屋根裏と地下室
オリジナル/サンリオ男子/あんさんぶるスターズ
Tw300字ss
「はめ殺し」https://pictbland.net/blogs/view_body/1159319 オリジナルというかコッペリア二次
「つぼみのまま」https://pictbland.net/blogs/view_body/1266036 オリジナル百合
「十一番目の息子」https://pictbland.net/blogs/view_body/1310317 オリジナル歴史
「月夜にトロリー」https://pictbland.net/blogs/view_body/1347123 オリジナル
「をとこもすといふ」https://pictbland.net/blogs/view_body/1385661 オリジナル
「サギとカササギ」https://pictbland.net/blogs/view_body/1481026 オリジナル
「無重力でバタフライ」https://pictbland.net/blogs/view_body/1527226 二次サンダーバード
「アウギュステ前夜」https://pictbland.net/blogs/view_body/1527237 二次グランブルーファンタジー
「下り17:09発」https://pictbland.net/blogs/view_body/1586964 オリジナル
「となりのおばさん」https://pictbland.net/blogs/view_body/1636153 オリジナル
折本フェア用オリジナル「六月が終わる」https://pictbland.net/blogs/view_body/1559911
ペーパーウェル04用オリジナル「小5男子のペンケース」https://pictbland.net/blogs/view_body/1472997
オリジナルFT「きみの明日がぼくのすべて」https://pictbland.net/blogs/view_body/382709
サンリオ男子「康太、明かりをつけて。」祐康https://pictbland.net/blogs/view_body/538052
「ずるいともだち」祐康https://pictbland.net/blogs/view_body/651336
「ずるいともだち2」祐康https://pictbland.net/blogs/view_body/651339
※サンリオ男子は今後こちらhttps://pictbland.net/blogs/detail/160
あんさんぶるスターズ みどちあ二人が王子設定パロhttps://pictbland.net/blogs/view_body/730662
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2020年06月29日 10:32
6月第1週開催ペーパーウェル04「文房具」
原稿がほぼできていたのに、PCクラッシュで参加できなかったのが悔しい
『小5男子のペンケース』A3片面印刷→A6P8折本
同級生女子からの誕プレ告知に戸惑う小5男子
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またルビつけるのを忘れてる
萌奈→もえな
礼太郎→れいたろう
信一郎→しんいちろう
光→みつる
真唯人→まいと
◆◆◆◆◆
四時間目の体育の後は忙しい。何を置いても給食の準備が先だ。
図書館の信一郎に給食を運んでいこうとすると、萌奈がついてきた。
萌奈はもう着替えていた。授業中は結んでいた髪も、ほどいてきれいに梳かしている。ぼさぼさの髪をを適当にくくって、汗で濡れた体操着にパーカーを羽織った自分が、だらしなく見える。
豚汁がこぼれないように、そろそろ階段を下りているのに、萌奈が近すぎる。少しだけ横によけたのに、萌奈もぴったりついてきた。砂埃と花の匂いがする。
萌奈がトレーの隙間に絆創膏を置いた。
「使って」
ほら、案の定腕がぶつかって、汁の容器が滑った。どきどきひやっとして、喉が詰まった。
汚れた絆創膏は、体育がはじまるまえに剥がしていた。
二週間前、体育のミニバスで、中指をえぐられた。敵チームだった萌奈は、自分がけがをさせたかもしれないと気に病んでいた。
「ユニちゃんのお誕生日が近いでしょ?」
いぶかしがりながら頷いた。萌奈に、誕生日の話をした覚えがない。
「お菓子とか焼いたら、もらってくれる?」
「誕生日は日曜だから」
「おうちに持って行っていい?」
遠回しに断ったつもりだった。
誕生日は平日だ。萌奈は、本当の誕生日を知らないのかもしれない。
「それと、それとね、おそろいのシャーペンをプレゼントしたら、使ってくれる?」
「萌奈は光ちゃんと同じのを使っていなかったっけ?」
同じものを持つのが仲良しの証だ。萌奈と光は仲違いしなくても、目ざとい連中に気付かれて、ややこしいことに巻きこまれたくない。
「光ちゃんはOKしてくれた。もちろん、プレゼントは、光ちゃんとは別のペン」
「あんまり高いものじゃなきゃいいよ。お返しが大変だから」
「お返しなんて気にしないで。わたしが勝手に押しつけるだけだから」
萌奈が押しつけがましいことをしている自覚があるなら、これ以上押し問答をしなくていい。迷惑ではあるけれど、もらいっぱなしは気が重い。光に相談して、萌奈にお返しはしておこう。
「ユニちゃん」
萌奈の声が、高いところから降ってきた。
「ユニちゃんは、礼太郎くんと信一郎くんのどっちが好き?」
踊り場の端に、萌奈は立ち止まっている。転んだら折れそうな、鹿のような脚しか見えない。
「礼太郎は友だちだけど、信一郎は違う」
礼太郎と信一郎は、双子の兄弟で、同級生だ。礼太郎とは、幼稚園から親しかった。
今日の萌奈は、うまく会話ができていない気がする。
「絆創膏、ありがとうな、萌奈。教室戻りなよ。給食冷めちゃうよ」
「……うん、じゃあ、また」
上履きがきゅっと鳴る音を聞いて、階段を下りる。さっきのマラソンの疲れか、ふくらはぎが痛い。
図書室は、五年生の教室の一階下にある。
引き戸を開けると、すぐそばに信一郎が立っていた。戸口脇の新着コーナーで、立ち読みしていた。
「待ってた! ユニ、今日も可愛いね」
万歳する信一郎は、トレーを突き出しても受け取らない。定位置の閲覧テーブルに向かった。窓際の、校庭全体が見える場所だ。
絆創膏をつまんで、信一郎の前にトレーを置いてやる。
信一郎は、「サンキュー」と言った。口先だけの、偉い人が目下のものをねぎらうふりをする、形だけの礼だ。
「そういえば、ユニの誕生日って来週?」
「違うけど」
信一郎と長く会話をするつもりはない。お義理でつきあうだけだ。
「六月だよね? もう過ぎちゃった?」
「いや……誕生日の話、したことあったっけ?」
絆創膏を指に巻いて、ゴミはパーカーのポケットにしまう。黒の半袖パーカーのポケットやドローストリングは、ピンクのロゴ入りリボンがあしらわれている。
「自分の名前の由来を調べるって宿題があったじゃん。日付は知らないけど、六月生まれの蟹座っていうのは、萌奈ちゃんと光ちゃんが訊きに来て思い出した」
信一郎は牛乳を一気に飲んで、紙パックをたたむ。
「萌奈ちゃんが、ユニの欲しいものを知りたがってた。『消しゴム』って言ったら、特別な感じがしない怒られちゃった」
先週、礼太郎の家で宿題をした。今使っている消しゴムの片側は、ガタガタに崩れている。半分以上残っていて、まだ使える。でも、新しいものが欲しいと話していた。
「別に、何もいらないのに」
「もらっておけよ。萌奈ちゃんに好かれてうらやましい」
顔が火照った。頭は冷えたままだ。
萌奈の質問は、双子との友だちとしての仲の良さではなかったのだ。
「いいじゃん。つきあっちゃえよ」
信一郎は、鯖の南蛮漬けを平らげて、米飯に取りかかる。
「つきあうって……何するんだよ?」
「パピコ分け合うとか?」
「そんなの礼太郎ともするよ」
「じゃあ、チューするとか?」
「しねえよ。萌奈はただの同級生」
萌奈は誰にでも親切だ。誰から見ても可愛いし、気立てがいい。彼女にとって自分が特別だと、考えたこともなかった。
信一郎も、ただのクラスメートだ。図書室登校を続けているから、仕方なく給食を運んでやっているだけだ。
「ねえ、ユニはさ、いつまで女の子の格好してるの?」
「てめえには関係ねえよ!」
にっこりする信一郎を一喝して、図書室を出た。
信一郎が嫌いだ。話し方も食べ方も嫌いだ。見下すようなふるまいが気に入らない。
萌奈がぼくに優しいのは、孤立しないように気を配っているからだ。ぼくが信一郎に給食を用意するのと、さして変わらない。
階段を上がる足が重い。手すりを使って、体を引き上げる。
貼り直したばかりの絆創膏がかゆい。かさぶたを剥がしてしまいたい。絆創膏は、もういらないんじゃないか?
◆ ◆ ◆
真唯人兄ちゃんが帰ってきたのは、まだ外が明るい時間だった。定期試験前で、部活動が休止期間に入ったのだ。
「宿題? お疲れ」
居間で計算ドリルを開くぼくの手元をのぞく兄ちゃんは、汗と砂埃のにおいがする。
「真唯ちゃんも勉強しろよ。テストだろ」
「うぜえ」
兄ちゃんは、ぼくを小突いて、仁王立ちでエアコンの風に当たる。
立っていても、兄ちゃんが小柄なのはわかる。ぼくよりも気持ち目線が高いくらい。この間も、中学二年生なのに四年生に間違われていた。
「真唯ちゃん、そういうとこを女子に嫌われてるよね」
「うるせえ、小さくて可愛いって言われてんだよ」
「小さいって言われるの、いやなくせに」
兄ちゃんが腕を振り上げた。
頭をかばうぼくを嘲笑して、兄ちゃんはしゃがみこむ。
「汚い消しゴム」
兄ちゃんは、たすきがけした通学バッグから、ペンケースを引っ張り出した。取り出したのは、カッターナイフだった。
「切っちゃおうぜ」
割れてリアス海岸みたいになっている消しゴムに、カッターの刃が当てられた。
「もったいないよ」
「気分よく使いたいじゃん。消しゴム使うときは、間違ってもやもやするときなんだから」
兄ちゃんは、削った消しゴムを、ノートに投げた。ぼろぼろの切れ端は、ゴミ箱に投げ入れる。
ノートの転がる消しゴムの平らな断面は、真っ白だ。
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