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最終更新日:2019年10月17日 22:07

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ネタメモとか、小話とか、ちょこちょこ格納。何でもありにするため念のため年齢制限。
  • 2019年05月14日 12:52
    ショタぐだくんのおるすばん
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     今日はギルガメッシュ王がお仕事で一緒にいられない日。
     お部屋でお留守番の立香くん、大好きな王様に抱きついてなかなか離れられません。
    「立香。お見送りのちゅうはどうした?」
    「あっていちゅかさみちもん。ちゅうちーたらたーたんいちゃうの、やらのっ」
    「ンんッ……まったく……」
     と困ったふりをしている王様、可愛らしいわがままにご満悦が隠しきれていませんよ。
     今までは涙を我慢してばいばいできていた立香くんですが、最近はちょびっとわがままさん。王様が嬉しそうにするので、ついつい甘えてしまうのです。
     しがみつく立香くんを抱っこしたまま、ゆらゆら揺らして、高い鼻でほっぺをすりすり、どうやら王様も立香くんと離れたくない様子。後ろで待っているシドゥリさんが困った顔をしていますが、無理やり立香くんを下ろすことはありません。
     今日は怖い夢を見て朝から泣いてしまったから、余計に頼もしい王様と離れてしまうのが不安なんだよね、立香くん。
     でも、さすが強い子です。自分から顔を上げて、王様のほっぺにちゅうできました!
    「たーたん、いーてらちゃい」
     泣いてしまいそうなのを一生懸命我慢して、小さなおててでばいばいもできました。扉が閉まった後、しばらく涙が止まらなかったけど、よくがんばったね。

     いっぱい泣いた後は水分補給です。
     あらら、豪華な絨毯がびちょびちょになっちゃったね。でも、涙を拭いて、鼻水も拭いて、起き上がれたのは偉いぞ。
     よちよち歩いて、立香くん用の小さな椅子にちゃんと座りました。テーブルにあったマイカップを持つと、立香くん、水差しの前にカップを差し出します。
    「おみじゅくだちゃい!」
     元気な声と共に、あら不思議!水差しが金色に光ってふんわりと浮き上がり、立香くんの持つカップへとくとくと果実水を注いでくれました。
     んく、んく、すごい勢いで飲み干した立香くんを見ているかのように、水差しがまたふわり、今度はさっきより少なめにカップを満たしてくれます。
    「おーちかたよ、あいまとぉ」
     立香くんがお礼を言ってぺこりとしたら、金色の光がさらさらと消えて、元通りの水差しに戻りました。
     とっても不思議なことですが、これは立香くんがお留守番の時に困らないよう、王様が準備をしてくれた魔術の一つ。立香くんがお願いをすると、色々な道具が助けてくれるのです。
    「えれたん、いそがち?」
     今度は部屋の隅の鏡に話しかける立香くん。少しすると鏡面がゆらゆら、渦の向こうに金色の羊が映りました。走り回る羊を怒った様子で追いかける女性が行ったり来たり。立香くんが見ていることには気付いていないようです。
    「いそがちいね……」
     しょんぼり。
     俯いたままとぼとぼ、お昼寝用のベッドに上がってしまいました。ぬいぐるみの王様をぎゅうっと抱っこして、毛布もかけてあげて。
     あんなに泣いたから、疲れちゃったのかな。すぐに眠ってしまった立香くんを、ぬいぐるみの王様が優しく見守ってくれています。今度は楽しい夢を見て、起きたら元気に遊ぼうね、立香くん。



     おや、立香くんが起きたようです。
     大きなおめめをぱちぱちさせると、ぬいぐるみの王様を抱っこしたまま、おもちゃ箱に駆け寄ります。何か探しているのかな?そんなにたくさんおもちゃを出したら、お片付けが大変だよ?
    「あべじゃ、こーなとこにいた!」
     見つけたのは、緑の帽子の男の人のお人形。立香くんと同じくらい大きくて、ちょっと顔が怖いけど、立香くんは嬉しそうにぎゅっとしています。そのままベッドに戻って、お人形を枕元に飾ってあげました。
    「こあいのないない、なーいない♪」
     どうやらこのお人形、怖い夢から立香くんを守ってくれるようです。ぬいぐるみの王様と、お人形さん、二人がついていたらもう安心。ご機嫌でお歌を歌う立香くん、にこにこで元気いっぱいです。
     さぁ、王様たちがお昼ごはんに戻ってくるまで、まだまだかかります。いい子にできるかな?

     まずはたくさん散らかしちゃったおもちゃのお片付け。シドゥリさんとのお約束、出したらしまう、ちゃんと守れているね。一つ一つ両手で持って、いいこいいこのお歌を歌いながらおもちゃ箱にしまっていきます。
     今日は積み木で遊ぶことにしました。色とりどり、形もいろいろな積み木のセットをテーブルに運びます。まだまだよちよち歩きの立香くん。転ばないでね、ゆっくりでいいからね!
    「たーたんはおいちゅにちゅわてくだちゃいー」
     一番のお気に入りのぬいぐるみの王様には専用の豪華な椅子があります。王様がお仕事をするときの椅子にそっくり。これは王様の知り合いの、紫の髪がきれいなお姉さんが作ってくれたものです。
    「みにくーちゃ、いちゅかだこちーてあげうね」
     怪獣さんかな?とげとげしっぽのまんまるぬいぐるみさんをだっこして、積み木遊びの始まりはじまり。まずは何色を使うのかな?



     しばらくぬいぐるみさんたちにお話しながら積み木で遊んでいた立香くん、やっぱりさみしくなっちゃったのか、テーブルにつっぷしてほっぺをふくらませています。
     王様たちが帰ってくるまで、あと一時間ほど。もうちょっとなんだけど、一人ぼっちで待つには長い時間です。いつもなら一緒にいてくれるマーリンお兄さんも、今日は忙しいみたい。
     むくっと起き上がった立香くんが、何やらきょろきょろとお部屋を見回して、
    「こたー」
     あっ、小太郎くんを呼んでいます。
     立香くん、忍者の小太郎くんは姿を消して立香くんを守るのがお仕事だから、あまり遊び相手をねだっちゃいけないって、王様に言われていたはず。
    「ねぇ、こたぁ~」
     でも、こんなに甘えんぼさんの声で呼ばれたら、
    「…………主殿。僕は隠密ですので、そう気軽にお呼びになっては」
    「こたぁ!」
     うーん、仕方ないよね。優しい小太郎くん、とうとう出てきてしまいました。
    「こたー、だこ!だーこちーてっ」
    「はい。いえ、だっこはしますけど、あのですね」
    「あのね、いちゅかね、いいととたんだえたの。こたといちょね、おはなちて、あしょんだらね、いちゅかなかないよ。いいたんだえでしょ?」
    「確かにいい考えです。でも主殿の御身を守るには」
    「ね?おねまいっ。いーちょにあそぼぉ」
    「くっ可愛い……なんて御方だ……」
     あらあら、小太郎くん、立香くんのかわいいお願いポーズに負けちゃいましたね。

    「では、何をして遊びましょうか」
    「んとねぇ、んとねぇ、じゃあねぇ」
     小太郎くんのだっこからとことこ歩き出すと、ぬいぐるみの王様を抱き上げて、ぐーんと高く掲げました。
    「たたかえ、うゆくのたみよ!うゆくはおれがまもゆ!ちどぅい、いちゅかをまかちぇたぞ!」
    「えっ。あ、えぇと、では僕は……が、ガオー!ウルクの民は全てチー鱈にして食べてやる、ここに怪獣王国を築いてやるぞ!」
     立香くんは王様ごっこをご所望の様子。あまり子どもの遊びに慣れていない小太郎くん、慌ててテーブルから怪獣さんぬいぐるみを取り上げ、立香くんの王様に向き合うように揺らします。どうかな?とそーっと立香くんを見ると、
    「う…………う、うぇえええええん!!!」
     えっ、どうして!?立香くん、大泣きです!
    「わ、ど、え!?主殿、なんで、怖すぎましたか?本当には食べないですよ?」
    「ちなう!みにくーちゃはわういこだないもん!そーなころ、ぜたい、ちないもん!」
    「あ、あぁー!ですね!それでは、ミニクーちゃん殿はギルガメッシュ王のサーヴァントで。はい、だっこしてあげてください」
    「んっ、ん、うぐ……あい」
     受け取ったミニクーちゃんをぎゅっとする立香くん。気のせいかな、まんまるおなかで涙と鼻水を拭われたぬいぐるみさんの顔が、ちょっと険しいような……。
    「では、その、不肖この小太郎、魔王役などさせていただいても?」
    「だめぇ!こたもいいこでしょぉ」
    「ご信頼いただきありがたく……一応悪属性なんですけどね……」
     立香くん、ごっこ遊びなのを忘れちゃったのでしょうか。大きなおめめをうるうるさせて小太郎くんを見上げています。
     うーん、困りました。
     しばらく考えていた小太郎くんですが、いいことを思いついたようです。
    「うっ!うぅ、苦しい……主殿、下がってください……!」
     突然胸を押さえて暴れだす小太郎くん。立香くんはびくっと怯えて両手のぬいぐるみさんたちをぎゅっと抱きしめて固まっています。
    「こ、こたぁ」
    「うぅう、うぅ…………ふふ、ふはははは……」
    「う……?こた、どちたの……?」
    「ふはははは!私は悪の魔法使い!小太郎の体は乗っ取った!」
    「ひゃあ」
    「ふふふカワイ、ごほごほ、この小太郎の体を操ってウルクの王を倒してやるぞ!」
    「や、やだ、やだぁ……こあいよ、こたぁ」
     小太郎くんの低くてこわ~い声に、立香くんはすっかり怯えてしまった様子。大粒の涙がぽろぽろ、優しい小太郎くんに戻ってほしくて一生懸命名前を呼びます。小太郎くん、耳を赤くして何とかにやにやを堪えています。がんばれ悪の魔法使い!
    「小太郎を取り戻したいか、未だ小さきカルデアの勇者よ」
    「やや、うぇ……おねまい、ひぅ、こたっかえちてぇ」
    「では私を倒してみせよ!ウルクの王一人では難しいかな?」
     ぷるぷる震えて泣いていた立香くん、悪の魔法使いの言葉にはっと顔を上げて、
    「……ちなうもん。たーたんはいちばんちゅおいもん!」
     青の瞳が怒りにきらきら燃えています。
     そうだよね、立香くん。大好きな王様を侮られて、泣いてばかりはいられません。
    「おのえ、まほちゅかい!うゆくのまもいをみちぇてやう!」
     再びぐーんと高く掲げられたぬいぐるみの王様が、金の光を纏って宙に浮かびます。
    「やをかまえよ、おれがゆゆしゅ!」
    「えっ」
     フォン、不思議な音と共に、ぬいぐるみさんの周りに金色の文字が輪になって巡り出し、
    「しこのざいをもーて、うゆくのまもいをみちぇうがいい」
    「ちょ、主殿、宝具は」
    「らいちをぬらすはわがけちゅい!」
    「ミニクーちゃん殿も構えないで?!」
    「めあむ――――」



     お昼ごはんに帰ってきたギルガメッシュ王とシドゥリさんが扉を開けると、
    「こた、こた、もうらじょーぶ?まほちゅ、なない?」
    「あ、あはは……主殿、助かりました……」
    「よたた、いちゅか、こあかたよぉ」
    「僕も怖かったです、まさかぬいぐるみ相手で宝具チェインが来るとは……回避スキルがあってよかった……」
     周囲が穴ぼこだらけの床に座る小太郎くんに、立香くんがぎゅっと縋りついて泣いていました。隣には宝具を放ち終えてすっかり元通りのぬいぐるみさんたちがお座りして、何事もなかったかのようなすまし顔。
     王様が片眉を跳ね上げて、室内の被害をじっくり見渡します。
    「先ほど非常用に許可していた我の宝具ミニマム☆バージョンが発動したようだが、フン……まぁなかなか使えるようだな」
    「たーたん!」
     お待ちかねの王様の登場に、立香くん猛ダッシュ!しゃがんで構えた王様に飛びついたら、いっぱい泣いてりんごのように真っ赤になったほっぺを王様のほっぺにすりすり。瞬く間に王様のお顔がべっちゃりになってしまいましたが、王様は慣れっこで立香くんを抱き上げてくれました。
    「なんだ立香、泣きべそではないか」
    「べそだないもん!いちゅかこたまもたん、えあーい!の!」
    「ほぉう?守ったとな。よい、食事の支度が整うまで委細語ってみせよ」
     シドゥリさんが苦笑いで部屋を出て行きます。このお部屋はボロボロになってしまったので、別のお部屋でごはんを並べてくれるようです。小太郎くんも王様に一礼すると姿を消してお仕事に戻りました。
     立香くんをだっこした王様は、そこだけ無傷のお昼寝用ベッドにたくさんのクッションを出して、ゆったり寝転びます。
    「あのね!こた、うーって、くうち、なってね!どちたのってゆったあ、わういまほちゅかいがね、こたのこと、あやちゅて、てたの!」
    「おぉ、それは大変なことではないか」
    「そお、たへんなころだったの。いちゅかね、こあくて、なちゃたけろ、たーたんとみぃくーちゃ、いちょだぞってゆーたかあ、がばた!」
    「泣いちゃったのか」
    「なてない!ちょーとらけ!ちゅおいこ、えあいねー?」
    「そうさなぁ」
     全身を使ってお話しする立香くんの背中を撫でながら、王様は魔術でお部屋の修復です。割れた花瓶も床の穴ぼこもどんどん綺麗になっていきます。
    「詠唱はまだ難しかろうと思ったが、なかなかどうしてうまくできたではないか。槍の小さいのもそろそろ自由に動けるようになるだろうさ。お前の鼻水をもっと吸わせてやれ」
     最後にぬいぐるみの王様の髪飾りの宝石を新しいものに交換して、
    「此度は練習であったが、今後いつでも使えるように心しておけよ」
    「ん!いちゅか、まもう!」
    「よい子だ」
     王様は立香くんのほっぺにご褒美のちゅうをくれました。



     王様のお膝でごはんを食べて、遊びに来てくれたマーリンお兄さんと鏡の向こうのエレちゃんお姉さんと楽しく遊んで、午後からの立香くんはにこにこで過ごすことができました。
     今日はちょっとだけたくさん泣いちゃったけど、お留守番がんばったね。
     もう少しお兄さんになったら、ひとりでお使いもできるかな?

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  • 2019年05月10日 17:43
    ショタぐだくんと弓ギルお兄ちゃん
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     長兄が引き取ってきたちんまい雑種が一匹。
     犬のようなくりくりの瞳とへちゃっとした鼻で、熟れた桃でもくっつけたような頬の、言ってしまえば見慣れた我らのような美しい顔ではない、しかしなんとなく憎めない、敵愾心を煽らない愛嬌のある子雑種。
     体は小さいが度胸はなかなかのもので、美しすぎて近寄りがたい兄たちに臆することなくすぐに馴染んだ。
     長男を「おーちゃま」、次男を「ぎう」、三男を「ぎうくん」と呼んで、まさに子犬のごとくちょこまかと突撃してくる。三男は初対面からにっこり微笑んで抱きしめてやっていたし、長兄は澄まし顔を装ってはいるがすぐにだっこだのおんぶだの甘やかして保護者面。
     さて次男はといえば、寄ってくるからには多少構いはしていたものの、あまりその存在について興味を持っていなかった。親友や遊び仲間と連れ立って出かけてばかりいるので、そもそも接する時間があまりない。
     その、数少ない接触の機会を経て、ふと気付いた。
    「ぎうー!おかえなちゃー」
     珍しく夕食の時間より前に戻った次兄に、嬉しそうにころころ駆け寄ってくる雑種を見て、僅かに目を瞠る。
     今日はふと気が向いて、いつも上げている前髪を下ろし、耳飾りも変えていた。こうしていると長兄と次男は瓜二つだ。三兄弟以外に見分けられた者は、今のところ親友だけ。
     室内を見渡せば、うげっと愛らしくそっぽを向いた三男と、子守役のメイドのみ。
     今リビングに入ってきた兄がどちらの兄なのか。いくつか、推測を立てる要素はあるだろう。長兄が仕事から戻るにはまだ僅かに早い。朝着て出たであろうスーツと、次男が着用しているライダース、服装も違う。常用している香水も若干ではあるが香りが違う。
    「ぎうー、いちょ、あちょぼー?」
     長い足に抱きついてねだるちんまりした弟を、少し見直した。このちまっこい脳みそをちゃんと使っているではないか。
     そしておもしろいことを思いつく。
     にやりと笑った次兄を見て、三男は更に顔を歪めて、素早く末弟を抱き上げて避難した。



    「雑種、もう起きておったのか」
     前髪の下りた、垂れ下がる金とルビーの耳飾りで、オフホワイトのタートルネックとチェックのパンツをやわらかく着こなした美貌の男が立っている。
     呼ばれて振り向いた幼子は、大きな目をぱちんと瞬かせて、花咲くように笑った。
    「ぎう!」
    「むっ……やるな」
     こうもあっさり見抜かれるとは。
     せっかく長兄の部屋を散らかし放題掘り起こして服から何から一式拝借してきたというのに。
    「おはよごじゃま」
    「うむ。よくわからんが、許す」
    「ゆゆしゅ?だこ?」
     正解に免じて求められるままに抱き上げると、思ったよりもしっかりと重くて、ぬっくぬくに温い。夏は勘弁してほしいが、まだ少し風の冷たい今の時期にはとても心地いい温度だ。
     そういえば、この末弟をだっこなどしたのは、初めてかもしれない。
     きゃあきゃあと興奮して首にしがみついてくるのは、なるほど、この兄に優しくされてそれほどまでに嬉しかったのか。
     次も正解したならば、またこうしてやるのも悪くないだろう。
    「あのね!ぎう!きょおはね!ぷおわっしゃ、おいちたたよ!」
    「耳元で喚くでない。ぷおわっしゃ?とは何だ?」
    「おいちたた!」
    「えぇい喧しい!そして全く意味がわからんわ!」
     おいち!おいち!と謎の鳴き声を発しては跳ねる危なっかしい弟を抱いたまま、メイドが朝食を誂えているはずのダイニングルームへ向かう。
     もちっとした指が「ぷおわしゃー!」と示したのはパン篭。焼きたてのクロワッサンが詰まっていた。難解すぎるだろう。



    「おい、起きよ。体を貸せ」
    「…………きさま、このおれが……せっかくのきゅうじつのあさに……むにゃ」
    「むにゃむにゃ言うでない三十路の」
    「三十路言うな!……ん?何だ珍しいな、今日は兄と過ごしたい気分なのか愛い奴め」
    「相変わらず顔は麗しいが鬱陶しいな、そういうのはあの子雑種とやっておれ。あぁいや、まぁ待て、今日は一つ趣向を凝らす」
     ベッドに埋まったままの長兄の頭に、バサバサと衣装を投げる。豹柄のジャケット、黒のシャツ、蛇柄のパンツ、ついでに気に入りのアクセサリーもぽぽいと投げつけると、さすがに痛いわ!と抗議が上がった。目が覚めたようで何より。
    「……着ろと?」
    「うむ。頭を出せ、我自ら仕上げてやろう」
    「はぁ、久々の遊びか。ふん……」
     学生時代には散々仕掛けては嘲笑を浴びせて回った御遊び、今回仕掛ける相手が誰なのかはわざわざ言わずともわかっただろう。
    「いいだろう」
     にんまり。久々に悪く笑った長兄は、全裸のまま堂々と鏡の前に座った。

    「フハハハハハ!雑種!我が誰だか言ってみせよ!」
    「おうちゃま、うゆちゃーい」
     瞬殺ではないか。
     テンションマックスの長兄に子雑種はむーんと眉を寄せている。この幼子はこんな顔もするのか。
    「ほうほうほほう、やるではないか。迷いも見せぬとは……アレか?愛の力というやつか?そんなに我が好きかたわけぇふはは!」
    「演技が下手すぎる!我こんなに阿呆ではない!」
    「えーそうですか?そっくりですよーあはは」
    「おうちゃまおでこ、ぺち」
     抱き上げた末弟に額を撫で回されぺちりぺちりと叩かれながら、長兄は至極満足そうだ。三男はうぜぇ~という顔を隠そうともしない。
     いまいち釈然としないが、まぁ今回も正解としてやろう。



     それ以降、手を変え品を替え、次男の「我はど~っちだ」ゲームは繰り返されたのだが。
    「ざ~っしゅ、ほれ、これは誰だ?」
    「およぷく」
    「お洋服ではない。こっちだこっち」
    「ほぺちゃんー」
    「ほっぺはほっぺだが、おいぺちぺちするな不敬!お名前だ、お名前を言ってみよ」
    「ふいまゆりちゅかー!」
    「くぅっ愛い!元気なご挨拶なかなか良し!ではなく!」
     すっかり飽きた幼子におざなりに相手をされている、悲しい有様に、三男の視線はますます冷たくなっていくのであった。

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