頬っぺたより、温まってほかほかにピンクな頬っぺたのほうがやっぱりええな♡」
    「寒さで渋なっとる表情も、俺らに弄られてとろとろになっとる表情もどっちも可愛え」
     普段は何かと競い合い、意地の張り合いをしている双子も、この時ばかりはひとつのおもちゃを大事に大事に二人で磨き合って喜びを共有する。
    「おまえらいっつも、俺の許可なしに~……」
     フロントで紹介してもらったアロマセラピストだかマッサージ師だかその辺は、この二人がいれば一切必要もない。元々他人に体を触らせるのが苦手な菅原が、双子にはなんだかんだと自由にさせてしまうのは、この強引さが原因であり、双子にとっては恐れを知らない性格が成功の鍵となっている。
    「気持ちええやろ? 気持ちええこと、嫌いな人間おらんやん」
    「孝支くん、眠かったら寝てまってもええよ」
    「うー…ん。っあ」
     温かい湯に浸かり、丁寧に体中を洗われ、敏感なところに触れられる時だけびくりと体が跳ね上がるが、全身の泡をシャワーで流された後、ふかふかのバスタオルで包まれると、菅原は寒風に吹かれている時同様眉間を顰めた渋い表情で瞬きしていたが、今は頬も体も温まった状態で単に眠いのだと知れる。
    「疲れとるんやなぁ」
    「宮城からやと長旅やし、コーシくんのお仕事大変そやもんな」
     再びベッドまで菅原を運び、そっと横たえ布団をかける。侑と治もその左右に寝そべり、片方が彼の濡れた髪を乾いたタオルで包んでやれば、もう片方が子どもをあやすようにポンポンと布団の上から彼の体を軽く叩いて寝かしつけを始める。
    「いつもは俺らが、コーシくんに子ども扱いされとんのになぁ」
    「こうゆうのもええな。まだ夕方やし、起きたらもっとほぐしたろ」
     菅原とはたかが年齢一個差だが体力オバケな双子も、菅原が寝付くのとほぼ同時にその横で寝落ちていった。

     数時間ののち菅原が目を覚ますと、やはりそれと同時に双子も目を覚まし、ベッドでの営みにグダグダと流れ込む前に、体力を取り戻した菅原がすかさず逃げて身支度を整える。
    「腹減った~。うまい飯食えるとこ連れてけよ」
    「どうせなら俺んとこ行こ。店貸し切りにするし」
    「こうゆうとき、飯屋やってる身内がおると便利やよな」
     そうして地下鉄に乗って数駅先のおにぎり屋へ足を運び、治は菅原に新作を披露するのと試作品をレポさせたりする。そして明日に試合を控えた侑とはここでバイバイ。泣く泣くそれを受け入れるしかない侑も、プロであるので試合前日セックス禁止なのは重々承知。じゃあ俺も、ホテルに帰るわという菅原も、
    「あすこのビジホ、朝食はトーストかご飯に納豆やろ。朝もここで食べてけばええんやない?」
    と、おにぎり屋店主に誘われ、結局店の二階に二人で泊まって、明日の朝ホテルに戻ってチェックアウトをする算段となる。
    「それならもうさ、こっち来るとき俺ホテル取んなくてもよくね?」
     ポロっと本音を呟いてしまってから菅原はハッとし、今の聞いてたかな? という顔で治の顔を恐る恐る見上げると、きょとんとした顔つきが目が合った瞬間にんまり笑顔に変わり、
    「「ずうっと前から、そう言うとったやん」」
    と、試合観戦後、侑も加えてステレオ放送で同じことを言われた。




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  • 2024年03月07日 00:47
    【松菅】何か嫌なことがあった日は、「今日はさぁ、…手荒く、抱いてくんね?」って誘う菅原。そのまま事情は聞かず、事に及ぶ松川だけど手荒くしないでゆる〜く動いてひたすら惚けさせる方向に連れていって、嫌な記憶を一時だけでも忘れさせてくれる松川。
    お題ガチャ『喧嘩するほどフツーに仲が悪い二人』https://odaibako.net/gacha/9984


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    『Just because デカダンス,』


     菅原が「酷くして」と言ってくる日は、怒りもしくは悲しみといった部類の感情で心のショーケースが埋め尽くされ、そのケースのガラスの隙間からポタポタと水が滲み出し決壊寸前でいる時だ。
     そんな時、俺はもちろん「いいよ」と答え、理由も訊かず、だが菅原の言うとおりにはしない。手酷く、手荒く、雑に扱ってと言われる程、優しく甘く、じっくりと融合を味合わせながら菅原のカラダを俺で満たしていく。
     手荒く雑に抱くだけなら誰でもできる。だから、菅原のイイ場所を重点的に責め、俺にしかできない、俺しか知らない彼の好む体位や触れ方で、蕩けて泣くまで抱き潰すセックスは、それこそ菅原が望んだ「酷くして」だから。
    「もうヤダ……まつかわ、ひどい……」
     感じすぎてとろとろなのぼせ顔で、甘い吐息と共に仕打ちを責められて俺も満足する。
    「これ以上に酷いことないでしょ?」
     未だ鼻にかかったぐずり声を小さく吐き続けている菅原の、額に貼り付いた髪を掻き分けてやりながら優しく頭部を撫でる。
    「ないよ、マジで……なんかもう、何もかも大したことねーわ」
     嫌な事や避けたい事は、明日大学に行けばまた現実として菅原を苛めるのだろう。今だけは、水を吸いきってずっしりと重くなった固いスポンジをぎゅうっと絞って軽くふわふわの状態に戻してやるように、菅原をじわじわと侵食していた苛みのあれこれを彼の頭の中から追い出してやる。
    「俺、便利屋だから、いつでも言って」
    「おまえがいてくれて、良かったのか最悪なのか」
     菅原は男も女も老若拘りなく受け入れ、ひとつひとつ丁寧に心のショーケースに収納されているそのコレクションは、彼自ら見せびらかしはしないが、見せてくれと言えば惜しげもなくすべてを公開してくれる。
     彼の心の広さは果てしなく、次々と新しいものが入ってきてはすぐに倉庫に仕舞われてしまうものもある。今日みたいに本人が酷い状態になっても、その原因であるコレクションを、彼から捨ててしまうことはない。
     コレクションとは違うか。彼は収集家ではないから。彼の元に、宝石もガラクタも勝手に集まってきてしまうのだ。もしくは誰かが持ってきて、「これ仕舞っておいて」と預けていってしまうのだ。
     俺は今どの辺に仕舞われているのかな。人に見える場所には置いておかないか。俺たちの関係は、誰にも内緒だから。
     ひとつのパーツがあまりに多くの面積を占めていると、突然消えてしまった時に打撃を受けるのは菅原本人。スペース配分をうまくやらないとすべてが狂う。俺が消えたら、菅原は一体誰にその隙間を埋めてもらうんだろう。俺の代わりが誰かで簡単に埋められてしまうのは癪だが、かといって俺だけで満たされてくれとも思わない。菅原という人間は、俺ひとりの手には負えない。有り余る。
    「いつでもポイしていいから、最悪なんて言わないで」
     呼吸が落ち着いてきた菅原の髪を相変わらずゆるゆると撫でながらそんなことを言うと、菅原は真面目な顔して俺の顔をじっと見る。
    「……おまえ、誰にでもそんなふうに言うの?」
    「え……っと?」
     問い返されるとは思ってもいなかった。誰にでもそんなふうに?
     菅原に対して今つぶやいた言葉の内容を、自分の中で反芻する。誰にでもそんなこと言うかな? 言わないな。だって、大抵自分の方から関係に飽きるし。ポイするのは自分の方だ。
     菅原に釣られて、自分も素面になる。菅原は、誰にも縋らないからポイされるのは俺の方だと思ってたけど、彼はそんな人間じゃなかった。そして俺も、誰のことも必要とはしないけれど、菅原からは必要とされたい。
    「菅原くんだけ、特別みたい」
     そんなことを真面目に言ってみたって、誰にでも同じように言ってるんだと菅原は思うのだろう。別にそれでもいい。
    「どんなに酷くしてもいいから、俺のこと心の端に置いといて。役に立つから」
     情事のあとの睦言として忘れてくれていいのだが、そう言って口角を緩く引き上げると、菅原は、
    「いつも松川の方が俺に付き合わされてんだろ。……お前の方こそ、俺を棄てんなよ」
    と言った。
     


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  • 2024年02月10日 21:59
    【黒菅】同じ大学に通うふたり/付き合ってない/黒尾→菅原/両想い?
    「26. お願いをするときに「何でもするから!」と言うのが口癖の菅原。本当になんでもしてくれるのか、と問い詰めたくなるが怖がられそうなので思いとどまった黒尾。」
    お題ガチャ『ズルい君に今日も片想い』https://odaibako.net/gacha/7527


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    『何でもするから』


    「何でもすっからさぁ~」
     物騒なセリフが聞こえてきた。これが菅原の声でさえなければ、何も物騒に思わないのだが、過去に自分が同様のセリフを彼から言われた時にかなり物騒な考えに至ってしまったのもあり、再三菅原には言い含めておく必要があると思っていたのだ。
    「はいストップ~」
     間に合ってよかった。菅原から何事かを頼まれていた同学部の男は、今まさに菅原に「何でも? ほんとに?」と食い付いていた。何を言おうとしていたのかは後で詳しく訊くとして。
     お前はもう用なしだよしっしっと追い払う前に、その男子は俺が登場するとぎょっと慄いてそそくさと逃げていく。
    「あっ! 待ってよ、俺のお願いきいてくれんだろ!」
    「お願いってなに、スガちゃん」
    「黒尾~~~~。邪魔すんなよな」
     振り向きざま菅原がジト目で睨み、片足で俺のケツを軽く蹴り上げる。
    「何でもするとか、簡単に言うんじゃないよって言ったでしょーが。ほんとに無理なこと言われたらどーすんだよ」
    「そんなのわかってるって! ヘンな交渉してくるようなヤツには頼んでないし」
     そうは言うが、一見おとなしそうに見えても、とんでもない交渉を持ち掛けてくるヤツだっている。菅原の目が節穴だという訳ではないが、人の内面なんて普段の言動からは判別付けられないんだから。
    「そういうところ、スガちゃんは心配なんだよな」
    「んなこと言ったって、黒尾はこの学科取ってねーべ。黒尾にお願いできりゃ、俺だって他には頼まねーよ」
     教育学部に進んだ菅原の毎日は忙しい。単位を取るのとは別に、先生になるための授業も受けるのだから当然だ。
    「俺にできることはないの?」
    「黒尾に~?」
    「何でもするから」
    「何でも?」
    「うん」
     口にした瞬間は気付かなかった。”何でもする”なんて、安易に言うなって菅原に注意したばかりなのに。
    「何でも……」
     でも俺は、菅原に頼まれたら本当に何でもするだろう。俺のために死んでくれと言われたって、死ぬのは回避するかもしれないけどその解決法は真剣に考える。
     考え込む菅原を目の前にしても、俺に焦りはない。何を頼まれたって叶えてやりたいと思う。それは相手が菅原だからだ。他の誰に頼まれたって、こんな安請け合いはしない。
    「俺の、」
     願いを思い付いたのか、菅原は俺の顔を見上げて言葉にしようとしたが、その前に慌ててきょろきょろと周囲を見回す。講義開始時間は様々だから、ちらほらと学生の姿は見受けられても、終了後のこの教室に向かってくる輩はいない。
    「ちょっとだけ、頭撫でて」
     菅原は俯き、小さい声で言った。
     聞き間違えじゃないかと俺は思ったが、相対したまま菅原に顔を俯けられたら、頼まれなくてもそうするだろう。ひょこっとひと房跳ね上がっている菅原の頭頂部の髪を撫で付けるように、自分の右手のひらをそっとそこへ乗せ、頭の形を確かめるように往復させる。すると、緊張からか僅かに強張っていた菅原の肩から力が抜け、俺の手のひらの動きに同調するように空気も柔らかく揺らめき始める。
     その揺らめきにのせ、菅原の体が傾いで、俺が引き寄せるまでもなくその頭部が俺の胸の中に納まった。そして遠慮なく菅原の両腕が俺の背中に回される。
    「う~~」
     辛いことでもあったのか、俺に縋って小さく呻き声をあげた。
    「スガちゃん、ぎゅってしてもいい?」
     訊けば、こくこくと頷くから、抱き潰さないように俺も彼の背中に両腕を回して力を籠める。片手で彼の後頭部を撫で、俺のカラダの中に取り込みたいという想いでぎゅうっと包み込む。こんなの、好きって伝えてるようなものだ。俺はまだ自分の気持ちを、菅原に伝えていない。
    「くろ、お」
     菅原が身動ぎし、俺はハッとして慌てて力を緩める。苦しかったのか、腕の中の菅原が顔をあげると、少し涙目になっている。
    「ごめん、強くし過ぎた」
     焦り顔を見せる俺に、菅原はへへっと笑って首を横に振り、「ちょっと楽になった」と言った。
    「忙しくって、もう死にそうって思ってたから」
     強く抱き締めたせいで、菅原の目元はほんのり赤く色付いている。
     その時俺は、どんな顔を彼に見せていたのか分からない。数秒見詰め合い、ふっと菅原が切なげな、物欲しげな表情を見せ、目線がちらりと俺の唇を捕らえたので、それはそういうことだと思う前に体が反応していた。
     空き教室の入口の扉の陰。菅原は俺にキスされても逃げるどころか、自ら顎を上げて応えてくれた。
     これも菅原の頼み事だった? 分からないけど、菅原は満足げに微笑んで、俺の左右の手を片方ずつ握って再び俺の胸に頬を寄せた。







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  • 2024年02月10日 21:57
    【月菅】両片想い/潔子さんの扱いが酷く見えたらすみません。当て馬ではないです、とお断りしておきます。
    「この想いを告げることはないと心に決めているが、菅原にお似合いの恋人ができたら絶対に後悔するだろうな、と思う月島。」
    お題ガチャ『恋なんてしたくなかった』https://odaibako.net/gacha/9884


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    『高嶺の花』


     清水潔子さんというマネージャーは、僕が今まで接してきた女子とは違うと勝手に思い込んでいた。
     彼女が試合中に菅原さんの手を握った時、その印象も一気に崩れた。菅原さん自身も嫌ではなかった様子だったし、この二人はそのうち付き合うのだろうと思っていた。
     僕はそれまで、女子に対して恋愛感情を抱いたことがなかった。もちろん男子に対してもだが、もしかしたら清水さんと菅原さんは、自分にとってどこか特別なのではないかとその時に気付いた。信頼し合っている二人の姿を目の前にして、心がみしりと音を立てたからだ。
     どちらか一方が自分にとっての特別、とは、その時には思わなかった。その二人はとてもお似合いで、二人が一緒に並んでいるだけで、その温かい空気を分け与えられている気分になったし、清水さんが他の部員にも同様に気遣いをみせると邪魔したい気持ちにもなった。
     なぜだろう。清水さんは他の女子と違って、恋愛などに左右されない凛とした人でいて欲しかったのに。今では菅原さんの傍にいて欲しいと思っているし、菅原さん以外の男子に関わらないで欲しいと思っている。
    「月島~!」
     菅原さんは、よく僕を構いに来る。最初の頃は、なんだろうこの人はと思っていたが、清水さんとこの人は自分にとってどこか特別なのだと感じるようになってからは、この人の声を耳にしただけで、心がふわりと浮き立つ自分がいた。
     でも、いいのだろうか。僕は男だし、菅原さんの恋愛の相手にはならないとしても、清水さんは僕のことを、僕に限らず影山や日向に構い倒している菅原さんの姿を見ても、何とも思わないのだろうか。何とも思わないのだろう。逆に、彼女目当てで声を掛けてくる田中さんや西谷さんへの態度がその答えだ。そういう人だ清水さんは。だから僕は彼女が好きなのだ。
    「菅原さん」
    「ん?」
    「菅原さんは、清水さんのことが好きなんですよね」
    「え?」
     後先考えず、口にしてしまった。してしまったというより、口から勝手に出てしまったという方が正しい。後輩から急にそんなことを言われたって困るだろう。菅原さんは言葉に詰まっていた。
    「そりゃ、好き、、だけど」
     なんでそんなことを訊くんだ? と言いたげな少し焦った表情。あれ、おかしいな。僕は二人が二人でいるのを祝福している筈だったのに、菅原さんの口から清水さんが「好き」という言葉を聞かされただけで、胸に大穴を開けられたように強い衝撃と虚無感が襲ってきた。
    「もしかして月島、清水のことが好きなの?」
     僕は清水さんが――――
    「――――」
     その問いに対する返事は、肯定の筈だった。でも、どうやら違ったんだ。人に訊かれて、自分で答えようとして、初めてそれに気付くなんて。


    「菅原さんは、清水さんのことが好きなんですよね」
     月島にそう訊かれて、俺は言葉に詰まった。頭が真っ白になった。
     なんでそんなこと訊くんだ? 俺が「うん」って言ったらどうなるんだ? もしかして月島は、
    「もしかして月島、清水のことが好きなの?」
     いや、訊くな! 訊くなよ俺! と、既に訊いてしまってから後悔した。月島は茫然として、その問いに答えを出そうとしている。
    「――――」
     しかし月島は、口をただ開けただけでそこから答えが音として発せられることはなかった。
     ”好き”という言葉を簡単に吐けないくらい、
    (好き……なのか?)
     そういう感情に疎い、疎いというか自分には不要だと思っているようなヤツだと思っていたから、月島のその反応を目の前にして俺は愕然とした。そして気付いてしまった。
    「……」
     俺は月島が、そういう意味で好きだったのか。
     今更それに気付いても、そもそもすぐに気付いていたって、この気持ちを俺から本人に告げることはなかっただろう。この先も、告白はしない。今この瞬間に、できなくなってしまった。
    「そっかそっか。清水か~。おまえは自分を甘やかすやつだと常々思ってたけど、ほんとは自分に厳しいもんな。あえて険しい道を選んでるのか? ライバルは多いぞ? でも、俺は応援してやるからな」
     カラ元気で懸命に笑顔を演出しようとした。月島は俺の顔を見ているようで、その後ろに清水の姿を想像しているようでもあったから、きっと俺の作り笑顔には気付いていないだろう。おっと、アハハと笑い終わりに大きく息を吸ったらヤバイ、喉がひくついて嗚咽のような変な声が出そうになった。


    「俺は応援してやるからな」
     そう言って無理して笑おうとしているその人を見て、すぐに否定しなければと思った。もし僕が清水さんを本気で好きだと思われたら、この人は身を引いてしまうのではないだろうか。
    「僕は――――」
     この人が身を引くということは、二人は別れるということだ。
     ふと、やましい気持ちが頭を過った。
     菅原さんと清水さんが、今付き合っていようがいまいが、僕がしゃしゃり出てきたことで菅原さんは冷静さを取り戻すのではないだろうか。この人は恐らく恋愛の優先順位が低い。
    「僕は、」
     菅原さんが好きだ。清水さんがこの人の傍にいてほっとするのは、他の女子とは違って清水さんがまともな人だからだ。菅原さんから清水さんに告白でもしない限りは、清水さんはそういう関係を希望しないだろうと、勝手に確信しているからだ。他の女子からの”壁”として、清水さんには菅原さんの傍にいて欲しかったのだ。


    「僕は、清水さんのことが」
     月島が答えを出そうとしている。もしかしたら、俺が「好きなの?」なんて訊かなければ、そういう気持ちにも気付かなかったかもしれない。でも、だって、月島が、俺が清水を好きなんでしょ、なんて訊いてくるから。


    (菅原さんが、)
    (月島が、)
     この先誰かと付き合うことになって、その相手がいくらお似合いの人であっても。
    (僕は)
    (俺は)
     後悔するんだろうな。と、いつかの未来を想像して心が苦しくなる。だけど、
    (僕じゃない)
    (俺よりも)
     この人には相応しい相手がいるだろうと思うから、自分の想いは伝えられない。

     恋なんてしたくなかった。

     





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