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pictBLand
作品ID2600733
投稿日2026年06月10日 21:40
文字数24,769字

カナリヤ 9

えーい、さいかーい! オーターさんとワースくんのお食事編です。 いろいろ頑張るオーターさんです⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝ これ含めて4回くらいかけて2人の関係が進展するかな、って感じです 【2026.6.11追記】 非会員読めない設定にしちゃってたのでなおしました(><) あと、注意事項付け忘れました! アベル様のくだりは全部嘘です。 それでも気にしない方のみお進み下さい。 【2026.6.12追記】 種々ご反応頂きありがとうございます⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝! ピクブラってスタンプとか送れたんだ……!?わたくしめはびっくりしておりまする⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝!!!

イーストン魔法学校迷いカーバンクル事件は、魔法魔力管理局の預かりとなって解決をみた。それ以前に起きていた違法魔宝石摘発時に失踪していたカーバンクルの子供の額石であることが正式に認定され、子カーバンクルの身柄は魔法生物管理局に移送されたそうだ。現在保護施設で治療とリハビリを受けている子カーバンクルは、保護地域に放すか誰かの使い魔として里子に出すかはまだ議論中とのことだ。なんせ子カーバンクルには親がいない。厳しい自然の環境で生き延びられるか分からないのだ。ただでさえ人間は容易に入っていけない場所である。せっかく拾った命であるから、研究者の誰かのパートナーとなれれば、というのも理解できる。……一応、カルパッチョが熱烈に手を挙げているそうだが、どうなるかは分からない。言っては悪いがカルパッチョはカーバンクルとは相性はさほど良くはない。魔法適性から見ても火炎系の魔法使いの手元にいた方が、あのカーバンクルにとっては良いだろう。

「……っとまあ、これが顛末ってヤツだ」

ワースは再びイーストン魔法学校の禁書庫にリトルデビルと訪れていた。はっきりと約束した訳ではなかったが、5冊の禁書にカーバンクルがどうなったか、その経過を知らせるべきだと思っていたのだ。『深淵』はあからさまにホッとした様子で、他の禁書たちも安堵した様子だった。意外だったのは『黎明』で、少し嬉しそうにワースの報告に耳を傾けていた。カーバンクルを疎ましく思ってたのは事実であろうが、「他の魔導書を守るため」という話も本心であったのだろう。やはり、禁書にしてはだいぶ気の良いヤツらだ。教育機関所蔵の禁書はやっぱり違う。……禁書管理局の禁書たちは、少し彼らを見習った方がいいと思う。

「あの時は協力ありがとうな」

通訳を終えたリトルデビルの頭を撫でてやりながらワースは5冊の本に頭を下げる。禁書たちの証言がなければ迷いカーバンクルを捕獲出来なかった。ついでに言えば彼らとキチンとリトルデビルが「会話」出来ると判明したお陰でワースの研究はかなり進んだ。書籍たちは預かり知らぬところだろうが、ワース個人としても感謝は伝えておきたい。
元通り禁書たちを封印して貰い、禁書庫から出ると、禁書担当の司書からはひっそりと礼を言われた。2度も書庫破りを、しかも1度は成功されてしまったからにはもう配置換えか、最悪解雇まで覚悟していたらしい。あれだけ「おとなしい」禁書たちだから、管理者に対してもさほど強い好き嫌いはないだろう。次の禁書担当が現れる可能性はかなり高かったようだ。結局彼らの証言で職員に問題はなく、外敵を威嚇するための行動だと分かったからそのまま禁書担当として継続するという。禁書管理局としては、禁書たちがその気になれば破られてしまう程度の管理は瑕疵がないとは到底言い難いが、もちろんそれらをどう受け止めるかは図書館側の問題である。禁書の威嚇がなければ、飢餓状態の迷いカーバンクルが他の魔導書を齧った可能性は、間違いなくあったのだから。

「……いや、アレはリトルデビルの……」

禁書使いとして通訳させたのはワースだが、実際に魔導書とコミュニケーションを取ったのはワースの能力ではない。礼を受けるならリトルデビルが、と思ったが、ふと、レナトスの言葉を思い出した。

(リトルデビルも、俺の力だと見做す、んだったか……)

そういえばあの白魔導士連続誘拐事件の時は、リトルデビルがワースの命令でマッシュ・バーンデッド宛に位置情報を送ったことを「ガキのしたことだろう」と雑に庇った癖に。不死の神杖はなんだかんだと現場の判断を全て自分の責任として持とうとしていた。ただの「禁書管理局の新人」ではなく、きちんとした「禁書使い」となる気がワースにあるならば、魔導書が行った良いことも悪いことも、すべての責任を持たねばならないだろう。

(……重てェな)

ちらりと手を繋いだままのリトルデビルを見る。こちらを見上げたリトルデビルは、にこりと笑う。洞窟から魔導書を連れてきた時はそこまで深くは考えていなかった。今のところ、リトルデビルは「悪い」行いをした事はない。けれどそれは彼が何よりもワースの命令を優先しているからだ。……つまり、ワースが誤れば、間違いなく、そして躊躇いなく、リトルデビルは他人を傷付けるような振る舞いが出来る。良くも悪くも全てはワースに委ねられている。今まであまり意識してこなかった責任感は、確かに重いが、ワースはこの重みに慣れるべきだ。

「……ありがとうございます。もしまた何かありましたら禁書管理局までご連絡下さいね」

胸に手を当てて、定型のような挨拶を口にする。
ソフィナのように笑えていただろうか。自分の顔は、流石に分からなかった。
迷いカーバンクル事件がひと段落ついてから、ワースは正式にソフィナの弟子となった。ワースは知らなかったが、ソフィナの弟子になるということは、禁書管理局内では幹部候補のひとりと見做されると同意義であったらしい。新人の権限では決して入れないような場所へ連れて行ってもらえるし、非常に勉強になる。お陰様で春の研究発表会に向けて随分と研究が進んだ。一方で、……なんというか、やっかみが凄い。なるほどこれは、ソフィナがすぐに弟子にしなかった訳である。
独力での「赤い石」の正体を見破り、図書館一般書庫と開架を守りつつ迷いカーバンクルの捕獲に成功した功績を以て、ワースの籍は禁書管理局局長補佐見習いとなった。ソフィナには「ちょっと早過ぎる気もしましたけどね、」と笑われもしたが。彼女の予定では、ワースが論文を発表した後のつもりだったらしい。けれど今回の一件でリトルデビルの価値が上がった。カルパッチョの言では音魔法ではないかとのことだったが、カーバンクルのような魔法生物とも会話が出来る可能性がある。禁書と意思疎通できるだけでも画期的であったが、その範囲がさらに広がるとなると、かなり「使い勝手の良い禁書」と認識されることになる。ただの新人局員の地位にして置けなかった、というのがソフィナの見解だ。禁書ごとワースをソフィナ直属の籍に置けば、任される仕事の範囲が広がる。結局のところ所有者がいる禁書は術者しか扱えないとは言え、ワースを亡き者にしてリトルデビルの所有権を狙う人間がいないとも限らない。後ろ盾をはっきりさせておくのは身を守る術でもある、とのことだ。実際、ワースは先輩にそこそこ嫌味を言われるようになった。「禁書が凄いだけじゃん、」と。無論、先輩たちからしたらホリデー休暇明けに突然禁書使いになった後輩なんてそりゃあそうだ。目障りだろう。ワースとしては本当に羨ましいと思うなら幼少の頃から「悪魔」の声でも聞き続けてみろ、と言ってやりたいが、……理解はされないだろう。嫉妬とはそういうものだ。大抵そういうことを言って来るのは魔法局近くにタウンハウスを持つ中央貴族の関係者だから、こちらも「アンタら差し置いて強い禁書に選ばれちゃってサーセン」くらいで取り合わないようにしている。向こうだって禁書管理局に勤めている以上、術者を殺害しても禁書が手に入る訳ではないことなど百も承知だろう。むしろ大抵の禁書は術者の死で暴走する可能性の方が高い。リトルデビルは人間社会というものをかなり良く理解しているから、事によると復讐くらいはするかもしれない。

「リトルデビル」
「んぅ?」

ぽてぽてと歩くその脇に手を差し入れ、抱き上げると歓声が上がった。その背中をポンポンと撫でてやると、リトルデビル自身もワースの首に細い腕を回す。
独身寮は、ワースの後見に立ってくれているウォーカー家のような、中央貴族にあまりコネを持たない地方貴族出身者や平民がメインだ。だからどちらかと言えば中央貴族よりも頭角を顕したワースが誇らしいらしく、なんくれとリトルデビルともども構われる。……物凄く、贅沢な悩みと言われるとその通りなのだが、実のところそういう扱いも、結構ウザかったりする。ワースは元々魔法局近くにタウンハウスを持つような中央貴族にもコネを持つ地方貴族の次男である。ぶっちゃけ、独身寮に入っているような人間よりも、やっかみを向けて来るような先輩相手の方が親近感が湧く。……ムカつくよなァ、俺みたいなヤツのこと。
「同じような立場」とみなした程度で親しげに振る舞われるの、結構嫌なんだよな、とお日様の匂いがするリトルデビルの頭に顎を乗せながら思った。変に期待や自己投影されても、ワースはそれに応える気はないし、応えられるとも思っていない。彼らの意味が分からない期待が裏切られる前に独身寮を出たいのだが、新人はただでさえ蔵書整理の手が遅いからタウンハウスでなければ独身寮で生活するのが通例であるし、ワースも魔法局近くに部屋を借りられるほどの給料を貰っていない。……こういう煩わしさを思う時、マドル家は本当に恵まれた環境であったと実感する。両親が使っているタウンハウスの他にもいくつか物件を所有していたはずだ。もしも勘当されていなければ、ワースは当然そのうちのどこかで一人暮らしをしていただろう。

「はぁ……」

研究も仕事も、客観的に見て順風満帆である。だから「独身寮を出たい」というのはワースのわがままに過ぎない。新人なんて下積みだから、と自分を納得させながら、リトルデビルの頭を撫で続けた。



***



ところで、ワースには悩みがあった。

仕事や職場の立ち位置に関する悩みからすれば取るに足らない些細な悩みかもしれない。しかしワースにとっては非常に重要な悩みであった。

「……はぁ」

結局行けていないのだ、二人で食事に。あんなに勇気を出して誘ったというのに!
まあでも、正直に言ってこれは別に誰が悪いということはないのだ。ワースもワースでソフィナ直属へ配置換えとなり忙しくなったし、弟子として稽古を付けて貰うことが増えた。オーターはオーターで、言わずもがな昼夜を問わず忙しい役職である。二人の予定の間を縫うようにして約束を取り付けても、これがもう、面白いくらいに予定通り行かない。主に、オーター宛に緊急の支援要請が飛んでくるからだ。会うのが流れても夜になって独身寮を訪ねて来てくれたり相変わらず一緒に過ごす昼食時に詫びの品を持ってきてくれたりするのでワースとしては返って申し訳ない。

(……まぁでも、「二人で行く」にこだわらなければ別に……)

実のところ、先日ソフィナとワースとオーターで夕食を共にしている。その日はソフィナの指導が少し伸びてしまって、「じゃあ夕食一緒に取りますか。二人だとアレなので、オーターでも呼びましょう」と言われたのだ。その時には既に1回食事の約束が流れていたのでオーターは無理なんじゃ、と思ったが、なんともタイミング良く「今夜ならなんとかします」との返事であった。ソフィナと食べ始めて1時間経ったか経たないかくらいでオーターが現れたのを見た時は、「こういう感じなら来れるんだ、」と言うことだった。数人で待ち合わせる、の柔軟性をワースは初めて知ったような気持ちになった。1時間もあれば一人ならワースは食事を終えているだろうし、オーターも待たれていると思いながら仕事をするのは嫌だろう。同じ神覚者のソフィナと穏やかに談笑しているオーターはなんだか新鮮であった。その顔を見れたのは、よかったと思う。ただやはりワースとは忙しさも退勤時間も全然違うから合わせようというのは少し無謀だったかも知れない。

(……まぁ、休みの日に一緒にメシ行くくらい仲良くなるのを目標にするってことで……)

はぁ、とワースは肩を落とした。完全に前途は多難である。ただでもオーターだって遊園地に来れていたくらいなのだから、休みの日もちゃんとあるはずなのだ。……そこをワースの為に割いてくれるかどうかは知らないが。

「ん?」

ワースの端末が震えてメッセージの着信を知らせる。噂をすれば、オーターからである。ワースは怪訝そうに液晶を睨みながら新着ボタンをタップした。

「……ん?」

オーターのメッセージはいつだって簡潔で明確だ。一読で、意味が取れないのは珍しい。
ワースは一応目を擦って自分の読み間違えではないことを確認して、今度は驚きの声をあげた。背後からひょっこりとその文面を除いたリトルデビルが首を傾げる。ワースは思わず、画面をリトルデビル側に傾けた。だいぶ学習が進んでいるので、この程度の文面なら意味がとれるはずだ。

「ううーんと……」
「今度、オーターが一緒に飯行こうって」

しかも、きっちり日時指定されている。3週間後の週末の夜だ。ワースのような新人局員は休日前の予定は立てやすいが、オーターほど忙しい人間がそんな簡単に時間が空くのだろうか。……いやこれは、「空けた」やつだろうか。一応予定を尋ねるメッセージではあるものの、そんな先の予定は当然空いている。妙にキラキラとした瞳でこちらを見たリトルデビルが、両手を挙げて飛び上がった。

「デートだ!」
「で!?デートじゃねェよ!」
「……デートじゃないの?」
「た…………たぶん……?」

勢いで言い返して、ワースは急に不安になった。デートの定義ってなんだ、ちょっと辞書引いても良いか。……いや違うそうじゃない。胸に手を当てて、すーはーすーはー、と大きく息を吸った。落ち着け自分。こんなところで狼狽してはリトルデビルの教育に悪い。

「こーゆーのは「食事会」とかって言うんだよ」
「でも、二人で会うんでしょう?」
「ふ、二人じゃねェかも知れねェじゃん……」

ど、どうなんだろう。ワースは他の人を誘うつもりはないから当たり前にオーターだけ来ると思っているが。ワースを見上げたリトルデビルが、困った様子で頬を軽く掻く。

「ぼく、このひ、おへやでまってるよ」
「はぁ!?」

なんだその、「良いこと言っちゃった」みたいな顔は。

「ちょ、ちょっと待てさすがに連れてくぞお前は」
「え、いやだ」
「いやだ!?」
「じゃましたくないし……」
「邪魔とかじゃねェから!……っそうだ、法令上禁書をそのまま放り出して外出とか出来ねェから俺」

禁書を所有する上で最も重要なのは、それを悪用されないことだ。禁書庫に入れるのは、禁書が暴れ出した際の対策であると同時に他者から禁書を守る為の盾の意味もある。個人であれ学校等の団体であれ所有者には責任が伴う。常に人間の形を取らせているからあまり意識の俎上に上がらないが、魔法管理局の独身寮とはいえ特に何の警備もない状況で禁書を部屋に置きっぱなしなどあり得ない。というか、オーターと完全な2人きりとか今からワースがどうしたらいいのか分からない。頼むから一緒に居て欲しい。
リトルデビルは少し考える素振りを見せた。そして何かを思いついたようにひとつ頷いて、にっこりとワースを見上げた。……もう既に嫌な予感がしている。

「えい」

気が抜ける掛け声と共に、リトルデビルの輪郭がブレる。あっと思う間もなく泥の身体は消えてなくなり、現れたのは魔導書だ。こてん、とそのまま床に横たわった。こ、こいつ……!

「ちょっと待てリトルデビル、人間の姿に戻れ!出来るだろ!」

腕の中の魔導書からは、さっき口にしたのと同様の「いやだ」の返事が返る。……嫌とかじゃないんだこっちは。何かあったらリトルデビルに話を振れば気詰まりにもならないかな、という甘えの元、オーターを誘っているのである。本気で2人きりとかどうしたら良い。肩を揺さぶる要領で魔導書を振ってみても、返事は変わらない。むしろ人間の形を取っていない分、魔導書が善意100%で言っていることが伝わってくる。

「なぁ本当に!マジで!頼むって!」

言い募っても魔導書の返事は変わらない。魔導書は、人間とは考え方が異なるとは言え、所有者を愛しているのではなかったのか。苦し紛れに浮かんだ疑問に、魔導書はあっさりと「大好きだけど?」と返してくる。まるで朝になると太陽が昇ってくるでしょう?と言いたげな、若干の呆れ混じりの返答だ。それからはもう、ワースがどれだけ宥めてもすかしても魔導書は人間の形を取ろうとはしない。なんならワースが泥人形で代用しようとすると平然と魔法を妨害してくる。そんなこと出来たのか。所有者でさえ初めて知る魔法なんだけどそれ……。若干茫然自失としながらも、無情な時計は止まることはない。諦めたワースが「わーった、わーったから!」と叫べば、勝利のダンスとばかりに魔導書が空中でくるくると回る。その様子を見て、ワースはがっくりと肩を落として、数週間後のその日の予約は2人にして欲しい、とメッセージを打った。

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