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投稿日:2022年06月11日 16:43    文字数:19,727

転生したらボブゲーの主役になっていた件【イベント編②】

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何故続いたしの第三弾
ラスカズ(1ページ目)、リュウカズ(2ページ目)、拳一(3ページ目、ケンカズではない)、女装ネタ+セフィカズ・クラカズ・テリカズ・仁一・李一(4ページ目)、おまけ(5ページ目)のセットになっております
1つでも地雷がある方はブラウザバック推奨、つまり何でも許せる方向けです。
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【ラース√導入】

 幼年期のラース・アレクサンダーソンは母と2人で生活していた。父は知らない。そのことを聞けば母が悲しそうな目をするから聞くに聞けなかった。

 そんなある日、ラースは母が電話口で誰かに怒っているのを聞いた。

「今更認知なんてふざけないで下さい!ラースには普通の生活を歩ませます!!」

 母はそう怒鳴ると受話器を叩きつけるように置き、荒い息を繰り返した。それから数日後のこと。母が仕事に行っている間ラースは家の中で遊んでいた。するとインターホンがピンポーン、と鳴った。画面を見ると知らない男が複数人。

『知らない人が訪ねてきたら静かにして無視しなさい』

 母の言いつけ通りラースは無視を決め込んだ。しかし彼らは力ずくで彼は中に入り込んできた。慌てて窓からに外へ出ようとするも既に遅く、複数の大人に取り押さえられた。黒ずくめの高級車に乗せられそのまま連れていかれた先はとても大きな武家屋敷。

 離れで待っていて下さい、と男たちに言われるとふつふつと疑問と納得がラースの胸に落ちた。

(……ここは父さんの家なんだな)

 数日前に電話口で母が話していたのはラースの父だったのだろう。激昂した理由はわからないがそれはきっとラースと母にとって不利益なものだったのだ。

 そう思うと母が心配になってくる。勝手に連れ去られた上、父と思しき人間の家にいるのだ。まったく不甲斐ない。窓から逃げられなかった自分のせいだ。

 そう後悔していると遠くから足音が聞こえてくる。力強く、重い音。やがてその音がラースの直ぐ側まで来ると、ガラリと襖が開いた。

「? 何で俺の離れにガキがいる」

 現れたのは父と思われる男だった。背丈が高く顔立ちも眼光も鋭い。黒い髪は後ろに撫でつけられ、ツン、と後ろは尖っていた。

 父、と思われるその男はラースを一瞥すると眉間に皺を寄せ、側にいた男達に言った。

「このガキは?」

「はっ、頭首が先日仰ってました子どもかと……」

「碌でもないことをしてくれる……おいガキ。名前は?」

「……ラース・アレクサンダーソン」

 そう答えると男はラースの前で胡座をかく。睨みつけられる目にビクリと寒気を覚えたが負けじと見つめ返す。しばらく視線を交わしていると男がため息混じりに言った。

「そういうところは血筋だな。おいラース、外に出るぞ」

「え?」

「ジジイに会いたいか?」

「……母さんが悲しむから、嫌」

「それでいい。言っておくが俺は貴様の父親じゃない。何も、関係ない」

 男が障子を開け、庭に出る。何となくそれに続き慌てて出ようとすると男に抱えられた。

「え、あ、その」

「こいつの靴は」

「玄関です。持ってきますか」

「面倒だ。いい」

 男に抱えられたまま庭を歩けば風を感じ、水の流れる音が爽やかに聞こえてきた。石と緑も程よく広がっている。よくテレビでふうりゅう、という言葉を聞くがまさにそんな感じだとラースは思った。

「ラース」

 名前を呼ばれて男の顔を見れば夜空のような色と目が合う。少しだけ怖いと感じつつもじっとその目を見返せば、彼はフッと笑った。

「平八に似なくてよかったな。髪のクセは……仕方ない。母親に貰った身体だ。大切にしろ」

「……うん」

 平八というのが誰なのかはわからないが、おそらく父のことだろう。その言い方からして会うべきではないのだろうと察する。それにしてもどうして父は自分を?と口にすれば、男は目を細めた。

「大方俺が三島から離れていくことを懸念しているんだろう。馬鹿らしい。反抗するような教育をしたのは貴様だろう、と一蹴してやりたい」

「父さんは母さんの味方じゃないんだね」

「そうだ。だから貴様が守ってやれ。俺のように後悔するな」

 ポンポン、と背中を叩かれる。それだけで母のことを想うと涙が滲んでくる。必死に抑えながら、ラースは誓った。

「俺、母さんを守るよ。強くなって母さんが困った時に助けられる人間になる」

「それでいい」

 目に浮かびそうになる涙を擦ってもう一度向き合えば、満足気だがどこか悲しそうに笑う男の顔がそこにあった。それがとても印象的で、ラースは思わず見惚れてしまった。

「……なんだ」

「おじさんは、後悔しているの?」

「おじ……まぁ良い。後悔よりは、ただ己の力不足を嘆いているだけだ」

「ふーん……」

 こんな強そうな男に後悔があるのは何だか不思議でだからこそ、つい口を開いていた。

「じゃあおじさんが俺を強くしてよ!」

「……は?」

「だってさっきおじさん言ったじゃん! 後悔しないように、って! だったら俺が強くなるように教えてよ!!」

 そう叫ぶと男はポカンとした表情を浮かべ、それからしばらくしてプハッと吹き出すと腹を抱えて笑った。

「な、何だよ!?」

「いや面白いやつだ。俺のような男に教えを請うとは……まあその頼みは無理だ。俺は近々この家を出るからな」

「えぇー」

「だがその意気があれば貴様は誰でも守れる人間になれる。強くなれ、ラース」

「……うん!」

「約束だな」

 そう言うと男は小指を差し出してきた。指切りを母以外とするのは初めてで、何だか緊張して小指を絡めると力強く指切りをされる。

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーばす……指切った」

 共に歌い終えれば男は笑って頭を撫でてくれた。そうしている内にいつの間にか屋敷の門の前へ着く。そこには先程連れてきた黒ずくめの高級車ではなく真っ白な外車が停まっていた。車に寄りかかっている銀髪の男が不満げにこちらに向けて声をかけてくる。

「コイツが平八の……で、家に帰せと」

「今使えるのは貴様だけだ超狼。母親の方には連絡しているな」

「しているしている。しかし平八もアレだな、こんな子どもまで利用して……老いぼれたか?」

「所詮時代遅れの老人だ。ホームにぶち込めるならぶち込みたい」

「同感」

 二人の間で交わされる会話についていけず呆然と見ていれば、男は車の扉を開けラースを放り込んだ。

「わっ」

「強くなれ、ラース。じゃあな」

「待って、名前……!」

 そうこうしているうちに車が走り出し、男はあっという間に遠ざかっていく。せめて名前を……と思っているうちに眠気がラースを襲う。

「寝ていな。起きたら母親の元に着いている」

 運転する白髪の男にそう言われれば、ラースは素直に従うしかなかった。そうして眠りから覚めるとラースは母の隣にいた。目を開いたラースを見るなり抱き締めた母によればしばらく日本には帰れない、母の故郷であるスウェーデンに引っ越すということを知らされたのだった。そしてその日を境に父からの連絡も一切なくなった。あの日の出来事は夢だったと疑うこともあったが、自分の手に残る男の温もりと言葉は紛れもなく本物だ。

 ラースは誓う。あの男との約束通り、強くなると。そして強くなったらあの男と再会し、名前を聞こう。叶わぬ願いかもしれない。それでもラースはいつか必ず再会できると信じ、修行に明け暮れた。




 

 そして20年以上の月日が経過しラースは日本のとある大手企業に勤め、弱冠ながらも課長の座に就いていた。そしてその座を利用し、ある企業の社長と面会することに成功したのだ。

「本当に大きくなったなラース。と言っても会ったのはあれ以来だから20年?ぶりくらいになるのか」

「御託はいい。まさかアンタがあのときの運転手だったなんて思いもしなかったが」

「それはこっちのセリフだよラース。ここまでスピード出世するとはね。優秀なのは血筋か?」

 そう言ってニヤリと笑う男の名は、李超狼。ヴァイオレットシステムズ社の筆頭株主で、あの日ラースを母の元へ送り届けた運転手だ。

「それで、お前が会いたいのは私じゃない。一八だろう? 何故その地位を使って会わずに私の元へ来たんだ」

「……俺がいる三島とあの人がいるG社は折り合いが悪い、から」

「嘘をつくな。アイツに忘れてられているのが怖いんだろう」

 歯切れ悪く発した言い訳はやはり通じず、思いっ切りため息をつかされた。図星過ぎて何も言えずにいると超狼は仕方なさげにスマホを取り出せば、画面を操作しラースにそれを見せつけた。そこにあったのは9桁の数列。

「一八の番号だ。……話さないと何も始まらないぞ。別に私は始まってほしくもないが」

「……助かる」

 スマホの電話帳に番号を登録し、あの男──「三島一八」に電話をかける。プルルルル……と鳴るコール音が何回か響いた後、繋がった音が聞こえて思わず背筋が伸びてしまう。

『三島だ』

 久しぶりに聞いたその声に、心臓が大きく跳ね上がる。ドクンドクンとうるさい鼓動を押さえながら震えそうになる声でラースは言った。

「……ラース・アレクサンダーソンです」

 攻略対象、1名追加。

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【リュウ√イベント】

 この人は油断しすぎなのではないだろうか、といつも思う。顔に「他人なんて信頼していませんよ」と書いてあるのにこう、一度距離が近くなるとガードが緩くなる。それが可愛らしいと同時に、他のやつにもこんなことを許しているのだと思うと腸が煮えくり返る気持ちだ。

 そんな気持ちの午後1時、リュウは一八専用の膝枕になっていた。

 リュウと一八は同じジムのトレーニング仲間だ。数ヶ月前お互いにケンの知り合いだと知り、それ以来スケジュールが合えば一緒にトレーニングするようになったのだ。最初のうちは互いに遠慮するような態度を取っていたが、最近は大分打ち解けてきたと思う。

 そんなお日柄もよい本日、午前のトレーニングが終わりソファに座って休憩していると隣に座った一八がうつらうつらと船を漕ぎ始めたのだ。

「一八、大丈夫か」

「……ん、もんだい、な、い」

 あからさまに就寝直前の台詞。どこか広いベンチに寝かせようかと思ったその時、一八がリュウの膝に頭を乗せてきたのだ。

「おい一八……!」

「…………」

 リュウが肩を揺らし声を掛けても起きる気配はない。普段の厳つい顔から予想もできないほど無防備すぎる寝顔と心地好さそうな寝息に無理やり起こす気も失せ、結局そのまま膝枕を続けることになった。

「……まぁいいか」

 それにしてもよく見れば本当に男前な顔をしている。普段は口も目付きも悪いせいで悪人にしか見えないが、こうして眠っていると幼さが際立ち、少しだけ可愛いと思ってしまう変な自分がいる。

「……」

 そういえばこのツンツンとした髪に触れたことはなかった。好奇心のまま手を伸ばしそっと触れてみると見た目よりもずっと柔らかかった。撫でている手が吸い込まれそうでずっと触っていたい衝動に駆られるが、流石に怒られると思い手を離そうとしたそのとき。

「ん……んぅ」

 なんと一八の方からスリスリと頭を擦り付けて来たではないか。猫のような仕草に不覚にも胸がキュンとしてしまう。なんだこれ。

「……反則じゃないか?」

 それからしばらくの間、髪を撫でたり頬を突いてみたりするが起きる様子はなかった。どうやら完全に熟睡してしまったようだ。

「一八」

 耳元に口を近づけ、小さな声で名前を呼ぶ。起きる気配はゼロ。

「一八」

 もう一度呼んでみる。やはり反応は無し。

「……起きないとどうなっても知らないからな」

 口から出た言葉は冗談だ。そのはずなのに、何故か心臓の音が煩くて仕方がない。一八の顔から目を逸らそうとしてふと開いている口が視界に入る。

「……」

 好奇心、これはただの好奇心で下心はないと言い聞かせて人差し指で唇をなぞり口内に侵入させた。温かく湿った舌に触れてゾクッと背筋が震える。このまま噛みちぎられたら、という不安が一瞬過るがそれよりももっと別の感情の方が勝った。

 ──欲しい

 何が、とは分からない。でも確かに何かが欲しかった。起きないのをいいことに頬の内側を指先で優しく引っ掻くと唾液がドロリと溢れてきて、思わずゴクリと喉を鳴らしていた。

「一八」

 駄目だ、これ以上はいけない。理性では分かっているのに、

「悪い」

 謝罪の言葉と共にリュウはゆっくりと身を屈めて──

「ん……?」

 パチリ、と一八の目が開く。そして数秒固まった後バッと勢いよく飛び起き、リュウの額と自分のそれを思いっ切りぶつけた。

 一八は頭突きで負けたことのない、所謂本来の意味での石頭だ。それが加減なくぶつかり合うと当然のことながら結果は──

「いッ……!!」

 リュウは一瞬悲鳴を上げるとそのまま頭をグラグラとさせ、ぶっ倒れた。

「な、貴様!何をしている!!」

 寝ていた一八の体にリュウがそのまま倒れ込んだ。トントンと体を揺らしても起きる気配はない。見事な一発K.O。気絶している。

「……はぁ」

 一八はため息をつくと力の抜けたリュウの体を抱えあげた。ジムの従業員に案内され医務室に向かう道すがら、一八は先程のことを思い出し再び深い溜息をつく。

『一八』

 ふざけやがって、あんな熱っぽい声で呼ぶな。

 リュウの好感度メーターを見れば82にまで急上昇している。危険度は30と低いものの、依然として看過できない。というかこの男、今まで好感度の上がり方が微々たるものばかりだったから気付かなかったが、結構危ういのでは?

(油断は禁物、というやつか)

 警戒心を高め、どう好感度調整するか頭を悩ませてもメーターは変わることなく高い数値を示している。もう一度最後にため息をつき、一八は眉間のシワを更に深くするのだった。

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【???√導入】

『本日もお疲れ様でした』

「もう俺は何も言わんぞ」

 疲れた、その一言に尽きる。サポートセンターがスマホの画面に映す攻略対象たちを見ながら一八は呆れたように呟いた。

 前世の記憶を思い出し、何故か9人の攻略対象たちと恋愛を繰り広げなければいけない状況に置かれてから約1ヶ月。息子の仁を始め(色んな意味で)濃いメンバーたちが攻略対象だと判明し、既に疲労困憊である。

 画面に映る攻略対象は8名、あと1人判明していない。

「……こいつは誰だ」

『攻略対象は直接会わないと判明しない仕様になっています。ですが……』

「なんだ」

 珍しく言葉が詰まったサポートセンターに首を傾げる。画面の向こうで深呼吸をしたような間が空くと、意を決した様子で告げてきた。

『……こちらの方に関しては少し、いやかなり特殊な状況下でしか出会えない可能性があります。正直あまりオススメしません』

「知っているなら教えろ。一体どんな奴なんだ」

 そう聞くとサポートセンターは再び黙り込む。余程言いにくい相手なのか、それとも。

「おい」

『本日もお疲れさまでした。おやすみなさい』

「待て!」

 一八の言葉を無視してサポートセンターは強制的に終了した。何が何でも隠し通したいらしい。

「……チッ」

 サポートセンターが教えてくれないならもうお手上げだ。諦めて布団に入る。

 攻略対象が全員前世で関わりのあった人物ばかりであると気づいたとき、現世で知り得る限りの人物に会ってみたがやはり最後の1人だけ見つからなかった。有力候補であったケン・マスターズやクロムも違った。そもそも彼らは妻帯者であるから対象でなくて本当に良かったというべきか。考えれば考えるだけ意識が微睡みの世界に誘われた。

 明日も攻略対象たちとのまた騒がしい1日が始まる。そう思うと気が重くなるが仕方がない。これも運命だと受け入れよう。瞼を閉じ、意識を落とせば──




 

『……八様、一……様……一八様!』

 サポートセンターの声にハッと目を開ける。辺りを見渡してみればそこは寝室、ではなく岩壁がゴツゴツとした洞窟のような場所に一八はいた。

「……何だここは……」

『私自身も大変混乱しております。地球上の何処でもないことは確かですが……』

 手元にあるスマホから聞こえるサポートセンターの困惑気味の声は初めてで、一八も戸惑いを隠せない。しかしいつまでも戸惑っているわけにもいかず、立ち上がって周りをよく見渡した。

 どこからどう見ても洞窟である。ゴツゴツとした岩が裸足に刺さり少し痛い。ポツポツとどこかから雨だれの音が聞こえるだけの静かな空間だ。服装は眠りについたときと同じパジャマ、持ち物はスマホだけ。

「クソったれ」

 悪態をついたところで何も変わらないが、つかなければやっていられない。一八は苛立ちに任せて近くの岩壁に拳を叩きつけた。ガンッ、とぶつかる音が洞窟に響く。

(……?)

 違和感を覚え、一八は己の手をまじまじと見つめる。痛みは感じなかった。確かに衝撃はあったがその割には怪我もなく、ヒリヒリとすらしていない。まるで空気でも殴ったかのようだ。

『夢、であれば痛みがないのも説明がつきますね』

 サポートセンターの言葉になるほど、と納得する。確かにこれは夢の中なのだから痛みを感じるはずもない。

 それにしてもこんなリアルな感覚の夢とは珍しいものだ。そう思いながら一八は何となく歩き出した。注視すれば人が通った痕跡がある。それを頼りに進めばやがて開けた場所に出た。

「泉……?」

 コバルトブルーに輝く水面が目の前に広がる。その美しさに一八は思わず感嘆の息を漏らした。水の中に魚がいるのか、時折跳ねる影が見える。

『一八様、お気をつけて』

「あ、ああ」

 警戒しながら慎重に近づくと水面に自分の姿がはっきりと映っている。眠りについたときと一切変わらない姿に安心するやら何やら、と思っていると後ろからコツコツと靴音のようなものが聞こえてきた。

「……」

 警戒心を強め喧嘩流空手の構えを取る。気配が徐々に近付き、やがて人影が姿を現した。

「……!」

 一八が驚いたのはその人影がちゃんとした人間だったこともあるが、それ以上にその姿に見覚えが、いやさっき見た自分と髪色以外瓜二つだったことにも起因する。

 それは相手方も同じだったようで、一八の姿を見た瞬間目を丸くしていた。だがすぐに表情を戻した相手を見て、やはりこの男は只者ではないと悟る。鋭い眼光、引き締まった身体、そして纏う雰囲気。間違いなく戦い慣れている者のそれだ。

「貴様、何者だ」

 先に口を開いたのは一八の方だった。すると相手はふっと笑みを浮かべるとこちらに向かって口を開く。

「そう言われてもな。俺はこの遺跡を調査しに来ただけだ」

「……遺跡? ここは遺跡だったのか」

「貴様こそ何を言っているんだ。ここがどこなのか知らないのか」

「知らん」

「まさか迷い込んだのか?」

「そんなところだ。ここは一体どこなんだ」

 一八が問うと瓜二つ男は顎に手を当てふむ、考え込む。

「何処か、と言われてもこの世界はこの世界だ。増田め……偽の情報でも遺したのか……」

 ブツブツと呟く男の言葉はよく聞き取れなかったが、まぁ無理もないことだ。一八だって自分がどうしてこの場所にいるのか理解できておらず、周りを観察するのに夢中になっていたのだから。

「とりあえず外に出るぞ。調査の邪魔だ」

「わかった。俺も出口を探したいと思っていたから丁度いい」

 そうして連れ立って歩けばやはり髪色以外瓜二つでドッペルゲンガーのようだ。鏡の中の自分は喋らないし動くこともないがこうして対面して見るとよくわかる。暫く歩いていれば、不意に男が足を止めた。

「そういえば名前、聞いていなかったな。何て言うんだ」

「……三島一八」

「外見だけじゃなくて名字も一緒なのか!」

「何だと」

「俺はミシマケン、ケンは“拳”って書くんだ」

 偶然の一致かはたまた必然か。同じ顔に同じ名字、平八の隠し子だと言われてもそうだなとしか言いようがないほど彼、三島拳はそっくりであった。

 しばらく歩き続ければようやく外へと出られた。眩しい太陽の光が差し込み思わず目を覆う。

「アンタが帰る場所は知らないけど、とにかく気をつけろよ。増田の遺した情報目当ての奴らがこの辺りを彷徨いているはずだ」

「そうか。世話になったな、貴様も気をつけろよ」

「ん、ありがとな。達者で」

 そのまま拳は背を向け洞窟に戻っていった。一八もそれを見届けて目を閉じる。

(……不思議な夢だった)

 目が覚めたら忘れてしまうかもしれないが、それでも一八は夢でよかったと思った。夢にしてはリアルすぎる感覚だったが。そう思いスマホを握りしめるとピコンピコンと連絡音が鳴る。不思議に思い画面を見ると。

『攻略対象1名追加、三島拳』

「……は?」

 サポートセンターが告げた言葉に一八は呆然と立ち尽くすが思考を整理する間もなく瞼が強制的に閉じられる。




 

 次に瞼を開けると自室の天井が視界に映った。どうやら無事に帰れたようだ。だがそれより急いでスマホを確認しなければ……!

「おいサポートセンター!どういうことだ!!」

『こ、攻略対象が追加されました……これで全員、揃いました、ね』

 サポートセンターさえ震え声で話す始末である。何ということだ。まさかこんな形で攻略対象が増えるとは思わなかった。しかも自分と瓜二つの男だなんて誰が想像できるだろうか。

「やめたい……」

 思わず弱音が出てしまうが今日ばかりは許してほしい。夢の世界すら安息がなくなった一八の弱音はサポートセンターだけが静かに聞いていた。

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【イベント:ウェディング編】

「俺がウェディングドレスのモデルだと?ふざけるのも大概にしろ」

 目の前にいるブライダル商社のオーナーを睨みつけるが、相手も譲る気はないのかしっかりと見つめ返してくる。このオーナーとの付き合いは長く、G社のモデル撮影でよく依頼しているので信用できる人間だが今回の話はあまりに唐突すぎた。

「実は今、体格の良い女性向けのウェディングドレスを考えているのですがなかなかモデルがいなくて困っていたんです。ですが貴方ならぴったりだと思って!」

「いや待て、俺の身体は女のように華奢じゃない」

「えぇ勿論存じております。だからこそですよ」

「意味がわからん」

「こちらのお写真を見てもらえれば」

 オーナーが差し出してきた写真にはかなり、いや相当体格の良い女性たちが写っている。恐らく一八と同等、いやそれ以上の体格をしている女性もいた。なるほど依頼されるのもむべなるかな。

「俺である必要性は皆無だと思うが?」

「そう言うと思いました。もう1つ、こちらの写真をご覧ください」

 そう言われて差し出された写真には一八とほぼ同じ体格をした女性が笑顔でこちらにピースサインをしている姿があった。

「彼女は××証券代表の一人娘です。今回婚約者様と結婚するにあたり私どもの会社に依頼されたのですが……その、婚約者様の方がサプライズでウェディングドレスを用意したいと仰られまして」

「……」

「本来であれば近い体格の女性で採寸をして、という流れなのですがいかんせんこの体格の女性は中々見つからず……大変不躾な依頼であると承知しておりますが、どうかお願いできませんでしょうか」

 90°しっかりのお辞儀をされるが依頼の内容が内容である。だがここで断り、このオーナーの信用を失うというのも痛手だ。

「聞いておくがそれは内密に行われるんだな?」

「はい、勿論です。花嫁様、花婿様のご家族にもお伝えしません。我々スタッフのみで内密に行います」

「…………わかった。引き受けよう」

「本当ですか!?ありがとうございます!では採寸と撮影の予定は……」

 結局押し切られる形になってしまったのは不服だがこのオーナーに色々世話になった礼もあると割り切る。

 そういえば前世の自分は結婚もクソもなかったな、あの男に布団のシーツを被せられ結婚式もどきをさせられただけだと思い出す。尤もその男は現世で9人の攻略対象の1人に過ぎなくなったが。




 

「ただいま」

「お帰り父さん。晩御飯作っているからちょっと待っててくれ」

 家に帰れば仁が夕飯を作っていた。今晩の献立は確かナポリタンだったはず。トマトケチャップとベーコン、ピーマンを炒める匂いが空きっ腹に良い刺激を与える。ネクタイを緩め、上着を脱いでソファーに腰掛けると一八はふぅと一息ついた。

 いやはや面倒な依頼を受けてしまったと改めて思う。確かにあの体格の女性は滅多にいないだろうが、それにしたって自分を起用するとは……さては経費の削減かと思っていれば仁に呼ばれた。ご飯ができたようだ。

 テーブルにつき、手を合わせてナポリタンを頬張る。昔は味音痴だった仁が普通の料理を作れるようになったと思うと感慨深いものがある。最初は塩辛かったり、焦げていたりしたものが今ではこんなに美味しい。

「今日はうまくできたと思う……」

「……あぁ、美味い」

「!……よかった」

 好感度メーターは相変わらず60から90の間を行ったり来たり。喧嘩したときでさえ50までしか下がらなかったのは流石だと思ったものだ。普通、息子に好かれるのは良いことであるが恋愛的な意味で好かれているのが可視化されると心が複雑極まりない。

「そういえば父さん、帰ってきたとき疲れた顔をしていたけど大丈夫なのか?」

「ん、まぁ少し仕事でトラブルがあってな」

 嘘は言っていない。まさかウェディングドレスのモデルを依頼されたなんて言えない。言ったら絶対何か起こる。モデルの依頼がされた時点でイベントが発生しているようなものだが余計に拗らせたくない。

「あんまり無理しないでくれ。天国の母さんも父さんが過労死で来たら気絶するよ」

「わかっている」

 心配してくれる息子に微笑みかけると嬉しそうに目を細める。こんなに可愛い息子が何故自分を好きになるのか、全く以て理解できない。

「ごちそうさま。美味かった」

「ありがと。お風呂は炊けているから先に入っていいよ」

 皿洗いをしてくれながら言う息子の言葉に甘えて先に入浴する。浴室は湯気が立ち込めていて、身体の芯まで温まる心地だ。シャワーを浴びれば緊張も解れるようで、今日あったことを改めて振り返る。うん、やはりイベントの前兆にしか思えない。

(だとしたら誰が来るのか……)

 1人例外を抜けば全員に可能性がある。寧ろ可能性しかない。(1人抜いて)全員という可能性も否定できない。

 だがそんなことを考えても湯船に浸かればとりあえず何とかなるかという気持ちになる。のぼせる直前に湯船から出て、バスタオルで水滴を取り髪を乾かして、と脱衣所の扉がバン!と開いた。

「父さん……これどういうことなの?」

 まるで深淵から現れる邪神のような声をあげる仁が一八のスマホを持って立っていた。その顔は怒りに満ち溢れており、目は血走っている。危険度メーターがメキメキと上昇しているのも見える。

「まず説明しろ、何のことだ」

 なるべく冷静に返せば仁が画面を見せてくる。そこにはブライダル商社のオーナーから送られてきたメールが表示されており、モデルのオファーについて書かれていた。

「何でこういう不用心なことをするんだよ。こんなことして悪い虫が父さんについたら……!」

「落ち着け。内密に、式場のスタッフだけで行うやつだ。誰かに見せるものじゃない」

「そのスタッフが父さんに何かしないとでも!?父さんが思っている以上に悪い虫は世間にごまんといるんだぞ!!」

 そんなことは前世から知っている。主にセフィロスとかセフィロスとか。

「仁、これは俺の仕事だ。本当のことを言えばやりたくない。だが俺は会社の大黒柱、代表だ。代表がこんな小さな仕事で信用を失ったら会社は終わりだ。……わかっているな」

「……じゃあ、俺がついていっちゃ駄目?」

 上目遣いで爆弾発言しやがってこの愛息子。連れていったらどうなるかわかっているのか。フラグ乱立どころの話ではない。

 だがここで断ればどうなるだろうか。現に危険度メーターが34から63まで上がっているのだ。好感度の方はともかく、危険度は決して無視できない。んぐぅ、と唸って悩みに悩んだ結果。

「……わかった。一緒に来い。仕事の邪魔はするなよ」

「もちろん」

 途端に下がる危険度メーターを見てほっと一息。油断禁物。今度からスマホは脱衣所まで持っていこう。そう誓えば……

「あ、吃驚して叔父さんにも連絡したんだけど……」

「クソったれ」

 これは絶対に来るパターンだ。イベントの女神は一八にまったく微笑んでくれないらしい。あの男は今頃「Excellent!」と叫びワインでも開けているのだろう。

 頼むからこれ以上来てくれるな、と思いながら一八は深いため息をつくのであった。




 

 そして迎えた撮影当日。朝早くから迎えに来たリムジンに仁と共に乗り込む。

「……父さん、本当に大丈夫?」

「あぁ、問題ない。お前はいつも通りでいろ」

「そうだけど……」

 今更不毛な会話を交わしたところで変わることなどなく、ただ時間が過ぎていく。そうしていれば式場に到着し、スタッフ達が出迎えてくれた。

「本日はよろしくお願いします」

「こちらこそ宜しく」

 オーナーには仁がついてくることを事前に言っていたので特に驚かれず、むしろ「愛されてますねぇ」と感心される始末だった。確かに愛されてはいる。色んな意味で。

「とりあえず本日の撮影現場を見に行きましょうか」

 そう言われて着いた先はチャペル。純白の壁に白い床、ステンドグラスから射し込む光は神々しさすら感じさせる。撮影用の装飾を施すため何人かのスタッフが慌ただしく動き回っている。

「そこの装飾曲がってますー!」

「こっちはもう少し明るくしたいです!」

「背景はもうちょっと左寄りに、あと照明も調整を!」

「おーい新人!花瓶をもっと奥に置いてくれ!」

「OK!!」

 ……聞き覚えのある声がしたような。いや幻聴であってほしい。後ろ姿も見覚えあるが嘘であってほしい。だがそんな願いを嘲笑うかのようにその人物はこちらを振り向いた。

「お、カズヤ!どうしてここにいるんだ?」

 いつも通り太陽のような笑みをこちらに向け手を振ってくる男、テリー・ボガードがそこにいた。しくじった、テリーは様々な場所でバイトをしているのだ。それならここにいてもおかしくないということを可能性として考えておくべきだったのだ……!

「……父さん?誰この人」

 隣の仁が氷のように冷たい声で問いかけてくる。前門のテリー、後門の仁。攻略対象2人のブッキング。2人の好感度メーターと危険度メーターが既にメキメキと絶えず動いている。

「お?そっちは話に聞いていた息子さんか。ホントカズヤによく似ているなぁ!」

「初めまして、息子の仁と言います」

「おお、礼儀正しい子だな。俺はテリー、今日はよろしくな!」

「はい、こちらこそ」

 表面上は和やかに挨拶を交わすが、仁の目は一切笑ってはいない。バチバチと火花が散っている。一方のテリーはそれに気づくこともなく、呑気に「まさかなぁ……」と切り出してきた。

「今日はブライダルモデルをやるからどんな女の子が来るかと思っていたけどまさかカズヤがモデルなんてな!こりゃあラッキーだ」

「何がラッキーだ。男がウェディングドレスを着ているのを見たところで何も面白いことはないぞ。目の保養にもならん」

「? カズヤは何着ても似合うだろ。綺麗な花嫁姿を見るのは男のロマンじゃないか」

「貴様は俺のことを女だと思っているのか?」

 その言葉にテリーが一瞬きょとんとした顔をする。しかしすぐに一八の腕を引っ張り顔を近づけた。青色の瞳が、一八の目を捉えて離さない。

「そうじゃねぇよ。まあなんていうか……お前の花嫁姿は素敵だろうから今日ここで見れてよかったとか、なんなら俺の隣にいてほしいとか……」

「冗談でもそういうことを言うな」

「悪い悪い!半分ジョーダンだ!」

 残り半分は本気か?と思っていれば隣の仁が氷の女王かと言わんばかりの凍てついた空気を纏っていた。

「随分と親しいんだね、その、テリーさんと」

「そうそう俺も色々カズヤに世話になっているんだ。よろしくな仁!あ、ちなみに俺のことはテリーでいいぜ」

「……ええ」

 一八の背中に冷や汗が流れる。これ仁の危険度メーター……90の大台に乗っている。これは相当マズい、非常にマズい。

「とりあえず今日の撮影の準備は任せてくれ!最高に幸せな気分になれる写真を撮れるよう俺も手伝うから!」

 そう言ってテリーが一八の手を取りぶんぶんと振ると仁のメーターが更に吹っ切れたような気がした。この場を離れるべきだ。でないと命が危うい……!

「オーナー。会場はわかった。衣装合わせに行こう」

「わかりました。息子さんは……」

「仁も同伴だ」

「了解しました。ではこちらへ」

「おう、またなカズヤ。花嫁衣装、楽しみにしているからな」

「……ああ」

 無言のままの仁を連れオーナーと共にその場を去る。仁の危険度メーターを見れば何とか90で止まっていた。とりあえずは危機を脱したことに安堵の息をつく。だが油断はできない。テリーは危険だ。仁もだが。




 

「久しぶりだな一八!お前がウェディングドレスなんて馬子にも衣装ってやつじゃないのか!?」

「くたばれとっとと帰れ死ね」

 そうして化粧室に案内されるとそこには義弟である李超狼が(何故か)薔薇を咥えながら椅子にふんぞり返っていた。相変わらず趣味の悪い紫色のコートとサングラスが更に苛立ちを加速させる。

「叔父さん、あの後父さんに来るなって連絡されていたよね」

「ああそんなこともあったな。だが今日は仕事が休みだった上、ちょうどこの近くに用事があってな。一八の似合わないウェディングドレス姿なんて滅多に見れるものじゃないから来てみたんだ」

 ハハハと笑う超狼が立ち、一八の顎を掴みクイッと持ち上げてきた。こいつは昔からこうだ。一八が何かやらかすと必ず駆けつけ、それを面白がる。

 だからそういうときはこうするのが一番覿面だ。

「超狼、いつもより髪が整ってないな。寝ぐせがついているぞ。それにネクタイも曲がっている」

「……ッ!今それ関係あるか!?」

「どうせ無理に仕事を終わらせて急いでここに来たんだろ。貴様はいつも俺をからかうときは労力を惜しまないからな。いい加減やめてほしいとも思うが……」

 そうして髪を梳きネクタイを直せばタコのように顔を真っ赤に染め上げ超狼は崩れ落ちた。好感度メーターはチョロいことに80を超えているが危険度は殆ど上がっていないので放っておくが吉である。

 仁はその光景を見てムッとしているが同時に情けない叔父の姿を見たおかげか危険度は先程より下がっていた。

「それで、衣装はどこだ」

「こちらとなります」

 スタッフが指さす方向に視線を向ければ立派なウェディングドレスがあった。プリンセスラインのドレスはそれはそれは純白のレースがふんだんに使われており、フレアーシルエットを柔らかなサテンオーガンジーで包み込んでいる。背中部分はレースアップ・バックに仕上げられており、シンプルなフロントとは対照的にセクシーな印象を醸し出していた。

 このドレスと合わせるマリアベールはビーズ刺繍が施されており、シンプルでありながらゴージャス感が漂う逸品だ。

 一八は思わずほう、とため息をついた。これは確かに美しい。素晴らしい出来だ。この衣装を花婿からサプライズで着せられる花嫁は大層驚き、そして喜ぶことだろう。

「これを父さんが……」

「俺は花嫁のために採寸されてついでに撮影されるだけだ」

「本当の花嫁なら綺麗に着こなすだろうに……まさか男に着せられるとはこのドレスも思っていなかっただろうな。ま、下手な奴に着せるより一八の方がなんぼかいいがな」

「貶すのか褒めるのかはっきりしろ」

「じゃあ息子さんと李さん、控室で待っていて下さい。一八さんを立派な花嫁に仕立て上げますから」

「父さんが花嫁になる……」

「……アリだな」

「とりあえず2人とも出ていけ」

 一八が睨みつけると二人はそそくさと部屋を出ていく。

「まずは簡単に採寸してそれから衣装合わせ、そして着替えましたらお化粧に入りましょう」

「……化粧は必要か?」

「ドレスと合う化粧を確かめるのも仕事のうちなので!」

 そう言われてしまえば仕方がない。一八は諦めたようにため息をつくとスタッフに促されるがまま採寸をされ、ドレスを身に纏った。




 

 さて衣装合わせが終わればお化粧タイムである。ファンデーションにパウダー、アイシャドウ、チーク、口紅が顔に施されていく。自分の顔がどんどん別人になっていくのを鏡越しに見つめればメイクとはすごいものだなと実感した。

 そうしてメイクをされていると廊下、控室の方から李の大きな声が聞こえてきた。

「お前は神羅カンパニーの……!」

 その“神羅カンパニー”という単語に思わず腰を上げそうになるが必死に堪えた。ここで立ち上がったらせっかくここまで耐えた意味が無くなってしまう。

「少々お待ち下さいね」

 メイクをしていたスタッフも流石に騒ぎを察し、一度席を外すとドアの向こうへ消えていった。正直嫌な予感しかしない。攻略対象的な意味で。スマホを見てサポートセンターの様子を窺いたいが生憎鞄に入れっぱなしで手元にはない。

(こんな時に限って……)

 だが下手に動いてメイクを崩したら元も子もない。ここは大人しく待つしかないようだ。一刻も早くここから立ち去りたい気持ちを抑え込みながら待っていると勢いよく扉が開かれた。

 入ってきたのはここのオーナーだ。真っ赤な顔をして汗をダラダラかいている。焦っているのが見え見えだ。

「こんな時に大変失礼なのですが神羅カンパニーの社員さんが営業に来まして……G社の代表がいるなら挨拶したいと仰っています……」

「この格好で挨拶?それは相手に対して失礼じゃないか。後でこっちから謝罪するから挨拶はなしに……」

「それは筋が通らない、というやつだ」

 オーナーの背後に現れた男はいつもと同じように不敵な笑みで一八を見つめている。銀糸の長髪も宝石のような碧眼もいつも通り。

 そう、あのセフィロスである。攻略対象の1人で前世の恋人で、色んな意味で一八の地雷。

「花嫁衣装のモデルとは……随分胡乱な依頼を受けたんだな」

 一八は頭を抱えたくなった。今日は厄日か。そんな一八の心中など知る由もなくセフィロスはふむ、と顎に手をあてまじまじと見つめてくる。その視線に何故か一八の方が恥ずかしくなってきた。

「花嫁衣装……今度は私か見繕うか」

「結構だ。貴様に見繕われる気などない。そもそも最初から見繕う前提で話すな」

「相変わらず手厳しい。それにしても本当に花嫁のようだな。次は式場の準備でも……」

「セフィロス、勝手に何やっているんだ」

 セフィロスの背後から現れたのはクラウドだ。ムスッとした表情でこちらに向かってくる。一八はその姿を見て心底ホッとする。やはりクラウドはこうでなくては、と思わずにはいられないのだ。

「悪いなカズヤ。セフィロスが勝手なことして。仁と李にも止められたのに聞かなくって」

「いい。とりあえずこの馬鹿を連れて出ていってくれ」

「そうだな。……衣装、結構似合っている」

「馬子にも衣装というやつだ。お世辞はよせ」

「お世辞じゃないんだけどな……」

 そうして2人が部屋を出ていく。出ていった後に廊下から怒鳴り声やら何やら聞こえるが一八はスルーする。触らぬ神に祟りなし。

「作業を中断させてすまなかった。続けてくれ」

「はい。では仕上げに入りますね」

 スタッフも外の騒ぎを気にすることを止めたのか、一八に声をかけるとまたメイクを再開する。

 そうして化粧も終わり、ヘアセットも済ませるとそこには一八であるが一八でない、別人が鏡に映っていた。お世辞にも似合っているとは言えないが、これが自分だと思えないほどに美しい。

「これは……すごいな」

「綺麗ですよ!一八さん!」

「ありがとう」

 姿見に写る自分の変わりように驚きを隠せない。これが自分だなんて、と何度も瞬きを繰り返す。

「これで結婚式もバッチリですね!」

「いやただの撮影モデルだが」

「冗談ですよ。それじゃあ撮影しますので式場の方に行きましょうか。先程の方たちは……」

「呼ばなかったら呼ばなかったで面倒だから一応撮影場所まで案内しておけ」

「わかりました。では行きましょう!」

 スタッフに導かれるまま化粧室を出れば太陽が空のてっぺんまで昇っていることに今更気づく。雲1つない空は結婚式に相応しいはずなのに、男のウェディングドレス姿を照らしていると思うと何だか勿体ない気がした。




 

 ステンドグラスから射し込む陽光に照らされたチャペルが撮影場所だ。生まれてはじめてのブライダルシューズに足が少し震えるが何とか持ちこたえた。伊達に鍛えていないのだ。伊達に。

 チャペルへの入り口が見えるとその中からやんややんやと騒ぐ男たちの声が聞こえた。また争っているのか面倒だなと少しだけ急ぎ足になったその瞬間、慣れないハイヒールで足が縺れる。

 しまった、と思ったときには遅い。地面にぶつかるイメージが頭に浮かび受け身の体勢をとろうとしたその時。

「……ッと」

「!?」

 衝撃に備えて身構えていたが予想していた痛みはない。後ろから腰を引き寄せられ誰かに支えられている。恐る恐る振り向くとそこにはセフィロスがいた。少し焦ったような顔で一八の顔を見ている。

「まったく……慣れない靴で走ろうとするな」

「……悪い。助かった」

「怪我はしていないか?特に足首周りに痛みは?」

「問題ない」

「それならいい」

 腰を引き寄せられたせいでセフィロスの声が一八の耳元で囁かれる形になっている。脳に直接響かせるようなテノールボイスは心臓に悪すぎるのではないか。

(落ち着け……今世のセフィロスは違う、違うんだ)

 前世のセフィロスが自分にした仕打ちを思い出せ、そう自分に言い聞かせながら深呼吸をする。するとセフィロスは不思議そうな表情を浮かべながらもゆっくりと手を離してくれた。

 ようやく離れてくれた事に安堵し、気を取り直して撮影場所であるチャペルに入る。

「あ、父さん……!」

「…………嘘だ。この俺がこんなに……!」

「おー!すっげーキレイじゃん」

「……いいな」

 仁、超狼、テリー、クラウドの反応はそれぞれだ。それなりに好評なようで好感度メーターがかなりアップしている。一方、隣にいるセフィロスはというと無言で一八の姿をじっと見つめていた。

「……貴様にしては珍しいな。馬鹿みたいに『美しい』だの『愛らしい』だの言ってくる口はどこいった」

「……すぎて……」

「はっきり言え」

 モゴモゴと口籠もるセフィロスを急かせば他の4人も興味深そうにセフィロスの声に耳を傾けている。

 そして数秒の後。

「……言葉にしたら陳腐になるほどお前が美しく見えてしまってな。行動で示そうとしてもどうにもうまく動けないほど……似合っている」

 珍しく赤面しているセフィロスからそんなことを言われてしまえば、こちらも紅潮せざるを得ない。

 むず痒い、むず痒い!心臓を悪くするような発言はやめろと声を大にして言いたいがこれでも仕事中なので理性で留める。

「とにかく……綺麗だ、カズヤ」

 不意打ちの名前呼びだって反則だろう。

「父さん、俺たちがいること忘れていない?」

 仁の言葉で我に返れば、こちらを何とも言えない微妙な目で見つめてくる4人と目が合う。

 仁はあからさまに怒っているし超狼とクラウドは呆れたような視線を送ってくる。唯一の救いはテリーの苦笑いだけ。好感度メーターより危険度メーターの方が上がっている目はやめろと訴えたいが自分が招いた事態である。

「あー、カメラマン。撮影が終わったらこいつら個人とも撮影させてくれないか」

「了解です!」

 そう提案すれば全員の顔がパッと明るくなるのがわかる。これで危険度メーターが下がるかはわからないが、やらないよりはマシだろう。多分。

 こうして(一八にとって)悪夢の撮影会は色々トラブルがあったものの何とか無事に終わったのだった。




 

『お疲れさまでした。本日は一大イベントでしたね』

 寝ようとベッドに横になったところ、サポートセンターが話しかけてくる。あの後、無事に撮影会は終わった。好感度と危険度については調整が必要な面子が何人か残ることになったが許容範囲である。寧ろ爆上がり、爆下がりした対象がいなかっただけ幸いであろう。

「……まあこの写真は悪くないか」

 撮影後すぐスマホに転送された5人との写真を眺める。

 一方的に肩を組み満面の笑みでピースしているテリー、跪いて花束を渡してくるクラウド、顎を指で上げてきた超狼、腰に手を回して引き寄せてきた仁、不意打ちで頬にキスをしてきたセフィロス。

 どれもこれも自分への好意が現れていて嫌になるが同時に暖かいものが胸にじんわりと広がっていく。

『どのお写真も素敵ですよ』

 撮影会の最後に全員で撮った写真はワチャワチャとしておりとても綺麗だとは思えないが、一番好きだ。

 前世を思い出し、自分に向けられた恋愛感情が可視化されるようになった世界でも案外悪くないことがあるもんだと、写真を眺めながら少しだけ微笑む。もう少しだけこの日々が続けば……なんて戯言を思い浮かべていればいつの間にか微睡みの世界へ誘われていた。

 その寝顔はいつもより穏やかで、どこか嬉しそうに見えた。

 なお後日、5人の手によって不参加だったポール、ラース、リュウに写真が渡ったとき一八は盛大にブチ切れたという。

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【攻略対象紹介】
 

セフィロス・宝条

・神羅カンパニーの社員。20代半ば

・初期好感度:95 初期危険度:99

クラウド・ストライフ

・神羅カンパニーの社員。21歳

・初期好感度:20 初期危険度:10

風間 仁

・カズヤの息子。大学生。21歳

・初期好感度:90 初期危険度:50

李超狼

・カズヤの義弟。ヴァイオレットシステムズの筆頭株主。48歳

・初期好感度:73 初期危険度:46

ポール・フェニックス

・カズヤの友人。世界的に有名な格闘家。50歳

・初期好感度:72 初期危険度:6

ラース・アレクサンダーソン

・カズヤの異母弟。訳あって三島の社員になった。20代半ば

・初期好感度:53 初期危険度:50

リュウ

・カズヤがジムで出会った格闘家。世界を彷徨っている。30代前半

・初期好感度:35 初期危険度:29

テリー・ボガード

・カズヤがたまたま街で出会った格闘家兼フリーター。20代後半

・初期好感度:78 初期危険度:4

三島 拳

・夢の中でしか出会えない並行世界(?)の男。20代前半

・初期好感度:19 初期危険度:32

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転生したらボブゲーの主役になっていた件【イベント編②】
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【ラース√導入】

 幼年期のラース・アレクサンダーソンは母と2人で生活していた。父は知らない。そのことを聞けば母が悲しそうな目をするから聞くに聞けなかった。

 そんなある日、ラースは母が電話口で誰かに怒っているのを聞いた。

「今更認知なんてふざけないで下さい!ラースには普通の生活を歩ませます!!」

 母はそう怒鳴ると受話器を叩きつけるように置き、荒い息を繰り返した。それから数日後のこと。母が仕事に行っている間ラースは家の中で遊んでいた。するとインターホンがピンポーン、と鳴った。画面を見ると知らない男が複数人。

『知らない人が訪ねてきたら静かにして無視しなさい』

 母の言いつけ通りラースは無視を決め込んだ。しかし彼らは力ずくで彼は中に入り込んできた。慌てて窓からに外へ出ようとするも既に遅く、複数の大人に取り押さえられた。黒ずくめの高級車に乗せられそのまま連れていかれた先はとても大きな武家屋敷。

 離れで待っていて下さい、と男たちに言われるとふつふつと疑問と納得がラースの胸に落ちた。

(……ここは父さんの家なんだな)

 数日前に電話口で母が話していたのはラースの父だったのだろう。激昂した理由はわからないがそれはきっとラースと母にとって不利益なものだったのだ。

 そう思うと母が心配になってくる。勝手に連れ去られた上、父と思しき人間の家にいるのだ。まったく不甲斐ない。窓から逃げられなかった自分のせいだ。

 そう後悔していると遠くから足音が聞こえてくる。力強く、重い音。やがてその音がラースの直ぐ側まで来ると、ガラリと襖が開いた。

「? 何で俺の離れにガキがいる」

 現れたのは父と思われる男だった。背丈が高く顔立ちも眼光も鋭い。黒い髪は後ろに撫でつけられ、ツン、と後ろは尖っていた。

 父、と思われるその男はラースを一瞥すると眉間に皺を寄せ、側にいた男達に言った。

「このガキは?」

「はっ、頭首が先日仰ってました子どもかと……」

「碌でもないことをしてくれる……おいガキ。名前は?」

「……ラース・アレクサンダーソン」

 そう答えると男はラースの前で胡座をかく。睨みつけられる目にビクリと寒気を覚えたが負けじと見つめ返す。しばらく視線を交わしていると男がため息混じりに言った。

「そういうところは血筋だな。おいラース、外に出るぞ」

「え?」

「ジジイに会いたいか?」

「……母さんが悲しむから、嫌」

「それでいい。言っておくが俺は貴様の父親じゃない。何も、関係ない」

 男が障子を開け、庭に出る。何となくそれに続き慌てて出ようとすると男に抱えられた。

「え、あ、その」

「こいつの靴は」

「玄関です。持ってきますか」

「面倒だ。いい」

 男に抱えられたまま庭を歩けば風を感じ、水の流れる音が爽やかに聞こえてきた。石と緑も程よく広がっている。よくテレビでふうりゅう、という言葉を聞くがまさにそんな感じだとラースは思った。

「ラース」

 名前を呼ばれて男の顔を見れば夜空のような色と目が合う。少しだけ怖いと感じつつもじっとその目を見返せば、彼はフッと笑った。

「平八に似なくてよかったな。髪のクセは……仕方ない。母親に貰った身体だ。大切にしろ」

「……うん」

 平八というのが誰なのかはわからないが、おそらく父のことだろう。その言い方からして会うべきではないのだろうと察する。それにしてもどうして父は自分を?と口にすれば、男は目を細めた。

「大方俺が三島から離れていくことを懸念しているんだろう。馬鹿らしい。反抗するような教育をしたのは貴様だろう、と一蹴してやりたい」

「父さんは母さんの味方じゃないんだね」

「そうだ。だから貴様が守ってやれ。俺のように後悔するな」

 ポンポン、と背中を叩かれる。それだけで母のことを想うと涙が滲んでくる。必死に抑えながら、ラースは誓った。

「俺、母さんを守るよ。強くなって母さんが困った時に助けられる人間になる」

「それでいい」

 目に浮かびそうになる涙を擦ってもう一度向き合えば、満足気だがどこか悲しそうに笑う男の顔がそこにあった。それがとても印象的で、ラースは思わず見惚れてしまった。

「……なんだ」

「おじさんは、後悔しているの?」

「おじ……まぁ良い。後悔よりは、ただ己の力不足を嘆いているだけだ」

「ふーん……」

 こんな強そうな男に後悔があるのは何だか不思議でだからこそ、つい口を開いていた。

「じゃあおじさんが俺を強くしてよ!」

「……は?」

「だってさっきおじさん言ったじゃん! 後悔しないように、って! だったら俺が強くなるように教えてよ!!」

 そう叫ぶと男はポカンとした表情を浮かべ、それからしばらくしてプハッと吹き出すと腹を抱えて笑った。

「な、何だよ!?」

「いや面白いやつだ。俺のような男に教えを請うとは……まあその頼みは無理だ。俺は近々この家を出るからな」

「えぇー」

「だがその意気があれば貴様は誰でも守れる人間になれる。強くなれ、ラース」

「……うん!」

「約束だな」

 そう言うと男は小指を差し出してきた。指切りを母以外とするのは初めてで、何だか緊張して小指を絡めると力強く指切りをされる。

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーばす……指切った」

 共に歌い終えれば男は笑って頭を撫でてくれた。そうしている内にいつの間にか屋敷の門の前へ着く。そこには先程連れてきた黒ずくめの高級車ではなく真っ白な外車が停まっていた。車に寄りかかっている銀髪の男が不満げにこちらに向けて声をかけてくる。

「コイツが平八の……で、家に帰せと」

「今使えるのは貴様だけだ超狼。母親の方には連絡しているな」

「しているしている。しかし平八もアレだな、こんな子どもまで利用して……老いぼれたか?」

「所詮時代遅れの老人だ。ホームにぶち込めるならぶち込みたい」

「同感」

 二人の間で交わされる会話についていけず呆然と見ていれば、男は車の扉を開けラースを放り込んだ。

「わっ」

「強くなれ、ラース。じゃあな」

「待って、名前……!」

 そうこうしているうちに車が走り出し、男はあっという間に遠ざかっていく。せめて名前を……と思っているうちに眠気がラースを襲う。

「寝ていな。起きたら母親の元に着いている」

 運転する白髪の男にそう言われれば、ラースは素直に従うしかなかった。そうして眠りから覚めるとラースは母の隣にいた。目を開いたラースを見るなり抱き締めた母によればしばらく日本には帰れない、母の故郷であるスウェーデンに引っ越すということを知らされたのだった。そしてその日を境に父からの連絡も一切なくなった。あの日の出来事は夢だったと疑うこともあったが、自分の手に残る男の温もりと言葉は紛れもなく本物だ。

 ラースは誓う。あの男との約束通り、強くなると。そして強くなったらあの男と再会し、名前を聞こう。叶わぬ願いかもしれない。それでもラースはいつか必ず再会できると信じ、修行に明け暮れた。




 

 そして20年以上の月日が経過しラースは日本のとある大手企業に勤め、弱冠ながらも課長の座に就いていた。そしてその座を利用し、ある企業の社長と面会することに成功したのだ。

「本当に大きくなったなラース。と言っても会ったのはあれ以来だから20年?ぶりくらいになるのか」

「御託はいい。まさかアンタがあのときの運転手だったなんて思いもしなかったが」

「それはこっちのセリフだよラース。ここまでスピード出世するとはね。優秀なのは血筋か?」

 そう言ってニヤリと笑う男の名は、李超狼。ヴァイオレットシステムズ社の筆頭株主で、あの日ラースを母の元へ送り届けた運転手だ。

「それで、お前が会いたいのは私じゃない。一八だろう? 何故その地位を使って会わずに私の元へ来たんだ」

「……俺がいる三島とあの人がいるG社は折り合いが悪い、から」

「嘘をつくな。アイツに忘れてられているのが怖いんだろう」

 歯切れ悪く発した言い訳はやはり通じず、思いっ切りため息をつかされた。図星過ぎて何も言えずにいると超狼は仕方なさげにスマホを取り出せば、画面を操作しラースにそれを見せつけた。そこにあったのは9桁の数列。

「一八の番号だ。……話さないと何も始まらないぞ。別に私は始まってほしくもないが」

「……助かる」

 スマホの電話帳に番号を登録し、あの男──「三島一八」に電話をかける。プルルルル……と鳴るコール音が何回か響いた後、繋がった音が聞こえて思わず背筋が伸びてしまう。

『三島だ』

 久しぶりに聞いたその声に、心臓が大きく跳ね上がる。ドクンドクンとうるさい鼓動を押さえながら震えそうになる声でラースは言った。

「……ラース・アレクサンダーソンです」

 攻略対象、1名追加。

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【リュウ√イベント】

 この人は油断しすぎなのではないだろうか、といつも思う。顔に「他人なんて信頼していませんよ」と書いてあるのにこう、一度距離が近くなるとガードが緩くなる。それが可愛らしいと同時に、他のやつにもこんなことを許しているのだと思うと腸が煮えくり返る気持ちだ。

 そんな気持ちの午後1時、リュウは一八専用の膝枕になっていた。

 リュウと一八は同じジムのトレーニング仲間だ。数ヶ月前お互いにケンの知り合いだと知り、それ以来スケジュールが合えば一緒にトレーニングするようになったのだ。最初のうちは互いに遠慮するような態度を取っていたが、最近は大分打ち解けてきたと思う。

 そんなお日柄もよい本日、午前のトレーニングが終わりソファに座って休憩していると隣に座った一八がうつらうつらと船を漕ぎ始めたのだ。

「一八、大丈夫か」

「……ん、もんだい、な、い」

 あからさまに就寝直前の台詞。どこか広いベンチに寝かせようかと思ったその時、一八がリュウの膝に頭を乗せてきたのだ。

「おい一八……!」

「…………」

 リュウが肩を揺らし声を掛けても起きる気配はない。普段の厳つい顔から予想もできないほど無防備すぎる寝顔と心地好さそうな寝息に無理やり起こす気も失せ、結局そのまま膝枕を続けることになった。

「……まぁいいか」

 それにしてもよく見れば本当に男前な顔をしている。普段は口も目付きも悪いせいで悪人にしか見えないが、こうして眠っていると幼さが際立ち、少しだけ可愛いと思ってしまう変な自分がいる。

「……」

 そういえばこのツンツンとした髪に触れたことはなかった。好奇心のまま手を伸ばしそっと触れてみると見た目よりもずっと柔らかかった。撫でている手が吸い込まれそうでずっと触っていたい衝動に駆られるが、流石に怒られると思い手を離そうとしたそのとき。

「ん……んぅ」

 なんと一八の方からスリスリと頭を擦り付けて来たではないか。猫のような仕草に不覚にも胸がキュンとしてしまう。なんだこれ。

「……反則じゃないか?」

 それからしばらくの間、髪を撫でたり頬を突いてみたりするが起きる様子はなかった。どうやら完全に熟睡してしまったようだ。

「一八」

 耳元に口を近づけ、小さな声で名前を呼ぶ。起きる気配はゼロ。

「一八」

 もう一度呼んでみる。やはり反応は無し。

「……起きないとどうなっても知らないからな」

 口から出た言葉は冗談だ。そのはずなのに、何故か心臓の音が煩くて仕方がない。一八の顔から目を逸らそうとしてふと開いている口が視界に入る。

「……」

 好奇心、これはただの好奇心で下心はないと言い聞かせて人差し指で唇をなぞり口内に侵入させた。温かく湿った舌に触れてゾクッと背筋が震える。このまま噛みちぎられたら、という不安が一瞬過るがそれよりももっと別の感情の方が勝った。

 ──欲しい

 何が、とは分からない。でも確かに何かが欲しかった。起きないのをいいことに頬の内側を指先で優しく引っ掻くと唾液がドロリと溢れてきて、思わずゴクリと喉を鳴らしていた。

「一八」

 駄目だ、これ以上はいけない。理性では分かっているのに、

「悪い」

 謝罪の言葉と共にリュウはゆっくりと身を屈めて──

「ん……?」

 パチリ、と一八の目が開く。そして数秒固まった後バッと勢いよく飛び起き、リュウの額と自分のそれを思いっ切りぶつけた。

 一八は頭突きで負けたことのない、所謂本来の意味での石頭だ。それが加減なくぶつかり合うと当然のことながら結果は──

「いッ……!!」

 リュウは一瞬悲鳴を上げるとそのまま頭をグラグラとさせ、ぶっ倒れた。

「な、貴様!何をしている!!」

 寝ていた一八の体にリュウがそのまま倒れ込んだ。トントンと体を揺らしても起きる気配はない。見事な一発K.O。気絶している。

「……はぁ」

 一八はため息をつくと力の抜けたリュウの体を抱えあげた。ジムの従業員に案内され医務室に向かう道すがら、一八は先程のことを思い出し再び深い溜息をつく。

『一八』

 ふざけやがって、あんな熱っぽい声で呼ぶな。

 リュウの好感度メーターを見れば82にまで急上昇している。危険度は30と低いものの、依然として看過できない。というかこの男、今まで好感度の上がり方が微々たるものばかりだったから気付かなかったが、結構危ういのでは?

(油断は禁物、というやつか)

 警戒心を高め、どう好感度調整するか頭を悩ませてもメーターは変わることなく高い数値を示している。もう一度最後にため息をつき、一八は眉間のシワを更に深くするのだった。

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【???√導入】

『本日もお疲れ様でした』

「もう俺は何も言わんぞ」

 疲れた、その一言に尽きる。サポートセンターがスマホの画面に映す攻略対象たちを見ながら一八は呆れたように呟いた。

 前世の記憶を思い出し、何故か9人の攻略対象たちと恋愛を繰り広げなければいけない状況に置かれてから約1ヶ月。息子の仁を始め(色んな意味で)濃いメンバーたちが攻略対象だと判明し、既に疲労困憊である。

 画面に映る攻略対象は8名、あと1人判明していない。

「……こいつは誰だ」

『攻略対象は直接会わないと判明しない仕様になっています。ですが……』

「なんだ」

 珍しく言葉が詰まったサポートセンターに首を傾げる。画面の向こうで深呼吸をしたような間が空くと、意を決した様子で告げてきた。

『……こちらの方に関しては少し、いやかなり特殊な状況下でしか出会えない可能性があります。正直あまりオススメしません』

「知っているなら教えろ。一体どんな奴なんだ」

 そう聞くとサポートセンターは再び黙り込む。余程言いにくい相手なのか、それとも。

「おい」

『本日もお疲れさまでした。おやすみなさい』

「待て!」

 一八の言葉を無視してサポートセンターは強制的に終了した。何が何でも隠し通したいらしい。

「……チッ」

 サポートセンターが教えてくれないならもうお手上げだ。諦めて布団に入る。

 攻略対象が全員前世で関わりのあった人物ばかりであると気づいたとき、現世で知り得る限りの人物に会ってみたがやはり最後の1人だけ見つからなかった。有力候補であったケン・マスターズやクロムも違った。そもそも彼らは妻帯者であるから対象でなくて本当に良かったというべきか。考えれば考えるだけ意識が微睡みの世界に誘われた。

 明日も攻略対象たちとのまた騒がしい1日が始まる。そう思うと気が重くなるが仕方がない。これも運命だと受け入れよう。瞼を閉じ、意識を落とせば──




 

『……八様、一……様……一八様!』

 サポートセンターの声にハッと目を開ける。辺りを見渡してみればそこは寝室、ではなく岩壁がゴツゴツとした洞窟のような場所に一八はいた。

「……何だここは……」

『私自身も大変混乱しております。地球上の何処でもないことは確かですが……』

 手元にあるスマホから聞こえるサポートセンターの困惑気味の声は初めてで、一八も戸惑いを隠せない。しかしいつまでも戸惑っているわけにもいかず、立ち上がって周りをよく見渡した。

 どこからどう見ても洞窟である。ゴツゴツとした岩が裸足に刺さり少し痛い。ポツポツとどこかから雨だれの音が聞こえるだけの静かな空間だ。服装は眠りについたときと同じパジャマ、持ち物はスマホだけ。

「クソったれ」

 悪態をついたところで何も変わらないが、つかなければやっていられない。一八は苛立ちに任せて近くの岩壁に拳を叩きつけた。ガンッ、とぶつかる音が洞窟に響く。

(……?)

 違和感を覚え、一八は己の手をまじまじと見つめる。痛みは感じなかった。確かに衝撃はあったがその割には怪我もなく、ヒリヒリとすらしていない。まるで空気でも殴ったかのようだ。

『夢、であれば痛みがないのも説明がつきますね』

 サポートセンターの言葉になるほど、と納得する。確かにこれは夢の中なのだから痛みを感じるはずもない。

 それにしてもこんなリアルな感覚の夢とは珍しいものだ。そう思いながら一八は何となく歩き出した。注視すれば人が通った痕跡がある。それを頼りに進めばやがて開けた場所に出た。

「泉……?」

 コバルトブルーに輝く水面が目の前に広がる。その美しさに一八は思わず感嘆の息を漏らした。水の中に魚がいるのか、時折跳ねる影が見える。

『一八様、お気をつけて』

「あ、ああ」

 警戒しながら慎重に近づくと水面に自分の姿がはっきりと映っている。眠りについたときと一切変わらない姿に安心するやら何やら、と思っていると後ろからコツコツと靴音のようなものが聞こえてきた。

「……」

 警戒心を強め喧嘩流空手の構えを取る。気配が徐々に近付き、やがて人影が姿を現した。

「……!」

 一八が驚いたのはその人影がちゃんとした人間だったこともあるが、それ以上にその姿に見覚えが、いやさっき見た自分と髪色以外瓜二つだったことにも起因する。

 それは相手方も同じだったようで、一八の姿を見た瞬間目を丸くしていた。だがすぐに表情を戻した相手を見て、やはりこの男は只者ではないと悟る。鋭い眼光、引き締まった身体、そして纏う雰囲気。間違いなく戦い慣れている者のそれだ。

「貴様、何者だ」

 先に口を開いたのは一八の方だった。すると相手はふっと笑みを浮かべるとこちらに向かって口を開く。

「そう言われてもな。俺はこの遺跡を調査しに来ただけだ」

「……遺跡? ここは遺跡だったのか」

「貴様こそ何を言っているんだ。ここがどこなのか知らないのか」

「知らん」

「まさか迷い込んだのか?」

「そんなところだ。ここは一体どこなんだ」

 一八が問うと瓜二つ男は顎に手を当てふむ、考え込む。

「何処か、と言われてもこの世界はこの世界だ。増田め……偽の情報でも遺したのか……」

 ブツブツと呟く男の言葉はよく聞き取れなかったが、まぁ無理もないことだ。一八だって自分がどうしてこの場所にいるのか理解できておらず、周りを観察するのに夢中になっていたのだから。

「とりあえず外に出るぞ。調査の邪魔だ」

「わかった。俺も出口を探したいと思っていたから丁度いい」

 そうして連れ立って歩けばやはり髪色以外瓜二つでドッペルゲンガーのようだ。鏡の中の自分は喋らないし動くこともないがこうして対面して見るとよくわかる。暫く歩いていれば、不意に男が足を止めた。

「そういえば名前、聞いていなかったな。何て言うんだ」

「……三島一八」

「外見だけじゃなくて名字も一緒なのか!」

「何だと」

「俺はミシマケン、ケンは“拳”って書くんだ」

 偶然の一致かはたまた必然か。同じ顔に同じ名字、平八の隠し子だと言われてもそうだなとしか言いようがないほど彼、三島拳はそっくりであった。

 しばらく歩き続ければようやく外へと出られた。眩しい太陽の光が差し込み思わず目を覆う。

「アンタが帰る場所は知らないけど、とにかく気をつけろよ。増田の遺した情報目当ての奴らがこの辺りを彷徨いているはずだ」

「そうか。世話になったな、貴様も気をつけろよ」

「ん、ありがとな。達者で」

 そのまま拳は背を向け洞窟に戻っていった。一八もそれを見届けて目を閉じる。

(……不思議な夢だった)

 目が覚めたら忘れてしまうかもしれないが、それでも一八は夢でよかったと思った。夢にしてはリアルすぎる感覚だったが。そう思いスマホを握りしめるとピコンピコンと連絡音が鳴る。不思議に思い画面を見ると。

『攻略対象1名追加、三島拳』

「……は?」

 サポートセンターが告げた言葉に一八は呆然と立ち尽くすが思考を整理する間もなく瞼が強制的に閉じられる。




 

 次に瞼を開けると自室の天井が視界に映った。どうやら無事に帰れたようだ。だがそれより急いでスマホを確認しなければ……!

「おいサポートセンター!どういうことだ!!」

『こ、攻略対象が追加されました……これで全員、揃いました、ね』

 サポートセンターさえ震え声で話す始末である。何ということだ。まさかこんな形で攻略対象が増えるとは思わなかった。しかも自分と瓜二つの男だなんて誰が想像できるだろうか。

「やめたい……」

 思わず弱音が出てしまうが今日ばかりは許してほしい。夢の世界すら安息がなくなった一八の弱音はサポートセンターだけが静かに聞いていた。

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【イベント:ウェディング編】

「俺がウェディングドレスのモデルだと?ふざけるのも大概にしろ」

 目の前にいるブライダル商社のオーナーを睨みつけるが、相手も譲る気はないのかしっかりと見つめ返してくる。このオーナーとの付き合いは長く、G社のモデル撮影でよく依頼しているので信用できる人間だが今回の話はあまりに唐突すぎた。

「実は今、体格の良い女性向けのウェディングドレスを考えているのですがなかなかモデルがいなくて困っていたんです。ですが貴方ならぴったりだと思って!」

「いや待て、俺の身体は女のように華奢じゃない」

「えぇ勿論存じております。だからこそですよ」

「意味がわからん」

「こちらのお写真を見てもらえれば」

 オーナーが差し出してきた写真にはかなり、いや相当体格の良い女性たちが写っている。恐らく一八と同等、いやそれ以上の体格をしている女性もいた。なるほど依頼されるのもむべなるかな。

「俺である必要性は皆無だと思うが?」

「そう言うと思いました。もう1つ、こちらの写真をご覧ください」

 そう言われて差し出された写真には一八とほぼ同じ体格をした女性が笑顔でこちらにピースサインをしている姿があった。

「彼女は××証券代表の一人娘です。今回婚約者様と結婚するにあたり私どもの会社に依頼されたのですが……その、婚約者様の方がサプライズでウェディングドレスを用意したいと仰られまして」

「……」

「本来であれば近い体格の女性で採寸をして、という流れなのですがいかんせんこの体格の女性は中々見つからず……大変不躾な依頼であると承知しておりますが、どうかお願いできませんでしょうか」

 90°しっかりのお辞儀をされるが依頼の内容が内容である。だがここで断り、このオーナーの信用を失うというのも痛手だ。

「聞いておくがそれは内密に行われるんだな?」

「はい、勿論です。花嫁様、花婿様のご家族にもお伝えしません。我々スタッフのみで内密に行います」

「…………わかった。引き受けよう」

「本当ですか!?ありがとうございます!では採寸と撮影の予定は……」

 結局押し切られる形になってしまったのは不服だがこのオーナーに色々世話になった礼もあると割り切る。

 そういえば前世の自分は結婚もクソもなかったな、あの男に布団のシーツを被せられ結婚式もどきをさせられただけだと思い出す。尤もその男は現世で9人の攻略対象の1人に過ぎなくなったが。




 

「ただいま」

「お帰り父さん。晩御飯作っているからちょっと待っててくれ」

 家に帰れば仁が夕飯を作っていた。今晩の献立は確かナポリタンだったはず。トマトケチャップとベーコン、ピーマンを炒める匂いが空きっ腹に良い刺激を与える。ネクタイを緩め、上着を脱いでソファーに腰掛けると一八はふぅと一息ついた。

 いやはや面倒な依頼を受けてしまったと改めて思う。確かにあの体格の女性は滅多にいないだろうが、それにしたって自分を起用するとは……さては経費の削減かと思っていれば仁に呼ばれた。ご飯ができたようだ。

 テーブルにつき、手を合わせてナポリタンを頬張る。昔は味音痴だった仁が普通の料理を作れるようになったと思うと感慨深いものがある。最初は塩辛かったり、焦げていたりしたものが今ではこんなに美味しい。

「今日はうまくできたと思う……」

「……あぁ、美味い」

「!……よかった」

 好感度メーターは相変わらず60から90の間を行ったり来たり。喧嘩したときでさえ50までしか下がらなかったのは流石だと思ったものだ。普通、息子に好かれるのは良いことであるが恋愛的な意味で好かれているのが可視化されると心が複雑極まりない。

「そういえば父さん、帰ってきたとき疲れた顔をしていたけど大丈夫なのか?」

「ん、まぁ少し仕事でトラブルがあってな」

 嘘は言っていない。まさかウェディングドレスのモデルを依頼されたなんて言えない。言ったら絶対何か起こる。モデルの依頼がされた時点でイベントが発生しているようなものだが余計に拗らせたくない。

「あんまり無理しないでくれ。天国の母さんも父さんが過労死で来たら気絶するよ」

「わかっている」

 心配してくれる息子に微笑みかけると嬉しそうに目を細める。こんなに可愛い息子が何故自分を好きになるのか、全く以て理解できない。

「ごちそうさま。美味かった」

「ありがと。お風呂は炊けているから先に入っていいよ」

 皿洗いをしてくれながら言う息子の言葉に甘えて先に入浴する。浴室は湯気が立ち込めていて、身体の芯まで温まる心地だ。シャワーを浴びれば緊張も解れるようで、今日あったことを改めて振り返る。うん、やはりイベントの前兆にしか思えない。

(だとしたら誰が来るのか……)

 1人例外を抜けば全員に可能性がある。寧ろ可能性しかない。(1人抜いて)全員という可能性も否定できない。

 だがそんなことを考えても湯船に浸かればとりあえず何とかなるかという気持ちになる。のぼせる直前に湯船から出て、バスタオルで水滴を取り髪を乾かして、と脱衣所の扉がバン!と開いた。

「父さん……これどういうことなの?」

 まるで深淵から現れる邪神のような声をあげる仁が一八のスマホを持って立っていた。その顔は怒りに満ち溢れており、目は血走っている。危険度メーターがメキメキと上昇しているのも見える。

「まず説明しろ、何のことだ」

 なるべく冷静に返せば仁が画面を見せてくる。そこにはブライダル商社のオーナーから送られてきたメールが表示されており、モデルのオファーについて書かれていた。

「何でこういう不用心なことをするんだよ。こんなことして悪い虫が父さんについたら……!」

「落ち着け。内密に、式場のスタッフだけで行うやつだ。誰かに見せるものじゃない」

「そのスタッフが父さんに何かしないとでも!?父さんが思っている以上に悪い虫は世間にごまんといるんだぞ!!」

 そんなことは前世から知っている。主にセフィロスとかセフィロスとか。

「仁、これは俺の仕事だ。本当のことを言えばやりたくない。だが俺は会社の大黒柱、代表だ。代表がこんな小さな仕事で信用を失ったら会社は終わりだ。……わかっているな」

「……じゃあ、俺がついていっちゃ駄目?」

 上目遣いで爆弾発言しやがってこの愛息子。連れていったらどうなるかわかっているのか。フラグ乱立どころの話ではない。

 だがここで断ればどうなるだろうか。現に危険度メーターが34から63まで上がっているのだ。好感度の方はともかく、危険度は決して無視できない。んぐぅ、と唸って悩みに悩んだ結果。

「……わかった。一緒に来い。仕事の邪魔はするなよ」

「もちろん」

 途端に下がる危険度メーターを見てほっと一息。油断禁物。今度からスマホは脱衣所まで持っていこう。そう誓えば……

「あ、吃驚して叔父さんにも連絡したんだけど……」

「クソったれ」

 これは絶対に来るパターンだ。イベントの女神は一八にまったく微笑んでくれないらしい。あの男は今頃「Excellent!」と叫びワインでも開けているのだろう。

 頼むからこれ以上来てくれるな、と思いながら一八は深いため息をつくのであった。




 

 そして迎えた撮影当日。朝早くから迎えに来たリムジンに仁と共に乗り込む。

「……父さん、本当に大丈夫?」

「あぁ、問題ない。お前はいつも通りでいろ」

「そうだけど……」

 今更不毛な会話を交わしたところで変わることなどなく、ただ時間が過ぎていく。そうしていれば式場に到着し、スタッフ達が出迎えてくれた。

「本日はよろしくお願いします」

「こちらこそ宜しく」

 オーナーには仁がついてくることを事前に言っていたので特に驚かれず、むしろ「愛されてますねぇ」と感心される始末だった。確かに愛されてはいる。色んな意味で。

「とりあえず本日の撮影現場を見に行きましょうか」

 そう言われて着いた先はチャペル。純白の壁に白い床、ステンドグラスから射し込む光は神々しさすら感じさせる。撮影用の装飾を施すため何人かのスタッフが慌ただしく動き回っている。

「そこの装飾曲がってますー!」

「こっちはもう少し明るくしたいです!」

「背景はもうちょっと左寄りに、あと照明も調整を!」

「おーい新人!花瓶をもっと奥に置いてくれ!」

「OK!!」

 ……聞き覚えのある声がしたような。いや幻聴であってほしい。後ろ姿も見覚えあるが嘘であってほしい。だがそんな願いを嘲笑うかのようにその人物はこちらを振り向いた。

「お、カズヤ!どうしてここにいるんだ?」

 いつも通り太陽のような笑みをこちらに向け手を振ってくる男、テリー・ボガードがそこにいた。しくじった、テリーは様々な場所でバイトをしているのだ。それならここにいてもおかしくないということを可能性として考えておくべきだったのだ……!

「……父さん?誰この人」

 隣の仁が氷のように冷たい声で問いかけてくる。前門のテリー、後門の仁。攻略対象2人のブッキング。2人の好感度メーターと危険度メーターが既にメキメキと絶えず動いている。

「お?そっちは話に聞いていた息子さんか。ホントカズヤによく似ているなぁ!」

「初めまして、息子の仁と言います」

「おお、礼儀正しい子だな。俺はテリー、今日はよろしくな!」

「はい、こちらこそ」

 表面上は和やかに挨拶を交わすが、仁の目は一切笑ってはいない。バチバチと火花が散っている。一方のテリーはそれに気づくこともなく、呑気に「まさかなぁ……」と切り出してきた。

「今日はブライダルモデルをやるからどんな女の子が来るかと思っていたけどまさかカズヤがモデルなんてな!こりゃあラッキーだ」

「何がラッキーだ。男がウェディングドレスを着ているのを見たところで何も面白いことはないぞ。目の保養にもならん」

「? カズヤは何着ても似合うだろ。綺麗な花嫁姿を見るのは男のロマンじゃないか」

「貴様は俺のことを女だと思っているのか?」

 その言葉にテリーが一瞬きょとんとした顔をする。しかしすぐに一八の腕を引っ張り顔を近づけた。青色の瞳が、一八の目を捉えて離さない。

「そうじゃねぇよ。まあなんていうか……お前の花嫁姿は素敵だろうから今日ここで見れてよかったとか、なんなら俺の隣にいてほしいとか……」

「冗談でもそういうことを言うな」

「悪い悪い!半分ジョーダンだ!」

 残り半分は本気か?と思っていれば隣の仁が氷の女王かと言わんばかりの凍てついた空気を纏っていた。

「随分と親しいんだね、その、テリーさんと」

「そうそう俺も色々カズヤに世話になっているんだ。よろしくな仁!あ、ちなみに俺のことはテリーでいいぜ」

「……ええ」

 一八の背中に冷や汗が流れる。これ仁の危険度メーター……90の大台に乗っている。これは相当マズい、非常にマズい。

「とりあえず今日の撮影の準備は任せてくれ!最高に幸せな気分になれる写真を撮れるよう俺も手伝うから!」

 そう言ってテリーが一八の手を取りぶんぶんと振ると仁のメーターが更に吹っ切れたような気がした。この場を離れるべきだ。でないと命が危うい……!

「オーナー。会場はわかった。衣装合わせに行こう」

「わかりました。息子さんは……」

「仁も同伴だ」

「了解しました。ではこちらへ」

「おう、またなカズヤ。花嫁衣装、楽しみにしているからな」

「……ああ」

 無言のままの仁を連れオーナーと共にその場を去る。仁の危険度メーターを見れば何とか90で止まっていた。とりあえずは危機を脱したことに安堵の息をつく。だが油断はできない。テリーは危険だ。仁もだが。




 

「久しぶりだな一八!お前がウェディングドレスなんて馬子にも衣装ってやつじゃないのか!?」

「くたばれとっとと帰れ死ね」

 そうして化粧室に案内されるとそこには義弟である李超狼が(何故か)薔薇を咥えながら椅子にふんぞり返っていた。相変わらず趣味の悪い紫色のコートとサングラスが更に苛立ちを加速させる。

「叔父さん、あの後父さんに来るなって連絡されていたよね」

「ああそんなこともあったな。だが今日は仕事が休みだった上、ちょうどこの近くに用事があってな。一八の似合わないウェディングドレス姿なんて滅多に見れるものじゃないから来てみたんだ」

 ハハハと笑う超狼が立ち、一八の顎を掴みクイッと持ち上げてきた。こいつは昔からこうだ。一八が何かやらかすと必ず駆けつけ、それを面白がる。

 だからそういうときはこうするのが一番覿面だ。

「超狼、いつもより髪が整ってないな。寝ぐせがついているぞ。それにネクタイも曲がっている」

「……ッ!今それ関係あるか!?」

「どうせ無理に仕事を終わらせて急いでここに来たんだろ。貴様はいつも俺をからかうときは労力を惜しまないからな。いい加減やめてほしいとも思うが……」

 そうして髪を梳きネクタイを直せばタコのように顔を真っ赤に染め上げ超狼は崩れ落ちた。好感度メーターはチョロいことに80を超えているが危険度は殆ど上がっていないので放っておくが吉である。

 仁はその光景を見てムッとしているが同時に情けない叔父の姿を見たおかげか危険度は先程より下がっていた。

「それで、衣装はどこだ」

「こちらとなります」

 スタッフが指さす方向に視線を向ければ立派なウェディングドレスがあった。プリンセスラインのドレスはそれはそれは純白のレースがふんだんに使われており、フレアーシルエットを柔らかなサテンオーガンジーで包み込んでいる。背中部分はレースアップ・バックに仕上げられており、シンプルなフロントとは対照的にセクシーな印象を醸し出していた。

 このドレスと合わせるマリアベールはビーズ刺繍が施されており、シンプルでありながらゴージャス感が漂う逸品だ。

 一八は思わずほう、とため息をついた。これは確かに美しい。素晴らしい出来だ。この衣装を花婿からサプライズで着せられる花嫁は大層驚き、そして喜ぶことだろう。

「これを父さんが……」

「俺は花嫁のために採寸されてついでに撮影されるだけだ」

「本当の花嫁なら綺麗に着こなすだろうに……まさか男に着せられるとはこのドレスも思っていなかっただろうな。ま、下手な奴に着せるより一八の方がなんぼかいいがな」

「貶すのか褒めるのかはっきりしろ」

「じゃあ息子さんと李さん、控室で待っていて下さい。一八さんを立派な花嫁に仕立て上げますから」

「父さんが花嫁になる……」

「……アリだな」

「とりあえず2人とも出ていけ」

 一八が睨みつけると二人はそそくさと部屋を出ていく。

「まずは簡単に採寸してそれから衣装合わせ、そして着替えましたらお化粧に入りましょう」

「……化粧は必要か?」

「ドレスと合う化粧を確かめるのも仕事のうちなので!」

 そう言われてしまえば仕方がない。一八は諦めたようにため息をつくとスタッフに促されるがまま採寸をされ、ドレスを身に纏った。




 

 さて衣装合わせが終わればお化粧タイムである。ファンデーションにパウダー、アイシャドウ、チーク、口紅が顔に施されていく。自分の顔がどんどん別人になっていくのを鏡越しに見つめればメイクとはすごいものだなと実感した。

 そうしてメイクをされていると廊下、控室の方から李の大きな声が聞こえてきた。

「お前は神羅カンパニーの……!」

 その“神羅カンパニー”という単語に思わず腰を上げそうになるが必死に堪えた。ここで立ち上がったらせっかくここまで耐えた意味が無くなってしまう。

「少々お待ち下さいね」

 メイクをしていたスタッフも流石に騒ぎを察し、一度席を外すとドアの向こうへ消えていった。正直嫌な予感しかしない。攻略対象的な意味で。スマホを見てサポートセンターの様子を窺いたいが生憎鞄に入れっぱなしで手元にはない。

(こんな時に限って……)

 だが下手に動いてメイクを崩したら元も子もない。ここは大人しく待つしかないようだ。一刻も早くここから立ち去りたい気持ちを抑え込みながら待っていると勢いよく扉が開かれた。

 入ってきたのはここのオーナーだ。真っ赤な顔をして汗をダラダラかいている。焦っているのが見え見えだ。

「こんな時に大変失礼なのですが神羅カンパニーの社員さんが営業に来まして……G社の代表がいるなら挨拶したいと仰っています……」

「この格好で挨拶?それは相手に対して失礼じゃないか。後でこっちから謝罪するから挨拶はなしに……」

「それは筋が通らない、というやつだ」

 オーナーの背後に現れた男はいつもと同じように不敵な笑みで一八を見つめている。銀糸の長髪も宝石のような碧眼もいつも通り。

 そう、あのセフィロスである。攻略対象の1人で前世の恋人で、色んな意味で一八の地雷。

「花嫁衣装のモデルとは……随分胡乱な依頼を受けたんだな」

 一八は頭を抱えたくなった。今日は厄日か。そんな一八の心中など知る由もなくセフィロスはふむ、と顎に手をあてまじまじと見つめてくる。その視線に何故か一八の方が恥ずかしくなってきた。

「花嫁衣装……今度は私か見繕うか」

「結構だ。貴様に見繕われる気などない。そもそも最初から見繕う前提で話すな」

「相変わらず手厳しい。それにしても本当に花嫁のようだな。次は式場の準備でも……」

「セフィロス、勝手に何やっているんだ」

 セフィロスの背後から現れたのはクラウドだ。ムスッとした表情でこちらに向かってくる。一八はその姿を見て心底ホッとする。やはりクラウドはこうでなくては、と思わずにはいられないのだ。

「悪いなカズヤ。セフィロスが勝手なことして。仁と李にも止められたのに聞かなくって」

「いい。とりあえずこの馬鹿を連れて出ていってくれ」

「そうだな。……衣装、結構似合っている」

「馬子にも衣装というやつだ。お世辞はよせ」

「お世辞じゃないんだけどな……」

 そうして2人が部屋を出ていく。出ていった後に廊下から怒鳴り声やら何やら聞こえるが一八はスルーする。触らぬ神に祟りなし。

「作業を中断させてすまなかった。続けてくれ」

「はい。では仕上げに入りますね」

 スタッフも外の騒ぎを気にすることを止めたのか、一八に声をかけるとまたメイクを再開する。

 そうして化粧も終わり、ヘアセットも済ませるとそこには一八であるが一八でない、別人が鏡に映っていた。お世辞にも似合っているとは言えないが、これが自分だと思えないほどに美しい。

「これは……すごいな」

「綺麗ですよ!一八さん!」

「ありがとう」

 姿見に写る自分の変わりように驚きを隠せない。これが自分だなんて、と何度も瞬きを繰り返す。

「これで結婚式もバッチリですね!」

「いやただの撮影モデルだが」

「冗談ですよ。それじゃあ撮影しますので式場の方に行きましょうか。先程の方たちは……」

「呼ばなかったら呼ばなかったで面倒だから一応撮影場所まで案内しておけ」

「わかりました。では行きましょう!」

 スタッフに導かれるまま化粧室を出れば太陽が空のてっぺんまで昇っていることに今更気づく。雲1つない空は結婚式に相応しいはずなのに、男のウェディングドレス姿を照らしていると思うと何だか勿体ない気がした。




 

 ステンドグラスから射し込む陽光に照らされたチャペルが撮影場所だ。生まれてはじめてのブライダルシューズに足が少し震えるが何とか持ちこたえた。伊達に鍛えていないのだ。伊達に。

 チャペルへの入り口が見えるとその中からやんややんやと騒ぐ男たちの声が聞こえた。また争っているのか面倒だなと少しだけ急ぎ足になったその瞬間、慣れないハイヒールで足が縺れる。

 しまった、と思ったときには遅い。地面にぶつかるイメージが頭に浮かび受け身の体勢をとろうとしたその時。

「……ッと」

「!?」

 衝撃に備えて身構えていたが予想していた痛みはない。後ろから腰を引き寄せられ誰かに支えられている。恐る恐る振り向くとそこにはセフィロスがいた。少し焦ったような顔で一八の顔を見ている。

「まったく……慣れない靴で走ろうとするな」

「……悪い。助かった」

「怪我はしていないか?特に足首周りに痛みは?」

「問題ない」

「それならいい」

 腰を引き寄せられたせいでセフィロスの声が一八の耳元で囁かれる形になっている。脳に直接響かせるようなテノールボイスは心臓に悪すぎるのではないか。

(落ち着け……今世のセフィロスは違う、違うんだ)

 前世のセフィロスが自分にした仕打ちを思い出せ、そう自分に言い聞かせながら深呼吸をする。するとセフィロスは不思議そうな表情を浮かべながらもゆっくりと手を離してくれた。

 ようやく離れてくれた事に安堵し、気を取り直して撮影場所であるチャペルに入る。

「あ、父さん……!」

「…………嘘だ。この俺がこんなに……!」

「おー!すっげーキレイじゃん」

「……いいな」

 仁、超狼、テリー、クラウドの反応はそれぞれだ。それなりに好評なようで好感度メーターがかなりアップしている。一方、隣にいるセフィロスはというと無言で一八の姿をじっと見つめていた。

「……貴様にしては珍しいな。馬鹿みたいに『美しい』だの『愛らしい』だの言ってくる口はどこいった」

「……すぎて……」

「はっきり言え」

 モゴモゴと口籠もるセフィロスを急かせば他の4人も興味深そうにセフィロスの声に耳を傾けている。

 そして数秒の後。

「……言葉にしたら陳腐になるほどお前が美しく見えてしまってな。行動で示そうとしてもどうにもうまく動けないほど……似合っている」

 珍しく赤面しているセフィロスからそんなことを言われてしまえば、こちらも紅潮せざるを得ない。

 むず痒い、むず痒い!心臓を悪くするような発言はやめろと声を大にして言いたいがこれでも仕事中なので理性で留める。

「とにかく……綺麗だ、カズヤ」

 不意打ちの名前呼びだって反則だろう。

「父さん、俺たちがいること忘れていない?」

 仁の言葉で我に返れば、こちらを何とも言えない微妙な目で見つめてくる4人と目が合う。

 仁はあからさまに怒っているし超狼とクラウドは呆れたような視線を送ってくる。唯一の救いはテリーの苦笑いだけ。好感度メーターより危険度メーターの方が上がっている目はやめろと訴えたいが自分が招いた事態である。

「あー、カメラマン。撮影が終わったらこいつら個人とも撮影させてくれないか」

「了解です!」

 そう提案すれば全員の顔がパッと明るくなるのがわかる。これで危険度メーターが下がるかはわからないが、やらないよりはマシだろう。多分。

 こうして(一八にとって)悪夢の撮影会は色々トラブルがあったものの何とか無事に終わったのだった。




 

『お疲れさまでした。本日は一大イベントでしたね』

 寝ようとベッドに横になったところ、サポートセンターが話しかけてくる。あの後、無事に撮影会は終わった。好感度と危険度については調整が必要な面子が何人か残ることになったが許容範囲である。寧ろ爆上がり、爆下がりした対象がいなかっただけ幸いであろう。

「……まあこの写真は悪くないか」

 撮影後すぐスマホに転送された5人との写真を眺める。

 一方的に肩を組み満面の笑みでピースしているテリー、跪いて花束を渡してくるクラウド、顎を指で上げてきた超狼、腰に手を回して引き寄せてきた仁、不意打ちで頬にキスをしてきたセフィロス。

 どれもこれも自分への好意が現れていて嫌になるが同時に暖かいものが胸にじんわりと広がっていく。

『どのお写真も素敵ですよ』

 撮影会の最後に全員で撮った写真はワチャワチャとしておりとても綺麗だとは思えないが、一番好きだ。

 前世を思い出し、自分に向けられた恋愛感情が可視化されるようになった世界でも案外悪くないことがあるもんだと、写真を眺めながら少しだけ微笑む。もう少しだけこの日々が続けば……なんて戯言を思い浮かべていればいつの間にか微睡みの世界へ誘われていた。

 その寝顔はいつもより穏やかで、どこか嬉しそうに見えた。

 なお後日、5人の手によって不参加だったポール、ラース、リュウに写真が渡ったとき一八は盛大にブチ切れたという。

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【攻略対象紹介】
 

セフィロス・宝条

・神羅カンパニーの社員。20代半ば

・初期好感度:95 初期危険度:99

クラウド・ストライフ

・神羅カンパニーの社員。21歳

・初期好感度:20 初期危険度:10

風間 仁

・カズヤの息子。大学生。21歳

・初期好感度:90 初期危険度:50

李超狼

・カズヤの義弟。ヴァイオレットシステムズの筆頭株主。48歳

・初期好感度:73 初期危険度:46

ポール・フェニックス

・カズヤの友人。世界的に有名な格闘家。50歳

・初期好感度:72 初期危険度:6

ラース・アレクサンダーソン

・カズヤの異母弟。訳あって三島の社員になった。20代半ば

・初期好感度:53 初期危険度:50

リュウ

・カズヤがジムで出会った格闘家。世界を彷徨っている。30代前半

・初期好感度:35 初期危険度:29

テリー・ボガード

・カズヤがたまたま街で出会った格闘家兼フリーター。20代後半

・初期好感度:78 初期危険度:4

三島 拳

・夢の中でしか出会えない並行世界(?)の男。20代前半

・初期好感度:19 初期危険度:32

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