投稿日:2016年10月02日 00:44 文字数:2,923
【ハルカグ】夜と君とミットのうた
ステキ数は非公開です
ハルカグ企画さんのワンドロです!相変わらずのギリギリです!
http://hk60min.tumblr.com
ちょっとすれ違ったり楽しかったりっていうハルカグっていうのと、榛名は武蔵野来てよかったよね!!!って気持ちで前から書きたかった話です。読み返してないので色々粗がありそうなんですけどパッション大事かなっていうあれそれです(笑)
ハルカグに幸あれ!
http://hk60min.tumblr.com
ちょっとすれ違ったり楽しかったりっていうハルカグっていうのと、榛名は武蔵野来てよかったよね!!!って気持ちで前から書きたかった話です。読み返してないので色々粗がありそうなんですけどパッション大事かなっていうあれそれです(笑)
ハルカグに幸あれ!
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「町田さーん!次、受けてもらって良いっスかー!」
上がった息と体を、少し涼しくなった風が通り過ぎていく夕方のマウンド。
加具山が投球の手を止め、町田の方へと歩きながら話を始めた時に聞こえてきた大声に二人はそちらを見つめた。
確認せずとも分かるその大きな声の主はバタバタと二人のもとへと走って来る。声の大きさに負けない大柄な背の目立つ榛名である。
「秋丸との確認は良いのか?」
「はい、今日はどっちかっつーと球速より制球の方が良い感じなんでちょっと組み立て含めて相談したくて」
町田が声を掛ければそう返事をした榛名は、一拍空けた後に慌てて加具山に向けて両手を左右に振った。
「あ、カグさんまだなら秋丸でもうちょっと我慢するんで大丈夫っス!」
「んな気を使わなくても大丈夫だっつの!ちょうどこっちも一段落したから大丈夫だ」
「じゃあスンマセン!町田さんっ」
榛名はそう言うと町田の方へと駆け寄る。加具山の隣を走り抜ける長身を思わず加具山は見つめていた。
「加具山さん、オレで良ければなんかあれば受けますよ」
掛けられた声に思わず肩が跳ねてしまったことに加具山自身が驚く。声を掛けた秋丸はその近くで加具山の様子に首を傾げた。
「ああ、悪い。そしたらちょっと付き合ってほしいのがあるからもう少し良いか?」
「分かりました!」
何か聞きたそうな素振りを見せた秋丸だったが、その加具山の言葉に頷くと投球練習場へと向かう。その後ろを己のミットを見つめた加具山が少し歩みを遅くして付いて行った。
* * * *
陽の明るさが姿を消し、外の見えない曇った窓ガラスを見つめながら加具山は一人、トレーニングルームで強く顔を拭いた。
傍らのベンチに腰を付けてエナメルバッグの中からペットボトルを取り出すと勢い良く中を飲み込む。
すでに他の部活も帰った後なのか、周りから聞こえる音は無く、しんと静まり返った部屋の中では自分の荒い息だけが纏わり付いて煩かった。
息を整える為に深呼吸を繰り返しながら、加具山はバッグの中のミットを見つめた。
投手は一人では投げられない。捕手が居て、捕ってくれて始めてマウンドの上の投手として存在できる。だから自分にとっても保守の存在は大きく、三年共に練習を重ねてきた町田には他のメンバーとは比べられない、違った形の信頼や関係性がある。
では、投手同士はどうなのだろうか。仲間であり、ライバルであり。野球は好きで続けてきたし、同じポジションの友達は中学時代にも居た。
けれど、どこか本気の勝負とは離れていた中学時代。けれど今はーー
「電気点いてると思ったら、やっぱりカグさんか!」
聞き慣れた、室内のせいかーーそれでも良く通る声に顔を上げると、榛名がトレーニングルームの入口から顔を覗かせていた。
考え込んでいたのと、考えていた内容的に加具山の行動が一瞬止まり、その大きい目が榛名をじっと見つめていた。
「カグさん?」
掛けられた声にようやく体の動いた加具山は、なんでもないと笑ったがその口元が上がりきらないのを当人が一番気がついていた。
「また無理してないでしょうね」
そんな加具山の様子に瞬きをした後、榛名は何事もなかったように後手に扉を閉めながら室内に入り歩いて来る。その姿を加具山は改めて見つめ、それから首を振った。
「してねーよ、決めた練習量は守ってる」
「そっスか」
榛名は簡潔にそう答えると加具山の向かいにあるエアバイクへと腰掛ける。
「そうだ、カグさん!」
「なんだ?」
突然その場で身を乗り出した榛名に加具山が構えると、榛名は嬉しそうな笑顔をその顔に咲かせた。
「あんがとございます」
「……は?へ?なんだ急に⁈」
突然榛名の口から出てきた言葉に加具山は一瞬反応が遅れ。それから笑顔の榛名とは対照的に思わず怪訝な表情を浮かべる。
「いや、さっき町田さんと練習してる時に言われた言葉にそう、カグさんに言いたくなって」
「え、っていうか、なんの話」
榛名の言葉は常に簡潔で。たまにこうして当人には分かっているが聞いてる方としては詳細が掴めない時が多々有る。まさに今がその状態だった。
「ああ、えーと。町田さんに、カグさんとオレの二人の球が試合で捕れて楽しいって言われて」
頭の中に町田の人の良さそうな笑顔を加具山はすぐに浮かんだ。
「改めてオレがこうして部活できてんのはカグさんいるからだよなって、そんでオレも納得して」
「ってまた話飛んだよ、そこでなんでオレ出てくるんだって!」
相変わらずの榛名節に加具山の表情が崩れた。榛名はその向かいで加具山へとまた距離を詰めた。
「カグさんが投手で、投手であんな荒れてるとこ見せてくれたから」
「って、えっ、ちょ、それ一年前の」
「うんそう、あの夜の時」
「え、それとこれとどうーー」
「オレ、他の人がどんな風に考えてんのかなとかって考えたのたぶん初めてだったかもしんない」
真っ直ぐに加具山を見つめるその瞳が、こんな夜のことだった一年前の榛名と被る。
「カグさんが投手だったから。だから、この人はこんな風に考えてんのかなって。そう思ったらさ、体動いてたんだよね。ここで辞めさせちゃダメだよなって。んなこと、他人は他人だしどうでもいいしって思ってたからさ、自分でも驚いた」
榛名の突然の話に加具山の頭の中は混乱したまま、ただ榛名をじっと見ていた。
確かに、他の人のことを考えて動くようなタイプにあの頃思えなかったと急に思い出す。
「カグさんとそれからも話すようになってさ、それからもカグさんこんな風に今は考えてんのかなとか、そんなこと考えるようになってんの。オレが驚いた。それから、他の人も考えられるようになってさ。ああ、部活ってさ、やっぱ良いなって。町田さんの言葉でそう思えた」
榛名はそう言い終えると、笑った。その笑顔が見たことのないような少し恥ずかしそうな、はにかんだ表情だった。
「んで」
しかしその笑顔は一瞬で。次に浮かんだのはいたずらっ子のような楽しげな笑顔。その急な変化に加具山が虚をつかれれば一気に二人の距離が縮んでいた。
「カグさんのこと考え過ぎて好きになったんだからさ、これからも責任とってくださいよ?」
拳ひとつほどの距離しか開いていない目の前で榛名が楽しそうにまた笑う。
ーー何がオレのことを考えて、だよ!
やっと頭の中が整理できてきた加具山の頭に浮かんだのはそんな言葉で。
一年前も、今も、なんでこうタイミング良くオレの考えてることなんかお見通しみたいに一気に距離を縮めてくるのか。
少し燻っていた胸の内が軽くなっていることに加具山は気がついた。
これだから、コイツはーー
加具山はそこまで考えると自分から拳ひとつほどの距離を縮める。
「そんなにオレのこと考えてるなら、今オレが考えてたことも分かってくれんだろ?」
知らずうちに互いの指先がお互いの心臓の辺りに触れる。
誰よりも嬉しそうに笑うその顔を知っているのはお互いだけなのだと、そっと体温が重なった場所は同じ気持ちなのだと、小さな笑い声が静かな室内に響き渡っていた。
上がった息と体を、少し涼しくなった風が通り過ぎていく夕方のマウンド。
加具山が投球の手を止め、町田の方へと歩きながら話を始めた時に聞こえてきた大声に二人はそちらを見つめた。
確認せずとも分かるその大きな声の主はバタバタと二人のもとへと走って来る。声の大きさに負けない大柄な背の目立つ榛名である。
「秋丸との確認は良いのか?」
「はい、今日はどっちかっつーと球速より制球の方が良い感じなんでちょっと組み立て含めて相談したくて」
町田が声を掛ければそう返事をした榛名は、一拍空けた後に慌てて加具山に向けて両手を左右に振った。
「あ、カグさんまだなら秋丸でもうちょっと我慢するんで大丈夫っス!」
「んな気を使わなくても大丈夫だっつの!ちょうどこっちも一段落したから大丈夫だ」
「じゃあスンマセン!町田さんっ」
榛名はそう言うと町田の方へと駆け寄る。加具山の隣を走り抜ける長身を思わず加具山は見つめていた。
「加具山さん、オレで良ければなんかあれば受けますよ」
掛けられた声に思わず肩が跳ねてしまったことに加具山自身が驚く。声を掛けた秋丸はその近くで加具山の様子に首を傾げた。
「ああ、悪い。そしたらちょっと付き合ってほしいのがあるからもう少し良いか?」
「分かりました!」
何か聞きたそうな素振りを見せた秋丸だったが、その加具山の言葉に頷くと投球練習場へと向かう。その後ろを己のミットを見つめた加具山が少し歩みを遅くして付いて行った。
* * * *
陽の明るさが姿を消し、外の見えない曇った窓ガラスを見つめながら加具山は一人、トレーニングルームで強く顔を拭いた。
傍らのベンチに腰を付けてエナメルバッグの中からペットボトルを取り出すと勢い良く中を飲み込む。
すでに他の部活も帰った後なのか、周りから聞こえる音は無く、しんと静まり返った部屋の中では自分の荒い息だけが纏わり付いて煩かった。
息を整える為に深呼吸を繰り返しながら、加具山はバッグの中のミットを見つめた。
投手は一人では投げられない。捕手が居て、捕ってくれて始めてマウンドの上の投手として存在できる。だから自分にとっても保守の存在は大きく、三年共に練習を重ねてきた町田には他のメンバーとは比べられない、違った形の信頼や関係性がある。
では、投手同士はどうなのだろうか。仲間であり、ライバルであり。野球は好きで続けてきたし、同じポジションの友達は中学時代にも居た。
けれど、どこか本気の勝負とは離れていた中学時代。けれど今はーー
「電気点いてると思ったら、やっぱりカグさんか!」
聞き慣れた、室内のせいかーーそれでも良く通る声に顔を上げると、榛名がトレーニングルームの入口から顔を覗かせていた。
考え込んでいたのと、考えていた内容的に加具山の行動が一瞬止まり、その大きい目が榛名をじっと見つめていた。
「カグさん?」
掛けられた声にようやく体の動いた加具山は、なんでもないと笑ったがその口元が上がりきらないのを当人が一番気がついていた。
「また無理してないでしょうね」
そんな加具山の様子に瞬きをした後、榛名は何事もなかったように後手に扉を閉めながら室内に入り歩いて来る。その姿を加具山は改めて見つめ、それから首を振った。
「してねーよ、決めた練習量は守ってる」
「そっスか」
榛名は簡潔にそう答えると加具山の向かいにあるエアバイクへと腰掛ける。
「そうだ、カグさん!」
「なんだ?」
突然その場で身を乗り出した榛名に加具山が構えると、榛名は嬉しそうな笑顔をその顔に咲かせた。
「あんがとございます」
「……は?へ?なんだ急に⁈」
突然榛名の口から出てきた言葉に加具山は一瞬反応が遅れ。それから笑顔の榛名とは対照的に思わず怪訝な表情を浮かべる。
「いや、さっき町田さんと練習してる時に言われた言葉にそう、カグさんに言いたくなって」
「え、っていうか、なんの話」
榛名の言葉は常に簡潔で。たまにこうして当人には分かっているが聞いてる方としては詳細が掴めない時が多々有る。まさに今がその状態だった。
「ああ、えーと。町田さんに、カグさんとオレの二人の球が試合で捕れて楽しいって言われて」
頭の中に町田の人の良さそうな笑顔を加具山はすぐに浮かんだ。
「改めてオレがこうして部活できてんのはカグさんいるからだよなって、そんでオレも納得して」
「ってまた話飛んだよ、そこでなんでオレ出てくるんだって!」
相変わらずの榛名節に加具山の表情が崩れた。榛名はその向かいで加具山へとまた距離を詰めた。
「カグさんが投手で、投手であんな荒れてるとこ見せてくれたから」
「って、えっ、ちょ、それ一年前の」
「うんそう、あの夜の時」
「え、それとこれとどうーー」
「オレ、他の人がどんな風に考えてんのかなとかって考えたのたぶん初めてだったかもしんない」
真っ直ぐに加具山を見つめるその瞳が、こんな夜のことだった一年前の榛名と被る。
「カグさんが投手だったから。だから、この人はこんな風に考えてんのかなって。そう思ったらさ、体動いてたんだよね。ここで辞めさせちゃダメだよなって。んなこと、他人は他人だしどうでもいいしって思ってたからさ、自分でも驚いた」
榛名の突然の話に加具山の頭の中は混乱したまま、ただ榛名をじっと見ていた。
確かに、他の人のことを考えて動くようなタイプにあの頃思えなかったと急に思い出す。
「カグさんとそれからも話すようになってさ、それからもカグさんこんな風に今は考えてんのかなとか、そんなこと考えるようになってんの。オレが驚いた。それから、他の人も考えられるようになってさ。ああ、部活ってさ、やっぱ良いなって。町田さんの言葉でそう思えた」
榛名はそう言い終えると、笑った。その笑顔が見たことのないような少し恥ずかしそうな、はにかんだ表情だった。
「んで」
しかしその笑顔は一瞬で。次に浮かんだのはいたずらっ子のような楽しげな笑顔。その急な変化に加具山が虚をつかれれば一気に二人の距離が縮んでいた。
「カグさんのこと考え過ぎて好きになったんだからさ、これからも責任とってくださいよ?」
拳ひとつほどの距離しか開いていない目の前で榛名が楽しそうにまた笑う。
ーー何がオレのことを考えて、だよ!
やっと頭の中が整理できてきた加具山の頭に浮かんだのはそんな言葉で。
一年前も、今も、なんでこうタイミング良くオレの考えてることなんかお見通しみたいに一気に距離を縮めてくるのか。
少し燻っていた胸の内が軽くなっていることに加具山は気がついた。
これだから、コイツはーー
加具山はそこまで考えると自分から拳ひとつほどの距離を縮める。
「そんなにオレのこと考えてるなら、今オレが考えてたことも分かってくれんだろ?」
知らずうちに互いの指先がお互いの心臓の辺りに触れる。
誰よりも嬉しそうに笑うその顔を知っているのはお互いだけなのだと、そっと体温が重なった場所は同じ気持ちなのだと、小さな笑い声が静かな室内に響き渡っていた。
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