最終更新日:2021年12月04日 17:41

屋根裏と地下室

非会員にも公開
SS置き場。基本エロなし。
オリジナル/サンリオ男子/あんさんぶるスターズ

Tw300字ss
「はめ殺し」https://pictbland.net/blogs/view_body/1159319 オリジナルというかコッペリア二次
「つぼみのまま」https://pictbland.net/blogs/view_body/1266036 オリジナル百合
「十一番目の息子」https://pictbland.net/blogs/view_body/1310317 オリジナル歴史
「月夜にトロリー」https://pictbland.net/blogs/view_body/1347123 オリジナル
「をとこもすといふ」https://pictbland.net/blogs/view_body/1385661 オリジナル
「サギとカササギ」https://pictbland.net/blogs/view_body/1481026 オリジナル
「無重力でバタフライ」https://pictbland.net/blogs/view_body/1527226 二次サンダーバード
「アウギュステ前夜」https://pictbland.net/blogs/view_body/1527237 二次グランブルーファンタジー
「下り17:09発」https://pictbland.net/blogs/view_body/1586964 オリジナル
「となりのおばさん」https://pictbland.net/blogs/view_body/1636153 オリジナル

折本フェア用オリジナル「六月が終わる」https://pictbland.net/blogs/view_body/1559911
ペーパーウェル04用オリジナル「小5男子のペンケース」https://pictbland.net/blogs/view_body/1472997

オリジナルFT「きみの明日がぼくのすべて」https://pictbland.net/blogs/view_body/382709
サンリオ男子「康太、明かりをつけて。」祐康https://pictbland.net/blogs/view_body/538052
      「ずるいともだち」祐康https://pictbland.net/blogs/view_body/651336 
      「ずるいともだち2」祐康https://pictbland.net/blogs/view_body/651339
 ※サンリオ男子は今後こちらhttps://pictbland.net/blogs/detail/160
あんさんぶるスターズ みどちあ二人が王子設定パロhttps://pictbland.net/blogs/view_body/730662
  慈雨
  • 2020年06月29日 10:32  

    6月第1週開催ペーパーウェル04「文房具」
    原稿がほぼできていたのに、PCクラッシュで参加できなかったのが悔しい

    『小5男子のペンケース』A3片面印刷→A6P8折本
    同級生女子からの誕プレ告知に戸惑う小5男子
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    またルビつけるのを忘れてる
    萌奈→もえな
    礼太郎→れいたろう
    信一郎→しんいちろう
    光→みつる
    真唯人→まいと




       ◆◆◆◆◆



     四時間目の体育の後は忙しい。何を置いても給食の準備が先だ。
     図書館の信一郎に給食を運んでいこうとすると、萌奈がついてきた。
     萌奈はもう着替えていた。授業中は結んでいた髪も、ほどいてきれいに梳かしている。ぼさぼさの髪をを適当にくくって、汗で濡れた体操着にパーカーを羽織った自分が、だらしなく見える。
     豚汁がこぼれないように、そろそろ階段を下りているのに、萌奈が近すぎる。少しだけ横によけたのに、萌奈もぴったりついてきた。砂埃と花の匂いがする。
     萌奈がトレーの隙間に絆創膏を置いた。
    「使って」 
     ほら、案の定腕がぶつかって、汁の容器が滑った。どきどきひやっとして、喉が詰まった。
     汚れた絆創膏は、体育がはじまるまえに剥がしていた。
     二週間前、体育のミニバスで、中指をえぐられた。敵チームだった萌奈は、自分がけがをさせたかもしれないと気に病んでいた。
    「ユニちゃんのお誕生日が近いでしょ?」
     いぶかしがりながら頷いた。萌奈に、誕生日の話をした覚えがない。
    「お菓子とか焼いたら、もらってくれる?」
    「誕生日は日曜だから」
    「おうちに持って行っていい?」
     遠回しに断ったつもりだった。
     誕生日は平日だ。萌奈は、本当の誕生日を知らないのかもしれない。
    「それと、それとね、おそろいのシャーペンをプレゼントしたら、使ってくれる?」
    「萌奈は光ちゃんと同じのを使っていなかったっけ?」
     同じものを持つのが仲良しの証だ。萌奈と光は仲違いしなくても、目ざとい連中に気付かれて、ややこしいことに巻きこまれたくない。
    「光ちゃんはOKしてくれた。もちろん、プレゼントは、光ちゃんとは別のペン」
    「あんまり高いものじゃなきゃいいよ。お返しが大変だから」
    「お返しなんて気にしないで。わたしが勝手に押しつけるだけだから」
     萌奈が押しつけがましいことをしている自覚があるなら、これ以上押し問答をしなくていい。迷惑ではあるけれど、もらいっぱなしは気が重い。光に相談して、萌奈にお返しはしておこう。
    「ユニちゃん」
     萌奈の声が、高いところから降ってきた。
    「ユニちゃんは、礼太郎くんと信一郎くんのどっちが好き?」
     踊り場の端に、萌奈は立ち止まっている。転んだら折れそうな、鹿のような脚しか見えない。
    「礼太郎は友だちだけど、信一郎は違う」
     礼太郎と信一郎は、双子の兄弟で、同級生だ。礼太郎とは、幼稚園から親しかった。
     今日の萌奈は、うまく会話ができていない気がする。
    「絆創膏、ありがとうな、萌奈。教室戻りなよ。給食冷めちゃうよ」
    「……うん、じゃあ、また」
     上履きがきゅっと鳴る音を聞いて、階段を下りる。さっきのマラソンの疲れか、ふくらはぎが痛い。
     図書室は、五年生の教室の一階下にある。
     引き戸を開けると、すぐそばに信一郎が立っていた。戸口脇の新着コーナーで、立ち読みしていた。
    「待ってた! ユニ、今日も可愛いね」
     万歳する信一郎は、トレーを突き出しても受け取らない。定位置の閲覧テーブルに向かった。窓際の、校庭全体が見える場所だ。
     絆創膏をつまんで、信一郎の前にトレーを置いてやる。
     信一郎は、「サンキュー」と言った。口先だけの、偉い人が目下のものをねぎらうふりをする、形だけの礼だ。
    「そういえば、ユニの誕生日って来週?」
    「違うけど」
     信一郎と長く会話をするつもりはない。お義理でつきあうだけだ。
    「六月だよね? もう過ぎちゃった?」 
    「いや……誕生日の話、したことあったっけ?」 
     絆創膏を指に巻いて、ゴミはパーカーのポケットにしまう。黒の半袖パーカーのポケットやドローストリングは、ピンクのロゴ入りリボンがあしらわれている。
    「自分の名前の由来を調べるって宿題があったじゃん。日付は知らないけど、六月生まれの蟹座っていうのは、萌奈ちゃんと光ちゃんが訊きに来て思い出した」
     信一郎は牛乳を一気に飲んで、紙パックをたたむ。
    「萌奈ちゃんが、ユニの欲しいものを知りたがってた。『消しゴム』って言ったら、特別な感じがしない怒られちゃった」
     先週、礼太郎の家で宿題をした。今使っている消しゴムの片側は、ガタガタに崩れている。半分以上残っていて、まだ使える。でも、新しいものが欲しいと話していた。
    「別に、何もいらないのに」
    「もらっておけよ。萌奈ちゃんに好かれてうらやましい」
     顔が火照った。頭は冷えたままだ。
     萌奈の質問は、双子との友だちとしての仲の良さではなかったのだ。
    「いいじゃん。つきあっちゃえよ」
     信一郎は、鯖の南蛮漬けを平らげて、米飯に取りかかる。
    「つきあうって……何するんだよ?」
    「パピコ分け合うとか?」
    「そんなの礼太郎ともするよ」
    「じゃあ、チューするとか?」
    「しねえよ。萌奈はただの同級生」
     萌奈は誰にでも親切だ。誰から見ても可愛いし、気立てがいい。彼女にとって自分が特別だと、考えたこともなかった。
     信一郎も、ただのクラスメートだ。図書室登校を続けているから、仕方なく給食を運んでやっているだけだ。
    「ねえ、ユニはさ、いつまで女の子の格好してるの?」
    「てめえには関係ねえよ!」 
     にっこりする信一郎を一喝して、図書室を出た。
     信一郎が嫌いだ。話し方も食べ方も嫌いだ。見下すようなふるまいが気に入らない。
     萌奈がぼくに優しいのは、孤立しないように気を配っているからだ。ぼくが信一郎に給食を用意するのと、さして変わらない。
     階段を上がる足が重い。手すりを使って、体を引き上げる。
     貼り直したばかりの絆創膏がかゆい。かさぶたを剥がしてしまいたい。絆創膏は、もういらないんじゃないか?

         ◆ ◆ ◆

     真唯人兄ちゃんが帰ってきたのは、まだ外が明るい時間だった。定期試験前で、部活動が休止期間に入ったのだ。
    「宿題? お疲れ」 
     居間で計算ドリルを開くぼくの手元をのぞく兄ちゃんは、汗と砂埃のにおいがする。
    「真唯ちゃんも勉強しろよ。テストだろ」
    「うぜえ」
     兄ちゃんは、ぼくを小突いて、仁王立ちでエアコンの風に当たる。
     立っていても、兄ちゃんが小柄なのはわかる。ぼくよりも気持ち目線が高いくらい。この間も、中学二年生なのに四年生に間違われていた。
    「真唯ちゃん、そういうとこを女子に嫌われてるよね」
    「うるせえ、小さくて可愛いって言われてんだよ」
    「小さいって言われるの、いやなくせに」
     兄ちゃんが腕を振り上げた。
     頭をかばうぼくを嘲笑して、兄ちゃんはしゃがみこむ。
    「汚い消しゴム」 
     兄ちゃんは、たすきがけした通学バッグから、ペンケースを引っ張り出した。取り出したのは、カッターナイフだった。
    「切っちゃおうぜ」
     割れてリアス海岸みたいになっている消しゴムに、カッターの刃が当てられた。
    「もったいないよ」
    「気分よく使いたいじゃん。消しゴム使うときは、間違ってもやもやするときなんだから」
     兄ちゃんは、削った消しゴムを、ノートに投げた。ぼろぼろの切れ端は、ゴミ箱に投げ入れる。
     ノートの転がる消しゴムの平らな断面は、真っ白だ。

     

       
      



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