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最終更新日:2019年10月17日 22:07

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  • 2018年06月26日 17:07
    踊るショタぐだくん
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     ふと、違和感に目が覚めた。
     まだ日が出た直後、薄明かりの早朝。いつも腹の上に乗って眠っている立香がいない。
     瞬時に沸騰した髪が逆立ちそうなほどの衝動は、目を開けて即座に凪いだ。

     踊っている。のだろうか。
     寝台から降りてすぐそこ、寝巻きは脱げたのか脱いだのか、おむつ一丁で、立香はこちらへ背中を向けたまま奇妙な動きを繰り返している。
     伸ばした手をうにょうにょ、中腰で突き出したおしりをふりふり。唐突に万歳、そして静止。ぱちぱちと拍手。
     多少のアレンジを加えながら何度も繰り返される不可解すぎる情景に、さすがのギルガメッシュ王も無言である。どういう顔で見ていればいいのだろう。笑えばいいのか。ふうふう息を上げて必死になっているのに。そう必死に。真剣に。謎の踊りを。
     んふっ、堪えきれない笑いが漏れた。
     何度目かのうにょうにょを始めていた立香が振り返る。汗はそこまでかいていないが、頬が赤い。はふ、はふ、息継ぎをしながら、王の赤い瞳が開いているのに気付いてぱあと笑顔を浮かべた。
    「たーたんおきたー!」
    「うむ……立香よ、こんな時間に何をしておったのだ」
     立香用の踏み台を使って寝台によじ登るのを横たわったまま眺めていると、更に息を乱しながらもなんとか重たいおしりも寝台に乗せて、腹這いで戻ってくる。
     ズン、ズン、ズムン。勢いよく王の胸に顔を埋めた立香の熱い呼気がくすぐったい。
    「たーたん、いちゅかねー、いぱいねー、がんばたの」
    「何やら踊っておったか。これ、寝る前に少し水分を摂っておけ」
    「ねんねないでしょ!おはようちたえしょ!」
    「わかったわかった」
     触れた足先まですっかりと温もってしまっている。本当に、一体何がどうしてこんな早朝に謎の儀式をしていたのか。幼子の脳内はさっぱりわからないが、
    「だっこちーて」
     額を擦り付けて甘えられるのは心地良い。最近とかく自分で自分でと言うので、王はそれはもう寂しい思いをさせられているのだ。
     立香を腕に抱いたまま身を起こし、枕元の水差しから少しの果実水を注いで、真っ赤になった唇へ水分を含ませる。もっと、とねだる腕に甘んじてもう一杯。あまり飲ませても大洪水になるが、あれだけ全身運動をしていたのだからまぁいいだろう。
     空になったグラスは魔術で水差しの隣へ戻し、再び横たわれば、腹の上の立香から何やらむにゃむにゃと抗議するような声がしたものの、結局そのまま眠ってしまった。
     次目覚める時には、至高の玉体がよだれの海に溺れていることだろう。
     幼子にしては強く跳ね放題の黒髪を撫でながら、王はゆるりと微笑んだ。

     しかし一体あれは何だったのか。
     しっかりと目の覚めた立香に訊ねても、くりりと首を傾げるばかり。もう一度やってみせよと言えばわかんないもんと拗ねられてしまう。
     全てを見た人とすら呼ばれるギルガメッシュ王は、永遠に解けない謎を抱えることになるのであった。

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  • 2018年06月06日 22:00
    【FGO】ショタぐだくんのお留守番の話
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     王の遣いから玉座の間へ戻る途中、シドゥリはふと足を止めた。
     立香は今どうしているだろうか。
     本日は民に開かれた陳情の日。この日はギルガメッシュ王が朝から夕まで玉座の間に缶詰となり、小さなものから大きなものまで、民の持ち込む問題に耳を傾ける。
     普段執務室ならば、続きの間で遊んだり眠ったりしている立香の様子をちょくちょく確認できるし、差し迫った業務がなければ王が膝に乗せて仕事をしていることもある。続きの間と執務室を繋ぐ扉は常に開かれていて、そこからじいっと王の仕事ぶりを見て時折拍手をしたり万歳をしたりする姿は本当に愛らしい。王は勿論のこと、シドゥリたち側近にとってもこの上ない癒しとなっている。
     だが、この陳情の日ばかりはそうも言っていられない。わずかに昼食のための休憩時間に触れ合う以外は、立香は奥の間で留守番だ。
     大概このような時には白髪の魔術師が立香の側にいるのだが、今朝は気配すら感じなかった。王と入れ替わりに顔を出しているかもしれないが、もし今も一人だったら?
     昼食の時間まではまだまだかかる。
     少し、様子を見て。場合によってはおむつを替えてやるくらいの時間なら、寄り道しても問題ないだろう。
     実は最近ようやくシドゥリが湯上りに体を拭いたりおむつや着替えをさせたりを受け入れてくれるようになったので、隙あらばできるだけ構いたいのだ。王にはまたじっとりと睨まれるかもしれないが、悪いことをするわけではない。堂々と抜け駆けを誇ればいい。
     つい弾んでしまう足取りを意識して落ち着かせながら、回廊を逸れて奥の間へ向かった。

     奥の間の扉に近づくと、きゃあと明るい立香の笑い声が聞こえた。
    「えれたん、みてー」
    「あぁっ、待って立香!危ないのだわ!」
    「う?めー?」
    「そうよ、椅子の上で立つだなんて危ないわ。お願いだからゆっくり、そうっと座って。えぇ、いい子ね。それで何を見せたかったのかしら?」
    「あのねー、いちゅかのくっく、いちゅかはいたの」
    「まぁ!すごいわ立香!鏡の前に来て、見せてくれる?」
    「いいよー」
     立香と、女性の声がする。
     少し開けた扉から中を窺うと、部屋の中には立香一人だ。壁面に埋められた白銀の鏡の前にてこてこと歩み寄り、んっとお腹を反らせて気をつけの姿勢。見てほしい靴よりぽんぽこのお腹に目がいってしまう。華やいだ声もころころと笑った。
    「すごいのだわ。立香は自分でお靴が履けるのね」
    「うん、いちゅかくっくできるの。みたいー?」
    「見せてくれるの?嬉しいわ!」
     女性の声がする度、鏡面が波立つように見える。
     あの鏡は、確か立香が引き取られてきて間もなくの頃、王の手配で設置したものだ。王の所持品に相応しい美しい鏡面と贅を凝らした装飾を施されたそれは、決して室内に違和感を覚えさせるようなものではない。しかし元々この部屋が客間としてあった時分ならともかく、どうせ使わんと言い切る王が立香の遊び場として模様替えしてしまったものだから、なぜ鏡など置くのか不思議に思っていた。王は「そのうち立香に使わせる」と言って、シドゥリたちは身だしなみに夢中になるのはまだまだ先でしょうと談笑したものだったが。
     使うとは、こういうことだったのか。
     シドゥリに魔術の知識はないが、あのさざなみと声は明らかに連動している。誰かが、それも王の認める力ある者が、鏡を媒介に立香の子守をしてくれているのだ。
    「うー……はい、でちたー!」
    「すごいわ!上手に履けているのだわ!」
     パチパチと拍手して褒める声に、立香は得意げに立ち上がりまたお腹を反らせている。立香が満足してにひゃと笑うまで、優しい声と拍手がたっぷり贈られた。
     鏡の向こうにいる人物は随分と立香を可愛がってくれているらしい。疲れたのかラグにへちゃと座り込んだ立香を促してクッションに凭れさせると、鏡面の下部にゆらりと、絵のようなものが見えた。
     まずい。
     予感がして、咄嗟に目を逸らす。本当に一瞬、女性の影のようなものも見えた気がする。あのまま見ていたら、おそらく立香のためだけに繋げられた鏡の先の像を結んでしまっていただろう。根拠はないが、それはあまりよくないことに思えた。
    「えれたん?」
    「……いいえ、何でもないのだわ。賢明な者は嫌いではありません。さぁ、紙芝居を読みましょうね。今日のお話は、『勇者と女神の冥界大冒険』!」
    「あー、いちゅかとえれたん!」
    「うふふ。私が描いたの、似ているかしら」
    「じょうずー!たーたんは?」
    「えっ。あ、あぁ……そうね、きっと出てくるのだわ……多分……次回とかに!」
    「たーたんもいちゅかといっしょ、かいてー?」
    「うぅ……わかったのだわ。ちょっと待ってちょうだい。もう、こんなの立香だから許してあげるのよ?私の寛大さに感謝してほしいのだわっ」

     楽しげな声が届かないところまでそっと離れて、シドゥリは安堵の息を吐いた。
     断片的に聞こえたキーワード。女神、冥界、「えれたん」と呼ばれそうな名前。あのまま姿を見るなどしてしまっていたら、神への不敬を働いた罪でどのような事態になっていたことか。
     一体どうしてあそこまで女神と立香が親しくなっているのかはわからないが、女神の言通り、立香だから許されるほどの何かがあったのだろう。女神とはいえギルガメッシュ王の領域であの千里の眼と探知の力から隠れて魔術を行使することは難しいのだから、王がよしとしている接触ならばシドゥリが疑問を挟む謂れもない。
     何よりも、今朝、今日は忙しいのだとわかっているのだろう、寂しげに手を振っていた立香が、きゃらきゃらと楽しげに笑っていた。
    「どうか、我らの愛しき幼子をお護りくださいませ」
     密やかに額づいて囁く。彼の方にはきっと聞き届けていただけるだろう。

     さて、玉座で抜け駆けに苛立っているであろう王にも喜ばしいお土産話ができた。
     女神手製の物語にすら手を加えさせるほど王の登場を熱望していたなどと聞いたら、どれほどお喜びになることか。ふはははは!と大きく声を上げて得意げに笑い、そしておそらく……
    「幼子一人に言い包められおって!などと大笑しながらからかいに走るに決まっているでしょうね……」
     もしくは、次回に機を読んで乗り込み、ん?して偉大なる王と勇者の物語とはどれだ?語って聞かせよふはははは!とやらかすか。
     殊こういう点において、王は昔から大人気ないのだ。せっかく立香を大切にしてくれている女神の真心を慮り、シドゥリはこの愛らしいエピソードを当分は胸の内に収めておくことにした。

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