投稿日:2024年01月21日 22:11 文字数:9,893
35こ目;In The Early Morning
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ただひたすらイチャイチャする話です。
ただひたすら新居でイチャイチャしています。
蒼生は、寝室から一歩も出ていません。
そもそもこの話は3つ目くらいを書いている時に、エンディング後はこんな感じなんだろうなあと書いた番外編用のメモでございました。
3人が小学生の頃に、既にこの未来はあったわけですね。
もう少し後に書こうと思っていたのですが、せっかく同棲を始めたのに全然えっちな話(えっち自体じゃなくて)してないじゃん!となって急遽形にしたのでした。
同棲したらイチャイチャしたいよね。
↑初掲載時キャプション↑
2022/01/21初掲載
https://pictbland.net/users/series/kazanet-tk/%E5%83%95%EF%BC%8B%E5%90%9B%E2%86%92Waltz%EF%BC%81
ただひたすら新居でイチャイチャしています。
蒼生は、寝室から一歩も出ていません。
そもそもこの話は3つ目くらいを書いている時に、エンディング後はこんな感じなんだろうなあと書いた番外編用のメモでございました。
3人が小学生の頃に、既にこの未来はあったわけですね。
もう少し後に書こうと思っていたのですが、せっかく同棲を始めたのに全然えっちな話(えっち自体じゃなくて)してないじゃん!となって急遽形にしたのでした。
同棲したらイチャイチャしたいよね。
↑初掲載時キャプション↑
2022/01/21初掲載
https://pictbland.net/users/series/kazanet-tk/%E5%83%95%EF%BC%8B%E5%90%9B%E2%86%92Waltz%EF%BC%81
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健太はふっと目を覚ました。目を開けたのかどうかわからないほどの暗がりだが、少し慣れてくると天井の端や電灯の形が見えてくる。視線を動かすと、カーテンのわずかな隙間からは、夜明けの気配を感じる鈍い色の青が覗いているのが見えた。枕に半分埋もれた携帯電話を掴んで確認すると、アラームが作動する数分前だ。よかった、と安心して、アラームをオフにする。その音で起こしてしまわないように、一応振動だけの設定にはしてあるものの、それでも出来る限り小さな物音さえさせないようにしたかった。
起き上がり、隣で眠る蒼生に目をやる。すやすやと寝息をたてる、たしかな温度。黒い髪が落ちる額、白い瞼、微かに揺れる長い睫毛、艶やかな唇。あまりにも綺麗で、物心ついた時には「なるほどこれが絵本で見た天使という存在か」と思っていた。その絵本だって蒼生が読んでくれたものだ。もちろん、今でもそう思っている。
滑らかな頬に触れそうになる手をなんとか押し止める。横を向いて眠っていたのだろうか、その肩をこちらに落とすような形でうつ伏せになり、枕をきゅっと掴む手がなんとも言えず可愛らしい。布団が上下することでわかる呼吸の形は、何時間でもそれだけを見ていられそうだ。
さすがにその視線に気付かれてしまったのだろうか、蒼生が突然ぱちりと目を開けた。深い黒の瞳は、暗い部屋の中でも何故かこんなにも色鮮やかに見える。……目が開くだけでこんなに可愛いことがあっていいのだろうか。
「……健ちゃん? 走りに行くの?」
起き抜けで舌の回らない口調も可愛い。起こしてしまった罪悪感と寝起きの可愛さ、どちらに気持ちの重点を置けばよいのだろう。
健太は指の背で蒼生の頬を撫でた。さっき我慢したぶんだ。
「うん。起こしちゃってごめんな。まだ早いから、寝てて」
「ん……」
頷きながら、蒼生は健太の指に自分の手を重ねて、頬ずりをする。……可愛い。ベッドを出ていく決心が鈍りそうだ。思わず抱き締めそうになった瞬間、蒼生がぱっと手を離す。
「いってらっしゃい」
「……ん、いってきます」
そんな世界一可愛い「いってらっしゃい」を聞いては、出かけないわけにもいかない。健太は蒼生に背中を押されたら、その瞬間から全速力のダッシュをしてしまうタイプなのだ。仕方なくベッドを降り、足下の引き出しから一番上に置いておいたランニング用のウェアを引っ張り出した。すうっと目を閉じた蒼生だが、時々なにかを確認するように小さく目を開ける。二度寝の邪魔になってしまっているのだろうか、健太はなるべく音を立てないように、急いでパジャマを脱ぎ捨ててウェアを身に纏う。そのまま寝室を出て行こうとする健太に、
「待って、健ちゃん」
蒼生が声をかけ、両腕で上半身を支えるようにゆっくりと起き上がる。慌てて手を伸ばして支えようとした健太の腕を引くと、蒼生はぐっと背を伸ばし、軽く触れるだけのキスをした。
「っ!」
「気を付けてね」
「あっ、あ……うん、ありがと」
驚いた顔で健太がそう言うと、蒼生は満足げにふんわりと笑った。そしてそのままの場所にぱたんと横たわると、ひらひら、と手を振る。
そうか。いってらっしゃいのキスをしてくれようとして、眠りに落ちそうなところを我慢して待ってくれていたのか。こみ上げる愛おしさでどうにかなってしまいそうだ。そうなってしまう前に、健太はなんとか笑顔を作って手を振ると、寝室を後にした。
健太のぬくもりが残るシーツに頬ずりしながら、蒼生はドアの向こうの物音に耳を澄ます。洗面所で顔を洗う水の音。廊下を歩く音。玄関が開く音。そして閉じて、鍵がかかる音。静かな部屋ではよく聞こえる。それが再び聞こえるまでは心配だが、きっとちゃんと帰ってきてくれる。
蒼生は半分眠ったままの重い体を起こすと、ずるずると自分の枕の元に戻り、ぽふんと頭を乗せた。布団を肩まで引き上げると、瞼がふうっと落ちてくる。
夢の続きが始まりそうになった時だ。反対側から腕が伸びてきて、ゆったりとした動きで頭を撫でた。
「……おはよう、蒼生」
「おはよ、冬矢」
嬉しくなって、目が少し覚めた。そちらに顔を向けると、わずかに幼さを感じさせる笑顔の冬矢が、優しい瞳を覗かせていた。
「健太、ランニングだって?」
「うん。偉いよねえ」
健太は部活を辞めて以降も、朝の日課であるランニングを続けていた。朝が弱いほうである蒼生はしばらく気付かなかったのだが、高校時代も、一緒に暮らすようになってからも、特別な理由がない限りは走っているらしい。あんな店があった、こんな場所があった、なんてよく見つけてくるものだと思っていたが、そうやって走りながら探索をしているのだそうだ。さらに最近はよく筋トレもしている。体を動かすことは嫌いなわけではないものの、積極的に動くのがさほど好きではない蒼生と冬矢には少々共感しづらいが、健太らしいと納得できたので不思議には感じなかった。
ちなみに、体力を付けたい蒼生は、一度だけ付き合ったことがある。だが、ペースが違いすぎた。長年走り続けていたのだから敵わないし追いつけないのが当然なのはわかっていたが、それにしても差が大きかった。健太は蒼生に合わせてくれたのだが、明らかにランニングではなく散歩の様相を呈していた。これでは健太の足を引っ張るどころではないと気付いた蒼生は、早々に諦めることにしたのだ。
もちろん、体力を付けることを諦めたわけではない。健太の使っている筋トレグッズで何か使えるものがあればいいのだが。
蒼生がそんなことを考えていると、冬矢が頭に乗せた手に力を入れた。引き寄せられているのがわかるので、蒼生は導かれるままに冬矢の腕に頭を乗せる。すると反対の手も背中に伸びてきて、抱き締められる格好になった。自分の体にかかる腕の重さが心地いい。頭の位置を冬矢の胸に寄せると、肺いっぱいに息を吸う。包み込まれている安心感。体の先端のほうから、次第に力が抜けていく。
思考までぼんやりと鈍くなったところで、頭を乗せていた冬矢の腕が、抱き寄せるように肩に回る。あれ、と思っていると、体の上にあった腕も動いた。ぱっと一気に目が冴えたのは、その指先が蒼生の中心に優しく触れたからだ。
「あっ……冬矢……?」
腰からくるぞわっとした感覚に身をよじりながら目を上げると、冬矢が柔らかなまなざしで蒼生を見つめている。
「せっかくふたりきりだから、……ちょっと独占させて?」
「!」
囁く音量が、電流のように身体を貫いた。ぞくぞく、と震えがそこから広がるように浸食してくる。蒼生を溶かすための声色は、腕の中で聞くと、それだけで達しそうになってしまう。
「あーおい……」
「う、ん……」
ぎこちなく頷いた蒼生の頭の上で、冬矢がくすりと笑う。その気配さえ強い刺激になってしまい、蒼生は思わず下に伸びていた冬矢の袖口をぎゅっと掴んだ。それが意図せず、冬矢の手を自分に押し付ける結果になる。
「んぁっ」
思わず漏れた、その声の甘さに突き動かされたのか、冬矢は肩を抱く手にいっそう力を籠める。
「……ふふ。かぁわい……」
「わ、わざとじゃない、よ」
「ふぅん?」
冬矢の指が、ズボン越しの熱を軽くひっかいた。ぞくぞくする。
「……んっ」
「もう、こんなに熱くなってきてるのに」
「だってぇ……」
「一緒に、触る?」
「うん……」
冬矢が体を起こすと、蒼生はそれを追いかけるようにゆっくりと起き上がる。ふらつく体を抱き締めた冬矢の腕に、まだ目の覚め切っていない体温が伝わっていく。それがどうしようもなく愛おしくなったのだろう、冬矢は蒼生の耳に唇を寄せた。
「蒼生……下、脱いじゃおうね」
囁かれた言葉に、腕の中でこくりと頷く。背中に回った手に力が入ったのを感じながら、ズボンに手をかける。少し戸惑っているうちに、先にズボンを下ろしていた冬矢が、すぐに手を重ねてきた。そうしてふたりでズボンを脱ぎ棄ててしまうと、明らかに冬矢より期待している状態の自分がいる。さすがに少し恥ずかしくて引こうとした腰を、冬矢が両手で押さえつけた。
「逃げないで」
「う、うん……」
冬矢は蒼生の腰をさらに引き寄せ、抱き合えるほどの距離に近付いてくる。そして蒼生の目がじっと下を見つめていることに目を細めると、自分のペニスの先を、蒼生の同じ場所に一瞬押し付けて離す。くちゅっと濡れた音がして、透明な糸がふたりを繋いだ。
「……っあ」
「もう、感じて来ちゃったね」
「恥ずかしい……」
「どうして? 嬉しいよ。俺の声、好き? 気持ちよくなっちゃうくらい?」
「……うん。好き。大好き」
嬉しそうに笑った冬矢が、ふたりのペニスを優しい手つきで扱き上げる。蒼生はびくんと身体を震わせた。
「んっ、ん……」
「蒼生も、ほら、手……」
言われたとおり、両手をおずおずと股間に伸ばす。冬矢の手がいったん離れ、蒼生の手ごと包み込むようにやわやわと握る。背筋を、ぴりぴりとした感覚が一気に上っていく。
「……っ、気持ちい、い?」
「ん、は、ぁ、うっん……きもちぃ……そこ、あ、そこ……ごりごりなる、の、ぉ……」
甘い痺れに包まれて、意識がすべてそこに集まってしまいそうだ。さらに、手の中からリズミカルに覗く濡れた赤い色が、視覚的にも追い立ててくる。それから逃れるように顔を上げると、冬矢の少し意地悪な笑いが目に飛び込む。自分の反応を窺われていたことに気付いた蒼生は、気恥ずかしさと「すき」の気持ちでいっぱいになってしまう。
「と……ぉや」
わずかに、首を傾げ、そっと顔を近付ける。勢いでそのまま自分から行くつもりだったのだが、察した冬矢が先に唇を重ねてくる。荒くなっていく息を思わず飲み込むほどの、深いキス。
「っふ……んん……」
嬉しい。でも。
だんだんに切ない感覚が集中していくにつれ、背中が寂しくなっていく。贅沢だ。でも、抱き締めてほしい。重ねられるキスの合間に、そんなことを考えているのがバレてしまったのだろうか。冬矢は強く蒼生の舌を吸うと、くすぐるような手の動きを速めていく。
「んっ、ん……うぅー……っ」
その動きは、あっという間に蒼生の限界を追い越した。
「……っん!」
びくん、と身体が跳ね、蒼生は冬矢の手の中に精を放った。
一気に力が抜けるのに任せ、冬矢の胸に倒れ込む。パジャマ越しに、鼓動が伝わってくる。……そうか、冬矢を取り残して、自分だけ先に。こうしていつも自分だけが快楽の波に流されてしまう。申し訳ない気持ちで、熱いままの冬矢のペニスにそろそろと手を伸ばした。
だが、それより先に、冬矢の手が背中に回って力いっぱい抱き締めてくれる。ぎゅう、と、それ以上に胸が締め付けられる。嬉しい。だけど。
「とぉや……」
「うん。ぎゅってしてほしかったんだよね……。わかるよ。蒼生は可愛いね」
「でも……僕だけじゃやだ……。冬矢も……もっときもちよくなって……?」
下から覗き込むように告げると、冬矢はにやりと笑う。それから、流れるようなしぐさで蒼生の後ろに手を伸ばした。
「……っあ?」
「じゃあ、俺は、ここ……独り占めさせてくれる?」
「っ、うん……。いい、よ……っ」
「ふふ。ありがとう」
一瞬そこから手が離れたかと思うと、すぐにぬるりとした感触がする。冷たいと思う間もなく同じ温度になり、優しく縁をくるくると撫でたその2本の指が、そのままの強さで入り込んでくる。くちゅ、という音が耳に届く。
「ぁあっ」
「昨日シたばっかりだから、まだ柔らかいね……」
「ぅん……っ」
くすぐったさが勝る感覚は、冬矢の指がなぞる中の場所が変わるたび、気持ちよさに置き換わっていく。蒼生は冬矢のパジャマの裾をぎゅっと握った。
背中に回ったままだったもう片方の手が、蒼生の頭に伸び、焦らすように髪を梳く。頭の中が、早くこのもどかしい場所を埋めてほしい思いと、触れ合ったまま熱を持ち続ける冬矢のペニスを自分の中に納めさせたい思いでぐちゃぐちゃになる。だが、どちらも結果は同じだ。だから、とにかく。
「や、やらかいから、大丈夫だから、……はやく……」
冬矢は小さく笑い、指をゆっくり引き抜いた。崩れかけた蒼生の頭を抱き締めるようにして支え、ヘッドボードに寄りかかる。
「蒼生。後ろ向きに、乗れる?」
あれ、と思って顔を上げる。
「後ろ……?」
「俺に寄りかかるみたいに。やだ?」
「ううん、やじゃ、ない。でも冬矢が言うの珍しいから……」
「たまには、ね。おいで」
不思議に思いながら、蒼生は投げ出された冬矢の足を後ろ向きに跨ぐ。ちら、と振り向くと、冬矢は準備の手をいったん止めて、優しく笑った。少しほっとして、蒼生は冬矢の足に両手を置く。
「いいよ、蒼生。ゆっくり降りておいで」
ああ、やっと。
蒼生は少しずつ腰を落とす。きっと冬矢はちゃんと待ってくれている。それがわかるので、蒼生はただ降りていくだけでよかった。ぴたりと熱い先端が触れたかと思うと、間を置かず、押し広げるように挿入ってくる。
「あ、あぁ……っ、あ……」
満たされる質量。熱い。熱い。伝わる思いが。こんなに。
「……ぅあっ」
こつん。弱い衝撃だったはずのそれが、びりりっと身体を震わせる。
「こ、これぇ……っあ、や、あぁっ……」
おそらく、角度だ。この体勢が、ちょうど、「合う」。思わず身体が逃げそうになるが、冬矢はすかさず蒼生の両膝の裏を抱えて持ち上げる。その勢いで、それまで自分の足で支えていた体重が消え、尻餅をついたように、一気に冬矢のペニスを飲み込んでしまう。
「ひっ! あぁっあ!」
蒼生の頭の中に、がつん、と音が響く。実際の音ではなく、感覚だ。けれどたしかに聞こえた気がする。それくらい強い刺激だった。
「…………っ、……ーっ!」
「はぁ……ごめんね、ゆっくりって、言ったのに。俺も、蒼生が欲しくて、どうしようもなかった……」
「……う、れし……ぃ……。ぁ……いま……イッちゃうか、と、おもった……」
すっかり体を預ける格好になった耳元で、冬矢が息を乱している。耳にかかるそれも気持ちいい。もう、何もかもが気持ちよくて、指1本でも動かそうものならすぐに達してしまいそうな気がする。
ふと、冬矢が顔を上げた。そしてドアのほうを見ると、何かを窺うような表情をする。蒼生はこれ以上刺激にならないようにゆっくりとそちらを見るが、ぼんやりとしている頭では何もわからない。
そんな蒼生に、冬矢はそっと顔を寄せると、何か耳打ちした。ぎょっとしたように冬矢を見つめ返す蒼生に、冬矢はまたさっきの意地悪げな笑いを浮かべた。
健太は、音をたてないように、ゆっくりと鍵を開けた。が、抵抗むなしくガチャリと大きな音が鳴り、しまった、と首をすくめる。今ので起こしてしまっていないだろうか。
ドアを開けて中の様子を確認するが、しんとしていて、誰かがリビングにいる気配もなさそうだ。だいぶ明るくなってきたとはいえ、起きる時間にはまだ早い。昨夜も少々羽目を外してしまった自覚があるので、出来れば蒼生にはぎりぎりまで休んでいてほしいと思っていた。
ただ、顔は早く見たい。急いで手と顔だけ洗うと、シャワーは後回しにして、とりあえず寝室に向かった。出た時と変わらず、ドアはしっかり閉まっている。引手に手をかけ、注意深くそろりと開ける。
明るくなった室内を覗き込んで、おや、と不審に思う。ふたりはもう起きていたようだ。まだぼんやりしたような顔の蒼生が、冬矢の足の上に座り、掛布団を胸元まで引き上げて抱きかかえている。
「おかえり」
笑って言ったのは、冬矢だ。ますます怪しい。
蒼生は健太と目が合うと、戸惑うようにゆったりとした動きで、ただ、微笑む。
「……何してんだ?」
冬矢は蒼生を抱えたまま、にこにこと首を傾げる。そもそも、冬矢がこんな顔を自分に見せることが既におかしいのだ。
「せっかくふたりきりだから、いちゃいちゃしてた。な、蒼生?」
「ん……うんっ……」
吐息交じりの声。もうここまでくれば疑う余地もない。健太は大股でベッドの足元に回り込み、ふたりの近くに寄ると、布団を掴んで引き剥がす。蒼生は小さく抵抗したが、ほとんど力が入っていなかった。
……そこには、しっかり繋がったままの。
「ヤッてんじゃん!」
思わず健太は声を上げる。変わらず冬矢はにこにこ顔だ。そりゃあそうだろう。
「いちゃいちゃはしてるんだから、嘘はついていないだろ」
赤い顔の蒼生がさらに耳まで赤くして、ばっと両手で顔を覆う。
「……だから言ったじゃん~……バレるよぉ……」
「蒼生のせいだよ。そんなとろとろの顔で甘い声出しちゃったら」
「んっ……が、んばったのにぃ……」
あれで隠せているつもりだったらしい。可愛い。どうせ冬矢は最初からバレる前提で、内緒にしよう、とかなんとか言ったのだろう。ふたりでいちゃついているのは羨ましいが、精一杯隠そうとしていた蒼生が可愛いので、もはやどうでもよくなる。さっきは我慢して出ていったが、こんな状態の蒼生を前にしてこれ以上耐えられるわけがない。健太はジャージの上下をあっという間に脱ぎ捨て、ベッドに上がる。
「おい、冬矢、かわれ」
冬矢はこれ見よがしに後ろから蒼生の耳を噛み、緩く腰を動かす。
「……んっぅ……」
「まだ俺イッてないから、まだ俺の番だよね?」
「う、ん、っ」
「……だって」
「今のは完全に言わせてるんだろうが! ……イッたら交代だからな!」
ふたりの側まで飛びかかる勢いで近付くと、蒼生の両手首を掴んで外す。表情に困っているような蒼生と目が合う、それごと飲み込むように口づける。
「んー……っ」
「っ!」
冬矢の肩が跳ねたのが見える。健太は小さくほくそ笑む。おそらく、蒼生が反応したからだ。蒼生が気持ちよくなれば、それだけ冬矢が果てるのも早くなるだろう。そうすれば自分の番だし、なによりとろけた蒼生を堪能できる。
顔が見たくていったん唇を離す……が、蒼生の唇はそれを許さないようにすぐに追いついてくる。可愛い。可愛い。思わず抱き締めると、すぐに腕が首に巻き付いてくる。
「……可愛いっ……蒼生……」
「ん、ふぅ、う」
蒼生の言葉を、声を、すべて飲み込んでしまいたい。蒼生の中に飛び込みたい。まずは素肌で触れ合いたい。
健太は蒼生のパジャマのボタンに手を伸ばす。腰に伸ばした手を離したくないので、片手でボタンを外しにかかる。ひとつ、もうひとつ。途中からは冬矢の手が加わり、あっという間に蒼生の肌がさらされる。改めて抱き合うと、しっとりとした感覚。
「……あ。オレ、シャワー浴びてきてねぇや……ごめん」
キスの合間に言うと、蒼生はぶんぶんと首を横に振る。
「いい、健ちゃんの、っ、汗のにおい、好き……」
「あお……っ」
たまらずのしかかり、可愛いことを言い出す舌を吸う。甘い。なんて、甘い。
どちらの刺激に感じているのだろう、蒼生が身体をよじらせる。
「……んー、ん、う、んんっ……」
唇から直接、健太の中に声が響く。早く、蒼生の中に。早く。
「ぅ……っ」
小さく冬矢が声を漏らし、ぶるりと震えた。健太はそれを見逃さない。
「……おい、約束だぞ」
「……仕方ないな」
苦い笑いを浮かべながら、冬矢が肩をすくめる。それから、ヘッドボードの上に置いたコンドームの袋をぽんと投げた。
冬矢が身体から出て行ってしまい、中途半端な熱を持て余したまま冬矢に寄り掛かっている蒼生は、ぼんやりとした目でその軌跡を追う。そして健太がそれを手に取るのを確認すると、すっと健太の肩を掴むように両手を伸ばした。
「っ、うわ」
つい、声が漏れた。蒼生の目はまっすぐに健太を見ている。間違いなく、自分を待ちわびている。大好きなひとが、自分を求めてくれている。
「蒼生ぃ……」
体勢を考えている余裕なんてない。蒼生を引き寄せようとか、冬矢から引き剥がそうとか、少し前までは思っていたはずだ。でも、もう、真っ白で。
「あぁ、んっ……は、ぁ」
熱い。挿入り込んだ蒼生のナカも。重ねる肌も。ぶつかるほどの吐息も。
「蒼生、……蒼生っ」
「ん、ん、ぅん……っ」
呼ぶ声に答えようと必死で頷く蒼生。
「……う、あぁ、あ……んっ」
横から冬矢が蒼生の右手を掴み、その唇を奪う。じぃっとその目をうっとり冬矢に向けていた蒼生が、同じ色の目をこちらに向ける。健太はその愛しい唇に再び口づける。
「蒼生。蒼生、好きだよ」
「可愛い、蒼生、ああ、大好き」
蒼生は笑う。
「ぼ、くも……すき……あ、すきぃ……」
健太はそれを、幸せそうだと感じた。
大好きな蒼生が、そう感じてくれているのならば、それ以上のことはなかった。
蒼生は、健太に寄り掛かって、開け放したドアから見える窓をなんとなく眺めていた。すっかり明るくなって、今日も一日よく晴れそうな予感がする。
左手で蒼生の手をさすり、腰を抱きながら髪に顔を埋めてきている健太は、曰く反省中だそうだ。昨夜も散々しておきながら、さっきも結局1度ずつでは済まなかった件についてらしい。嫌だと言った覚えもないし拒否したわけでもないのだから、と言ったのだが、それはそれ、なのだとか。
やがて、ドアのほうから香ばしい香りが漂ってくる。大きめのトレイを持って顔を覗かせたのは、やはりこちらも反省中だという冬矢だ。蒼生にキスされた健太が羨ましくなって無茶をした、と自白があった。黙っているつもりだったそうだが、さすがに立ち上がれなくなった蒼生に罪悪感を覚えたとのことだ。自分の体力のせいだし今はもう動けるし、蒼生はそう言ったのだが、これはこれ、なのだとか。
「朝ごはんは何?」
身を乗り出して聞くと、冬矢はゆっくりとトレイごとベッドの上に置いた。
「ホットサンド。こっちがハムと卵で、こっちがベーコンだよ。スープはヘッドボードの上に置くね」
「美味しそう!」
蒼生はふたりに向かって笑う。反省していたはずの健太も、目を輝かせてトレイの上を見ている。
「すげえ、めちゃくちゃいい匂いするな」
「ねー。なんかベッドの上でごはんって、特別な感じがして楽しい」
無邪気に皿を取り上げる蒼生を見て、冬矢も表情を和らげた。
3人でベッドに並んで座り、零さないように気を付けながら、パンにかじりつく。それが本当にキャンプにでも遊びに来ているような感じがして、蒼生は楽しくて仕方がない。それに、冬矢が作ってくれたサンドは、ちょっぴり利かせたマスタードがいいアクセントになって、とても美味しかった。
本当に、今日が休みだったらどんなによかったことか。
冬矢がふと時計を見上げた。
「ああ、そろそろ支度しなきゃな。シャワー……健太も使うだろ」
「さすがにそうだな。朝走ってきたから、じゃ言い訳できねえ感じだし」
「蒼生は午後からだから、もう少しゆっくりして……」
え、と蒼生は顔を上げる。
「なんで? 僕も一緒に行く」
「だけど」
「……こんな足腰がくがくの僕に? ひとりで電車に乗れと?」
「すみませんでした」
健太と冬矢が同時に頭を下げる。息がぴったりなのが微笑ましくて、思わず笑いそうになってしまった。
ひとしきりその光景を堪能してから、交互にふたりの顔を覗き込む。
「朝からたくさん触ってもらって嬉しかったし気持ちよかったけど、でもやっぱり責任取って、一緒に行って、ね?」
「承知しました」
「一生責任取ります」
改まった口調に、蒼生は声を上げて笑った。
起き上がり、隣で眠る蒼生に目をやる。すやすやと寝息をたてる、たしかな温度。黒い髪が落ちる額、白い瞼、微かに揺れる長い睫毛、艶やかな唇。あまりにも綺麗で、物心ついた時には「なるほどこれが絵本で見た天使という存在か」と思っていた。その絵本だって蒼生が読んでくれたものだ。もちろん、今でもそう思っている。
滑らかな頬に触れそうになる手をなんとか押し止める。横を向いて眠っていたのだろうか、その肩をこちらに落とすような形でうつ伏せになり、枕をきゅっと掴む手がなんとも言えず可愛らしい。布団が上下することでわかる呼吸の形は、何時間でもそれだけを見ていられそうだ。
さすがにその視線に気付かれてしまったのだろうか、蒼生が突然ぱちりと目を開けた。深い黒の瞳は、暗い部屋の中でも何故かこんなにも色鮮やかに見える。……目が開くだけでこんなに可愛いことがあっていいのだろうか。
「……健ちゃん? 走りに行くの?」
起き抜けで舌の回らない口調も可愛い。起こしてしまった罪悪感と寝起きの可愛さ、どちらに気持ちの重点を置けばよいのだろう。
健太は指の背で蒼生の頬を撫でた。さっき我慢したぶんだ。
「うん。起こしちゃってごめんな。まだ早いから、寝てて」
「ん……」
頷きながら、蒼生は健太の指に自分の手を重ねて、頬ずりをする。……可愛い。ベッドを出ていく決心が鈍りそうだ。思わず抱き締めそうになった瞬間、蒼生がぱっと手を離す。
「いってらっしゃい」
「……ん、いってきます」
そんな世界一可愛い「いってらっしゃい」を聞いては、出かけないわけにもいかない。健太は蒼生に背中を押されたら、その瞬間から全速力のダッシュをしてしまうタイプなのだ。仕方なくベッドを降り、足下の引き出しから一番上に置いておいたランニング用のウェアを引っ張り出した。すうっと目を閉じた蒼生だが、時々なにかを確認するように小さく目を開ける。二度寝の邪魔になってしまっているのだろうか、健太はなるべく音を立てないように、急いでパジャマを脱ぎ捨ててウェアを身に纏う。そのまま寝室を出て行こうとする健太に、
「待って、健ちゃん」
蒼生が声をかけ、両腕で上半身を支えるようにゆっくりと起き上がる。慌てて手を伸ばして支えようとした健太の腕を引くと、蒼生はぐっと背を伸ばし、軽く触れるだけのキスをした。
「っ!」
「気を付けてね」
「あっ、あ……うん、ありがと」
驚いた顔で健太がそう言うと、蒼生は満足げにふんわりと笑った。そしてそのままの場所にぱたんと横たわると、ひらひら、と手を振る。
そうか。いってらっしゃいのキスをしてくれようとして、眠りに落ちそうなところを我慢して待ってくれていたのか。こみ上げる愛おしさでどうにかなってしまいそうだ。そうなってしまう前に、健太はなんとか笑顔を作って手を振ると、寝室を後にした。
健太のぬくもりが残るシーツに頬ずりしながら、蒼生はドアの向こうの物音に耳を澄ます。洗面所で顔を洗う水の音。廊下を歩く音。玄関が開く音。そして閉じて、鍵がかかる音。静かな部屋ではよく聞こえる。それが再び聞こえるまでは心配だが、きっとちゃんと帰ってきてくれる。
蒼生は半分眠ったままの重い体を起こすと、ずるずると自分の枕の元に戻り、ぽふんと頭を乗せた。布団を肩まで引き上げると、瞼がふうっと落ちてくる。
夢の続きが始まりそうになった時だ。反対側から腕が伸びてきて、ゆったりとした動きで頭を撫でた。
「……おはよう、蒼生」
「おはよ、冬矢」
嬉しくなって、目が少し覚めた。そちらに顔を向けると、わずかに幼さを感じさせる笑顔の冬矢が、優しい瞳を覗かせていた。
「健太、ランニングだって?」
「うん。偉いよねえ」
健太は部活を辞めて以降も、朝の日課であるランニングを続けていた。朝が弱いほうである蒼生はしばらく気付かなかったのだが、高校時代も、一緒に暮らすようになってからも、特別な理由がない限りは走っているらしい。あんな店があった、こんな場所があった、なんてよく見つけてくるものだと思っていたが、そうやって走りながら探索をしているのだそうだ。さらに最近はよく筋トレもしている。体を動かすことは嫌いなわけではないものの、積極的に動くのがさほど好きではない蒼生と冬矢には少々共感しづらいが、健太らしいと納得できたので不思議には感じなかった。
ちなみに、体力を付けたい蒼生は、一度だけ付き合ったことがある。だが、ペースが違いすぎた。長年走り続けていたのだから敵わないし追いつけないのが当然なのはわかっていたが、それにしても差が大きかった。健太は蒼生に合わせてくれたのだが、明らかにランニングではなく散歩の様相を呈していた。これでは健太の足を引っ張るどころではないと気付いた蒼生は、早々に諦めることにしたのだ。
もちろん、体力を付けることを諦めたわけではない。健太の使っている筋トレグッズで何か使えるものがあればいいのだが。
蒼生がそんなことを考えていると、冬矢が頭に乗せた手に力を入れた。引き寄せられているのがわかるので、蒼生は導かれるままに冬矢の腕に頭を乗せる。すると反対の手も背中に伸びてきて、抱き締められる格好になった。自分の体にかかる腕の重さが心地いい。頭の位置を冬矢の胸に寄せると、肺いっぱいに息を吸う。包み込まれている安心感。体の先端のほうから、次第に力が抜けていく。
思考までぼんやりと鈍くなったところで、頭を乗せていた冬矢の腕が、抱き寄せるように肩に回る。あれ、と思っていると、体の上にあった腕も動いた。ぱっと一気に目が冴えたのは、その指先が蒼生の中心に優しく触れたからだ。
「あっ……冬矢……?」
腰からくるぞわっとした感覚に身をよじりながら目を上げると、冬矢が柔らかなまなざしで蒼生を見つめている。
「せっかくふたりきりだから、……ちょっと独占させて?」
「!」
囁く音量が、電流のように身体を貫いた。ぞくぞく、と震えがそこから広がるように浸食してくる。蒼生を溶かすための声色は、腕の中で聞くと、それだけで達しそうになってしまう。
「あーおい……」
「う、ん……」
ぎこちなく頷いた蒼生の頭の上で、冬矢がくすりと笑う。その気配さえ強い刺激になってしまい、蒼生は思わず下に伸びていた冬矢の袖口をぎゅっと掴んだ。それが意図せず、冬矢の手を自分に押し付ける結果になる。
「んぁっ」
思わず漏れた、その声の甘さに突き動かされたのか、冬矢は肩を抱く手にいっそう力を籠める。
「……ふふ。かぁわい……」
「わ、わざとじゃない、よ」
「ふぅん?」
冬矢の指が、ズボン越しの熱を軽くひっかいた。ぞくぞくする。
「……んっ」
「もう、こんなに熱くなってきてるのに」
「だってぇ……」
「一緒に、触る?」
「うん……」
冬矢が体を起こすと、蒼生はそれを追いかけるようにゆっくりと起き上がる。ふらつく体を抱き締めた冬矢の腕に、まだ目の覚め切っていない体温が伝わっていく。それがどうしようもなく愛おしくなったのだろう、冬矢は蒼生の耳に唇を寄せた。
「蒼生……下、脱いじゃおうね」
囁かれた言葉に、腕の中でこくりと頷く。背中に回った手に力が入ったのを感じながら、ズボンに手をかける。少し戸惑っているうちに、先にズボンを下ろしていた冬矢が、すぐに手を重ねてきた。そうしてふたりでズボンを脱ぎ棄ててしまうと、明らかに冬矢より期待している状態の自分がいる。さすがに少し恥ずかしくて引こうとした腰を、冬矢が両手で押さえつけた。
「逃げないで」
「う、うん……」
冬矢は蒼生の腰をさらに引き寄せ、抱き合えるほどの距離に近付いてくる。そして蒼生の目がじっと下を見つめていることに目を細めると、自分のペニスの先を、蒼生の同じ場所に一瞬押し付けて離す。くちゅっと濡れた音がして、透明な糸がふたりを繋いだ。
「……っあ」
「もう、感じて来ちゃったね」
「恥ずかしい……」
「どうして? 嬉しいよ。俺の声、好き? 気持ちよくなっちゃうくらい?」
「……うん。好き。大好き」
嬉しそうに笑った冬矢が、ふたりのペニスを優しい手つきで扱き上げる。蒼生はびくんと身体を震わせた。
「んっ、ん……」
「蒼生も、ほら、手……」
言われたとおり、両手をおずおずと股間に伸ばす。冬矢の手がいったん離れ、蒼生の手ごと包み込むようにやわやわと握る。背筋を、ぴりぴりとした感覚が一気に上っていく。
「……っ、気持ちい、い?」
「ん、は、ぁ、うっん……きもちぃ……そこ、あ、そこ……ごりごりなる、の、ぉ……」
甘い痺れに包まれて、意識がすべてそこに集まってしまいそうだ。さらに、手の中からリズミカルに覗く濡れた赤い色が、視覚的にも追い立ててくる。それから逃れるように顔を上げると、冬矢の少し意地悪な笑いが目に飛び込む。自分の反応を窺われていたことに気付いた蒼生は、気恥ずかしさと「すき」の気持ちでいっぱいになってしまう。
「と……ぉや」
わずかに、首を傾げ、そっと顔を近付ける。勢いでそのまま自分から行くつもりだったのだが、察した冬矢が先に唇を重ねてくる。荒くなっていく息を思わず飲み込むほどの、深いキス。
「っふ……んん……」
嬉しい。でも。
だんだんに切ない感覚が集中していくにつれ、背中が寂しくなっていく。贅沢だ。でも、抱き締めてほしい。重ねられるキスの合間に、そんなことを考えているのがバレてしまったのだろうか。冬矢は強く蒼生の舌を吸うと、くすぐるような手の動きを速めていく。
「んっ、ん……うぅー……っ」
その動きは、あっという間に蒼生の限界を追い越した。
「……っん!」
びくん、と身体が跳ね、蒼生は冬矢の手の中に精を放った。
一気に力が抜けるのに任せ、冬矢の胸に倒れ込む。パジャマ越しに、鼓動が伝わってくる。……そうか、冬矢を取り残して、自分だけ先に。こうしていつも自分だけが快楽の波に流されてしまう。申し訳ない気持ちで、熱いままの冬矢のペニスにそろそろと手を伸ばした。
だが、それより先に、冬矢の手が背中に回って力いっぱい抱き締めてくれる。ぎゅう、と、それ以上に胸が締め付けられる。嬉しい。だけど。
「とぉや……」
「うん。ぎゅってしてほしかったんだよね……。わかるよ。蒼生は可愛いね」
「でも……僕だけじゃやだ……。冬矢も……もっときもちよくなって……?」
下から覗き込むように告げると、冬矢はにやりと笑う。それから、流れるようなしぐさで蒼生の後ろに手を伸ばした。
「……っあ?」
「じゃあ、俺は、ここ……独り占めさせてくれる?」
「っ、うん……。いい、よ……っ」
「ふふ。ありがとう」
一瞬そこから手が離れたかと思うと、すぐにぬるりとした感触がする。冷たいと思う間もなく同じ温度になり、優しく縁をくるくると撫でたその2本の指が、そのままの強さで入り込んでくる。くちゅ、という音が耳に届く。
「ぁあっ」
「昨日シたばっかりだから、まだ柔らかいね……」
「ぅん……っ」
くすぐったさが勝る感覚は、冬矢の指がなぞる中の場所が変わるたび、気持ちよさに置き換わっていく。蒼生は冬矢のパジャマの裾をぎゅっと握った。
背中に回ったままだったもう片方の手が、蒼生の頭に伸び、焦らすように髪を梳く。頭の中が、早くこのもどかしい場所を埋めてほしい思いと、触れ合ったまま熱を持ち続ける冬矢のペニスを自分の中に納めさせたい思いでぐちゃぐちゃになる。だが、どちらも結果は同じだ。だから、とにかく。
「や、やらかいから、大丈夫だから、……はやく……」
冬矢は小さく笑い、指をゆっくり引き抜いた。崩れかけた蒼生の頭を抱き締めるようにして支え、ヘッドボードに寄りかかる。
「蒼生。後ろ向きに、乗れる?」
あれ、と思って顔を上げる。
「後ろ……?」
「俺に寄りかかるみたいに。やだ?」
「ううん、やじゃ、ない。でも冬矢が言うの珍しいから……」
「たまには、ね。おいで」
不思議に思いながら、蒼生は投げ出された冬矢の足を後ろ向きに跨ぐ。ちら、と振り向くと、冬矢は準備の手をいったん止めて、優しく笑った。少しほっとして、蒼生は冬矢の足に両手を置く。
「いいよ、蒼生。ゆっくり降りておいで」
ああ、やっと。
蒼生は少しずつ腰を落とす。きっと冬矢はちゃんと待ってくれている。それがわかるので、蒼生はただ降りていくだけでよかった。ぴたりと熱い先端が触れたかと思うと、間を置かず、押し広げるように挿入ってくる。
「あ、あぁ……っ、あ……」
満たされる質量。熱い。熱い。伝わる思いが。こんなに。
「……ぅあっ」
こつん。弱い衝撃だったはずのそれが、びりりっと身体を震わせる。
「こ、これぇ……っあ、や、あぁっ……」
おそらく、角度だ。この体勢が、ちょうど、「合う」。思わず身体が逃げそうになるが、冬矢はすかさず蒼生の両膝の裏を抱えて持ち上げる。その勢いで、それまで自分の足で支えていた体重が消え、尻餅をついたように、一気に冬矢のペニスを飲み込んでしまう。
「ひっ! あぁっあ!」
蒼生の頭の中に、がつん、と音が響く。実際の音ではなく、感覚だ。けれどたしかに聞こえた気がする。それくらい強い刺激だった。
「…………っ、……ーっ!」
「はぁ……ごめんね、ゆっくりって、言ったのに。俺も、蒼生が欲しくて、どうしようもなかった……」
「……う、れし……ぃ……。ぁ……いま……イッちゃうか、と、おもった……」
すっかり体を預ける格好になった耳元で、冬矢が息を乱している。耳にかかるそれも気持ちいい。もう、何もかもが気持ちよくて、指1本でも動かそうものならすぐに達してしまいそうな気がする。
ふと、冬矢が顔を上げた。そしてドアのほうを見ると、何かを窺うような表情をする。蒼生はこれ以上刺激にならないようにゆっくりとそちらを見るが、ぼんやりとしている頭では何もわからない。
そんな蒼生に、冬矢はそっと顔を寄せると、何か耳打ちした。ぎょっとしたように冬矢を見つめ返す蒼生に、冬矢はまたさっきの意地悪げな笑いを浮かべた。
健太は、音をたてないように、ゆっくりと鍵を開けた。が、抵抗むなしくガチャリと大きな音が鳴り、しまった、と首をすくめる。今ので起こしてしまっていないだろうか。
ドアを開けて中の様子を確認するが、しんとしていて、誰かがリビングにいる気配もなさそうだ。だいぶ明るくなってきたとはいえ、起きる時間にはまだ早い。昨夜も少々羽目を外してしまった自覚があるので、出来れば蒼生にはぎりぎりまで休んでいてほしいと思っていた。
ただ、顔は早く見たい。急いで手と顔だけ洗うと、シャワーは後回しにして、とりあえず寝室に向かった。出た時と変わらず、ドアはしっかり閉まっている。引手に手をかけ、注意深くそろりと開ける。
明るくなった室内を覗き込んで、おや、と不審に思う。ふたりはもう起きていたようだ。まだぼんやりしたような顔の蒼生が、冬矢の足の上に座り、掛布団を胸元まで引き上げて抱きかかえている。
「おかえり」
笑って言ったのは、冬矢だ。ますます怪しい。
蒼生は健太と目が合うと、戸惑うようにゆったりとした動きで、ただ、微笑む。
「……何してんだ?」
冬矢は蒼生を抱えたまま、にこにこと首を傾げる。そもそも、冬矢がこんな顔を自分に見せることが既におかしいのだ。
「せっかくふたりきりだから、いちゃいちゃしてた。な、蒼生?」
「ん……うんっ……」
吐息交じりの声。もうここまでくれば疑う余地もない。健太は大股でベッドの足元に回り込み、ふたりの近くに寄ると、布団を掴んで引き剥がす。蒼生は小さく抵抗したが、ほとんど力が入っていなかった。
……そこには、しっかり繋がったままの。
「ヤッてんじゃん!」
思わず健太は声を上げる。変わらず冬矢はにこにこ顔だ。そりゃあそうだろう。
「いちゃいちゃはしてるんだから、嘘はついていないだろ」
赤い顔の蒼生がさらに耳まで赤くして、ばっと両手で顔を覆う。
「……だから言ったじゃん~……バレるよぉ……」
「蒼生のせいだよ。そんなとろとろの顔で甘い声出しちゃったら」
「んっ……が、んばったのにぃ……」
あれで隠せているつもりだったらしい。可愛い。どうせ冬矢は最初からバレる前提で、内緒にしよう、とかなんとか言ったのだろう。ふたりでいちゃついているのは羨ましいが、精一杯隠そうとしていた蒼生が可愛いので、もはやどうでもよくなる。さっきは我慢して出ていったが、こんな状態の蒼生を前にしてこれ以上耐えられるわけがない。健太はジャージの上下をあっという間に脱ぎ捨て、ベッドに上がる。
「おい、冬矢、かわれ」
冬矢はこれ見よがしに後ろから蒼生の耳を噛み、緩く腰を動かす。
「……んっぅ……」
「まだ俺イッてないから、まだ俺の番だよね?」
「う、ん、っ」
「……だって」
「今のは完全に言わせてるんだろうが! ……イッたら交代だからな!」
ふたりの側まで飛びかかる勢いで近付くと、蒼生の両手首を掴んで外す。表情に困っているような蒼生と目が合う、それごと飲み込むように口づける。
「んー……っ」
「っ!」
冬矢の肩が跳ねたのが見える。健太は小さくほくそ笑む。おそらく、蒼生が反応したからだ。蒼生が気持ちよくなれば、それだけ冬矢が果てるのも早くなるだろう。そうすれば自分の番だし、なによりとろけた蒼生を堪能できる。
顔が見たくていったん唇を離す……が、蒼生の唇はそれを許さないようにすぐに追いついてくる。可愛い。可愛い。思わず抱き締めると、すぐに腕が首に巻き付いてくる。
「……可愛いっ……蒼生……」
「ん、ふぅ、う」
蒼生の言葉を、声を、すべて飲み込んでしまいたい。蒼生の中に飛び込みたい。まずは素肌で触れ合いたい。
健太は蒼生のパジャマのボタンに手を伸ばす。腰に伸ばした手を離したくないので、片手でボタンを外しにかかる。ひとつ、もうひとつ。途中からは冬矢の手が加わり、あっという間に蒼生の肌がさらされる。改めて抱き合うと、しっとりとした感覚。
「……あ。オレ、シャワー浴びてきてねぇや……ごめん」
キスの合間に言うと、蒼生はぶんぶんと首を横に振る。
「いい、健ちゃんの、っ、汗のにおい、好き……」
「あお……っ」
たまらずのしかかり、可愛いことを言い出す舌を吸う。甘い。なんて、甘い。
どちらの刺激に感じているのだろう、蒼生が身体をよじらせる。
「……んー、ん、う、んんっ……」
唇から直接、健太の中に声が響く。早く、蒼生の中に。早く。
「ぅ……っ」
小さく冬矢が声を漏らし、ぶるりと震えた。健太はそれを見逃さない。
「……おい、約束だぞ」
「……仕方ないな」
苦い笑いを浮かべながら、冬矢が肩をすくめる。それから、ヘッドボードの上に置いたコンドームの袋をぽんと投げた。
冬矢が身体から出て行ってしまい、中途半端な熱を持て余したまま冬矢に寄り掛かっている蒼生は、ぼんやりとした目でその軌跡を追う。そして健太がそれを手に取るのを確認すると、すっと健太の肩を掴むように両手を伸ばした。
「っ、うわ」
つい、声が漏れた。蒼生の目はまっすぐに健太を見ている。間違いなく、自分を待ちわびている。大好きなひとが、自分を求めてくれている。
「蒼生ぃ……」
体勢を考えている余裕なんてない。蒼生を引き寄せようとか、冬矢から引き剥がそうとか、少し前までは思っていたはずだ。でも、もう、真っ白で。
「あぁ、んっ……は、ぁ」
熱い。挿入り込んだ蒼生のナカも。重ねる肌も。ぶつかるほどの吐息も。
「蒼生、……蒼生っ」
「ん、ん、ぅん……っ」
呼ぶ声に答えようと必死で頷く蒼生。
「……う、あぁ、あ……んっ」
横から冬矢が蒼生の右手を掴み、その唇を奪う。じぃっとその目をうっとり冬矢に向けていた蒼生が、同じ色の目をこちらに向ける。健太はその愛しい唇に再び口づける。
「蒼生。蒼生、好きだよ」
「可愛い、蒼生、ああ、大好き」
蒼生は笑う。
「ぼ、くも……すき……あ、すきぃ……」
健太はそれを、幸せそうだと感じた。
大好きな蒼生が、そう感じてくれているのならば、それ以上のことはなかった。
蒼生は、健太に寄り掛かって、開け放したドアから見える窓をなんとなく眺めていた。すっかり明るくなって、今日も一日よく晴れそうな予感がする。
左手で蒼生の手をさすり、腰を抱きながら髪に顔を埋めてきている健太は、曰く反省中だそうだ。昨夜も散々しておきながら、さっきも結局1度ずつでは済まなかった件についてらしい。嫌だと言った覚えもないし拒否したわけでもないのだから、と言ったのだが、それはそれ、なのだとか。
やがて、ドアのほうから香ばしい香りが漂ってくる。大きめのトレイを持って顔を覗かせたのは、やはりこちらも反省中だという冬矢だ。蒼生にキスされた健太が羨ましくなって無茶をした、と自白があった。黙っているつもりだったそうだが、さすがに立ち上がれなくなった蒼生に罪悪感を覚えたとのことだ。自分の体力のせいだし今はもう動けるし、蒼生はそう言ったのだが、これはこれ、なのだとか。
「朝ごはんは何?」
身を乗り出して聞くと、冬矢はゆっくりとトレイごとベッドの上に置いた。
「ホットサンド。こっちがハムと卵で、こっちがベーコンだよ。スープはヘッドボードの上に置くね」
「美味しそう!」
蒼生はふたりに向かって笑う。反省していたはずの健太も、目を輝かせてトレイの上を見ている。
「すげえ、めちゃくちゃいい匂いするな」
「ねー。なんかベッドの上でごはんって、特別な感じがして楽しい」
無邪気に皿を取り上げる蒼生を見て、冬矢も表情を和らげた。
3人でベッドに並んで座り、零さないように気を付けながら、パンにかじりつく。それが本当にキャンプにでも遊びに来ているような感じがして、蒼生は楽しくて仕方がない。それに、冬矢が作ってくれたサンドは、ちょっぴり利かせたマスタードがいいアクセントになって、とても美味しかった。
本当に、今日が休みだったらどんなによかったことか。
冬矢がふと時計を見上げた。
「ああ、そろそろ支度しなきゃな。シャワー……健太も使うだろ」
「さすがにそうだな。朝走ってきたから、じゃ言い訳できねえ感じだし」
「蒼生は午後からだから、もう少しゆっくりして……」
え、と蒼生は顔を上げる。
「なんで? 僕も一緒に行く」
「だけど」
「……こんな足腰がくがくの僕に? ひとりで電車に乗れと?」
「すみませんでした」
健太と冬矢が同時に頭を下げる。息がぴったりなのが微笑ましくて、思わず笑いそうになってしまった。
ひとしきりその光景を堪能してから、交互にふたりの顔を覗き込む。
「朝からたくさん触ってもらって嬉しかったし気持ちよかったけど、でもやっぱり責任取って、一緒に行って、ね?」
「承知しました」
「一生責任取ります」
改まった口調に、蒼生は声を上げて笑った。
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コメントは作品投稿者とあなたにしかコメントの内容が表示されず、文字制限は140文字までとなりますので、あまり長いコメントを考える必要はありません。
是非、コメントを投稿して頂き、皆様と共にBLを愛する場所としてpictBLandを盛り上げていければと思います。
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35こ目;In The Early Morning
僕+君→Waltz!
創作BL
創作BL小説
幼馴染
三角関係
3P
R18
ただひたすらイチャイチャする話です。
ただひたすら新居でイチャイチャしています。
蒼生は、寝室から一歩も出ていません。
そもそもこの話は3つ目くらいを書いている時に、エンディング後はこんな感じなんだろうなあと書いた番外編用のメモでございました。
3人が小学生の頃に、既にこの未来はあったわけですね。
もう少し後に書こうと思っていたのですが、せっかく同棲を始めたのに全然えっちな話(えっち自体じゃなくて)してないじゃん!となって急遽形にしたのでした。
同棲したらイチャイチャしたいよね。
↑初掲載時キャプション↑
2022/01/21初掲載
https://pictbland.net/users/series/kazanet-tk/%E5%83%95%EF%BC%8B%E5%90%9B%E2%86%92Waltz%EF%BC%81
ただひたすら新居でイチャイチャしています。
蒼生は、寝室から一歩も出ていません。
そもそもこの話は3つ目くらいを書いている時に、エンディング後はこんな感じなんだろうなあと書いた番外編用のメモでございました。
3人が小学生の頃に、既にこの未来はあったわけですね。
もう少し後に書こうと思っていたのですが、せっかく同棲を始めたのに全然えっちな話(えっち自体じゃなくて)してないじゃん!となって急遽形にしたのでした。
同棲したらイチャイチャしたいよね。
↑初掲載時キャプション↑
2022/01/21初掲載
https://pictbland.net/users/series/kazanet-tk/%E5%83%95%EF%BC%8B%E5%90%9B%E2%86%92Waltz%EF%BC%81

