桐沢ふき(はつしま)

shipper。はつしま@hatsushima1です。
カーサーちゃんと韓国ドラマ映画よろず
オフラインの名前は桐沢ふきです。
最近K2の譲テツにはまりました。

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投稿日:2022年06月09日 23:59    文字数:2,970

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怪物。バレンタイン後のJWDSです。ベッター再録。
ドンシクさんが色々年相応です。
わたしたちの可愛いジュウォナが脱衣ゲームなんて概念を知ってるはずがない……って思う方はブラウザバック推奨。Yes!イギリス育ち!!

素敵表紙はこちらからお借りしています >>> https://www.pixiv.net/artworks/94487630
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「ハン・ジュウォン警部補、ジュウォンくん、ねえ、ジュウォナ……何が楽しいんですか、こんなことをして。」
「僕は楽しいですよ、凄く。」
ジュウォンの顔は、わずかに綻んでいる。
キッチンでネルシャツのボタンを外すドンシクの胸板に注がれるジュウォンの視線はあからさまで、こちらが気恥ずかしくなるほどだった。
「これじゃあ、いくらなんでも寒いんですけど。」
今ドンシクを守っているものは、トランクスに肌着、それからかろうじて股引とスラックスだ。署長の形見分けの品だが、こんな風に脱がされる羽目になるとは思ってなかった。どうするんだ、と迷っても後の祭りだ。
少し身体が固まって来た、とドンシクが肩を回すと、すかさず「じゃあ僕のジャケットを着てください。」とジュウォンが着て来たジャケットを差し出した。……ジャケットはジュウォンの身体にぴったり合うように誂えられていて、しかも肌着の上に羽織るものだから全くもって暖かくない。
「こんなのがいいんですか?」とからかうように言うと、白黒の石を指に挟んだままのジュウォンからは「ええ、まあ。目の保養です。」という返事が返ってくる。
「そりゃあ、良かった。……俺はあまり楽しいとは思わないけど。」
「見解の相違はまた別の機会に話しましょう。次はドンシクさんの先行です。」
「順番に意味があるの?」
ドンシクは、白と黒が裏表になったオセロの石を取り上げ、嘆息の代わりにそう答えることにした。




目の前に座っている澄まし顔のハン・ジュウォン警部補が、風呂敷に、古びたボードゲームを包んでやって来たのは、一時間前のことだった。
明日の午後まで休暇になったので、来ました。
ジュウォンの顔に、暇を持て余したので遊んでください、と言えるほどの気軽さはほとんどなかったのは、オセロの上に乗っていた白い箱のせいだろう。
バレンタインですか、とドンシクがからかうように聞くと、バレンタインでしたね、とジュウォンが答える。
そこは間に合わなくてすいませんと謝る場面ではないかと思うけれど、まあ二人が恋人同士と対外的に表明されたわけでもない。
たまたま、今日はチョコレートが手土産です、という顔をされるのもやぶさかではない。
ドンシクは、その時はまだ、つやつやしたチョコレートの粒が並ぶ白い箱を恭しく受け取る余裕があった。
「またぞろ花束攻撃かと思っていましたが、今日はなかなか、凝った演出じゃないですか?」
包装紙を破って出て来たチョコレートは九つ入っており、スクエアの形に市松模様が描かれたものだとか、花に模した形のものもあった。
統一感がないようで、どれもがスタイリッシュで。味はまあ、美味い。
中からとろりと、酒がこぼれる。
それで、今夜も帰るつもりはないらしい、と分かった。
僕にもひとつ、とジュウォンが言ったので、ハート形の赤いチョコレートを選んで食べさせると嬉しそうに頬張っている。
餌付けというのは楽しいもので、瞬く間に、自分に準備されたはずの箱の中身が年下の男の腹に吸い込まれていくことになった。
そうして、気が付いたら、風呂敷包みの中のゲームがキッチンテーブルの上に広げられていて、それから一時間もしないうちに、ドンシクが右と左の靴下を脱ぎ、セーターを脱ぎ、中に着ていたネルシャツを脱ぐ羽目になっていたというわけだ。
脱衣ゲームをしましょう、という言葉がジュウォンの口から出て来たのには驚いたが、なぜか自分が素直に従っているのも謎だった。
ドンシクは、可愛いジュウォニのお気に召すまま、と呟いて、起点になる四つの石を置いた。


「それ、勝つと分かっているゲームほど面白いものはない、という顔ですか?」
「今の僕は、ドンシクさんから見て、そんな風に見えますか?」とジュウォンは眉を上げた。
「まあ、そうです。それにしても……イギリスに行っていたというなら、チェスなりバックギャモンなり、それらしいゲームがあるでしょうに。」
ジョンジェが高校の頃に、部屋に飾りものとして置いていたのを覚えている。
そうしたゲームの方が、スノッブの気配のある目の前の恋人には、ずっと相応しいようにも思う。
オセロが由緒あるボードゲームかどうかは分からないが、ドンシク自身が学生の頃にも、流行っていた記憶がある。
「チェスも、気に入った盤が自宅に行けばありますが、父の金で買ったものなので。」
「そうですか。」
ジュウォンの今の台詞は、ドンシクさんがチェスを覚えるまでに時間が掛かりそうだと思ったので、という本音と両立しているようにも思えたが、その点については全くの図星なので、たいして腹も立たなかった。
ここで負けてスラックスを脱いでしまえば、残っているのは肌着とトランクスだけになるとは分かっているものの、ジュウォンの持つ白石の攻略法が思いつかない。
「そろそろ、盤面も定まって来たようですが。」
気が付いたら、盤面は真っ白で、ドンシクが黒石を置ける場所はなくなっていた。
三分前には、ボードの上は黒が優勢、白が劣勢と明らかに分かる状態だったにもかかわらず、なぜかこういうことになっている。
お手上げだ。
「はあ……もう、なんだってこんなものを持ち込んだんですか。」
「映画を見てポップコーン食べるだけが家デートじゃないんですよ、と言ったのはどなたです?」
「俺ですね。」
ドンシクは、だからって紳士面が得意な恋人がこんなことを考えてるなんて思わないだろ、とは思ったけれど、もうタイムリミットだ。
意を決してドンシクが立ち上がると、さっとジュウォンの視線がそれを追う。
ベルトを外し、屈んでズボンを脱ぐ様子を、ジュウォンが見ている。
ドンシクが、さっき席を立ったついでに、トイレに行くという口実で慌てて股引を脱いできたことなんて、きっと思いもよらないだろう。
顔を向けると、ジュウォンは、赤らめた頬のまま、ぱっと顔を輝かせた。
こちらが降参して、早く寝ようと誘うのを、尻尾を振りながら待っているのだ。
外したばかりのこのベルトで手首を縛ってやろうか、と思ったけれど、ドンシクには実際、そうした変態趣味の持ち合わせがない。
掛けたシャツの上に、脱いだばかりのスラックスを重ねると、挑発するようにして、ジュウォンの頬に指先を伸ばす。
「ハン・ジュウォン警部補、俺はもう眠いです。そろそろベッドへ行きませんか?」
「あ、ええと、はい。」
行きましょう、ドンシクさん、と可愛くエスコートしようとしているが、ベッドの上にはさっき脱ぎ散らかした股引が待っているという寸法だ。
ムードもへったくれも、あったもんじゃない。
「ベッドの周りが散らかってるのを思い出した。少し片づけるので、洗面所で歯を磨いてから来てください。引き出しに、ちゃんと新しいのを仕舞ってありますから。」
毎回毎回、家から歯ブラシを持ってくるうちは、恋人関係とは言えないと思っていたけれど。
ドンシクにとってこの年下の男は、本当に、他の誰とも似ていない。
「ベッドの中で、あなたの靴下を脱がせるのも面倒だから、ちゃんと脱いで来てね。」
ジュウォナ、と名前を呼ぶと、可愛い恋人ははにかんだ笑みを浮かべて、そうします、と言った。


 
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「ハン・ジュウォン警部補、ジュウォンくん、ねえ、ジュウォナ……何が楽しいんですか、こんなことをして。」
「僕は楽しいですよ、凄く。」
ジュウォンの顔は、わずかに綻んでいる。
キッチンでネルシャツのボタンを外すドンシクの胸板に注がれるジュウォンの視線はあからさまで、こちらが気恥ずかしくなるほどだった。
「これじゃあ、いくらなんでも寒いんですけど。」
今ドンシクを守っているものは、トランクスに肌着、それからかろうじて股引とスラックスだ。署長の形見分けの品だが、こんな風に脱がされる羽目になるとは思ってなかった。どうするんだ、と迷っても後の祭りだ。
少し身体が固まって来た、とドンシクが肩を回すと、すかさず「じゃあ僕のジャケットを着てください。」とジュウォンが着て来たジャケットを差し出した。……ジャケットはジュウォンの身体にぴったり合うように誂えられていて、しかも肌着の上に羽織るものだから全くもって暖かくない。
「こんなのがいいんですか?」とからかうように言うと、白黒の石を指に挟んだままのジュウォンからは「ええ、まあ。目の保養です。」という返事が返ってくる。
「そりゃあ、良かった。……俺はあまり楽しいとは思わないけど。」
「見解の相違はまた別の機会に話しましょう。次はドンシクさんの先行です。」
「順番に意味があるの?」
ドンシクは、白と黒が裏表になったオセロの石を取り上げ、嘆息の代わりにそう答えることにした。




目の前に座っている澄まし顔のハン・ジュウォン警部補が、風呂敷に、古びたボードゲームを包んでやって来たのは、一時間前のことだった。
明日の午後まで休暇になったので、来ました。
ジュウォンの顔に、暇を持て余したので遊んでください、と言えるほどの気軽さはほとんどなかったのは、オセロの上に乗っていた白い箱のせいだろう。
バレンタインですか、とドンシクがからかうように聞くと、バレンタインでしたね、とジュウォンが答える。
そこは間に合わなくてすいませんと謝る場面ではないかと思うけれど、まあ二人が恋人同士と対外的に表明されたわけでもない。
たまたま、今日はチョコレートが手土産です、という顔をされるのもやぶさかではない。
ドンシクは、その時はまだ、つやつやしたチョコレートの粒が並ぶ白い箱を恭しく受け取る余裕があった。
「またぞろ花束攻撃かと思っていましたが、今日はなかなか、凝った演出じゃないですか?」
包装紙を破って出て来たチョコレートは九つ入っており、スクエアの形に市松模様が描かれたものだとか、花に模した形のものもあった。
統一感がないようで、どれもがスタイリッシュで。味はまあ、美味い。
中からとろりと、酒がこぼれる。
それで、今夜も帰るつもりはないらしい、と分かった。
僕にもひとつ、とジュウォンが言ったので、ハート形の赤いチョコレートを選んで食べさせると嬉しそうに頬張っている。
餌付けというのは楽しいもので、瞬く間に、自分に準備されたはずの箱の中身が年下の男の腹に吸い込まれていくことになった。
そうして、気が付いたら、風呂敷包みの中のゲームがキッチンテーブルの上に広げられていて、それから一時間もしないうちに、ドンシクが右と左の靴下を脱ぎ、セーターを脱ぎ、中に着ていたネルシャツを脱ぐ羽目になっていたというわけだ。
脱衣ゲームをしましょう、という言葉がジュウォンの口から出て来たのには驚いたが、なぜか自分が素直に従っているのも謎だった。
ドンシクは、可愛いジュウォニのお気に召すまま、と呟いて、起点になる四つの石を置いた。


「それ、勝つと分かっているゲームほど面白いものはない、という顔ですか?」
「今の僕は、ドンシクさんから見て、そんな風に見えますか?」とジュウォンは眉を上げた。
「まあ、そうです。それにしても……イギリスに行っていたというなら、チェスなりバックギャモンなり、それらしいゲームがあるでしょうに。」
ジョンジェが高校の頃に、部屋に飾りものとして置いていたのを覚えている。
そうしたゲームの方が、スノッブの気配のある目の前の恋人には、ずっと相応しいようにも思う。
オセロが由緒あるボードゲームかどうかは分からないが、ドンシク自身が学生の頃にも、流行っていた記憶がある。
「チェスも、気に入った盤が自宅に行けばありますが、父の金で買ったものなので。」
「そうですか。」
ジュウォンの今の台詞は、ドンシクさんがチェスを覚えるまでに時間が掛かりそうだと思ったので、という本音と両立しているようにも思えたが、その点については全くの図星なので、たいして腹も立たなかった。
ここで負けてスラックスを脱いでしまえば、残っているのは肌着とトランクスだけになるとは分かっているものの、ジュウォンの持つ白石の攻略法が思いつかない。
「そろそろ、盤面も定まって来たようですが。」
気が付いたら、盤面は真っ白で、ドンシクが黒石を置ける場所はなくなっていた。
三分前には、ボードの上は黒が優勢、白が劣勢と明らかに分かる状態だったにもかかわらず、なぜかこういうことになっている。
お手上げだ。
「はあ……もう、なんだってこんなものを持ち込んだんですか。」
「映画を見てポップコーン食べるだけが家デートじゃないんですよ、と言ったのはどなたです?」
「俺ですね。」
ドンシクは、だからって紳士面が得意な恋人がこんなことを考えてるなんて思わないだろ、とは思ったけれど、もうタイムリミットだ。
意を決してドンシクが立ち上がると、さっとジュウォンの視線がそれを追う。
ベルトを外し、屈んでズボンを脱ぐ様子を、ジュウォンが見ている。
ドンシクが、さっき席を立ったついでに、トイレに行くという口実で慌てて股引を脱いできたことなんて、きっと思いもよらないだろう。
顔を向けると、ジュウォンは、赤らめた頬のまま、ぱっと顔を輝かせた。
こちらが降参して、早く寝ようと誘うのを、尻尾を振りながら待っているのだ。
外したばかりのこのベルトで手首を縛ってやろうか、と思ったけれど、ドンシクには実際、そうした変態趣味の持ち合わせがない。
掛けたシャツの上に、脱いだばかりのスラックスを重ねると、挑発するようにして、ジュウォンの頬に指先を伸ばす。
「ハン・ジュウォン警部補、俺はもう眠いです。そろそろベッドへ行きませんか?」
「あ、ええと、はい。」
行きましょう、ドンシクさん、と可愛くエスコートしようとしているが、ベッドの上にはさっき脱ぎ散らかした股引が待っているという寸法だ。
ムードもへったくれも、あったもんじゃない。
「ベッドの周りが散らかってるのを思い出した。少し片づけるので、洗面所で歯を磨いてから来てください。引き出しに、ちゃんと新しいのを仕舞ってありますから。」
毎回毎回、家から歯ブラシを持ってくるうちは、恋人関係とは言えないと思っていたけれど。
ドンシクにとってこの年下の男は、本当に、他の誰とも似ていない。
「ベッドの中で、あなたの靴下を脱がせるのも面倒だから、ちゃんと脱いで来てね。」
ジュウォナ、と名前を呼ぶと、可愛い恋人ははにかんだ笑みを浮かべて、そうします、と言った。


 
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