最終更新日:2021年12月04日 17:41

屋根裏と地下室

非会員にも公開
SS置き場。基本エロなし。
オリジナル/サンリオ男子/あんさんぶるスターズ

Tw300字ss
「はめ殺し」https://pictbland.net/blogs/view_body/1159319 オリジナルというかコッペリア二次
「つぼみのまま」https://pictbland.net/blogs/view_body/1266036 オリジナル百合
「十一番目の息子」https://pictbland.net/blogs/view_body/1310317 オリジナル歴史
「月夜にトロリー」https://pictbland.net/blogs/view_body/1347123 オリジナル
「をとこもすといふ」https://pictbland.net/blogs/view_body/1385661 オリジナル
「サギとカササギ」https://pictbland.net/blogs/view_body/1481026 オリジナル
「無重力でバタフライ」https://pictbland.net/blogs/view_body/1527226 二次サンダーバード
「アウギュステ前夜」https://pictbland.net/blogs/view_body/1527237 二次グランブルーファンタジー
「下り17:09発」https://pictbland.net/blogs/view_body/1586964 オリジナル
「となりのおばさん」https://pictbland.net/blogs/view_body/1636153 オリジナル

折本フェア用オリジナル「六月が終わる」https://pictbland.net/blogs/view_body/1559911
ペーパーウェル04用オリジナル「小5男子のペンケース」https://pictbland.net/blogs/view_body/1472997

オリジナルFT「きみの明日がぼくのすべて」https://pictbland.net/blogs/view_body/382709
サンリオ男子「康太、明かりをつけて。」祐康https://pictbland.net/blogs/view_body/538052
      「ずるいともだち」祐康https://pictbland.net/blogs/view_body/651336 
      「ずるいともだち2」祐康https://pictbland.net/blogs/view_body/651339
 ※サンリオ男子は今後こちらhttps://pictbland.net/blogs/detail/160
あんさんぶるスターズ みどちあ二人が王子設定パロhttps://pictbland.net/blogs/view_body/730662
  慈雨
  • 2017年08月11日 07:54  
    SS「きみの明日がぼくのすべて」手直し
    2527文字

    魔女と因縁のある男の昔話

    この記事は省略されています。続きを読むにはここをクリックしてください。





    「明日はいい天気になりそうだ」
     退屈していた醜い魔女は、呟く靴屋に顔を向けた。


     朽ち果てた修道院で再会したのは、日が落ちる前だった。
     今は荒れ果てた食堂で、長机の端と端に座っている。埃と黴のにおいを嫌って鎧戸を放っても、夜の光は室内に届かない。燭台の蝋燭立てにこびりついた蝋に、赤い炎をつけた。
     一見、若い男女の逢瀬でも、それのような華やいだ情熱は、二人の間にはない。


    「こどものころは、雲の流ればかり気にしてたよ。晴れたら、友だちに会いに行ける」
     問わず語りだ。
     付き合いは長いが、魔女は、彼のことは何も知らない。靴屋の銀髪は、はじめて会ったころより、輝きを増しているようだ。それは彼女の赤い髪も同じで、年追うごとに、禍々しく艶を放っている。
    「丘を越えたところに住んでる、羊飼いなんだ。牛馬に飼い葉をくれたら、家を飛び出す」
     羊飼いは、餌場が荒れないように、こまめに移動する。昨日いた場所にはいるとはかぎらない。おおよその目安がつくようになっても、何日も雨に降りこめられれば、その目測さえはずれる。それでも、雨催いでなければ、一目散に駆けだした。無駄足を踏む日が続いても、こりずに出かけた。挨拶をしてとんぼ返りでもかまわなかった。


    「三か月会えなかったのは、十三のときだったかな。辛かったよ」
     靴屋は来たるべき日に備えて、学ぶべきことが増えた。逃げ出しても、羊飼いを見つけることはできなかった。そのころ、羊飼いは狼から羊を守ることに腐心していたのだ。
    「やっと会えたと思ったらもの別れ、今度はひと月会えなかった」
    「でも、会えたんでしょ?」
    「うん。会って、また喧嘩した。喧嘩っていっても、俺が癇癪起こしてるだけなんだよ、いつも」
     羊飼いは、靴屋に謝らせることはしなかった。顔を合わせれば、まず水を飲ませてくれた。言い争いなどなかったように、天気や家族の話をして、別れた。靴屋は少しバツが悪い思いでいても、羊飼いがちらっと笑みを見せれば、すべて許された気がした。
    「得がたい人ね」
    「大切だった。ずっと一緒にいたかった」


     そのあたりの少年は、十六になると人間修養の旅に出される。二、三日親族を訪ねる形式的なものですませるものもあれば、数年に渡る冒険に出るものもいる。羊飼いは前者だった。
    「俺の方が生まれが遅いから、改めて一緒に旅をしようって、ずっと誘っていた。あいつは、それはできないって言うんだ」
    「羊が心配なんでしょ」
    「そういうこと。俺より羊が大切なの。そんなこと当然なのに、腹が立って喧嘩して帰る」
    「羊飼いさんも、よく付き合ってくれたものね」
    「あいつにとっては、俺は野飼いの犬みたいなものだったと思う。だから、言葉でわかりあえないのも当たり前だと、あきらめていたんじゃないか?」
     羊飼いが親戚の家から戻るのと入れ替わりに、靴屋が発った。はじめて目にするもの、耳にするものが珍しく、各地を転々とした。靴やちょっとした馬具を直して、路銀を稼いだ。墓荒らしの悪鬼退治一行に同道したり、馬泥棒捕縛の助太刀をしたり、行き当たりばったりの放浪は、彼の性に合っていた。一生旅を続けたかった。
     何かが欠けていた。
     もの足りなさが暗い空洞に変わり、堪えがたくなった。出立して半年、彼は帰郷した。


     家人は無事を喜んだ。羊飼いに会いに行こうとすると、一様に顔を曇らせた。しばらく前に、羊が襲われて、大損害をこうむったらしい。
     襟首をつかまれて止められるのを振り切って、見舞いに出かけた。
     羊は半分以下に減っていた。雇った流れ者が人狼だった。仲間を呼んで、羊を襲ったという。食い散らかされた羊の皮を剥いで、糸と皮を売ったおかげで、少しは潤ったと語る羊飼いの指先が短かった。中指と人差し指を、狼に食いちぎられたのだ。
     復讐しよう、と靴屋はそそのかした。羊飼いはためらっていた。彼の迷いに気付いて、靴屋はなおも口説き、ついには旅に連れだした。
     羊飼いが始終隣にいることに、靴屋は満足していた。横顔だけを見ていた。指が見えると、容赦なく冷水を浴びせかけてくるのだ。自分で言いだしたこととはいえ、旅の目的を忘れたかった。


     新月を三回見送って、羊飼いの笑顔も増えてきた。人手の足りない家に手伝いに行き、青ざめた顔で戻ってきた。
     人狼がいたという。人の顔で働いていた。
     相手が人狼に変化しては面倒だった。
     靴屋も手伝いに行った。
     人狼と親しく口をきき、人目のないところにおびき寄せた。
     隠れていた羊飼いに、投石器で頭を割らせた。靴屋が心臓を突き、喉笛を掻き切った。
     星が明るい晩だった。
     二人は帰途についた。人狼を殺したことは、誰にも話さなかった。
     羊飼いは羊を追う日々に戻った。


    「めでたしめでたしね」
    「ここで終わらせたら、今の俺はいない」
     うららかに晴れた日、靴屋は、血まみれの羊の群れに羊飼いが斃れているのを見るのだ。羊も羊飼いも、狼に噛み殺されていた。
     靴屋はその足で、旅に出た。以来、家には帰っていない。


    「あれだけ名前を呼んだのに、覚えていないんだ。燃えるような髪色と夏の緑の瞳は覚えているのに」
    「そう……羊飼いさんの御霊に安らぎのあらんことを」
     醜い魔女はそっと黙祷し、顔をを上げた。
    「それで、あなた、羊飼いのフランに執着してたのね」
    「フランはほとんど完璧だった。髪の色も目の色も、あいつにそっくりだったのに」
    「リリアスも色は同じだった」
    「一晩で白髪に変わったのは残念だ」
    「わたしも?」
     醜い魔女は、森の常緑になぞらえられる双眸で見据える。
    「もちろん。羊飼いに殺されるのを、俺は待っている」
    「待ちくたびれたでしょ?」
     醜い魔女は、燭台の灯を吹き消した。
     靴屋の気配が消えた。
     

     山里の小娘は、旅の靴屋を名乗る男に、一杯の水の礼に魔導書を与えられた。それを読み解き、自家薬籠中のものとし、まばたきひとつで城を落とすと言われる大魔女に育つまで、千年かかった。


     魔女は闇に差し伸べた手のひらに、青白く丸い明かりをともし、息を吹きかけて宙に浮かせた。
     男の姿はない。
     窓から見えるのは、月のない満天の星空だ。
    「明日晴れたら、どうせ出てくるんでしょ?」
     ひとりごちて、醜い魔女は明るい窓辺に寄った。




    この記事を省略状態に戻すには、ここをクリックしてください。

  • 2017年08月05日 21:06  

    「きみの明日がぼくのすべて」は7/25と29日に出たタイトル
    この記事は省略されています。続きを読むにはここをクリックしてください。


    25日
    「君の笑顔を見るたびに、好きの想いが増えていく。」から始まり
     タイトルは『君の明日が僕のすべて』
     煽りは【美味しく食べてね?】です。

    29日
    「とてもいい天気だったから、君に会いに行くことにした。」から始まり
     タイトルは『君の明日が僕のすべて』
     煽りは【となりにあなたがいるのなら】です。

    31日に初めて作った表紙から想像したものが二転三転して、昔書いていたFTのキャラクターのエピソードにしようと考えてから作ったのが、今回上げた表紙
    完璧な表紙詐欺
    最初に考えた話は可愛かったけど、締め方が思いつかなかったので、また改めて詰めよう


    この記事を省略状態に戻すには、ここをクリックしてください。

  • 2017年08月05日 20:25

    SS「きみの明日がぼくのすべて」
    2618字
    この記事は省略されています。続きを読むにはここをクリックしてください。





    「明日はいい天気になりそうだ」
     退屈していた醜い魔女は、さめた目を靴屋に向ける。
     付き合いは長いが、魔女は彼のことは何も知らない。靴屋の銀髪は、はじめて会ったころより、輝きを増しているようだ。それは彼女の赤い髪も同じで、年追うごとに、禍々しく艶を放っている。

     朽ち果てた修道院で再会したのは、日が落ちる前だった。
     今は荒れ果てた食堂で、長机の端と端に座っている。埃と黴のにおいを嫌って鎧戸を放っても、夜の光は室内に届かない。燭台の蝋燭立てにこびりついた蝋に、赤い炎をつけていた。

    「俺は雲の流ればかり気にしてるこどもで――あのころは友だちがいた」
     醜い魔女は口をはさもうとして、やめた。
    「丘を越えていかなくちゃ会えない。向こうは羊飼いなんだ。家族に見つからないように、一目散に出ていく」
    「手伝いをしないといけないものね」
    「余計な用を言いつけられるのは、面倒だろ。牛馬に飼い葉をくれたら、家を飛び出すんだ」
     羊飼いは、餌場が荒れないように、こまめに移動する。昨日いた場所にはいるとはかぎらない。おおよその目安がつくようになっても、何日も雨に降りこめられれば、その目測さえはずれる。それでも、雨催いでなければ、一目散に駆けだした。無駄足を踏む日が続いても、こりずに出かけた。挨拶をしてとんぼ返りでもかまわなかった。

    「三か月会えなかったのは、十三のときだったかな。辛かったよ」
     靴屋は来たるべき日に備えて、学ぶべきことが増えた。逃げ出しても、羊飼いを見つけることはできなかった。そのころ、羊飼いは狼から羊を守ることに腐心していたのだ。
    「やっと会えたと思ったらもの別れで、今度はひと月会えなかった」
    「でも、会えたんでしょ?」
    「うん。でも、また喧嘩した。喧嘩っていっても、俺が癇癪起こしてるだけなんだよ、いつも」
     羊飼いは、靴屋に謝らせることはしなかった。顔を合わせれば、まず水を飲ませてくれた。言い争いなどなかったように、天気や家族の話をして、別れた。靴屋は少しバツが悪い思いでいても、羊飼いがちらっと笑みを見せれば、すべて許された気がした。
    「得がたい人ね」
    「大切だった。ずっと一緒にいたかった」

     そのあたりの少年は、十六になると人間修養の旅に出される。二、三日親族を訪ねる形式的なものですませるものもあれば、数年に渡る冒険に出るものもいる。羊飼いは前者だった。
    「俺の方が生まれが遅いから、改めて一緒に旅をしようってずっと誘っていた。あいつは、それはできないって言うんだ」
    「羊が心配なんでしょ」
    「そういうこと。俺より羊が大切なの。そんなこと当然なのに、腹が立って喧嘩して帰る」
    「羊飼いさんも、よく付き合ってくれたものね」
    「あいつにとっては、俺は野飼いの犬みたいなものだったと思う。だから、言葉でわかりあえないのも当たり前だと、あきらめていたんじゃないか?」

     羊飼いが親戚の家から戻るのと入れ替わりに、靴屋が発った。はじめて目にするもの、耳にするものが珍しく、各地を転々とした。靴やちょっとした馬具を直して、路銀を稼いだ。墓荒らしの悪鬼退治一行に同道したり、馬泥棒捕縛の助太刀をしたり、行き当たりばったりの放浪は、彼の性に合っていた。一生旅を続けたかった。
     何かが欠けていた。
     もの足りなさが暗い空洞の寂寥に変わり、堪えがたくなった。出立して半年、彼は帰郷した。

     家人は無事を喜んだ。羊飼いに会いに行こうとすると、一様に顔を曇らせた。しばらく前に、羊が襲われて、大損害をこうむったらしい。
     襟首をつかまれて止められるのを振り切って、見舞いに出かけた。
     羊は半分以下に減っていた。雇った流れ者が人狼だった。仲間を呼んで、羊を襲ったという。食い散らかされた羊の皮を剥いで、糸と皮を売ったおかげで、少しは潤ったと語る羊飼いの指先が短かった。中指と人差し指を、狼に食いちぎられたのだ。
     復讐しよう、と靴屋はそそのかした。羊飼いはためらっていた。彼の迷いに気付いて、靴屋はなおも口説き、ついには旅に連れだした。
     
     羊飼いが始終隣にいることに、靴屋は満足していた。横顔だけを見ていた。指が見えると、旅の目的が容赦なく冷水を浴びせかけてきた。自分で言いだしたこととはいえ、忘れたかった。
     新月を三回見送って、羊飼いの笑顔も増えてきた。人手の足りない家に手伝いに行き、青ざめた顔で戻ってきた。
     人狼がいたという。人の顔で働いていた。
     相手が人狼に変化しては面倒だった。
     靴屋も手伝いに行った。人狼と親しく口をきき、人目のないところにおびき寄せた。隠れていた羊飼いに投石器で頭を割らせた。靴屋が心臓を突き、喉笛を掻き切った。星が明るい晩だった。
     二人は帰途についた。人狼を殺したことは、誰にも話さなかった。
     羊飼いは羊を追う日々に戻った。

    「めでたしめでたしね」
    「ここで終わらせたら、今の俺はいない」
     うららかに晴れた日、靴屋は、血まみれの羊の群れに羊飼いが斃れているのを見るのだ。羊も羊飼いも、狼に噛み殺されていた。
     靴屋はその足で、旅に出た。以来、家には帰っていない。

    「あれだけ名前を呼んだのに、覚えていないんだ。燃えるような髪色と夏の緑の瞳は覚えているのに」
    「そう……羊飼いさんの御霊に安らぎのあらんことを」
     醜い魔女はそっと黙祷し、森の緑になぞらえられる瞳を上げた。
    「それで、あなた、羊飼いのフランに執着してたのね」
    「フランは理想的だった。髪の色も目の色も、あいつにそっくりだったのに」
    「リリアスも色は同じだった」
    「一晩で白髪に変わったのは残念だ」
    「わたしも?」
     醜い魔女は、昏い双眸で見据える。
    「もちろん。羊飼いに殺されるのを、俺は待っている」
    「待ちくたびれたでしょ?」
     醜い魔女は、燭台の灯を吹き消した。
     靴屋の気配が消えた。

     山里の小娘は、旅の靴屋を名乗る男に、水を与えた礼に魔導書を与えられた。それを読み解き、自家薬籠中のものとし、まばたきひとつで城を落とすといわれる大魔女に育つまで、千年かかった。

     魔女は闇に差し伸べた手のひらに、青白く丸い明かりをともし、息を吹きかけて宙に浮かせた。
     男の姿はない。
     窓から見えるのは、月のない満天の星空だ。
    「明日晴れたら、どうせ出てくるんでしょ?」
     ひとりごちて、醜い魔女は明るい窓辺に寄った。

    この記事を省略状態に戻すには、ここをクリックしてください。

PAGE TOP