89こ目;世界は君を中心に~前編~
夏休みの課題がいろいろある3人は、バイトにも精を出しつつコツコツと進めている様子。
けれど、そればかりではどうしても息が詰まる健太が、ひとつの提案をします。
次回、後編に続きます!
↑初公開時キャプション↑
2023/09/08初公開
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程よく涼しい部屋の中に、かりかりと競い合うように2本のペンの音が走る。冬矢はふと手を止め、正面で分厚い本をめくりながらノートに何かを書きつけている蒼生に目をやった。ペン先からは蒼生らしい几帳面な文字が次々生まれていくが、凛々しい眼差しは常に本に書かれた文字を追っている。ふと見れば、草の模様が刻まれたプラスチックのコップの中身は、小さく溶けた氷だけになっていた。
かつん、と机が立てる音にようやく蒼生ははっと顔を上げる。自分のコップを持ち上げる手が見えて、それを辿っていくと、冬矢の穏やかな笑顔。
「あ、ごめん」
「いや、俺こそごめんね。蒼生に気付かれないようにと思ったんだけど。なにせ、集中している時の蒼生の真剣な顔、とても綺麗で魅力的だから」
「……っぐ」
見目麗しい冬矢にそう言われると、なんと返していいかわからなくなる。本当にそんなことはないので、以前のように反射的に否定したくなるが、「これ」は「大切な人の大事なもの」だ。軽々しく扱えば大好きな人を傷つけてしまうかもしれない。
その蒼生の葛藤に気付いたのだろう。冬矢は目を細めて蒼生の髪に小さく口づけた。
「ひぇ」
「そんなふうに固まっちゃうのも可愛いね。大好きな蒼生と毎日一緒に暮らせて幸せだよ」
「う、う、ぼ、僕もです……」
蒼生が恋人の甘い言葉にじわじわと熱くなってきた頬を両手で覆うと、冬矢の手が優しく肩を撫でてくる。今度はその場所が心地よく熱を帯び、血液と共に全身を巡っていきそうな気がした。
「冷たいお茶がいいかな。それとも紅茶にする?」
「冷たいのお願いします……」
「かしこまりました」
恭しく頭を下げてキッチンに向かう冬矢の背を落ち着かない気持ちで見送ると、蒼生は気を紛らわせようとノートに目を落とす。そこには走り書きの文字が躍っていた。文献を読みながら気になった点やその時点での思考を書き綴っていくと、後で考えがまとめやすい。ちょっとした思い付きが重要な結論に繋がることもあるから、レポートを書く時にはこのやり方がいい。ただ、集中しすぎて周りが見えなくなってしまうのはあまりよくないのではないか。結果、冬矢に気を遣わせてしまったのだ。ちゃんと周囲にも気を配らなければと反省する。
拳を握ってひとり頷く蒼生を、冬矢はカウンター越しに少々困ったような柔らかい瞳で見つめていた。
しかしそのもどかしい静寂は、玄関から聞こえてきた物音で一気に賑やかになる。
「ただいまぁ!」
飛び込む勢いで健太が部屋に駆け込んできた。まずは真っ先に蒼生の元に駆け寄り、会えなかった時間を埋めるために全力で抱き締める。
半分持ち上げられるような格好になった蒼生は、物理的ではない力でも胸をきゅっと掴まれた感覚にほっとして、その腕に頬を寄せた。
「あはは。おかえり、健ちゃん。バイトお疲れ様。外、暑いんだね」
「暑かったよー。……あっ。悪ぃ、べたべたしてる?」
「ううん、空気があったかいから」
健太はよかった、と呟き、もう一度蒼生を抱き締める腕に力を込める。健太の纏う空気は、暑い、というよりもただ温かい。数時間ぶりの健太の匂いと温度をもっと感じていたい。しかし、片方の手がすぐにぱっと離れてしまった。
「そだ、冬矢。頼まれたもん買ってきたよ」
「ああ、ありがとう」
片腕でがさりと食材の入った袋を渡してくる健太に、冬矢が笑う。もう片方の腕は蒼生の要求に気付いているのか、後ろから肩に巻き付いたままだ。
「離れる気はなさそうだな」
「そりゃそうだよ、バイトの間は蒼生の顔見られないんだもん。帰ったら蒼生を補給しないと。蒼生だって、オレのこと補給したいでしょ?」
「えへへ、うん」
「! だよなぁ!」
素直に蒼生が頷いたので、健太のテンションはますます上がる。さらさらの髪に顔をうずめながら大きく深呼吸をすると、蒼生はくすぐったそうに身をよじった。その漏れ出た声が健太の胸に刺さったらしい。
「……うわー、もー。オレの蒼生はどうしてこんなに可愛いんだろ。あー。ダメだ言葉が出てこない、好き好き大好き! レポート終わった?」
「えっ、急に話題変わるね。まだ、もうちょっとかかるかな」
「そっかー。んじゃ、そんな頑張ってる蒼生にご褒美買ってきたから、一緒に食べよ!」
健太は嬉しそうに自分の鞄をごそごそ探り、中からビニール袋を取り出した。そしてダイニングテーブルの上が資料で埋まっていることを確認すると、ソファの前のローテーブルにその中身を並べていく。
「牛乳の棚見てたらさー、近くに広告の品って書いてあるコーナーがあってー。美味しそうだったんだよねえ」
「わー、プリンだ。おっきいね」
「だろ! 冬矢も区切りよかったら休めよ」
健太が突然課題の話を出したのは、どうやら自分が買ってきたおやつを蒼生に差し出す言い訳を探していたらしい。おやつに理由はいらないはずだが、健太も蒼生の手を止めること自体に意識はしていなくとも躊躇いがあるのだろう。
テーブルの上には、きっかり3つの大きなプリン。それを見た冬矢は一瞬眉を上げると、食器棚からコップを1つとスプーンを3本取り出した。
「飲み物とスプーンは持っていくから、蒼生は先に座ってて」
「はーい。ありがと、冬矢」
冬矢の言葉に、蒼生もうきうきと立ち上がる。そしてそのまま弾むような足取りで、迷わずソファの中央に座った。きちんと左右に健太と冬矢の座る場所を空けて待っている姿に、ふたりは思わず笑みを浮かべる。こうなれば、そこはただのスペースではない。蒼生が自分たちのために用意してくれた特等席だ。
書斎から喫茶室に変わったリビングで、3人は揃って手を合わせる。
「それじゃあ、遠慮なくいただこうか」
「うん。健ちゃん、ありがとう。いただきまーす」
「召し上がれー」
蒼生ははしゃぎたくなるような気持ちで、スプーンの上に乗ったぷるぷる震える黄色い塊をじっくり眺めてから、ぱくっと口に入れた。たっぷりたまごのプリンと書かれたパッケージ通り、卵の濃い味が口の中いっぱいに広がる。
「ん、美味しい。がつんと甘いの、嬉しい。好きな味~。疲れが取れるね」
「そうだね。さんざん難しいことを考えていた頭にはありがたい。おまえも割と気が利くな」
ふたりに褒められ、健太は得意げに胸を張った。
「っ、そ、そりゃ、オレは気遣いの人ですからぁ?」
蒼生と冬矢はきょとんとし、それから顔を見合わせて笑う。態度は堂々としているが、その口ぶりから察するに、そこまで深くは考えずにただ蒼生が喜ぶと思って買ってきただけなのだとわかる。けれど、それがいつも絶妙にいいタイミングなのだ。健太の野生の勘とでもいうのだろうか、その行動にはいつも驚かされる。
満足そうな表情を顔いっぱいに浮かべ、蒼生はスプーンを器に沿って埋める。ぷくんと溢れ出してくるカラメルを一緒に掬って口に入れると、途端に大人びた風味になった。
「カラメルも美味しい。……僕、昔カラメル苦手だったなあ」
「えっ? そうだっけ?」
「小さい頃の話だよ。せっかくプリンは甘いのに、なんで苦くするんだろって思ってた」
底にあるカラメルが出てきてしまわないよう、ぎりぎりまで削り取って食べていたことを思い出す。途中で手元が狂って茶色い液体が見えてしまった時は、とてもがっかりした。ただそうやって神経を使っても、残せばどちらにしても怒られるので、最後にはカラメルが染みた部分を一気に口に放り込んで飲み物で流し込んでいた。この一気飲みが一番苦手だったことを考えると、その作戦は失敗だったのだと今ならわかる。
冬矢が手を伸ばし、優しく肩を抱く。
「だけど今は好きだよね」
「好き! どこだっけな、小学生の頃に連れてってもらった旅行先で、下に入ってるのがカラメルじゃないプリン食べたんだよね。もう味も忘れちゃったんだけど、一緒に食べると合うなって思ったら、それからはカラメルも平気になったんだ」
健太は首を傾げながら蒼生の腰に手を回す。
「えー、覚えてないなあ。オレ、いた?」
「いたよ。他のことは覚えてないけど、健ちゃんがいたことだけははっきり覚えてる」
「マジで? なんで覚えてないんだろ」
「うーん……。たくさんいろんなとこ行ったし、僕の頭の中だけの出来事だしね」
その頃の健太は蒼生より兄の紅輝と仲が良かったからだろう、という言葉を蒼生は飲み込んだ。兄たちは実の弟である蒼生より健太を可愛がっていたし、健太も自分の姉より紅輝に懐いていたような気がする。きっとその時も、健太は誰かと別のことをしていたのだと思う。
こつん、と冬矢が蒼生の頭に自分の頭を寄せた。
「旅行か。蒼生たちはどこに行ったんだろうね。ご当地プリンという言葉をよく聞くし、変わった種類だったのかな」
「そう、たぶん、そういうやつ。たしか、すっごく柔らかかったような記憶がうっすらあるよ。スプーンでぎりぎり掬えるようなプリンって、前に流行った時期があったよね」
「ああ、あったね」
「柔らかいのも好きなんだけど、僕はこういうしっかりした食感のほうが好き」
「俺も弾力があるほうが好きだな。おそらく小さい頃から食べ慣れているからかもしれないね」
「そっか。緩いプリンって小さい頃にはあんまりなかったからかぁ」
すっかり冬矢とプリンの話で盛り上がっていた蒼生は、ふと隣の健太が静かなことに気付く。おやと思ってそちらを見てみると、健太は俯いてなにやら考え事をしているようだ。心配になり、足の先で健太のくるぶしをちょんちょん、と叩く。
「健ちゃん?」
するとがばっと顔を上げた健太は、空になったプリンの容器をテーブルに置き、蒼生の両手を掴んだ。
「やっぱ、どっか行こ!」
「どこかって」
突然の発言に、蒼生は首を傾げる。冬矢も怪訝な顔をした。
「今から出かけるつもりか?」
「ううん、そうじゃない。具体的にどこってわけじゃなくて、蒼生とどっか行きたいって急に思った。そりゃさ、家の中ではずーっと一緒にいるから、前よりも一緒の時間はたくさんあるんだけど、もっと、どこか……外の蒼生と歩きたくなって。ほんと、急に」
健太自身が見切り発車で話し始めたのだろう、話の中身が要領を得ない。言いたいことを探ろうとして健太の顔を覗き込む蒼生に、健太はいっそう困った顔をした。
そのまま黙って困り果てるふたりを見て、冬矢が噴き出す。
「いや、なるほど。俺はわかったよ」
「えっ」
「なんで?」
「健太が黙り込んだ理由を考えればわかるよ。健太は蒼生が価値観を変える瞬間に立ち会っているにもかかわらず、自分で覚えていないのが不満なんだろう。あれはいつのことだっただろうか、と家族旅行の記憶を辿っているうちに、楽しかったことも思い出した。しかも今は夏休みだ。楽しいことも出来るし、蒼生との思い出の共有をすぐにやり直すことも出来る。それらを簡単にまとめれば、蒼生と泊まりがけのデートがしたい。こうだろ」
健太はぽかんと冬矢のすました顔を眺める。
「あ。それだ」
蒼生もぱちぱちと目を瞬かせて、みるみる顔を輝かせていく健太と柔らかく笑う冬矢を何度も交互に見る。
「冬矢は、健ちゃんのこともよくわかるんだね」
「そう言われると複雑なんだけど……。蒼生と旅行したい気持ちは共通してあるからだと思う。うん、そうだね、ここのところ課題で根を詰めていたし、気分転換にいいだろうな。蒼生はどう思う?」
「僕も行きたい!」
あまり考えず、被せるように蒼生は答えていた。健太が一緒に行きたいと言い、冬矢がそれに同意した。ならば、蒼生には断る理由がない。むしろ、積極的に賛成したいと思う。付き合う以前は面倒なのでできれば避けたかった旅行という行事も、ふたりがいれば何の問題もない。ふたりとならば共に行きたい。ふたりが楽しんでいる顔が見たい。場所はどこでもいい、とにかくふたりと出かけたい。
全身から嬉しそうな空気を醸し出した健太が、蒼生に顔を近付ける。
「そうと決まったら、どこに行きたいか考えようぜ!」
「うん、そうだね」
「場所か……。健太、蒼生といられればどこでもいい、という当たり前の考えはいったん置いておこう」
「お、大事だな。蒼生といる場所が最高のデートスポットだもんな。そのうえで蒼生と行きたい場所を考えなくちゃ」
「えっ」
弾かれるように蒼生が勢いよく立ち上がった。
「僕とならどこでも、って、そんな……、きゅ、急に何を言いだすの……」
頬を染める蒼生を見上げ、健太と冬矢は首を傾げる。蒼生にしてみれば、今の今まで健太と冬矢がいればどこでも、と思っていたのを見透かされたような気がしたから慌てたのだ。が、スイッチを切り替えたつもりのないふたりにとっては、蒼生の態度こそが唐突だ。
「? いつも通りだし、オレはずーっとそう思ってるけど?」
「ほら、プリンを持ったままだと危ないよ。おいで。座って話し合おう」
蒼生ははっと手元に目を落とす。大事に少しずつ食べているプリンは、まだ3分の1ほど残っていた。促されて座り直すと、ふたりはよりいっそう距離を縮めてくる。
「……近くない?」
「だって蒼生とくっつきたいもん。やなら離れるよ」
「やじゃない」
「だよね!」
ほっとしたように息を吐き、健太はほぼ抱き上げるような格好で蒼生の腰を抱いた。
「そうだなー。どこがいいかな。うーん、やっぱ、広いとこ行きたいんだよね。体動かせそうな感じの。……あ、別に、スポーツやろうみたいな感じで蒼生に無理強いするんじゃなくてね、なんか、空が広いみたいな意味でさ。解放感があるところで寝転がったりとか、そういうのがしたいな」
「広いとこ」
「ずいぶん曖昧じゃないか」
「とりあえず都会のビル群じゃないとこってのは伝わるだろ」
そう言われれば健太らしい。蒼生はくすっと笑う。
「いいね。星が綺麗に見えそう」
「だろ!?」
今度は反対側から冬矢がぐいっと蒼生を引き寄せる。
「俺は知的な場所がいい。歴史的建造物が見られるような施設に行ってみたいな。小さな頃に連れられていろいろな場所に行ったけれど、両親ともそういうところはさほど得意ではなかったらしくてね。あまりじっくり見たことがないんだ。蒼生となら会話が弾むだろうし」
「普段行けないもんね。僕もそういう場所好き」
「あ、いいな。そういうとこっていろんな体験も出来そうじゃん」
蒼生は該当する施設を頭の中で探す。どこも名前は知っているが行ったことがない。家族旅行で行くのは、基本的に体を動かして遊ぶ場所だったからだ。それは両家の子供たち6人のために選んでくれたのだとはもちろん理解している。だから多少苦手だと思っても口には出さなかった。実際、自分以外の5人は楽しんでいるのだからそれでいいと思っていた。
けれど、今は無理をして付き合わなくてもいい。冬矢とは趣味が合うので彼が選ぶ場所ならば間違いはないし、健太も自分がスポーツの輪の中に加えられることを苦手としていた気持ちをわかってくれている。とてもありがたいな、と思う。
「で、蒼生の希望は?」
「えっ、僕?」
蒼生は目を見開く。
健太も冬矢も、自分のことを考えてくれたうえで提案してくれているのだから、蒼生の意思も既にそこに反映されているような気がしていた。言われてみれば、たしかに今の自分はふたりの言葉を肯定していただけだ。改めて自分が行きたいところを考えてみるが、ぱっと思い浮かばない。外出が得意ではないので、自分の意見を出そうとあまり考えたことがないからだ。うーん、と悩んで目を落とす。と、テーブルの上のカップが目に入った。
「あ」
「どこか浮かんだ?」
「えっとね。どこっていうか、ほら、さっきご当地プリンの話したでしょ。珍しいものを食べに行きたい!」
にやりと健太が笑う。
「蒼生がオレみたいなこと言う~」
「だって、急に食べ歩きみたいなことしたくなっちゃったんだもん」
「いいじゃないか、楽しそうだ」
「だな。じゃ、3人の要望を兼ね備えた場所探そ!」
拳を握る健太に蒼生は胸を撫でおろし、にこにこと残りのプリンを頬張った。
翌日、冬矢が夕飯の買い物に出かけると言うので、課題の続きに行き詰まりかけていた蒼生は元気よく手を挙げた。
「僕も一緒に行く!」
「え、蒼生行くの? じゃあオレもオレも~」
冬矢はある程度その予測が出来ていたのだろうか。ふたりの申告にまったく驚いた様子もなく、荷物用のバッグを当然のように健太に手渡した。
「そうか。手があるなら、ショッピングセンターまで足を伸ばそう」
「ははぁ、さては重いやつの特売があるな?」
「よくわかったな」
散歩がてら、のんびりおしゃべりをしながらショッピングセンターに向かう。辿り着いた店舗は、すっかり夏休み仕様になっていた。吹き抜けに飾られた左の垂れ幕には麦わら帽子を被ったペンギンの姿が描かれ、右の垂れ幕に大きな文字でスイカ割りイベントが告知されている。入り口のすぐそばの広場には金魚すくいや的当てなどのミニ縁日が開催されていて、家族連れでごった返している。その先にある休憩用のベンチに囲まれた展示スペースも水遊びの特設コーナーになっていた。健太はそれを羨ましそうに眺める。
「いーな、涼しそうで。今すぐ水着になりてぇ」
爽やかな色合いでまとめられたマネキンたちの格好はいかにも涼しそうだ。蒼生は健太が突然着替えだす姿を想像してしまって思わず笑う。
「ここで急に水着になるのはどうかと思うけど……。暑いっていうのは同意する。なにか冷たいの飲もうよ」
「そうだね。せっかくだから、奥の喫茶店に行ってみる?」
「うん!」
蒼生はその提案に間髪入れずに頷いた。施設を縦に貫くメインストリートから1本曲がったところには重厚な雰囲気の喫茶店がある。タイミングが合わずにいつも素通りだったのだが、ずっと気になるメニューがあったのだ。
食品売り場を過ぎて、専門店が並ぶ角を曲がる。目的の喫茶店はその短い通路の突き当たりにあった。手前にあるのは旅行代理店だ。3人は、誰からともなく目を合わせた。客が入りやすいようにと明るく開けた店舗にはカウンターと打ち合わせコーナーがあり、手前の棚に様々なパンフレットが置かれている。もちろんこの店の存在自体は知っていたのだが、今までは気にもしなかった。出かける先を探している今の3人にはぴったりの施設ではないか。
「ちょうどいいじゃん。パンフレット、いっぱいあるな」
「条件に合いそうなものをいくつか貰っていこうか」
休憩中に検討する資料にはちょうど良い。スタッフに声をかけ、雰囲気がいい表紙の冊子を何種類か手に取ると、3人は喫茶店に入った。
全体的にセピア色でまとめられた店内には、落ち着いたBGMが流れている。客はさほど多くないので、パンフレットを広げられそうな広めのソファ席を選んだ。すぐにやって来た店員に、健太と冬矢はアイスコーヒーを頼む。蒼生は迷わずバナナミルクシェイクを注文した。健太がにいっと笑う。
「おー。蒼生が迷わなかった」
「ということは、前から気になっていたんだね」
あ、と蒼生は両手で口を塞いだ。まったく、よく気が付くふたりだ。
「ええと、うん。まさかこんな些細なことでバレるなんて……。でもほら、どうしてもなにがなんでも来なくちゃ、ってレベルの話じゃなくて、いつか仮に入ることがあるとしたらこれがいいな~くらいの感じだったから」
弁明する蒼生を、ふたりがじっと見つめる。先にふっと表情を緩めたのは冬矢だ。
「そういうことならいいけれど。できるだけちゃんと言ってね」
「うん。……あの、ほんとに隠してたわけじゃないんだよ」
「ん、ごめん。オレたちも責めてないよ。我慢してるんだったら悪いなーって思っただけ」
ふたりのそれは本音だろう。けれど蒼生は申し訳なく思う。健太も冬矢も、どうしても蒼生を優先したがる。その理由は「蒼生が大切だから」だと知っているが、きちんと自分たちの意思も尊重してほしい。なんとしても今回の旅行ではふたりの意見を最大限に反映させたい。意気込むと、蒼生は机の上に広げられたパンフレットをまずは1冊手に取った。
倣って健太も手を伸ばし、店の中に響かない程度の元気な声で「よし」と気合いを入れる。
「さーて。方角から決めよっか、それとも施設から?」
冬矢は既に手元にあった冊子をぱらりとめくった。
「まず、ひとつ条件に合うところがあったら、そこに残りの条件が合うか確認しよう」
「てことはー。実は冬矢のやつが一番具体的だったりするよな」
「だよね! 僕もそれがいいと思う!」
前のめり気味に応える蒼生に、冬矢が目を和ませる。
「でも、たとえ俺の趣味に合っていたとしても、蒼生と健太が納得しないところは駄目だよ。3人で行く旅行なんだからね」
3人、を強調し、冬矢は次のページをめくった。蒼生も頷いてパンフレットの端から端に目を走らせる。
あれこれ話し合いながら様々なツアーを眺めているうちに、頼んだ飲み物が運ばれてきた。蒼生のバナナミルクシェイクは、想像していたよりも白っぽい色をしている。そこに黄色みの強いアイスが乗って、さらに縦半分に切ったバナナがまるまる1本分刺さっていた。この量も想定外だ。
「うわ、結構ボリュームあるな」
「僕もびっくりしてる……。すごい、写真よりずいぶん立派だ。早速いただきます……。ん、わ、バナナの味が濃いぃ。意外とさっぱりしてる!」
「上のアイスはバニラ?」
「うん。すごく香りが良くて、濃厚だね。果肉に合う感じで美味しい」
蒼生がほくほくと味の報告をすると、ふたりは同時に「味見」と言った。蒼生は嬉しくなって、ふたりの望み通り、健太にはアイスをたっぷり乗せたバナナを、冬矢にはグラスの位置を変えてストローを差し出した。
「あ、ほんとだ。ひんやり甘いのとバナナが合うな!」
「美味しいね。さすが、蒼生の選ぶものは間違いがない」
「それ、オレもわかるわ。なんだろな、蒼生って美味しいものを呼び寄せる信号でも出してんじゃない?」
「……ふたりとも褒めるの上手」
決して蒼生の手柄ではない。けれどふたりはそれでさえ蒼生のおかげだと言ってくれる。ますます、ふたりの希望を叶えたい気持ちで蒼生の心はいっぱいになっていく。
その目に、パンフレットの右下に配置された写真が映った。青い空と緑の草、牛が何頭かで草を食んでいるのどかな風景。隣には同じように青い空の下に丸木で作られた建物がある写真があった。枠で囲われた紹介記事の中には、近くにある施設も列記されている。そこに写真はなかったが、数ページ前にその施設の名前があった気がする。ぱらぱらと見比べながら、蒼生はぱちぱちと瞬きをした。
「ねえ、健ちゃん、冬矢。これ見て」
「ん? どれどれ」
「バスで行く、高原で過ごす牧場コテージ一泊プラン……。綺麗な写真だね」
「僕もそう思ったんだ。これ、ファミリー向けなんだけど、行き帰りのバスと夕飯のバーベキューと、それから2日のうちどっちかで使える観光牧場の入園券がついてるだけで、あとは全部自由時間だって。これ、すごく気楽じゃない? それで、」
蒼生は先程見ていたページをふたりに向けて開いて見せる。そこには煉瓦の街並みと古い石造りの大きな建物が載っていた。
「ほら。近くに、フィオリート村っていうテーマパークがあるんだって。外国の古い建物が再現されてて、アトラクションがあるとかじゃないんだけど、美術館とか劇場とかがあってね。昔の装束も着られたりするみたいだよ」
へえ、と呟いて、冬矢が身を乗り出す。
「ガゼット社発祥の国じゃないか」
「それって、冬矢が好きな家電メーカーの?」
「うん。今の本社は違うところにあるんだけどね、元はここで生まれた会社なんだ。すごく技術の発達した国だったんだよ。これは興味あるな」
とても好意的な反応が返ってきて、蒼生は嬉しくなる。
「牧場かー、久しく行ってねえな。気持ちよさそうじゃん」
健太もぐぐっと紙面を覗き込んできた。そして旅行の行程を眺めて「あ」と声を上げる。
「夜がバーベキューなんでしょ? それってさ、オレにとっては願ったり叶ったりなんだけど。ふたりってあんまり好きじゃなくない?」
「たしかに正直苦手だけれど、写真を見る限り各コテージで個別に食べられそうじゃないか。3人きりなら俺は構わないよ」
「僕も。人がいっぱいなのは苦手だけど……。それに虫よけしておけば大丈夫」
「そっか」
ふたりの答えに健太は満足そうだ。冬矢はにやりと笑って蒼生の手を握る。
「きっと経験豊富で得意な健太が準備も片付けも頑張るだろうからね。その間、俺と蒼生は仲良く待っていよう」
「ぐ……っ。で、でも、任された! 蒼生にかっこいいとこ見せてやる!」
「うわー、すっごく楽しみになってきた」
蒼生の、ふたりのためにと空回りしそうな意気込みが、ふっと緩む。健太と冬矢に楽しんでほしいことには変わりないが、やはり3人で一緒に楽しむのが一番だ。
にこにこしながら健太は改めてパンフレットに目を落とす。
「早速、さっきのとこで日程あいてるか聞いてみようぜ」
「そうだね! 値段も手ごろだから、埋まっちゃってないといいなあ」
「予約が取れるといいね」
3人は笑い合って頷き、目の前の飲み物に手を伸ばした。
ファミリー向けの企画だけあって、バスツアーの集合場所に集まったのは小学生くらいの子連れの家族が多かった。満員ではないらしく、座席にも余裕があるようだ。そのおかげで、横並び4列の座席には3人だけで座ることができた。ほぼ自由行動のツアーではあるものの、一応ガイドはついていて、先程まで行程の詳細を明るい声で説明していた。
通路側に座った蒼生は、足をぶらぶらと揺らしながら手元の行程表をにこにこ眺めている。隣の冬矢がそっと蒼生の膝に手を置いた。
「楽しそうだね」
ぱっと顔を上げた蒼生が、ふにゃりと表情を崩した。
「うん。さっきのカフェで食べた朝ごはんも美味しかったし、バスでどっか行くのも遠足みたいで楽しい」
健太が通路越しに首を傾げる。
「あれー。蒼生って遠足好きじゃないって言ってなかった?」
「好きじゃないよ。けど、知ってる人がふたりだけだから気が楽。それにさ、」
蒼生はきょろきょろとあたりを見渡す。わいわいと楽しそうな声であふれる車内では、誰もこちらを見ていない。それをしっかり確認して、冬矢の肩にとんと頭を乗せた。
「ちょっとくらいこんなことしても大丈夫なのが嬉しい」
あっ、と声を上げて健太が拳を握り、冬矢は嬉しそうにその髪に頬ずりをする。
「俺の蒼生は本当に可愛いな。そうだね、学校の連中の前でこんなことをしたら、からかわれるか噂をされるか。どちらにしても気を遣わなければならなかったから」
「くそー。羨ましい。おい、サービスエリア着いたら席は交代だからな」
「蒼生の隣という意味ではそこも同様だと思うが」
「通路挟んでたら、ぎゅーとかちゅーとか出来ねえじゃねえか」
「ということは今の俺にはそれが許されているというわけだ」
「んなわけあるか、人目を考えろ」
「おまえは自分が何言っているかわかっているか?」
頭の上でひそひそと繰り広げられる言い合いに、蒼生はさらに頬を緩める。声のボリュームを落とすために冬矢が身を乗り出し、自分を抱えるような格好になっていることも嬉しかった。おそらくこれはわざとだろう。健太をからかいつつ抱きついてくれているのだ。後で健太がこの位置に来ても、同じことが起こるのだと容易に想像できる。
ふわふわした気持ちで改めて周りを窺うと、近くからは牧場近くの遊園地で何に乗りたいかを延々と説明する幼い声がする。向こうでは兄弟げんからしき声と、窘める親の声。どこかから甘いチョコレートの香りもする。それらは、蒼生の中にある小さい頃の家族旅行の思い出と重なった。賑やかな記憶だ。けれど、元気すぎる子供の中にも入り切れず、大人に紛れるのも少し違和感があって、ずっと一歩引いていた。楽しそうな家族たちを、いつも傍観している気分だった。なのに、今は、3人が同じ輪の中にいる。それどころか、健太と冬矢は常に蒼生を中心に行動している。
「贅沢だなあ……」
小さな呟きは、ふたりには気付かれてしまったようだ。そのはずだ、こんなに至近距離にいるのだから。
健太がぴたりと動きを止める。
「ん? 蒼生、なに?」
「ううん。あのね、サービスエリアでさ、なにか買い食いしたい」
「おなかすいた? そうだね、朝ごはんが軽かったから、昼までのつなぎに何か食べようか」
「いいな! ああいうとこで売ってるのって、なんか美味そうに見えるんだよなぁ」
遠足ではできなかったことを、家族旅行でもできなかったことを、健太と冬矢とならば叶えられる。ふたりが積極的に叶えようとしてくれる。「ぎゅーとちゅー」は周りに誰もいなくなったら自分からしよう、と蒼生はこっそり決意した。
サービスエリアで食事を含めた休憩を取り、バスは牧場に併設された宿泊施設に到着した。正面にはひときわ大きなログハウスが建っていて、宿泊用のコテージ群は奥にあるということらしい。ログハウスにはフロントがあり、宿泊者は中のレストランや売店を利用することができるとガイドが説明していた。他の参加者たちは牧場に行ったり、ガイドと共にオプションツアーに向かったりするらしいが、3人は完全にフリーだ。荷物をフロントに預けると、施設の前にあるバス停からテーマパークに向かう乗り合いバスに乗る。
乗り合いバスには、席が埋まる程度の客が乗っていた。路線図を見ると、蒼生たちの目的地以外に大型ショッピングセンターも通るらしい。健太は吊革につかまり、その馴染みのない地名を興味深そうに眺める。
「蒼生、どのくらいで着くんだ?」
「ん? そうだね、20分ってところじゃないかな」
窓の外を流れていく景色を眺めながら答える蒼生の声は、しっかり弾んでいた。少しずつ斜面を登っていくバスは、民家の連なりをひとつ超えるごとに、深い緑の中に包まれていくのがわかる。初めはいくつも確認できたよく見るチェーン店の数がどんどん減っていく。それがとても楽しい。
バスが完全に森の中に入り、その道が下りになったとたん、さあっと景色が開けた。わあ、と前の席にいた家族連れから声が上がる。見れば、広い駐車場の奥には、石造りの塀が横たわるように伸びていた。その向こうは木々の緑で溢れ、隙間から塀と同じ色合いの尖塔や城のような建物が覗いている。さらに奥、山の斜面にも建物があるようだ。
「高いところにも建物があるんだ。写真で見るよりだいぶ大きく感じるね」
「ホントだ、でけえ! さっきまでの景色と全然違うな! 海外旅行に来たみたいだ」
「たしかに。あれ、実際の国境壁にそっくりだ。大きさは縮小してあるようだね。関所の門が入場口になっているのか」
身を乗り出した冬矢の声も少々上擦っているようだ。蒼生は、その横顔を見て思わず笑みをこぼした。いつも落ち着いている冬矢が興奮している。会話が弾みそうな気配にわくわくしてしまう。
「本物はもっと大きいの? 小さくしているのは、中の建物が見えるようにかな」
「きっとそうなんだろうな。北方で何度も諍いがあったから、国境越えが厳しく取り締まられたのは歴史で習ったよね」
「うん。一時期は門自体も開かなかったんでしょ」
「そう。どうしても国を出なければならない人々は大回りして山を越えたんだそうだ。それを阻むためにどんどん壁が高くなっていったんだけど、ほら。石の組み方が違うのも再現されている」
「え? あ、たしかに。途中から色が変わってる」
バスが入り口に近付くと、その違いがよりはっきりしてくる。窓に顔を並べてそれを眺めるふたりに、健太は感心して目を瞠った。
「へー。言われなきゃ気付かなかったわ。すごいな。オレ、あっちのフルーツフェアってのぼりしか目に入んなかったもん」
健太の指先を辿った蒼生は、にこにこと振り返る。
「ほんとだ! そっちも気になるね!」
「こっちでは滅多に食べられない特産品もあるし、そうでなくとも高原ならではのフルーツもありそうだ」
「楽しみ~」
バスから降りたのは、3人の他には2組の家族連れとカップルが1組だった。停留所から少し歩くと、大きな門の前に出る。その下には現実感のある金属のゲートがあり、長いスカートとベストの民族衣装を着た女性がチケットを切っていた。そこから1歩足を踏み入れれば、石畳の街道と石造りの建物が整然と並んだ異世界が広がる。
「すごい! 綺麗だ」
蒼生の目を引いたのは、どの建物の前にも設置されている花壇だ。同じ石材で建物から繋がるようにして作られた花壇で、規模は建物によって大きいものも小さいものもあるが、どこも溢れんばかりの花が咲いている。見上げれば、2階の窓枠の外にある手すりにも植木鉢が据えられていて、青空に映える色合いの花がこちらを向いていた。ぱたぱたと駆け寄って花壇と建物の境目を眺める蒼生に、ふたりも笑って近付く。
「全部に花壇があるんだね」
「うん。西端地方の建物の特徴だ。一部の町で流行したんだけど、戦乱から復興する際に、街を明るくしようということで取り入れられたらしい」
「へーえ。たしかに気分が明るくなるもんな!」
「ね。どれも綺麗に咲いてる」
目の前に咲くのは赤い花だ。奥には黄色い花。波のように模様を描く花を目で追っていくと、隣の建物にある看板が見えた。そこには、貸出衣装館という文字。
「健ちゃん、冬矢、あれ」
「ん? おっ、蒼生が言ってたやつか! わー、見たい見たい! 蒼生の生着替え!」
「……見たいのは過程なの、とか、いつも見てるじゃん、とか言いたいことはあるけど、僕も着たいし見たい!」
「過程も見たいしいつでも見ていたいに決まってんじゃん! どんなのがあるんだろうなぁ」
建物の前にはサンプルと思しき写真が飾ってあるようだ。健太は元気よくそこに向かって行く。その背を見送りながら思わずにこにこしていると、冬矢がぽんと肩を叩いた。
「俺も見たいな、生着替え」
「と、冬矢まで……。いいよ、僕もふたりのことじっと見ちゃうから」
冬矢の軽口に口を尖らせる蒼生だが、嫌がっているわけでは当然ない。差し出される手に引かれ、また嬉しくなって笑みがこぼれてしまう。
「ここの衣装、着たままテーマパーク中で遊べるって書いてあったね」
「ああ。祭祀に使うような重たい衣装だと大変だろうな」
「そういうのもあるのかな。……あったら、健ちゃんが好きそうだよね。それにしてくれって頼み込まれたら、僕、負けちゃうかも。冬矢、僕たちも早く行こう」
「あはは、そうだね」
店の中に入ると、クーラーがよく効いていた。涼しい空気に、蒼生はふうっと息を吐く。いくらここが高原で、普段生活する街に比べて幾分か涼しいとはいえ、夏の日差しは容赦がない。風は爽やかだったものの、暑さは尋常ではなかった。外観が歴史的な造りであるため、エアコン事情まで再現していたらどうしようかとこっそり思っていたのでほっとする。
見渡せば、店の雰囲気は現代そのもので、よく見るアパレルショップとそう変わらなかった。違うのは、ずらりとハンガーにかけられた衣装が見慣れないものばかりだということだ。目の前にある衣装は、生地が厚く、丈が長いものが多いような気がする。
「蒼生、蒼生」
店の奥から、先に店舗に入っていた健太の声。そちらを覗くと、健太は豪華な衣装の前に立っていた。姿勢よく佇む顔のないマネキンは、薄く白い布を何重にも纏い、細かい刺しゅうの入った裾を長く引きずり、何本もの紐を胸元の飾りから垂らし、大きな宝石の付いた金属のアクセサリーをいくつも付けている。
「見て、これ。教科書で見たことある気がする!」
ふたりの想像通り、健太は祭祀用の衣装に惹かれたらしい。たしかに、純白に輝くようなその衣装は、真っ先に目を引くように飾られていた。蒼生と冬矢の記憶の中にも、この装束を纏った神官が描かれている絵画がある。
「ねえ蒼生、これ着てよ。絶対似合うって」
「えー……」
触り心地のよさそうな光沢のある生地で、しかも歴史の教科書に載っているほどの重厚な衣装。蒼生の好奇心がくすぐられないはずはない。けれど少し悩んだ蒼生は、足元にあるプレートに目を留めた。
「いいなとは思うけど、着るのにすごく時間がかかるって。それに、外には着ていけないみたいだよ」
「うわー。そっかぁ……。着てけないか。たしかに、外じゃ引きずっちゃうもんな」
「教科書に載っていたのを覚えていたことについては褒めてもいいけどな。蒼生に似合うとも思うし。ただ、今回は一緒に遊ぶことが前提だからな」
「それは大事だ」
うんうん、と健太が頷く。
蒼生はふと、祭祀衣装の奥に目をやった。そこにはやはり祭祀に使われる白い装束が飾られている。儀式のメイン役が纏う衣装ではないようだが、布をたっぷり使った白い衣装は、凛として美しい。総じて色は白が多いが、役割によって様々な種類があるようだ。
「今回は遊ぶの重視だけど……。もうちょっと涼しい時に、全員で着てみたいな。ほら、おんなじ白いのでも、いろんな種類がある。違うの着て、健ちゃんと冬矢と世界観合わせてみたい!」
「あ、それいいな!」
「ふふ。次の目標が出来たじゃないか」
ふたりの同意が得られて嬉しくなった蒼生は、勝手に頬が緩んでいくのを感じた。それが照れくさくて、ふいっと視線をそらす。けれど頭の中は、ふたりの装束姿でいっぱいだ。健太が気に入ったふんわりした衣装より、後ろにあるきりっとした衣装のほうがふたりには絶対に似合う。実際に目にする瞬間が、今から楽しみでならなかった。
そこから3人は、外に出るのによさそうな衣装をそれぞれ選ぶことにした。健太が蒼生に布のボリュームがたっぷりでリボンの多い可愛らしい民族衣装を着せたがったり、蒼生がふたりに王族用の荘厳な衣装を着てもらいたがったりしたが、判断基準は「暑さに負けないこと」だ。吟味した結果、よく夏に着られていたという簡易的な服にした。半袖の上着にズボンという構成は同じだが、健太の上着には明るい色で花柄の刺しゅうが施されており、冬矢の服には短いマントが付いていた。そして蒼生の上着はふたりのものよりも裾が長く、ウエストに柔らかな帯状の布が結ばれている。これは健太のリクエストなのだが、どうしても蒼生をふわふわさせたいらしい。その色は冬矢の勧めで明るい空色だ。ふたりの好みの服に、蒼生は嬉しそうに鏡の前で何度もポーズをとった。
「昔の服だけど、結構着心地いいね」
ひらりと帯を靡かせる姿を、健太と冬矢は眩しそうに眺める。
「そうだね。見た目より柔らかくて動きやすい」
「な、蒼生、ここの中じゃ写真撮れないから、それ、外でもやって!」
「ふふ。みんなで写真撮り合おうね!」
普段と違う服装は、それだけでテンションが上がる。目立つのが苦手な蒼生だが、外に出て見てみれば、他の客も施設のスタッフも似たような格好をしていた。むしろ他の客のほうがドレスやら軍服やらを着ていてよほど目を引く。それはひどく安心する要素だ。なにより、健太と冬矢とお揃いのように見えるのが嬉しかった。ちらちら届く視線も、仲良く見えているのだろうくらいに思えば邪魔にもならない。
石畳の脇にある階段を軽く駆けあがる楽し気な蒼生の姿に、健太はでれっと表情を崩す。
「蒼生ってさー、いつもの格好もすごくかっこいいんだけど、異世界感のある衣装似合うよね」
「そうかな? 健ちゃんのほうが、RPGの主人公みたいでかっこいいよ」
「え? ほんとー? 世界救っちゃう~?」
蒼生と健太ははしゃぎ合いながら、土産物屋の間を貫く石畳の道を足早に進んでいく。小さな頃に戻ったような幼馴染みふたりの姿に、冬矢も目を細めた。
「それは楽しそうだが、何から世界を救うんだ?」
あ、と呟いて健太は足を止め、腕を組む。
「そっか。そうだな。何からだろ……。だけど、なんか街並みがそんな雰囲気だから、ついそういう気になっちゃうんだよな」
「確かに、この国……というかこの時代は、ゲームの舞台設定ではよく参考にされているからね。雰囲気で見覚えがある気がしないか?」
「へーえ。なんか、そう言われると興味湧いてくるな」
そういえばあのゲームでは、このシリーズで、などとふたりが話し始めるのを蒼生はほんわりとした気持ちで見つめる。健太が興味深そうに冬矢の話を聞いているのも嬉しいし、冬矢が健太の興味を引くような話題を出したことも嬉しい。ふたりが仲良くしている姿は、とても心が安まる光景だ。
すうっと胸いっぱいに空気を吸い込んだ蒼生は、じっくり周囲を見渡す。ふたりが今口にしている単語は新作ゲームのものらしくよくわからないが、異世界に迷い込んだような感覚は楽しかった。見渡す家の雰囲気も、窓の形も、道の端に置いてある木桶も、日常の中では見ることが出来ないものだ。ただ、咲く花にだけは見覚えがある。名前は知らないが、街中の鉢植えでも見たことがある花だ。それを目で追っていくと、施設の案内図が大きく描かれた看板が目に入った。入り口の脇にもあったが、中に入るのが楽しみであまり詳しく見ていなかった。看板の足元には可愛らしい男女の人形が置かれていて、それを見上げるように眺めている。現在地は下のほうにある赤い印だ。今まで通ってきた土産物屋は商店街という表記でまとめられている。どうやらこの先に広い花畑があり、それを左にぐるりと大きく巡るようにして様々な建物や施設があるらしい。
「王宮を模した美術館は上のほうにあるみたいだね」
「レストランもあっちこっちにあるんだな」
いつの間にか隣に並んだふたりが、蒼生と同じように看板を見上げている。蒼生はふふっと笑って「そうだね」と答えた。
すると、健太が目を輝かせ、地図の右の方を指し示す。
「なあ蒼生、馬車だって」
「え?」
蒼生と冬矢が健太の指の先を目で辿ると、建物の描かれた道とは花畑を挟んで反対側に、馬車専用道路と書かれた線があるのが見えた。
「ふうん。施設の一番奥まで行けるのか」
「行ってみよう!」
ぱっと蒼生の手を握った健太が、ずんずんと右に向かって歩き出す。体勢を崩しかけた蒼生だが、健太がハイになっているのだと思うと嬉しい。冬矢はそれを見て肩をすくめると、ふたりの後を追った。
見上げるほどの立派な石造りの建物は、復元された役所らしい。それを右に回り込むと広場に出る。真っ先に目に飛び込んできたのは、二頭立ての馬車だ。
「わ! 本物だ!」
「本物だぁ」
「ふ、ふふ、蒼生、感想が健太に引っ張られてるの、可愛いね。ほら、見てごらん。奥にも違う種類の馬車がある」
「奥? あ、ちっちゃいのがいる」
手前にあるのは大きな幌馬車だ。暑さ対策のためなのか、両側の幌が巻き上げられていて、数組の家族が乗り込んでいるのが見える。奥にあるのは小さな箱型の客車が付いているもので、窓は少し小さめだ。広場に沿ってはバスの待合所のような小さな建物がいくつか建っており、一番こちら側が少し大きく作られている。どうやらそこが受付になっているらしい。建物に入ると、カウンターの内側にいた係員の男性がにこりと笑った。
「こんにちは! 乗っていきませんか!」
カウンターの上を見ると、外にある2種類の馬車が写真入りで紹介されていた。蒼生が覗き込んで写真を見比べる。
「この2つの馬車って、歴史的に違うんですか?」
「はい! こちら、幌馬車のほうが古くから都市間で使われていました。鉄道の発展で少なくなりましたが、田舎のほうでは近年まで主な交通手段だったんですよ。もうひとつのほうが新しくて、小回りが利いて気密性も高いので、雪道でも活躍した馬車です。そうですね、幌馬車がバスで、こっちがタクシーといったイメージですね」
「へえ……」
たしかに料金表でも、幌馬車は1名分、箱型の馬車は1グループ分の値段となっている。馬車と言われて思い浮かべるイメージの強い幌馬車と、シックで装飾が美しい箱型馬車。蒼生は腕を組んで悩み込む。
「どっちもいいなあ。ふたりはどっちがいいと思う?」
「俺は3人だけで乗りたいな」
「そうだな、オレもこっちのおしゃれな馬車で写真撮りたい!」
「そっか、3人だけで写真、かあ。うん、僕もそっちがいい!」
「じゃ、そうしよ」
3人は顔を合わせて頷く。係員は、にこにこと3枚の切符を差し出した。
レストランから出た健太は、両腕を高々と思い切り伸ばす。
「美味しかったー!」
あまりの元気の良さに、近くにいた2人組の女性が通り過ぎながらくすくす笑っていた。それをまったく気にしていない様子の健太に、蒼生は照れたように笑いながらも嬉しそうだ。
「健ちゃん、いっぱい食べたねえ」
「いやー、ちょっとスパイシーなのが食欲をそそっちゃってさー」
「うん、たしかに。止まらなくなるよね。僕はキノコのスープが気に入ったなあ。すごくこりこりしてて、ふわっていい香りがして」
「俺も蒼生と一緒だな。初めて食べたけれど、なかなか面白かった」
「あれ、ごはん入れたらめっちゃ美味そうじゃない?」
「わかる!」
「あの見知らぬフルーツも、面白かったし美味しかったな」
「お店の人に聞いたら、ジャムがあると言っていたよ。買って帰ろうか」
「賛成~」
選んだレストランは家庭料理の店だったので、メニュー自体に想像もつかないような名前はほとんど見当たらなかった。だが、具材や調味料が違うせいか、まったく違った味わいがある。蒼生にはそれが不思議で楽しくて、嬉しかった。3人だけで遠くに来た感じがするからだ。すると、どこまでも行けるような気持ちになってくる。
先程の馬車でもそうだ。違う国の服を着て、違う国の乗り物に乗るのはとても心が躍った。お互いにポーズを付けて写真を撮り合うことも、窓の外に広がる花畑に見惚れることも、御者が話す花畑の向こうに見える建物の説明を聞いて3人で相槌を打つことも、なにもかもが愉快でならなかった。自分たちのことを誰も知らない国を旅している気分だ。もしかすると、蒼生はふたりに対して自分で思っているより強く独占欲を抱いているのかもしれない。
「あ、冬矢の行きたがってた展示、こっちだって」
ふと思考が暗がりに落ちかけた途端、健太が明るい声を上げた。健太が指さしているのは、運輸所と書かれた煉瓦の建物の前にある掲示板だ。運輸所とは、聞き慣れた言葉で言い換えれば郵便局のことらしい。イベントの告知チラシが数多く貼られた中に、美術館の方向を知らせる張り紙と、そこで行われている企画展のお知らせがあった。
「すげえな、王宮の建物が美術館なんだろ」
「ああ。王宮が宝物庫を国民に公開しているイメージなんだそうだ」
わくわくした声の冬矢が、運輸所の角を曲がる。そこには白く磨かれた石で作られた大きな建物があった。円い柱が球状の屋根を支え、奥に向けていくつも連なっている。それがさらに向こうの横に長い建物に繋がっていた。四隅には尖塔が建ち、先端で黄色い旗がはためいているのが見える。手前には腰の高さほどに小さな煉瓦が積み上げられていて家のようになっており、中には、目の前の壁を見上げるような格好で人形が立っていた。
「すごい、何もかもスケールが大きい」
「これでも縮小版なんだよ。ほら、そこ。小さくなった警備員の詰め所があるだろ。本来の縮尺だと、この人形が俺たちくらいの大きさなんだ」
「え、本物ってめちゃくちゃデカいんだな」
「中も早く見てみたい!」
「うん、行こう」
屋根のある通路を進んだ先にはやはり見上げるほど大きな木製の扉があったが、開いたままになっていて、実際のドアはガラスの自動ドアだ。中に入ると、ふうっと涼しい風が纏った熱い空気を押し流していく。
「俺はここをじっくり見て回りたいと思うわけだが……ふたりはどうする?」
蒼生と健太はそれを聞いて顔を見合わせる。が、気持ちはひとつだ。
「冬矢と一緒に回りたい。冬矢の解説込みで」
「なんか面白そうだし、オレも聞くー」
「……よし、言ったな。覚悟はできているね?」
きらりと輝く冬矢の目に、ふたりは面白そうに頷いた。
そして冬矢の解説が始まった。蒼生はぱちくりと目を瞬かせる。蒼生もある程度は歴史に詳しいつもりでいたが、冬矢はさらに輪をかけて知識がある。もともとは好きな家電ブランドの発祥の地というだけだったはずだ。だが地理や特産物についても聞けばすぐに回答が来るのだ。
健太が廊下の途中に飾ってある立体的な絵画の前で足を止めれば、
「なんだこれ。こっちから見るのとそっちから見るので人の顔が違う。別の人じゃん」
「これは布を織る段階から計算して作られたアートだ。モチーフは古い伝承に登場する人物で、当時の人々の信仰対象だったらしい」
「ほぼ白だけなのに?」
「よく見れば青みがかっていたり赤っぽくなっていたりするだろう」
「はー、こまかっ」
蒼生がガラスケースの中に収められた人形を見つければ、
「すごい、この人形、本物の人みたい。目がきらきらしていて綺麗だね。でもヒビが入ってる?」
「わざとこういうふうにしてあるんだそうだよ。光が反射する効果を狙っているんだって。この国では、精巧な作りの人形がとても流行した時期があるんだ」
「そうなんだね。あ、だからあっちこっちに人形が置いてあったんだ」
「うん。俺が愛用している家電の会社も、もともとは人形も作るおもちゃ屋だったんだよ」
「えっ、そうなの?」
感心すると同時に、蒼生は温かい気持ちで満たされる。ここまでテンションの高い冬矢はなかなか見られない。上機嫌でなんにでもすらすら答える冬矢がよほど珍しかったのか、健太も普段気にしていなそうなことまで質問をしている。そのふたりの様子に気持ちが高ぶった蒼生は、冬矢の腕にぎゅっとしがみついた。
「なにか見つけた?」
振り向いて微笑む冬矢の眼差しは、どこまでも優しい。嬉しさと愛しさが溢れて零れ落ちてしまいそうだ。
「えっと。嬉しそうな冬矢を見つけた、かも。夢中になって話してくれるの、すっごく楽しくて。冬矢がこんなにもこの国のこと好きだなんて知らなかった。昔から好きだったの?」
すると冬矢は、巻き付いた蒼生の腕を反対の手でそっと握った。
「最近だよ。蒼生のおかげ」
「えっ」
蒼生の驚いた表情に、冬矢は小さく声を上げて笑う。
「知っているだろ。俺は知識を入れることは好きだったけれど、それらに興味を持っているわけじゃなかったって。家電だって、使いやすい道具でしかなかったんだ。でも、それを使った結果、蒼生が喜んでくれることを知ったから、興味が湧いた。……不思議だね。蒼生が好きだとわかったことで、何かを好きになるという気持ちが理解できたのかもしれない」
好きになる気持ち、と蒼生は唇だけで呟く。それは外に向かっていく、開かれた心だ。知識の多い冬矢には、視野を広げる分だけ得るものも多いだろう。
しかし、ぽつんと黒い雫が心に波を立てる。
「……そしたら、いつか僕以外の誰かを好きになるかもしれないってこと?」
「ないよ」
冬矢はきっぱりと答える。そして口ごもる蒼生の頬を柔らかな指先でなぞった。
「ない。俺が好きになるものは、すべて蒼生を介しているんだ。蒼生と愛し合えているからこそ、ようやく俺はひとりの人間として立つことができているんだから。蒼生には、この先がどうなるかわからない不安があるのかもしれない。でも、俺は蒼生と出会ってから、蒼生が好きだって気持ちが揺らいだことは一度もないよ」
黙っていた健太が、すたすたと歩み寄ってきて、蒼生の肩に手を置く。健太は自信満々な笑顔だ。
「こいつが蒼生以外に? ないない、絶対ないでしょ。そんな日が来るより、世界が滅びるほうが先じゃね? もちろんオレだって蒼生のこと手放すつもりなんてひとっかけらもないし」
「……そうなの?」
「そうだよ」
健太と冬矢の声が揃う。
蒼生はぱちぱち、と瞬きの数を増やした。先のことがわからないという不安、は、蒼生の中にたしかに存在していた。常に心の片隅にあって、何かの拍子にすぐに表に出てきてしまう。けれど、ふたりが断言した言葉の強さに、反論する根拠が蒼生にはなかった。むしろ、自分の後ろ向きな思いよりも、毎日囁かれる愛のセリフのほうが、説得力がある。
ちら、と蒼生はふたりの顔を見た。
「僕の存在って、そんなに大事?」
おそるおそる聞いたのだが、これにもやはり食い気味の答えが返ってくる。
「当たり前じゃん!」
「ここにあるすべての文化財をかき集めても蒼生の価値には及ばないよ」
何の迷いもない声色が、すとんと胸に落ちる。ふたりの目が、曇りなくまっすぐだから、ストレートに届くのだ。蒼生は上手く紡げない言葉を飲み込み、ただ黙って頷いた。
冬矢はぐい、と蒼生の腕を引く。
「さあ、もうすぐ出口だ。一気に暑くなるから覚悟しよう」
「この建物の中、快適だったもんなあ」
顔を上げると、少し先には日差しの差し込む明るいドアが見えていた。少し気持ちが浮かんだ蒼生に気付いたのだろう、冬矢が改めて蒼生の顔を覗き込む。
「蒼生。心配事をすぐに口にしてくれてありがとう。おかげで、今日も蒼生に告白できた。ますます蒼生のことを大切にしようと思えたよ」
「っ……」
向こうでは、一歩先に進んでいた健太も笑っている。どこまでも優しい、ふたりの恋人。愛しくて大切なふたり。蒼生は大きく息を吸いながら口を開ける。
「健ちゃん、冬矢……っ。僕も、ふたりのことが、世界のなによりもずっと大切だよ!」
健太はぱっと顔を輝かせて、嬉しそうに頭を掻く。
冬矢は満足そうに息を吐いて、蒼生の腰を引き寄せた。
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コメント
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あまり長いコメントを考えずひとこと投稿だけでも大丈夫です。
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