桐沢ふき(はつしま)

shipper。はつしま@hatsushima1です。
カーサーちゃんと韓国ドラマ映画よろず
オフラインの名前は桐沢ふきです。
最近K2の譲テツにはまりました。

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投稿日:2022年06月01日 06:52    文字数:3,668

愛について

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JWDS。湖畔のデート。お付き合い始めました。

タイトルはYOIのメインテーマより。

※6/4のレカペ2で発行する新刊「あなたへ花を」にこちらの作品を再録いたします。
ご興味がありましたらこちらをご覧ください。
https://pictbland.net/items/detail/1780205


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愛について

オールを水面に垂直に、水面に落とすときは静かに。
ジュウォンは、進行方向を背に、真ん中の木の出っ張りに足を置いて、踵を軸に上半身の体を使って、前かがみになったり、後ろに重心を倒しては、熱心にボートの櫂を漕いでいる。
魚が川を泳ぐように、水をかいくぐる櫂は音を立てて押し流す。
ボート競技の教科書があるなら、そこに書いてある通りの見本のような漕ぎ方だろう。
岸を離れて湖の真ん中へ。
運動ニューロンに従って一心に身体を動かすジュウォンのおかげで、ドンシクの乗ったボートは、ふらつきも、曲がりもせず、思った方向へと一直線で進んでいく。
真っ直ぐ進むのに、理由がいりますか、という横顔だった。おかげで、浮きの代わりのブルーのライフジャケットを着ていても、ハンサムはちっとも目減りしない。
交代を言い出すのは、もう少し先にことになりそうだ、と思い、ドンシクは恋人の顔から視線を離して湖畔の光景を眺める。
水ぬるむ春だが、山肌にはまだ冬枯れのままの木々が多かった。


数日前、たまにはデートらしいデートをしましょうという話になった。
根気はあるが体力に欠ける中年男と体力はあっても仕事で疲弊しきった青年がふたり、人目を避けてさあどこへ行こうかという話である。
賑やかな場所で逢引きをする、というベーシックな選択肢には、必ずといっていいほどレストランでのランチだの映画を見るだのというプランが組み込まれてしまう。
点と線をつなぐだけの移動は短く、その気になったタイミングで腕を組むとか、流れでキスをするということにはならない、こともないが。大抵の日は、せいぜいが暗い映画館の中で手を繋ぐくらいのもので、それさえも、暗がりの中でジュウォンが眠りに就くための導入のようなものでしかなくなってしまう日もある。
それなら互いの家で会うのが一番気楽では、とジュウォンは言うけれど、足の痛まない調子のいい日というのは年に半分あればいいというドンシクは、生まれた時代のせいか、天気のいい日に、出かける理由があるなら屋外に出かけたいという気持ちの方が大きいのだった。
家の休みは休日と重なることはほとんどなく、小さな頃には何度か、天気が良い日に学校を休んで大きな公園に出かけたことがあった。青葉の茂る木々の下や、赤や黄色に染まる紅葉を眺めながら、レンタル自転車を四人で借りて、広い園内を隅から隅まで乗り回した。くたくたになったユヨンを父がおぶい、ドンシクは母と手を繋いだ。あの景色には、父と母、ユヨンがいた。
外に行きませんか、という話に、ジュウォンはNOとは言わなかった。


「そういえば、手漕ぎボートって、恋人とふたりで乗ると別れるらしいですよ。」
「………え?」
ジュウォンが腕を動かすのをいきなり止めて、こちらを見た。
不意に止まった櫂は通していた輪を潜って湖に滑っていくので、船の推進力は突然に鈍くなった。
「ドンシクさん、僕と別れたいんですか。」と真剣な顔つきをするので、つい笑ってしまう。
「とにかく、今のは冗談ですから、オールは落とさないでくださいね。」
半ば沈んだ櫂を水の中から引き上げ、さあ持って、とジュウォンに渡すと、少し預かっていてください、と言って、ジュウォンが腕と肩と背筋を伸ばした。
「本当にあなたと別れたいと思ってるなら、わざわざ天気のいい日にデートに誘いませんよ。」と付け加えると、不安そうな面持ちだったジュウォンがほっとした顔を見せる。
ドンシクはそよ風に髪がなびかせているジュウォンを見つめる。
こういう時に隣に座ってジュウォンの髪を撫でたり出来ないのが狭いボートの難点だ。
ジュウォンは考え込むような顔をして、「ドンシクさん、」と名前を呼んだ。
「うん?」
「僕に、直すところがあったら言ってください。」と言って、腕を目いっぱいに伸ばし、オールを持ったドンシクの手に手を重ねた。
「今すぐ位置を交代したいなら替わりますし。水に入って泳げというなら泳ぎます。」
付き合い始めて知ったのだけれど、ジュウォンは時々、真面目な顔でおかしなことを口走る。ドンシクは笑いを堪えながら、「今日は、タオルと着替えを、家から持ってきてましたっけ。」と合いの手を入れる。
ジュウォンは「着替えは、車に戻ればあります。」と答える。唇を窄めて答えているところを見るに、今日は忠清道の家に泊まっていく心積もりがあったのだろうか。着替えを置いておけばいいのに、と思うけれど、それは互いに口に出来ないでいた。
署長の家という考えからなかなか抜け出せないせいもあるだろうけれど、ジュウォンの方には、まだ他にも理由があるのかもしれなかった。
「ドンシクさん、僕の横に来ませんか。」
「肘をぶつけられそうだし、狭いのは嫌です。」
「そこは気を付けますから。」とジュウォンが手を伸ばし、こちらに預けた櫂を受け取った。
「仕方ない人ですね。」腰を落としたまま向かいに座ると、思っていた通り、この狭さでジュウォンの腕や肘が、こちらの太腿や腹に当たりそうになる。
「俺とあなたで左右を受け持ったらぐるぐる回り始めそうですね。」
「オールの漕ぎ方は心得てます。」
普通の男ならば、ここで、僕に任せてください、と胸を張るところだ。
表情を読ませない、いつものあの顔つきで答えるジュウォンは、まるで共に仕事をしていた頃の雰囲気で、ドンシクはまた笑ってしまう。
「なんですか?」
「もしかして、ボートを漕ぐの、あまり好きじゃなかった?」
「いえ、別に。好きとか嫌いとかは、考えたことがなかったです。」とジュウォンは唇を舐めた。喉が渇いたのかもしれない、と思って、ドンシクはナップサックの中から準備していた水筒と水のボトルを出して、どちらがいい、とジュウォンに聞いてみた。
水筒の中には、朝に沸かしたばかりのコーヒーが入っている。水のボトルは、ジュウォンのために数本持ってきていた。
「どちらかしかないんですか?」
「茶を入れた水筒も持ってこようとも思ったんですけど、重いし、途中で買う方がいいかと思って置いてきました。」
二十年ぶりくらいに発掘した大きめの水筒だった。二リットルは入る容器に、沸かした茶を入れたら半分くらいの量しか入らず、持ち歩くたびにちゃぷちゃぷと威勢の削がれる音がしたので置いてきたのだ。
水のボトルをください、とジュウォンが言ったので、ドンシクは暖かなコーヒーを啜ることにした。
岸辺では、家族連れが湖の端に沿ってボートを漕いでいる。
「そういえば、さっき思ったんですけど、」とドンシクが切り出すと、「何ですか?」とジュウォンが言った。
「デートで手漕ぎボートを選んだ恋人たちがその後で別れてしまう心理っていうのが、分からなくもないと思って。ボートを漕ぐ方はいいところを見せたくて、さっきのあなたみたいに、櫓を漕ぐことに一心に集中するものでしょう。だから、ボートでのんびり喋ったり何かを食べたりしたいという目的で来た方は、思っていた光景と違う景色を見ることになって、がっくり来ることもあるでしょう。」
「確かに、ボートを漕いでいる間は、ドンシクさんのことを忘れていたかもしれません。」
馬鹿正直な恋人に、とうとうドンシクは噴き出してしまった。
「まあ、あなたの意外な特技が知れて面白かったですけど。……身体の使い方、慣れていますね。もしかして、経験者?」
「昔、少しだけ。オールで尻を叩かれながら練習したので、嫌でも覚えます。ちなみに、溺れた時の対処を学ぶために何度か川に落とされましたから、ボートがひっくり返っても一応岸まで泳げます。ドンシクさんは?」
「俺も、ボートは経験がないですけど、忘れてなければ泳げないことはないかな。クロールと、それから背泳ぎが出来ます。俺たち、ボートが逆さになっても、岸に泳ぎ着けますよ。」
「足が攣らなければ、そうですね。ボートの横の浮き輪があることは、覚えておいてください。」
あなたが使って下さいと真顔でジュウォンが言ったので、ドンシクは九十年代に流行ったタイタニックを思い出した。沈む舟に取り残される恋人たち。
「舟がひっくり返らないおまじないをしましょうか。」とドンシクが言うと、ジュウォンは心得顔でドンシクからのキスを待って目を閉じて、ふたりで唇を合わせた。
「もう一回。今度は、僕らが別れないために。」というジュウォンに、ドンシクは「ええ。」と頷いた。
目を開けて、互いに、顔を見合わせて笑うと、冷たい風がすうと水面を吹き抜ける。
向こう岸まで行って、それから戻って来ることにしましょう、と言うドンシクの提案に、ジュウォンが、分かりました、と言って頷く。
「競う相手も、いつまでに戻るかも決まってないんだから、今日はゆっくり行きましょう。」
「そうですね。」
水面は光を反射して、きらきらと輝いている。
ジュウォンが漕ぐ手漕ぎボートは、その中を真っ直ぐ線を描いて進んでいった。




 
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オールを水面に垂直に、水面に落とすときは静かに。
ジュウォンは、進行方向を背に、真ん中の木の出っ張りに足を置いて、踵を軸に上半身の体を使って、前かがみになったり、後ろに重心を倒しては、熱心にボートの櫂を漕いでいる。
魚が川を泳ぐように、水をかいくぐる櫂は音を立てて押し流す。
ボート競技の教科書があるなら、そこに書いてある通りの見本のような漕ぎ方だろう。
岸を離れて湖の真ん中へ。
運動ニューロンに従って一心に身体を動かすジュウォンのおかげで、ドンシクの乗ったボートは、ふらつきも、曲がりもせず、思った方向へと一直線で進んでいく。
真っ直ぐ進むのに、理由がいりますか、という横顔だった。おかげで、浮きの代わりのブルーのライフジャケットを着ていても、ハンサムはちっとも目減りしない。
交代を言い出すのは、もう少し先にことになりそうだ、と思い、ドンシクは恋人の顔から視線を離して湖畔の光景を眺める。
水ぬるむ春だが、山肌にはまだ冬枯れのままの木々が多かった。


数日前、たまにはデートらしいデートをしましょうという話になった。
根気はあるが体力に欠ける中年男と体力はあっても仕事で疲弊しきった青年がふたり、人目を避けてさあどこへ行こうかという話である。
賑やかな場所で逢引きをする、というベーシックな選択肢には、必ずといっていいほどレストランでのランチだの映画を見るだのというプランが組み込まれてしまう。
点と線をつなぐだけの移動は短く、その気になったタイミングで腕を組むとか、流れでキスをするということにはならない、こともないが。大抵の日は、せいぜいが暗い映画館の中で手を繋ぐくらいのもので、それさえも、暗がりの中でジュウォンが眠りに就くための導入のようなものでしかなくなってしまう日もある。
それなら互いの家で会うのが一番気楽では、とジュウォンは言うけれど、足の痛まない調子のいい日というのは年に半分あればいいというドンシクは、生まれた時代のせいか、天気のいい日に、出かける理由があるなら屋外に出かけたいという気持ちの方が大きいのだった。
家の休みは休日と重なることはほとんどなく、小さな頃には何度か、天気が良い日に学校を休んで大きな公園に出かけたことがあった。青葉の茂る木々の下や、赤や黄色に染まる紅葉を眺めながら、レンタル自転車を四人で借りて、広い園内を隅から隅まで乗り回した。くたくたになったユヨンを父がおぶい、ドンシクは母と手を繋いだ。あの景色には、父と母、ユヨンがいた。
外に行きませんか、という話に、ジュウォンはNOとは言わなかった。


「そういえば、手漕ぎボートって、恋人とふたりで乗ると別れるらしいですよ。」
「………え?」
ジュウォンが腕を動かすのをいきなり止めて、こちらを見た。
不意に止まった櫂は通していた輪を潜って湖に滑っていくので、船の推進力は突然に鈍くなった。
「ドンシクさん、僕と別れたいんですか。」と真剣な顔つきをするので、つい笑ってしまう。
「とにかく、今のは冗談ですから、オールは落とさないでくださいね。」
半ば沈んだ櫂を水の中から引き上げ、さあ持って、とジュウォンに渡すと、少し預かっていてください、と言って、ジュウォンが腕と肩と背筋を伸ばした。
「本当にあなたと別れたいと思ってるなら、わざわざ天気のいい日にデートに誘いませんよ。」と付け加えると、不安そうな面持ちだったジュウォンがほっとした顔を見せる。
ドンシクはそよ風に髪がなびかせているジュウォンを見つめる。
こういう時に隣に座ってジュウォンの髪を撫でたり出来ないのが狭いボートの難点だ。
ジュウォンは考え込むような顔をして、「ドンシクさん、」と名前を呼んだ。
「うん?」
「僕に、直すところがあったら言ってください。」と言って、腕を目いっぱいに伸ばし、オールを持ったドンシクの手に手を重ねた。
「今すぐ位置を交代したいなら替わりますし。水に入って泳げというなら泳ぎます。」
付き合い始めて知ったのだけれど、ジュウォンは時々、真面目な顔でおかしなことを口走る。ドンシクは笑いを堪えながら、「今日は、タオルと着替えを、家から持ってきてましたっけ。」と合いの手を入れる。
ジュウォンは「着替えは、車に戻ればあります。」と答える。唇を窄めて答えているところを見るに、今日は忠清道の家に泊まっていく心積もりがあったのだろうか。着替えを置いておけばいいのに、と思うけれど、それは互いに口に出来ないでいた。
署長の家という考えからなかなか抜け出せないせいもあるだろうけれど、ジュウォンの方には、まだ他にも理由があるのかもしれなかった。
「ドンシクさん、僕の横に来ませんか。」
「肘をぶつけられそうだし、狭いのは嫌です。」
「そこは気を付けますから。」とジュウォンが手を伸ばし、こちらに預けた櫂を受け取った。
「仕方ない人ですね。」腰を落としたまま向かいに座ると、思っていた通り、この狭さでジュウォンの腕や肘が、こちらの太腿や腹に当たりそうになる。
「俺とあなたで左右を受け持ったらぐるぐる回り始めそうですね。」
「オールの漕ぎ方は心得てます。」
普通の男ならば、ここで、僕に任せてください、と胸を張るところだ。
表情を読ませない、いつものあの顔つきで答えるジュウォンは、まるで共に仕事をしていた頃の雰囲気で、ドンシクはまた笑ってしまう。
「なんですか?」
「もしかして、ボートを漕ぐの、あまり好きじゃなかった?」
「いえ、別に。好きとか嫌いとかは、考えたことがなかったです。」とジュウォンは唇を舐めた。喉が渇いたのかもしれない、と思って、ドンシクはナップサックの中から準備していた水筒と水のボトルを出して、どちらがいい、とジュウォンに聞いてみた。
水筒の中には、朝に沸かしたばかりのコーヒーが入っている。水のボトルは、ジュウォンのために数本持ってきていた。
「どちらかしかないんですか?」
「茶を入れた水筒も持ってこようとも思ったんですけど、重いし、途中で買う方がいいかと思って置いてきました。」
二十年ぶりくらいに発掘した大きめの水筒だった。二リットルは入る容器に、沸かした茶を入れたら半分くらいの量しか入らず、持ち歩くたびにちゃぷちゃぷと威勢の削がれる音がしたので置いてきたのだ。
水のボトルをください、とジュウォンが言ったので、ドンシクは暖かなコーヒーを啜ることにした。
岸辺では、家族連れが湖の端に沿ってボートを漕いでいる。
「そういえば、さっき思ったんですけど、」とドンシクが切り出すと、「何ですか?」とジュウォンが言った。
「デートで手漕ぎボートを選んだ恋人たちがその後で別れてしまう心理っていうのが、分からなくもないと思って。ボートを漕ぐ方はいいところを見せたくて、さっきのあなたみたいに、櫓を漕ぐことに一心に集中するものでしょう。だから、ボートでのんびり喋ったり何かを食べたりしたいという目的で来た方は、思っていた光景と違う景色を見ることになって、がっくり来ることもあるでしょう。」
「確かに、ボートを漕いでいる間は、ドンシクさんのことを忘れていたかもしれません。」
馬鹿正直な恋人に、とうとうドンシクは噴き出してしまった。
「まあ、あなたの意外な特技が知れて面白かったですけど。……身体の使い方、慣れていますね。もしかして、経験者?」
「昔、少しだけ。オールで尻を叩かれながら練習したので、嫌でも覚えます。ちなみに、溺れた時の対処を学ぶために何度か川に落とされましたから、ボートがひっくり返っても一応岸まで泳げます。ドンシクさんは?」
「俺も、ボートは経験がないですけど、忘れてなければ泳げないことはないかな。クロールと、それから背泳ぎが出来ます。俺たち、ボートが逆さになっても、岸に泳ぎ着けますよ。」
「足が攣らなければ、そうですね。ボートの横の浮き輪があることは、覚えておいてください。」
あなたが使って下さいと真顔でジュウォンが言ったので、ドンシクは九十年代に流行ったタイタニックを思い出した。沈む舟に取り残される恋人たち。
「舟がひっくり返らないおまじないをしましょうか。」とドンシクが言うと、ジュウォンは心得顔でドンシクからのキスを待って目を閉じて、ふたりで唇を合わせた。
「もう一回。今度は、僕らが別れないために。」というジュウォンに、ドンシクは「ええ。」と頷いた。
目を開けて、互いに、顔を見合わせて笑うと、冷たい風がすうと水面を吹き抜ける。
向こう岸まで行って、それから戻って来ることにしましょう、と言うドンシクの提案に、ジュウォンが、分かりました、と言って頷く。
「競う相手も、いつまでに戻るかも決まってないんだから、今日はゆっくり行きましょう。」
「そうですね。」
水面は光を反射して、きらきらと輝いている。
ジュウォンが漕ぐ手漕ぎボートは、その中を真っ直ぐ線を描いて進んでいった。




 
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