高原 風音

ふんわりいちゃ甘な創作BL小説をメインで活動しています!
基本的にはハピエン厨というより、ハッピーに始まりハッピーに進んでハッピーに終わる、一言で言うと“始終ハッピー主義”。
主にPixivで作品を発表しており、こちらには順次再掲を行っております。現在執筆中のシリーズは3人組のゆるふわいちゃあまラブ『僕+君→Waltz!』(R-18あり)。完結済みのシリーズには、自由奔放な少年がハッピーエンドを迎えるまでのお話『初恋みたいなキスをして』(R-18)があります。
そのほか、ちまちまと短編BLを書いたりしています。
また、ここでは紹介しませんが、ファンタジー?ふうのシリーズ『碧色の軌跡』(完結済み・恋愛要素なし)やオリジナル短編などもあったりしますので、興味がありましたらぜひ。
二次創作もぼちぼちやっております。

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投稿日:2024年07月24日 22:20    文字数:13,763

60こ目;乾杯!

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健太のハタチの誕生日のお話。
「ハタチといえば、だよな!」と意気揚々と訪れたのは、いつもお世話になっているスーパーでした。

7月24日は健太の誕生日。
キリのいい日付や付番が冬矢に偏りがちでしたので、60こ目はどうしても健太メインにしたかったのです。
…というわけで、これまで1年生の話を多く書いておりましたが、これを機に2年生以降の話も増えるかも…?
といいつつ次回は1年時の話の予定でございます。
毎回大体の時系列はお知らせしたほうがいいのですかね?
ご意見ありましたら教えてください!

↑初公開時キャプション↑
2022/07/24初公開
https://pictbland.net/users/series/kazanet-tk/%E5%83%95%EF%BC%8B%E5%90%9B%E2%86%92Waltz%EF%BC%81
今でもご意見募集中です!
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 健太はスーパーの前まで来ると、晴れやかな表情でふんぞり返るようにその建物を仰ぎ見た。その後ろでは蒼生がにこにことその背を見守っており、冬矢が少し引いた目線を得意げな横顔に向けて送っている。
「よっし! じゃあ行こうぜ!」
 張り切って建物を指さす健太に、冬矢は思わず苦笑した。
「気合を入れなくとも、いつも来ているスーパーじゃないか」
「それでもさ。あっ、誕生日なんだから、“今日の主役”ってたすきかけてくればよかったかな?」
「絶対に一緒に歩きたくないからやめてくれ」
 ふたりのやりとりに、蒼生はますます嬉しそうだ。

 そもそもの話として、蒼生は「誕生日会」というものが苦手だった。
 小学生の頃は、誰かの誕生日となると、何故かかなりの確率でこのイベントが行われていた。クラスメイトの誕生会に出るというのが風習なのか、そこまで仲良くなくても呼ばれることが多々あり、断りづらい雰囲気があった。自分の誕生日にいかに人を集められるかがステータスになっているところもあったような気がする。だが、他人の誕生日会ならまだいい。にこにこ笑って相手を立てていればいいからだ。プレゼントも、毎回、無難に文房具を選んでいた。数があって困るものではないし、使い切ったり壊れたりしたら捨ててしまえる。仲良くもない相手に貰うものなど、その程度でいいはずだ。だから、自分が貰うものも、相手が困った挙句に仕方なく選んだものだろうと思うと、ただ気が重かった。
 そう思うのにも根拠があった。蒼生と健太は、幼稚園の頃から小学校を卒業するまで、常にセットでパーティが開かれていたのだ。家は隣同士、クラスも一緒、日付も4日違い、健太の誕生日は大体夏休みに入っているとくれば、当然といえば当然だったのかもしれない。子供らしく明るくはしゃぐ健太のほうにどうしてもスポットライトが当たるから、誰が見ても主役は健太だったはずだ。自分はそのついでだと考えていたために、にこにこと健太を立てるのが自然だと思っていた。元々、蒼生には呼びたいと思う友達もおらず、自分から誰かを誘うことなどなかったので、集まる客はすべて健太が目的のはずだった。自分が対象となっているのは、気を遣ってくれていたのだろう。無視するのが申し訳ない、という思いで一応片隅に置いてもらっていたのだと蒼生は思っていた。それはあくまでも蒼生の思い込みで、蒼生自身を祝いたくて来ていた子もたくさんいたのだが、当時の蒼生にはそう考える根拠がなく、故にそれに気付くことはまったくなかった。
「もう、家で友達呼ぶのはしない」
 と言い出したのは、中学生になったばかりの健太だった。健太なりに何か違和感を覚えていたのかもしれない。
 蒼生は、それを自分の母経由で聞いた。母も健太の母から聞いたそうで、友達同士で勝手にやるから、と言っていたらしい。なるほど、と思った。やはり自分は邪魔だったのだ。それをきっかけに、自分と健太はいよいよバラバラの個体なのだと自覚し、よりいっそう健太離れをしなくてはと強く思うようになった。そしてそれきり、自分の誕生日の話をしなくなった。実はそれまでも、自分からその話をしたことはない。健太がそばにいたから、健太とかなり近いのが珍しくて覚えられていただけだ。自分から主張しなければ、案外バレないものらしい。しかも、日程的に終業式の前後が多くバタついている時期だったことが幸いし、有耶無耶になるのもありがたかった。
 とはいえ、野木沢家と寺田家でふたりの誕生日を祝う食事会は続いていたし、健太は健太で蒼生の誕生日を祝ってくれた。だから蒼生は健太から離れきれずにいた。今になって思えば、邪魔なのか、近くにいていいのか、この時期の自分はとても混乱していた気がする。
 付き合い始めても、誕生日を3人で過ごすことはなかった。なんとなく蒼生が乗り気でないことをふたりは気付いていたのかもしれない。冬矢と健太それぞれの誕生日には、蒼生とふたりで過ごすことが暗黙の了解となっており、彼氏同士がその日の出来事をわざわざ探るようなこともなかった。蒼生自身もはっきりそう思っていたわけではなく、当然口に出してもいないが、「誕生日を過ごすのはふたりまで」というパーティを拒否するような気持ちがうっすらと根底にあった。
 だから、3人で過ごした誕生日というのは、同棲を始めた去年、冬矢の誕生日に遊びに行ったのが初めてだったのだ。あの時、健太に冬矢の誕生日を祝う気持ちがある、と気付いたことで、蒼生のその「ふたりまで」という妙な垣根はすうっと消えていった。
 それからしばらくして、何のきっかけだったか誕生日の話になった。どうせ誰かを家に呼ぶようなこともないし、あの頃みたいに一緒にやっちゃおうかという話が蒼生と健太の間で固まりつつあった時、冬矢が渋い顔をした。
「蒼生と健太で合同? 待ってくれ、俺は蒼生と健太を同じ気持ちで祝えない。日付が近いなんて関係ないよ、別にやろう」
「え、でも面倒じゃない?」
「蒼生は蒼生、健太は健太だろう」
 さらりと冬矢は言った。冬矢にしてみれば至極当たり前のことだ。恋人と恋敵を同時に祝うのはかなりの難題だろう。けれど、蒼生は、それがひどく心に染みたのを覚えている。

「蒼生?」
 健太に声をかけられて、はっと蒼生は我に返る。健太は棚から取った缶を、冬矢が押すカートのカゴに入れるところだった。その目線の流れで、蒼生が床をじっと見ていることに気付いたようだ。
「具合悪いとかじゃないよな? どうした?」
「あ、ううん、ちょっと色々思い返してただけ。ごめんね。もう、こういうの普通に買える年齢になったんだなって」
「そうだなあ。遠い先の話かと思ってたけど」
 言って、健太はまだ手に持ったままだった缶を見つめた。綺麗な果物と、炭酸の泡が描かれたアルコールの缶。そう。今日から解禁だ。年齢確認をお願いします、と言われても堂々としていられる。なんでもないことだが、やけに嬉しかった。
 その笑顔を見て、蒼生は昔の思い出を振り払う。あの頃はどうあれ、今は純粋に健太や冬矢と記念日を祝い合えることが嬉しい。それでいいのだと思う。
 一方、冬矢は蒼生が何か考え込んでいたことはもちろんわかっていた。が、まずはそれを早々に飲み込んだ蒼生の意思を尊重することにした。あとでちゃんと聞いてやろう、と頷き、健太の手から缶を取る。
「あんまり買いすぎないようにな。まずは軽く試すだけだし、明日起きられなくなっても困るだろ」
「ん、じゃあ適当にするー」
「それと、足りないものはないか、もう一度確認しよう。……ところで、本当にいいのか? 4日前にやったからといって、別におまえの誕生日に料理しないとは言っていないが。蒼生も食べるんだし」
 健太は冬矢をちらりと見る。
「おまえ、ホント最後に一言付け加えるよな。いいよ、今日は初めて酒を飲む、ってのがメインテーマじゃん。冬矢が作ったら冬矢のご飯がメインになっちゃうだろ」
「ふーん」
 軽く肩をすくめる冬矢に、蒼生はくすりと笑った。健太にとって、冬矢の作る食事は主役を奪ってもおかしくないクラスのものらしい。本気でそう思っている純粋さと、それをはっきり口にする素直さは、蒼生が健太を大好きだと思う部分のひとつだ。そして、未だにそれに対して戸惑っている冬矢も可愛いと思う。
 蒼生はふたりの腕をぽんと叩く。
「ねえ、チーズ買いたい」
「ああ、そうだね」
「じゃあオレあれだ、豆……とか豆っぽいやつとか、そういうやつ」
「ナッツという単語が出てこなかったのか」
「それだ!」
 あれもこれもと勢いよくカートの中に商品が増えていくが、今日ばかりは許されるだろう。
 そうしてアルコール類と出来合いのオードブルなどを買い込んだ3人は、日の暮れかけた道を並んで歩き、本日のパーティ会場である家に戻ってきた。
「んじゃ並べようぜ」
 リビングの電気を付けるなり、健太が嬉しそうに言ってテーブルに買い物袋を置く。
「お皿いるかな」
「じゃあサラダはそっちに」
「はーい」
 蒼生はとりあえず、飲み物の入った袋をキッチンに運ぶ。色々買ってきたが、全部を一度に飲めるわけではない。とりあえず冷蔵庫に入れておいたほうがいいだろう。次にサラダを取り分けようと手を伸ばすと、冬矢がキッチンに入ってきて素早くそれを蒼生に手渡した。
「ありがとう」
「どういたしまして。今、どんな気分?」
「えっ?」
 蒼生はぱちくりと目を瞬かせる。質問の趣旨を図りかねて首を傾げると、冬矢は穏やかな表情でその目を覗き込んでくる。
「蒼生は自分の誕生日にはお酒飲まなかっただろ? 健太と一緒にしたいからって。それでとうとうこの日を迎えたわけだけど」
「あ、うん。……初めてお酒飲む時は健ちゃんと一緒だろうなってなんとなく思ってたから……それが叶うんだと思うとすごく嬉しい」
「そうか」
 笑顔で頷く冬矢は、蒼生のその言葉を聞きたかったのだろう。が、蒼生はぷくりと頬を膨らませた。
「……でも、僕、冬矢ともそうしたかったんだよ?」
 冬矢は、先んじて自分の誕生日に初めて飲酒をした。蒼生は一緒がいい、と言ったのだが、蒼生のお願いを冬矢は珍しく聞かなかった。それがちょっとショックだった蒼生だ。その時は理由を聞いて納得したものの、実はこっそり引きずっている。
 むくれる蒼生が可愛くて、冬矢はそっとその髪を撫でた。
「ちゃんと理由は言っただろ」
「うん。3人全員が初めてお酒飲むんじゃ、何かあったら困るから、まず冬矢が自分でどの程度飲めるか確かめたかった、でしょ。わかってるんだけど……」
 ひょい、と健太がカウンターからキッチンを覗き込んでくる。
「でも、だからといって他人と飲むのは嫌だったから、家でオレたちの前で飲むことにしたんだよな。可愛いとこあんじゃん」
「おまえに言われると気色悪いな」
「あっはっは」
 そう返してくるのがわかっていた健太は、してやったりの顔をする。
 撫でられ続けていた蒼生が、ちらっと冬矢を見上げた。健太に向けていた呆れた表情が崩れ、「ん?」と返される優しい顔に、きゅうっと胸が鳴る。
「なに?」
「あの、ね。冬矢……ここのところ、何度か飲み会には行ってたよね……?」
 基本的にそれまでの冬矢は、必須でもない限り飲みにも食事にも行かず、大体断っていたようだ。それが、飲めるようになったこの数か月、何回か誘われるままに出かけていた。蒼生はそれを珍しいと思っていたのだが、なんとなく理由が聞けなかったのだ。
「ああ、それか。行ったけど、飲んではいないよ」
「えっ、どうして?」
「飲みに行ったんじゃない。あれは見学だから」
「見学?」
「酔った人間を観察して、大体の人間がどのくらいの飲酒でどんな行動を起こすのか、平均値を確認していたんだ。どうなると危ないのか確認しておかないと、今日何かあったら困るからね」
 蒼生はぽかんとする。
「……飲めるとわかって楽しくなっちゃったからとかじゃないの?」
 蒼生の「なんとなく」はそれが原因だった。自分といるより楽しいことを見つけたのではないか、と気になっていた。けれどそう答えられてしまうのも怖い。聞いてもいいはずだが怖い、というぐちゃぐちゃした思いが「なんとなく」という言葉に集約されていた気がする。なのに、冬矢の答えはもっとこちら側に近い。
「そんなわけないよ。蒼生といる以上に楽しいことなんてないからね」
 心が見えているのではないかと思うような冬矢の言葉に、改めて蒼生は胸をぎゅっと掴まれた気がした。
 健太が噴き出す。
「なんだよ。結局、蒼生のためなんじゃん」
「決まっているだろう」
「ホントおまえって蒼生のこと好きだよなあ」
「まあな」
「オレもだけど」
「知ってる」
 何か言うべきだと思ったけれど、蒼生はそこに口を挟めない。そんなことないよ、も違うし、そうだねと肯定するのもおかしい気がする。その蒼生の戸惑いに気付いた健太が、ぐるりとカウンターを回り込んで蒼生に抱きついた。
「まだ照れんの? 可愛い~」
「さっ、サラダ分けてるから邪魔しないでぇ」
 慌てて手元に集中するが、全部バレているのだろう。ふたりの優しい視線を感じて、蒼生はさらに耳を赤くした。

 ダイニングテーブルの上には、綺麗に整えられたオードブルとサラダ、こんもりとカゴに盛られたパン。コップの他に、安物ではあるが一応それっぽいということで用意されたワイングラス。部屋の電気は消されていて、コンロの上にある暖かな色の電気だけが、キッチン越しにぼんやりと部屋を照らしている。これは本日の主役である健太のリクエストだ。本当はろうそくの光やテーブルランプをイメージしていたようだが、生憎その準備はない。じゃあこれが一番近いよな、と健太がそこだけ残して明かりを消した。言い出した本人がそれで納得していたし、かえって楽しそうだったからいいのだろう。
 3人は、揃ってテーブルに着く。冬矢が蒼生の隣で、健太が蒼生の正面なのは、これも健太の要望だ。今日は蒼生と向き合うことが重要なのだそうだ。
 明かりがわずかだと、何故か会話も少なくなる。その静かな部屋の中に、冬矢がスパークリングワインの栓を開ける音がやけに大きく響いた。
 グラスの中には、小さな泡を立てる琥珀色の液体。健太は嬉しそうにそれを眺めてから、そっと手に取った。蒼生が穏やかな笑顔でそれに続く。
「蒼生。乾杯」
「ふふふ。乾杯。……お誕生日おめでとう、健ちゃん」
 チン、と高い音が鳴った。ああ、これだ。健太は胸がいっぱいになって、さらに溢れてしまうような気がするくらい嬉しかった。健太がずっと思い描いていた、理想の光景が今現実になっている。しかも、それを蒼生が叶えてくれた。嬉しくないはずがない。
 冬矢が蒼生に向かってグラスを差し出す。本音で言えば、冬矢も初めては蒼生と一緒が良かった。けれど同じくらい蒼生を守りたい気持ちが強かったのだ。その気持ちも込めて、差し出したグラス。対する蒼生も、冬矢と同じ笑顔で応える。チン。
 そして、ばちっと健太と冬矢の目が合った。酷く複雑な気もするが。
「……まあ、今日くらいはな」
「だな」
 普段小さな言い合いばかりしているふたりの間でも、乾杯の優しい音は一緒なんだな、と蒼生はそれを嬉しく見守る。すると、そのグラスは2つともが勢いよくこちらに向いた。なるほど。
「あはは。じゃあ、3人で」
 最後の音は、密やかな笑い声と一緒に、一番綺麗な音で響いた。
 そうして、3人で同時にグラスに口を付ける。
「……すごい、かーっとくるね」
「なんかこれ、冷たいのに、あっつ!」
 同時に蒼生と健太から出てきた感想に、冬矢は笑う。
「ふたりとも感想が同じだ」
 健太は上っていく泡をじいっと見つめている。
「いや、酒ってこんな感じなんだなーって。こんないきなり頭のほうまで暖かく感じるもんなんだなあ。ずーっとこの金色の炭酸のやつに憧れてたんだけど、なんかジュースの味で想像してたからちょっとびっくりしたんだよ」
 蒼生もこくこくと頷く。
「お酒弱い人が、お菓子に入ってるのにもすぐ気付くって言ってるの聞いたことあるけど、こういう感じならすぐにわかるの納得だな。でも……やな感じじゃないんだね。そんなに甘くはないけど、なんだろ、果物の香り? 結構すっきりしてて、炭酸もきつくないから僕でも飲める。あ、すごい。あとからもっと果物の香り強くなるね。うん、美味しい」
「うん、わかる、美味しい~」
「そうか、よかった。健太がどうしても最初はこれがいいとか言い出すから、なるべく甘くて飲みやすいのを選んだんだ」
 蒼生と健太はきょとんとして、すぐに笑顔に戻る。蒼生は嬉しそうに。健太は何故か得意げに。
 今日を迎える前に、健太はふたりに要望を伝えており、最初はスパークリングワインにしたいという話もしていた。今日買い物に行って、冬矢が真っ先にこのワインの瓶を手に取ったのは、きちんと調べていてくれたからなのだ。
「冬矢って優しい。好き」
 肩をそっと寄せて蒼生が言うと、グラスを傾けていた冬矢が目を細める。
「どうしたの、急に。俺も好きだよ」
「あっ、ズルい。オレもそっち座る!」
「蒼生の顔が見たいからってそこに座ったのはおまえだろ。ほら、蒼生、健太に笑いかけてあげな」
「え? ……にこー」
「うっ。可愛い……。やっぱ正面にいます」
「……これでいいのぉ?」
 単純なのが健太のいいところのひとつではあるが、これはまたずいぶん簡単だ。けれど、そのやりとりに自分で笑ってしまう健太の顔に、蒼生も嬉しくなってしまうから、“おあいこ”というものかもしれない。
 まず1杯目を飲み干すと、冬矢の手によって、缶がひとつテーブルの上に置かれる。金色に、上部が白で泡を表現しているビールの缶だ。3人の視線がそれに集中する。
「なんか、酒っていったらビールってイメージあるよな」
「そうだな。でも、おそらく蒼生にはあんまり合わないんじゃないかな」
「苦いんだよね?」
「うん。蒼生、苦いの好きじゃないだろ? 炭酸も苦手だし。どうする?」
「今日はいろいろ試してみる日だから、飲んでみる」
「わかった」
 缶を開けると、じわじわと泡の音がする。よくテレビで聞く音だ。
「あ、オレ、注ぎたい」
「大丈夫か、おまえはその、あれだろう」
「……不器用をわざとぼかして言うのやめてくださいます? だーいじょうぶ、オレ、飲み会行って先輩にビール注ぐので練習してきたから!」
「おまえだって外の飲み会を踏み台にしているんじゃないか」
「まーね」
 にやりと笑い、健太は3人分のグラスにビールを注いでいく。ひと缶なので大した量ではないが、それでもグラスの中には金と白の綺麗な比率が作られた。
「わ、綺麗。CMみたい」
「だろー! じゃあ味見してみよ」
 健太がグラスを捧げて、また乾杯になった。そして一口飲み込んだ蒼生は、うーんと首を傾げる。
「……うん。なるほど」
「どう?」
「えーっと、たしかに香りはいいけど、味、はよくわかんない。苦いのだけわかる」
「健太は? もうグラス空だな」
「喉で味わうって聞いたことあるから流し込んでみた。鼻に抜けてく香りがいいってことなのかな。香ばしい感じ? この感じで飲むと飲み過ぎちゃうってことなのかな。オレはそんなに嫌いじゃない」
 それを聞いた蒼生が、上目遣いで健太をちらりと見た。ずっと蒼生を見ていた健太は、視線が自分に来る予感が的中したのが嬉しくて、思わず笑う。何も言わなくても、蒼生が言いたいことはすぐわかった。
「可愛い~。苦手なんだなぁ。はい、残り、オレにちょうだい」
「ごめんね」
「蒼生との間接キスならいつでも大歓迎だから」
 冬矢の「うわ」という声は聞かなかったことにして、半分以上残った蒼生のグラスと自分のグラスを交換する。蒼生もどう返していいか困ったのだろう、誤魔化すようにぱっと立ち上がると、冷蔵庫から新たに数本の缶を取って戻ってきた。
「次、次いこう。甘そうなのがいいな」
「じゃあこれかな」
 冬矢が開けたのは、リンゴの描かれた銀色の缶だ。
「あ。これは甘い。飲みやすい」
「ほんとだー。ジュースみてえだな」
「でも喉からこめかみのあたりがぶわーってなるのが不思議な感じするね」
「気を付けて、こういうののほうがアルコール度数高いから」
「え、そうなんだ」
 それにしても、と蒼生は思う。どれもこれも炭酸が多い。美味しいが、あまり多く口に含むと炭酸が強くて飲み込めない。結果、少しずつしか飲むことが出来ない。冬矢にそう言うと、冬矢はなるほどと頷いた。
「たしかに、買った缶はほぼ炭酸が入っているね。売り場でも見なかったような気がするな。ワインも今日のはスパークリングだったし」
「でも飲み過ぎないからいいのかな」
「蒼生にはそうかもしれないな。とはいえ、今度は瓶のお酒も試してみようか」
「ふうん、瓶だといろいろあるの?」
「あるよ。それこそ蒼生が好きそうな甘いのも色々ね。水や牛乳で割って飲むんだ」
「でもそれだと健ちゃんが物足りないかな」
「そうしたら、健太はソーダで割ればいいんだよ」
「あー、そういうのにも使えるんだね。なんで炭酸だけ売ってるんだろうってずっと思ってた」
 冬矢と話をしながらのんびり飲んでいたところで、蒼生はふと気が付く。健太が静かだ。おやと思ってそちらを見ると、健太の前には、いつの間にか空になった缶が増えている。それから、オードブルもバランス良く数が減っている。
「……ん? ふたりも食べなよ、結構イケるぜ。そっちのチキンのやつとか、ほら、蒼生好きだろ」
 蒼生の目線に、健太は皿に山盛りにしたパスタサラダを掲げて見せてきた。
 ふふ、とふたりは目を合わせて笑う。
「健太に全部食べ尽くされないうちに、俺たちも食べようか」
「うん」

 たしかに、ペースは健太が一番速かったと思う。だが大量に買ったわけでもないし、さほど飲んでいる量に差はないはずだ。
「それで、やっぱさ、あれこれ種類があってもね、好みってもんがあるわけじゃんか」
 ほんのり赤くなった健太が、途切れることなくおしゃべりを続ける。
「だからそっちを見せてくれっつってね、あ、このローストビーフ最後の1枚食べていい?」
「どうぞ」
「ありがとー」
 おしゃべり同様、食べるのも止まらない。テーブルの上の料理はほとんど空っぽに近付いて来ていた。近付く、といえば、その距離もだ。健太は椅子を少しずつずらし、今は蒼生と角を挟んだ隣にいる。右手で食事をし、左手はさっきからずっと蒼生の膝の上だ。
 蒼生はその終わらない話をにこにこしながら聞いていた。幼い頃から知っている健太の、上機嫌にはしゃぐ様子は、やはり可愛い。くっついてきて離れない健太を“おにいちゃん”の気持ちで面倒を見ていた頃のことを思い出してしまう。アルコールが入ると素が出るというが、この通り普段と違うのがテンションの高さだけなのだとしたら、本当に健太は素直で純粋なのだ。
「……これ、酔っているんだろうな」
 ぼそりと冬矢が呟く。一応健太の話を聞いてはいるが、次第に内容がなく脈絡もなくなっていくのがはっきりとわかる。
「そうだねえ。ふふ。可愛いよね」
「……蒼生から見たらそう見えるのか」
「うん。可愛い。健ちゃん、お酒弱いのかも」
 健太がそれを聞きつけ、拗ねた顔で蒼生の腕を掴む。
「そんなことねえよぉ」
「弱い奴が言うセリフだな」
「なんだと冬矢め。……なあ、蒼生ぃ。オレ、可愛いの?」
「ふふ。ちっちゃい頃みたいで可愛いよ」
「そっかぁ~」
 あっという間に機嫌が直った健太は、嬉しそうにパンのカゴに手を伸ばす。まだ食べるつもりらしい。冬矢はあっけにとられてそれを見ていたが、隣の蒼生がいつもに増してふんにゃりしていることに気が向いた。
「蒼生もそこそこ飲んだんじゃないか。なんともない?」
「そうだね、ちょっとふわふわする。だけど、そのくらいかな。冬矢こそ、全然酔ってない感じするねぇ」
「俺も今のところ変化はないかな」
「じゃあ冬矢は強いのかもね」
「限界を確かめたことがないからわからないけど、そうかもしれない」
「ふふっ。だとしたら心強いなあ」
 ずっとにこにこと笑顔を崩さない蒼生は、やはり少し酔いが回っているようにも見える。本当のところはどうなのか、蒼生本人も初めてのことなのでよくわからない。ただ、穏やかに微笑む冬矢と楽しそうに笑う健太に囲まれているのが嬉しくて表情が保てないことだけは自分でもわかっていた。
 すると、顔を合わせて話す蒼生と冬矢の様子に、健太が再び頬を膨らませる。そしてがばっと立ち上がり、蒼生の脚を跨ぐと、どしっと座り込んでそのまま蒼生に抱きついた。
「け、健ちゃん?」
「蒼生~」
 蒼生は驚いて瞬きの数を増やす。しかし咄嗟にその背をとんとんと叩くと、健太はまたへにゃっとした顔で擦り寄ってきた。
「まったく、忙しい奴だな」
「だねぇ」
 あの頃とは違い、ずっしりと重い。けれどこんなになっても自分に懐いてくれるというのは嬉しかった。いや、もう、懐くというより、……もっと深い関係なのだ。そう思うと、さらにどうしようもなく嬉しくなって、ぎゅうっと腕に力が込もった。腕の中で健太が笑う、その小刻みな動きがくすぐったい。
「へへ……おなかいっぱい。美味しい。蒼生大好きぃ」
 蒼生が噴きだし、さすがの冬矢も小さく笑った。途中で対象が方向転換したその話し方は、思ったことをそのまま口にする小さな子と一緒だ。でもだからこそ本音なのだろうな、と蒼生は暖かい気持ちで受け止める。
「な。蒼生、パン食べる。ちょうだい」
「まだ食べるの?」
「もう1個だけ」
 手渡すと、肩の上でもぐもぐと口を動かし出す。あまり行儀のいい行動ではないが、誕生日の今日くらいは見逃してやろう。
「蒼生」
「なに?」
「蒼生、好き好き。大好き」
「うん、僕も大好きだよ」
「嬉しい、大好き」
 そのご機嫌な様子に、冬矢が視線の温度を下げた。
「……少し腹が立ってきたな」
「どうして?」
「なんだか、健太ばかり蒼生のことが好きみたいじゃないか。俺も負けてはいないつもりなのに」
 今度はこっちか、と蒼生は微笑ましく思う。表では涼しい顔をしているのに、健太相手だと競争心を隠さない。じゃれ合うように競い合うふたりを見るのが好きだ。競って欲しいわけでも、取り合って欲しいわけでもなく、好きな人同士がお互いを嫌わずにいてくれることが本当に嬉しい。ただ、やはりそんなに火花を散らすほど自分を欲しいと思ってくれているのだと自覚すると、どうしても照れてしまう。
「蒼生、真っ赤だね」
「そりゃ……。ふたりがかりでラブコールされたら、ドキドキもしちゃうよ」
「そうか。ふふ。酔ってるのかと思った」
 きっとそれもあるはずだ。そうでなければ、何年付き合っても「好き」の言葉にときめいてしまうなんて、いつまで経っても恋愛初心者のようだ。
 冬矢が蒼生の顔を覗き込む。
「今、なんて思ってる?」
「へっ? なんでバレちゃうかなぁ……。あの、いつまでもすぐにこんな照れちゃうなんて、恋愛初心者から脱却できないなーってちょっと恥ずかしく思ってた」
 ふっと笑って、冬矢は赤いままの蒼生の頬をそっと撫でた。
「いいよ。慣れない蒼生も可愛くて大好きだよ。何十年経って慣れたとしても、それもきっと可愛く思えるんだろうな」
「なん、じゅう」
 それは途方もない話に思える。冬矢は、そんなに長い間自分といるつもりなのか。ずっと離さないと思ってくれているのか。
 ずっと前、「蒼生には嘘はつかない」と言ってくれた冬矢。だから、きっと、本当にそう考えているのだろう。
 冬矢は、蒼生の上からまったく動こうとしない健太を眺めて息をついた。
「さすがにそろそろ引き剥がそうと思ったが……まあ、こいつの誕生日だしな。好きにさせてやるか」
 すっと冬矢の手が離れ、寂しくなってしまう。おそらく少し酔っている自分。だからきっと寂しさで口が軽くなるのもそのせいだ。
「……僕ね、誕生日ってあんまり好きじゃなかった。パーティも得意じゃないし」
「うん。……そんな気がしてた」
「やっぱりバレてたか」
 冬矢が頷いてくれるから、心もふっと軽くなる。
「もともと自分のことなんかどうでもよかったからね。誕生日にちやほやされるの好きじゃなかったんだ。どうしても健ちゃんとセットでお祝いされてたし、お互い居心地悪かったんじゃないかな。健ちゃんが僕と一緒じゃ嫌だって言い出して、それから僕も誕生日を言いふらさないようにしてたら、誰も気にしなくなった」
「……うん」
「なのにね。教えてないのに、僕の誕生日を知ってくれてて、僕のためだけに祝ってくれる人がいたんだ」
「…………」
 黙って話を聞く冬矢。蒼生はすうっと天井を見上げた。あの日のことは、ずっと忘れられずに胸の奥にある。
「たぶん。あの瞬間、僕は……初めて自分から人を好きになったのかもしれない」
「……誰?」
 ふふっと蒼生は笑う。冬矢なら気付くかと思ったが、下ろした視線の先で、そう問いかける目は真剣だった。だとすれば、あれは計算ではない。本心からの、なんてことない行動だったのだろう。
「冬矢だよ」
「っ、俺?」
「うん。そう。中2の時。覚えてるでしょ、校外学習の日。自分から拒否しておきながら、誰も自分を見てくれないんだって勝手に絶望してた駄目な僕なのに。でも僕を見てくれた。冬矢だけが僕を見てくれてた。……あの時は、びっくりしちゃってちゃんとお礼言えなかったけど。本当に嬉しかった。ありがと」
「蒼生」
 言いたいことだけを言ってしまうと、かあっと頬が熱くなる。冬矢が丸くした目と目が合い、さらに首のほうまで赤くなってきた。
「あー、やっぱり酔ってるかも。恥ずかし。かっこわる」
「……格好悪くなんかないよ。言っただろ。……どんな蒼生だって愛してる」
「冬、矢……」
 冬矢がすっと手を伸ばす。抱き締めたい。強く抱き締めて、胸の奥からこみ上げる熱をすべて伝えたい。
 が、蒼生の上には健太がいる。ぎゅうっと縋り付いて、離れる気配がない。そして、それごと抱き締めるのも癪だ。
「健太、蒼生が重そうだぞ」
「やだ、離れねえ」
 そう言ったかと思うと、健太は勢いよく起き上がった。突然のことに驚く蒼生の両肩をがっと掴む。
「蒼生にいっこ、訂正があります!」
「え。なに?」
「蒼生はぁ、誕生日パーティ、蒼生と一緒じゃやだってオレが言ったと思ってるみたいだけどぉ。オレそんなこと言ってねえもん。オレ、蒼生の誕生日は蒼生だけでやりたいっつったんだもん。主役扱いされながら蒼生を祝うんじゃなくて、蒼生だけに集中したかったんだよ」
「……健ちゃん」
「だからー、別々にやってくれるの、嬉しい。だから、冬矢も、ありがとな」
 にこっと冬矢に笑いかけ、健太は再び蒼生の肩に顔を埋めた。すっかり眠くなってしまったらしく、冬矢が覗き込むと、もう半分目を閉じている。
「……今日の健太はいちだんと気色悪いことを言うな」
「ふふ、まあまあ。……でも、そっかぁ。違ってたんだ。健ちゃんも、僕の誕生日、大事に思ってくれてたんだね」
 冬矢はかたんと音をさせて立ち上がる。そして、そっと蒼生の頭を抱いた。
「そうだよ。こいつが蒼生を大事に思わなかった瞬間なんて、あるわけがない。俺と同じで、こいつの頭の中も蒼生ばかりなんだから」
「冬矢。……そっか。そうかあ……」
 蒼生は冬矢の胸に耳を寄せる。優しい心臓の音。それは腕の中で感じている鼓動と、タイミングは違うけれど、同じ音だ。手から、耳から、心の奥に届く。それはとても暖かい。幸せの温度だ、と思った。
 ふうっと冬矢が息を吐く。
「……ともかく、今日はこのくらいにしておいたほうがよさそうだな。これ以上放っておくと蒼生が立てなくなる」
「そうだね、実は、もう脚が痺れてきてるんだよね」
「マズいな、一刻も早くどかさないと。あとは、明日になって健太がこの状態をどれくらい覚えているか確認しないといけないな。酔うたびにこうなってしまうのだとしたら始末が悪い」
「あはは。健ちゃんにはほどほどにって注意しなくちゃだ」
 その言葉がきっかけで、パーティはお開きとなった。
 ふたりがかりで健太を寝室に運び、ベッドに横たえる。片付けは食器を簡単にまとめてキッチンに置いておくだけ、身支度も最低限にして、蒼生と冬矢もベッドに入った。シャワーも明日の朝でいい。
 蒼生が横になるなり、寝ぼけた健太が腰に巻き付いてきた。冬矢はそれを見て笑い、蒼生の手を握って側に寄る。ふたりの体温に囲まれて、蒼生はふっと微笑んだ。
「今日も、狭い」
「仕方ないね」
「仕方ないんだ。……ところでさ、あの時……僕の誕生日、黙ってたのに何で知ってたの?」
「出会ってすぐの頃、身体検査でクラスごと一緒に回っただろ。あの時の用紙に書いてあったじゃないか」
「……よく覚えてたねえ」
「そりゃあ、気になる子のことだから」
 見せ合いでもしただろうか。さすがにその時のことまでは覚えていない。いったい冬矢がどこまで覚えているのか、少し心配になる蒼生だった。


 翌朝、蒼生と冬矢を起こしたのは、健太のうめき声だった。驚いて蒼生が飛び起きると、健太が頭を抱えている。
「ど、どしたの?」
「……オレ、昨日、だいぶ恥ずかしいこと言った……」
 冬矢はやれやれ、と起き上がる。
「おまえのアレは大して意外でもなかったから気にするな。それより、覚えてはいるんだな」
「あ、その、記憶はバッチリ」
 だからこそ、蒼生に抱きついて離れなかったことも、冬矢に素直に礼を言ったことも覚えているのだろう。蒼生はくすくす笑う。
「昨日の健ちゃん、可愛かったよ」
「うあー……。なんかさ、頭ではさ、蒼生重いんじゃないかな、ごめんな、って思ってんだけどさ。歯止めが利かなかったぁ……。とにかく蒼生にくっつきたくて、蒼生で頭がいっぱいになって、好きで好きで、どーしようもなくなっちゃったんだよなあ」
「そ、そっか」
 改めて、健太が蒼生を引き寄せる。蒼生はされるがまま、ずるりとシーツの上を滑ってその腕の中に収まった。
「まあ、覚えているならいいが。健太、自分がどうなるかわかったんだから、外では飲む量に気を付けないと」
「はい。気を付ける。蒼生に迷惑かけたり心配かけたりしないようにする」
「よし」
「僕も気を付けます」
「そうだね。全員気を付けよう」
 うんうん、とお互いに顔を見合わせて頷く。
 あ、と蒼生が健太を見上げた。
「そういえば、二日酔い? とかってなってない? 大丈夫?」
「んー。それはとりあえず今日のところは、大丈夫、そう……かな」
「冬矢は?」
「俺も平気だよ」
「じゃあ、みんな無事ってことだね。よかった」
 蒼生は、ほっと息を吐いて胸の前でクロスする腕をぎゅっと抱き締める。
「でも、楽しかった。また家で3人でパーティしようね」
 冬矢が穏やかに笑う。
 健太が嬉しそうに笑う。
「いいね」
「毎日だっていいぜ」
「毎日はさすがになあ……ふふふ」
 さあ、今度はいつにしようか。
 3人は、さっそく予定を確認するために携帯に手を伸ばした。

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 健太はスーパーの前まで来ると、晴れやかな表情でふんぞり返るようにその建物を仰ぎ見た。その後ろでは蒼生がにこにことその背を見守っており、冬矢が少し引いた目線を得意げな横顔に向けて送っている。
「よっし! じゃあ行こうぜ!」
 張り切って建物を指さす健太に、冬矢は思わず苦笑した。
「気合を入れなくとも、いつも来ているスーパーじゃないか」
「それでもさ。あっ、誕生日なんだから、“今日の主役”ってたすきかけてくればよかったかな?」
「絶対に一緒に歩きたくないからやめてくれ」
 ふたりのやりとりに、蒼生はますます嬉しそうだ。

 そもそもの話として、蒼生は「誕生日会」というものが苦手だった。
 小学生の頃は、誰かの誕生日となると、何故かかなりの確率でこのイベントが行われていた。クラスメイトの誕生会に出るというのが風習なのか、そこまで仲良くなくても呼ばれることが多々あり、断りづらい雰囲気があった。自分の誕生日にいかに人を集められるかがステータスになっているところもあったような気がする。だが、他人の誕生日会ならまだいい。にこにこ笑って相手を立てていればいいからだ。プレゼントも、毎回、無難に文房具を選んでいた。数があって困るものではないし、使い切ったり壊れたりしたら捨ててしまえる。仲良くもない相手に貰うものなど、その程度でいいはずだ。だから、自分が貰うものも、相手が困った挙句に仕方なく選んだものだろうと思うと、ただ気が重かった。
 そう思うのにも根拠があった。蒼生と健太は、幼稚園の頃から小学校を卒業するまで、常にセットでパーティが開かれていたのだ。家は隣同士、クラスも一緒、日付も4日違い、健太の誕生日は大体夏休みに入っているとくれば、当然といえば当然だったのかもしれない。子供らしく明るくはしゃぐ健太のほうにどうしてもスポットライトが当たるから、誰が見ても主役は健太だったはずだ。自分はそのついでだと考えていたために、にこにこと健太を立てるのが自然だと思っていた。元々、蒼生には呼びたいと思う友達もおらず、自分から誰かを誘うことなどなかったので、集まる客はすべて健太が目的のはずだった。自分が対象となっているのは、気を遣ってくれていたのだろう。無視するのが申し訳ない、という思いで一応片隅に置いてもらっていたのだと蒼生は思っていた。それはあくまでも蒼生の思い込みで、蒼生自身を祝いたくて来ていた子もたくさんいたのだが、当時の蒼生にはそう考える根拠がなく、故にそれに気付くことはまったくなかった。
「もう、家で友達呼ぶのはしない」
 と言い出したのは、中学生になったばかりの健太だった。健太なりに何か違和感を覚えていたのかもしれない。
 蒼生は、それを自分の母経由で聞いた。母も健太の母から聞いたそうで、友達同士で勝手にやるから、と言っていたらしい。なるほど、と思った。やはり自分は邪魔だったのだ。それをきっかけに、自分と健太はいよいよバラバラの個体なのだと自覚し、よりいっそう健太離れをしなくてはと強く思うようになった。そしてそれきり、自分の誕生日の話をしなくなった。実はそれまでも、自分からその話をしたことはない。健太がそばにいたから、健太とかなり近いのが珍しくて覚えられていただけだ。自分から主張しなければ、案外バレないものらしい。しかも、日程的に終業式の前後が多くバタついている時期だったことが幸いし、有耶無耶になるのもありがたかった。
 とはいえ、野木沢家と寺田家でふたりの誕生日を祝う食事会は続いていたし、健太は健太で蒼生の誕生日を祝ってくれた。だから蒼生は健太から離れきれずにいた。今になって思えば、邪魔なのか、近くにいていいのか、この時期の自分はとても混乱していた気がする。
 付き合い始めても、誕生日を3人で過ごすことはなかった。なんとなく蒼生が乗り気でないことをふたりは気付いていたのかもしれない。冬矢と健太それぞれの誕生日には、蒼生とふたりで過ごすことが暗黙の了解となっており、彼氏同士がその日の出来事をわざわざ探るようなこともなかった。蒼生自身もはっきりそう思っていたわけではなく、当然口に出してもいないが、「誕生日を過ごすのはふたりまで」というパーティを拒否するような気持ちがうっすらと根底にあった。
 だから、3人で過ごした誕生日というのは、同棲を始めた去年、冬矢の誕生日に遊びに行ったのが初めてだったのだ。あの時、健太に冬矢の誕生日を祝う気持ちがある、と気付いたことで、蒼生のその「ふたりまで」という妙な垣根はすうっと消えていった。
 それからしばらくして、何のきっかけだったか誕生日の話になった。どうせ誰かを家に呼ぶようなこともないし、あの頃みたいに一緒にやっちゃおうかという話が蒼生と健太の間で固まりつつあった時、冬矢が渋い顔をした。
「蒼生と健太で合同? 待ってくれ、俺は蒼生と健太を同じ気持ちで祝えない。日付が近いなんて関係ないよ、別にやろう」
「え、でも面倒じゃない?」
「蒼生は蒼生、健太は健太だろう」
 さらりと冬矢は言った。冬矢にしてみれば至極当たり前のことだ。恋人と恋敵を同時に祝うのはかなりの難題だろう。けれど、蒼生は、それがひどく心に染みたのを覚えている。

「蒼生?」
 健太に声をかけられて、はっと蒼生は我に返る。健太は棚から取った缶を、冬矢が押すカートのカゴに入れるところだった。その目線の流れで、蒼生が床をじっと見ていることに気付いたようだ。
「具合悪いとかじゃないよな? どうした?」
「あ、ううん、ちょっと色々思い返してただけ。ごめんね。もう、こういうの普通に買える年齢になったんだなって」
「そうだなあ。遠い先の話かと思ってたけど」
 言って、健太はまだ手に持ったままだった缶を見つめた。綺麗な果物と、炭酸の泡が描かれたアルコールの缶。そう。今日から解禁だ。年齢確認をお願いします、と言われても堂々としていられる。なんでもないことだが、やけに嬉しかった。
 その笑顔を見て、蒼生は昔の思い出を振り払う。あの頃はどうあれ、今は純粋に健太や冬矢と記念日を祝い合えることが嬉しい。それでいいのだと思う。
 一方、冬矢は蒼生が何か考え込んでいたことはもちろんわかっていた。が、まずはそれを早々に飲み込んだ蒼生の意思を尊重することにした。あとでちゃんと聞いてやろう、と頷き、健太の手から缶を取る。
「あんまり買いすぎないようにな。まずは軽く試すだけだし、明日起きられなくなっても困るだろ」
「ん、じゃあ適当にするー」
「それと、足りないものはないか、もう一度確認しよう。……ところで、本当にいいのか? 4日前にやったからといって、別におまえの誕生日に料理しないとは言っていないが。蒼生も食べるんだし」
 健太は冬矢をちらりと見る。
「おまえ、ホント最後に一言付け加えるよな。いいよ、今日は初めて酒を飲む、ってのがメインテーマじゃん。冬矢が作ったら冬矢のご飯がメインになっちゃうだろ」
「ふーん」
 軽く肩をすくめる冬矢に、蒼生はくすりと笑った。健太にとって、冬矢の作る食事は主役を奪ってもおかしくないクラスのものらしい。本気でそう思っている純粋さと、それをはっきり口にする素直さは、蒼生が健太を大好きだと思う部分のひとつだ。そして、未だにそれに対して戸惑っている冬矢も可愛いと思う。
 蒼生はふたりの腕をぽんと叩く。
「ねえ、チーズ買いたい」
「ああ、そうだね」
「じゃあオレあれだ、豆……とか豆っぽいやつとか、そういうやつ」
「ナッツという単語が出てこなかったのか」
「それだ!」
 あれもこれもと勢いよくカートの中に商品が増えていくが、今日ばかりは許されるだろう。
 そうしてアルコール類と出来合いのオードブルなどを買い込んだ3人は、日の暮れかけた道を並んで歩き、本日のパーティ会場である家に戻ってきた。
「んじゃ並べようぜ」
 リビングの電気を付けるなり、健太が嬉しそうに言ってテーブルに買い物袋を置く。
「お皿いるかな」
「じゃあサラダはそっちに」
「はーい」
 蒼生はとりあえず、飲み物の入った袋をキッチンに運ぶ。色々買ってきたが、全部を一度に飲めるわけではない。とりあえず冷蔵庫に入れておいたほうがいいだろう。次にサラダを取り分けようと手を伸ばすと、冬矢がキッチンに入ってきて素早くそれを蒼生に手渡した。
「ありがとう」
「どういたしまして。今、どんな気分?」
「えっ?」
 蒼生はぱちくりと目を瞬かせる。質問の趣旨を図りかねて首を傾げると、冬矢は穏やかな表情でその目を覗き込んでくる。
「蒼生は自分の誕生日にはお酒飲まなかっただろ? 健太と一緒にしたいからって。それでとうとうこの日を迎えたわけだけど」
「あ、うん。……初めてお酒飲む時は健ちゃんと一緒だろうなってなんとなく思ってたから……それが叶うんだと思うとすごく嬉しい」
「そうか」
 笑顔で頷く冬矢は、蒼生のその言葉を聞きたかったのだろう。が、蒼生はぷくりと頬を膨らませた。
「……でも、僕、冬矢ともそうしたかったんだよ?」
 冬矢は、先んじて自分の誕生日に初めて飲酒をした。蒼生は一緒がいい、と言ったのだが、蒼生のお願いを冬矢は珍しく聞かなかった。それがちょっとショックだった蒼生だ。その時は理由を聞いて納得したものの、実はこっそり引きずっている。
 むくれる蒼生が可愛くて、冬矢はそっとその髪を撫でた。
「ちゃんと理由は言っただろ」
「うん。3人全員が初めてお酒飲むんじゃ、何かあったら困るから、まず冬矢が自分でどの程度飲めるか確かめたかった、でしょ。わかってるんだけど……」
 ひょい、と健太がカウンターからキッチンを覗き込んでくる。
「でも、だからといって他人と飲むのは嫌だったから、家でオレたちの前で飲むことにしたんだよな。可愛いとこあんじゃん」
「おまえに言われると気色悪いな」
「あっはっは」
 そう返してくるのがわかっていた健太は、してやったりの顔をする。
 撫でられ続けていた蒼生が、ちらっと冬矢を見上げた。健太に向けていた呆れた表情が崩れ、「ん?」と返される優しい顔に、きゅうっと胸が鳴る。
「なに?」
「あの、ね。冬矢……ここのところ、何度か飲み会には行ってたよね……?」
 基本的にそれまでの冬矢は、必須でもない限り飲みにも食事にも行かず、大体断っていたようだ。それが、飲めるようになったこの数か月、何回か誘われるままに出かけていた。蒼生はそれを珍しいと思っていたのだが、なんとなく理由が聞けなかったのだ。
「ああ、それか。行ったけど、飲んではいないよ」
「えっ、どうして?」
「飲みに行ったんじゃない。あれは見学だから」
「見学?」
「酔った人間を観察して、大体の人間がどのくらいの飲酒でどんな行動を起こすのか、平均値を確認していたんだ。どうなると危ないのか確認しておかないと、今日何かあったら困るからね」
 蒼生はぽかんとする。
「……飲めるとわかって楽しくなっちゃったからとかじゃないの?」
 蒼生の「なんとなく」はそれが原因だった。自分といるより楽しいことを見つけたのではないか、と気になっていた。けれどそう答えられてしまうのも怖い。聞いてもいいはずだが怖い、というぐちゃぐちゃした思いが「なんとなく」という言葉に集約されていた気がする。なのに、冬矢の答えはもっとこちら側に近い。
「そんなわけないよ。蒼生といる以上に楽しいことなんてないからね」
 心が見えているのではないかと思うような冬矢の言葉に、改めて蒼生は胸をぎゅっと掴まれた気がした。
 健太が噴き出す。
「なんだよ。結局、蒼生のためなんじゃん」
「決まっているだろう」
「ホントおまえって蒼生のこと好きだよなあ」
「まあな」
「オレもだけど」
「知ってる」
 何か言うべきだと思ったけれど、蒼生はそこに口を挟めない。そんなことないよ、も違うし、そうだねと肯定するのもおかしい気がする。その蒼生の戸惑いに気付いた健太が、ぐるりとカウンターを回り込んで蒼生に抱きついた。
「まだ照れんの? 可愛い~」
「さっ、サラダ分けてるから邪魔しないでぇ」
 慌てて手元に集中するが、全部バレているのだろう。ふたりの優しい視線を感じて、蒼生はさらに耳を赤くした。

 ダイニングテーブルの上には、綺麗に整えられたオードブルとサラダ、こんもりとカゴに盛られたパン。コップの他に、安物ではあるが一応それっぽいということで用意されたワイングラス。部屋の電気は消されていて、コンロの上にある暖かな色の電気だけが、キッチン越しにぼんやりと部屋を照らしている。これは本日の主役である健太のリクエストだ。本当はろうそくの光やテーブルランプをイメージしていたようだが、生憎その準備はない。じゃあこれが一番近いよな、と健太がそこだけ残して明かりを消した。言い出した本人がそれで納得していたし、かえって楽しそうだったからいいのだろう。
 3人は、揃ってテーブルに着く。冬矢が蒼生の隣で、健太が蒼生の正面なのは、これも健太の要望だ。今日は蒼生と向き合うことが重要なのだそうだ。
 明かりがわずかだと、何故か会話も少なくなる。その静かな部屋の中に、冬矢がスパークリングワインの栓を開ける音がやけに大きく響いた。
 グラスの中には、小さな泡を立てる琥珀色の液体。健太は嬉しそうにそれを眺めてから、そっと手に取った。蒼生が穏やかな笑顔でそれに続く。
「蒼生。乾杯」
「ふふふ。乾杯。……お誕生日おめでとう、健ちゃん」
 チン、と高い音が鳴った。ああ、これだ。健太は胸がいっぱいになって、さらに溢れてしまうような気がするくらい嬉しかった。健太がずっと思い描いていた、理想の光景が今現実になっている。しかも、それを蒼生が叶えてくれた。嬉しくないはずがない。
 冬矢が蒼生に向かってグラスを差し出す。本音で言えば、冬矢も初めては蒼生と一緒が良かった。けれど同じくらい蒼生を守りたい気持ちが強かったのだ。その気持ちも込めて、差し出したグラス。対する蒼生も、冬矢と同じ笑顔で応える。チン。
 そして、ばちっと健太と冬矢の目が合った。酷く複雑な気もするが。
「……まあ、今日くらいはな」
「だな」
 普段小さな言い合いばかりしているふたりの間でも、乾杯の優しい音は一緒なんだな、と蒼生はそれを嬉しく見守る。すると、そのグラスは2つともが勢いよくこちらに向いた。なるほど。
「あはは。じゃあ、3人で」
 最後の音は、密やかな笑い声と一緒に、一番綺麗な音で響いた。
 そうして、3人で同時にグラスに口を付ける。
「……すごい、かーっとくるね」
「なんかこれ、冷たいのに、あっつ!」
 同時に蒼生と健太から出てきた感想に、冬矢は笑う。
「ふたりとも感想が同じだ」
 健太は上っていく泡をじいっと見つめている。
「いや、酒ってこんな感じなんだなーって。こんないきなり頭のほうまで暖かく感じるもんなんだなあ。ずーっとこの金色の炭酸のやつに憧れてたんだけど、なんかジュースの味で想像してたからちょっとびっくりしたんだよ」
 蒼生もこくこくと頷く。
「お酒弱い人が、お菓子に入ってるのにもすぐ気付くって言ってるの聞いたことあるけど、こういう感じならすぐにわかるの納得だな。でも……やな感じじゃないんだね。そんなに甘くはないけど、なんだろ、果物の香り? 結構すっきりしてて、炭酸もきつくないから僕でも飲める。あ、すごい。あとからもっと果物の香り強くなるね。うん、美味しい」
「うん、わかる、美味しい~」
「そうか、よかった。健太がどうしても最初はこれがいいとか言い出すから、なるべく甘くて飲みやすいのを選んだんだ」
 蒼生と健太はきょとんとして、すぐに笑顔に戻る。蒼生は嬉しそうに。健太は何故か得意げに。
 今日を迎える前に、健太はふたりに要望を伝えており、最初はスパークリングワインにしたいという話もしていた。今日買い物に行って、冬矢が真っ先にこのワインの瓶を手に取ったのは、きちんと調べていてくれたからなのだ。
「冬矢って優しい。好き」
 肩をそっと寄せて蒼生が言うと、グラスを傾けていた冬矢が目を細める。
「どうしたの、急に。俺も好きだよ」
「あっ、ズルい。オレもそっち座る!」
「蒼生の顔が見たいからってそこに座ったのはおまえだろ。ほら、蒼生、健太に笑いかけてあげな」
「え? ……にこー」
「うっ。可愛い……。やっぱ正面にいます」
「……これでいいのぉ?」
 単純なのが健太のいいところのひとつではあるが、これはまたずいぶん簡単だ。けれど、そのやりとりに自分で笑ってしまう健太の顔に、蒼生も嬉しくなってしまうから、“おあいこ”というものかもしれない。
 まず1杯目を飲み干すと、冬矢の手によって、缶がひとつテーブルの上に置かれる。金色に、上部が白で泡を表現しているビールの缶だ。3人の視線がそれに集中する。
「なんか、酒っていったらビールってイメージあるよな」
「そうだな。でも、おそらく蒼生にはあんまり合わないんじゃないかな」
「苦いんだよね?」
「うん。蒼生、苦いの好きじゃないだろ? 炭酸も苦手だし。どうする?」
「今日はいろいろ試してみる日だから、飲んでみる」
「わかった」
 缶を開けると、じわじわと泡の音がする。よくテレビで聞く音だ。
「あ、オレ、注ぎたい」
「大丈夫か、おまえはその、あれだろう」
「……不器用をわざとぼかして言うのやめてくださいます? だーいじょうぶ、オレ、飲み会行って先輩にビール注ぐので練習してきたから!」
「おまえだって外の飲み会を踏み台にしているんじゃないか」
「まーね」
 にやりと笑い、健太は3人分のグラスにビールを注いでいく。ひと缶なので大した量ではないが、それでもグラスの中には金と白の綺麗な比率が作られた。
「わ、綺麗。CMみたい」
「だろー! じゃあ味見してみよ」
 健太がグラスを捧げて、また乾杯になった。そして一口飲み込んだ蒼生は、うーんと首を傾げる。
「……うん。なるほど」
「どう?」
「えーっと、たしかに香りはいいけど、味、はよくわかんない。苦いのだけわかる」
「健太は? もうグラス空だな」
「喉で味わうって聞いたことあるから流し込んでみた。鼻に抜けてく香りがいいってことなのかな。香ばしい感じ? この感じで飲むと飲み過ぎちゃうってことなのかな。オレはそんなに嫌いじゃない」
 それを聞いた蒼生が、上目遣いで健太をちらりと見た。ずっと蒼生を見ていた健太は、視線が自分に来る予感が的中したのが嬉しくて、思わず笑う。何も言わなくても、蒼生が言いたいことはすぐわかった。
「可愛い~。苦手なんだなぁ。はい、残り、オレにちょうだい」
「ごめんね」
「蒼生との間接キスならいつでも大歓迎だから」
 冬矢の「うわ」という声は聞かなかったことにして、半分以上残った蒼生のグラスと自分のグラスを交換する。蒼生もどう返していいか困ったのだろう、誤魔化すようにぱっと立ち上がると、冷蔵庫から新たに数本の缶を取って戻ってきた。
「次、次いこう。甘そうなのがいいな」
「じゃあこれかな」
 冬矢が開けたのは、リンゴの描かれた銀色の缶だ。
「あ。これは甘い。飲みやすい」
「ほんとだー。ジュースみてえだな」
「でも喉からこめかみのあたりがぶわーってなるのが不思議な感じするね」
「気を付けて、こういうののほうがアルコール度数高いから」
「え、そうなんだ」
 それにしても、と蒼生は思う。どれもこれも炭酸が多い。美味しいが、あまり多く口に含むと炭酸が強くて飲み込めない。結果、少しずつしか飲むことが出来ない。冬矢にそう言うと、冬矢はなるほどと頷いた。
「たしかに、買った缶はほぼ炭酸が入っているね。売り場でも見なかったような気がするな。ワインも今日のはスパークリングだったし」
「でも飲み過ぎないからいいのかな」
「蒼生にはそうかもしれないな。とはいえ、今度は瓶のお酒も試してみようか」
「ふうん、瓶だといろいろあるの?」
「あるよ。それこそ蒼生が好きそうな甘いのも色々ね。水や牛乳で割って飲むんだ」
「でもそれだと健ちゃんが物足りないかな」
「そうしたら、健太はソーダで割ればいいんだよ」
「あー、そういうのにも使えるんだね。なんで炭酸だけ売ってるんだろうってずっと思ってた」
 冬矢と話をしながらのんびり飲んでいたところで、蒼生はふと気が付く。健太が静かだ。おやと思ってそちらを見ると、健太の前には、いつの間にか空になった缶が増えている。それから、オードブルもバランス良く数が減っている。
「……ん? ふたりも食べなよ、結構イケるぜ。そっちのチキンのやつとか、ほら、蒼生好きだろ」
 蒼生の目線に、健太は皿に山盛りにしたパスタサラダを掲げて見せてきた。
 ふふ、とふたりは目を合わせて笑う。
「健太に全部食べ尽くされないうちに、俺たちも食べようか」
「うん」

 たしかに、ペースは健太が一番速かったと思う。だが大量に買ったわけでもないし、さほど飲んでいる量に差はないはずだ。
「それで、やっぱさ、あれこれ種類があってもね、好みってもんがあるわけじゃんか」
 ほんのり赤くなった健太が、途切れることなくおしゃべりを続ける。
「だからそっちを見せてくれっつってね、あ、このローストビーフ最後の1枚食べていい?」
「どうぞ」
「ありがとー」
 おしゃべり同様、食べるのも止まらない。テーブルの上の料理はほとんど空っぽに近付いて来ていた。近付く、といえば、その距離もだ。健太は椅子を少しずつずらし、今は蒼生と角を挟んだ隣にいる。右手で食事をし、左手はさっきからずっと蒼生の膝の上だ。
 蒼生はその終わらない話をにこにこしながら聞いていた。幼い頃から知っている健太の、上機嫌にはしゃぐ様子は、やはり可愛い。くっついてきて離れない健太を“おにいちゃん”の気持ちで面倒を見ていた頃のことを思い出してしまう。アルコールが入ると素が出るというが、この通り普段と違うのがテンションの高さだけなのだとしたら、本当に健太は素直で純粋なのだ。
「……これ、酔っているんだろうな」
 ぼそりと冬矢が呟く。一応健太の話を聞いてはいるが、次第に内容がなく脈絡もなくなっていくのがはっきりとわかる。
「そうだねえ。ふふ。可愛いよね」
「……蒼生から見たらそう見えるのか」
「うん。可愛い。健ちゃん、お酒弱いのかも」
 健太がそれを聞きつけ、拗ねた顔で蒼生の腕を掴む。
「そんなことねえよぉ」
「弱い奴が言うセリフだな」
「なんだと冬矢め。……なあ、蒼生ぃ。オレ、可愛いの?」
「ふふ。ちっちゃい頃みたいで可愛いよ」
「そっかぁ~」
 あっという間に機嫌が直った健太は、嬉しそうにパンのカゴに手を伸ばす。まだ食べるつもりらしい。冬矢はあっけにとられてそれを見ていたが、隣の蒼生がいつもに増してふんにゃりしていることに気が向いた。
「蒼生もそこそこ飲んだんじゃないか。なんともない?」
「そうだね、ちょっとふわふわする。だけど、そのくらいかな。冬矢こそ、全然酔ってない感じするねぇ」
「俺も今のところ変化はないかな」
「じゃあ冬矢は強いのかもね」
「限界を確かめたことがないからわからないけど、そうかもしれない」
「ふふっ。だとしたら心強いなあ」
 ずっとにこにこと笑顔を崩さない蒼生は、やはり少し酔いが回っているようにも見える。本当のところはどうなのか、蒼生本人も初めてのことなのでよくわからない。ただ、穏やかに微笑む冬矢と楽しそうに笑う健太に囲まれているのが嬉しくて表情が保てないことだけは自分でもわかっていた。
 すると、顔を合わせて話す蒼生と冬矢の様子に、健太が再び頬を膨らませる。そしてがばっと立ち上がり、蒼生の脚を跨ぐと、どしっと座り込んでそのまま蒼生に抱きついた。
「け、健ちゃん?」
「蒼生~」
 蒼生は驚いて瞬きの数を増やす。しかし咄嗟にその背をとんとんと叩くと、健太はまたへにゃっとした顔で擦り寄ってきた。
「まったく、忙しい奴だな」
「だねぇ」
 あの頃とは違い、ずっしりと重い。けれどこんなになっても自分に懐いてくれるというのは嬉しかった。いや、もう、懐くというより、……もっと深い関係なのだ。そう思うと、さらにどうしようもなく嬉しくなって、ぎゅうっと腕に力が込もった。腕の中で健太が笑う、その小刻みな動きがくすぐったい。
「へへ……おなかいっぱい。美味しい。蒼生大好きぃ」
 蒼生が噴きだし、さすがの冬矢も小さく笑った。途中で対象が方向転換したその話し方は、思ったことをそのまま口にする小さな子と一緒だ。でもだからこそ本音なのだろうな、と蒼生は暖かい気持ちで受け止める。
「な。蒼生、パン食べる。ちょうだい」
「まだ食べるの?」
「もう1個だけ」
 手渡すと、肩の上でもぐもぐと口を動かし出す。あまり行儀のいい行動ではないが、誕生日の今日くらいは見逃してやろう。
「蒼生」
「なに?」
「蒼生、好き好き。大好き」
「うん、僕も大好きだよ」
「嬉しい、大好き」
 そのご機嫌な様子に、冬矢が視線の温度を下げた。
「……少し腹が立ってきたな」
「どうして?」
「なんだか、健太ばかり蒼生のことが好きみたいじゃないか。俺も負けてはいないつもりなのに」
 今度はこっちか、と蒼生は微笑ましく思う。表では涼しい顔をしているのに、健太相手だと競争心を隠さない。じゃれ合うように競い合うふたりを見るのが好きだ。競って欲しいわけでも、取り合って欲しいわけでもなく、好きな人同士がお互いを嫌わずにいてくれることが本当に嬉しい。ただ、やはりそんなに火花を散らすほど自分を欲しいと思ってくれているのだと自覚すると、どうしても照れてしまう。
「蒼生、真っ赤だね」
「そりゃ……。ふたりがかりでラブコールされたら、ドキドキもしちゃうよ」
「そうか。ふふ。酔ってるのかと思った」
 きっとそれもあるはずだ。そうでなければ、何年付き合っても「好き」の言葉にときめいてしまうなんて、いつまで経っても恋愛初心者のようだ。
 冬矢が蒼生の顔を覗き込む。
「今、なんて思ってる?」
「へっ? なんでバレちゃうかなぁ……。あの、いつまでもすぐにこんな照れちゃうなんて、恋愛初心者から脱却できないなーってちょっと恥ずかしく思ってた」
 ふっと笑って、冬矢は赤いままの蒼生の頬をそっと撫でた。
「いいよ。慣れない蒼生も可愛くて大好きだよ。何十年経って慣れたとしても、それもきっと可愛く思えるんだろうな」
「なん、じゅう」
 それは途方もない話に思える。冬矢は、そんなに長い間自分といるつもりなのか。ずっと離さないと思ってくれているのか。
 ずっと前、「蒼生には嘘はつかない」と言ってくれた冬矢。だから、きっと、本当にそう考えているのだろう。
 冬矢は、蒼生の上からまったく動こうとしない健太を眺めて息をついた。
「さすがにそろそろ引き剥がそうと思ったが……まあ、こいつの誕生日だしな。好きにさせてやるか」
 すっと冬矢の手が離れ、寂しくなってしまう。おそらく少し酔っている自分。だからきっと寂しさで口が軽くなるのもそのせいだ。
「……僕ね、誕生日ってあんまり好きじゃなかった。パーティも得意じゃないし」
「うん。……そんな気がしてた」
「やっぱりバレてたか」
 冬矢が頷いてくれるから、心もふっと軽くなる。
「もともと自分のことなんかどうでもよかったからね。誕生日にちやほやされるの好きじゃなかったんだ。どうしても健ちゃんとセットでお祝いされてたし、お互い居心地悪かったんじゃないかな。健ちゃんが僕と一緒じゃ嫌だって言い出して、それから僕も誕生日を言いふらさないようにしてたら、誰も気にしなくなった」
「……うん」
「なのにね。教えてないのに、僕の誕生日を知ってくれてて、僕のためだけに祝ってくれる人がいたんだ」
「…………」
 黙って話を聞く冬矢。蒼生はすうっと天井を見上げた。あの日のことは、ずっと忘れられずに胸の奥にある。
「たぶん。あの瞬間、僕は……初めて自分から人を好きになったのかもしれない」
「……誰?」
 ふふっと蒼生は笑う。冬矢なら気付くかと思ったが、下ろした視線の先で、そう問いかける目は真剣だった。だとすれば、あれは計算ではない。本心からの、なんてことない行動だったのだろう。
「冬矢だよ」
「っ、俺?」
「うん。そう。中2の時。覚えてるでしょ、校外学習の日。自分から拒否しておきながら、誰も自分を見てくれないんだって勝手に絶望してた駄目な僕なのに。でも僕を見てくれた。冬矢だけが僕を見てくれてた。……あの時は、びっくりしちゃってちゃんとお礼言えなかったけど。本当に嬉しかった。ありがと」
「蒼生」
 言いたいことだけを言ってしまうと、かあっと頬が熱くなる。冬矢が丸くした目と目が合い、さらに首のほうまで赤くなってきた。
「あー、やっぱり酔ってるかも。恥ずかし。かっこわる」
「……格好悪くなんかないよ。言っただろ。……どんな蒼生だって愛してる」
「冬、矢……」
 冬矢がすっと手を伸ばす。抱き締めたい。強く抱き締めて、胸の奥からこみ上げる熱をすべて伝えたい。
 が、蒼生の上には健太がいる。ぎゅうっと縋り付いて、離れる気配がない。そして、それごと抱き締めるのも癪だ。
「健太、蒼生が重そうだぞ」
「やだ、離れねえ」
 そう言ったかと思うと、健太は勢いよく起き上がった。突然のことに驚く蒼生の両肩をがっと掴む。
「蒼生にいっこ、訂正があります!」
「え。なに?」
「蒼生はぁ、誕生日パーティ、蒼生と一緒じゃやだってオレが言ったと思ってるみたいだけどぉ。オレそんなこと言ってねえもん。オレ、蒼生の誕生日は蒼生だけでやりたいっつったんだもん。主役扱いされながら蒼生を祝うんじゃなくて、蒼生だけに集中したかったんだよ」
「……健ちゃん」
「だからー、別々にやってくれるの、嬉しい。だから、冬矢も、ありがとな」
 にこっと冬矢に笑いかけ、健太は再び蒼生の肩に顔を埋めた。すっかり眠くなってしまったらしく、冬矢が覗き込むと、もう半分目を閉じている。
「……今日の健太はいちだんと気色悪いことを言うな」
「ふふ、まあまあ。……でも、そっかぁ。違ってたんだ。健ちゃんも、僕の誕生日、大事に思ってくれてたんだね」
 冬矢はかたんと音をさせて立ち上がる。そして、そっと蒼生の頭を抱いた。
「そうだよ。こいつが蒼生を大事に思わなかった瞬間なんて、あるわけがない。俺と同じで、こいつの頭の中も蒼生ばかりなんだから」
「冬矢。……そっか。そうかあ……」
 蒼生は冬矢の胸に耳を寄せる。優しい心臓の音。それは腕の中で感じている鼓動と、タイミングは違うけれど、同じ音だ。手から、耳から、心の奥に届く。それはとても暖かい。幸せの温度だ、と思った。
 ふうっと冬矢が息を吐く。
「……ともかく、今日はこのくらいにしておいたほうがよさそうだな。これ以上放っておくと蒼生が立てなくなる」
「そうだね、実は、もう脚が痺れてきてるんだよね」
「マズいな、一刻も早くどかさないと。あとは、明日になって健太がこの状態をどれくらい覚えているか確認しないといけないな。酔うたびにこうなってしまうのだとしたら始末が悪い」
「あはは。健ちゃんにはほどほどにって注意しなくちゃだ」
 その言葉がきっかけで、パーティはお開きとなった。
 ふたりがかりで健太を寝室に運び、ベッドに横たえる。片付けは食器を簡単にまとめてキッチンに置いておくだけ、身支度も最低限にして、蒼生と冬矢もベッドに入った。シャワーも明日の朝でいい。
 蒼生が横になるなり、寝ぼけた健太が腰に巻き付いてきた。冬矢はそれを見て笑い、蒼生の手を握って側に寄る。ふたりの体温に囲まれて、蒼生はふっと微笑んだ。
「今日も、狭い」
「仕方ないね」
「仕方ないんだ。……ところでさ、あの時……僕の誕生日、黙ってたのに何で知ってたの?」
「出会ってすぐの頃、身体検査でクラスごと一緒に回っただろ。あの時の用紙に書いてあったじゃないか」
「……よく覚えてたねえ」
「そりゃあ、気になる子のことだから」
 見せ合いでもしただろうか。さすがにその時のことまでは覚えていない。いったい冬矢がどこまで覚えているのか、少し心配になる蒼生だった。


 翌朝、蒼生と冬矢を起こしたのは、健太のうめき声だった。驚いて蒼生が飛び起きると、健太が頭を抱えている。
「ど、どしたの?」
「……オレ、昨日、だいぶ恥ずかしいこと言った……」
 冬矢はやれやれ、と起き上がる。
「おまえのアレは大して意外でもなかったから気にするな。それより、覚えてはいるんだな」
「あ、その、記憶はバッチリ」
 だからこそ、蒼生に抱きついて離れなかったことも、冬矢に素直に礼を言ったことも覚えているのだろう。蒼生はくすくす笑う。
「昨日の健ちゃん、可愛かったよ」
「うあー……。なんかさ、頭ではさ、蒼生重いんじゃないかな、ごめんな、って思ってんだけどさ。歯止めが利かなかったぁ……。とにかく蒼生にくっつきたくて、蒼生で頭がいっぱいになって、好きで好きで、どーしようもなくなっちゃったんだよなあ」
「そ、そっか」
 改めて、健太が蒼生を引き寄せる。蒼生はされるがまま、ずるりとシーツの上を滑ってその腕の中に収まった。
「まあ、覚えているならいいが。健太、自分がどうなるかわかったんだから、外では飲む量に気を付けないと」
「はい。気を付ける。蒼生に迷惑かけたり心配かけたりしないようにする」
「よし」
「僕も気を付けます」
「そうだね。全員気を付けよう」
 うんうん、とお互いに顔を見合わせて頷く。
 あ、と蒼生が健太を見上げた。
「そういえば、二日酔い? とかってなってない? 大丈夫?」
「んー。それはとりあえず今日のところは、大丈夫、そう……かな」
「冬矢は?」
「俺も平気だよ」
「じゃあ、みんな無事ってことだね。よかった」
 蒼生は、ほっと息を吐いて胸の前でクロスする腕をぎゅっと抱き締める。
「でも、楽しかった。また家で3人でパーティしようね」
 冬矢が穏やかに笑う。
 健太が嬉しそうに笑う。
「いいね」
「毎日だっていいぜ」
「毎日はさすがになあ……ふふふ」
 さあ、今度はいつにしようか。
 3人は、さっそく予定を確認するために携帯に手を伸ばした。

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